【2025年最新版】日本の戦闘機一覧|航空自衛隊が誇る空の守護者たち。最強は?

2025年の現役日本戦闘機一覧と保有数を解説するインフォグラフィック(F-35A・F-15J・F-2のシルエット入り) 航空戦力

目次(クリックで開きます)

はじめに|日本の空を守る翼たち

青空を切り裂くジェットエンジンの轟音。眼下に広がる日本列島を守るため、今日も航空自衛隊の戦闘機が大空を駆ける。

第二次世界大戦で敗戦を喫し、航空戦力を完全に失った日本。あの悔しさから約80年──現代の日本は再び、世界有数の航空戦力を保有する国家へと復活を遂げた。零戦や隼といった往年の名機が散った空を、今度はF-15JやF-2、そして最新鋭のF-35Aが守っている。

この記事では、現代日本が運用する戦闘機の全貌を、その歴史的背景から最新の配備状況まで徹底解説する。ミリタリーファンはもちろん、アニメや映画、YouTubeで航空自衛隊に興味を持ったあなたにも、日本の空を守る翼の魅力が存分に伝わるはずだ。


第1章|戦後日本と戦闘機開発の苦難の道のり

1-1. 敗戦から航空再建まで

1945年8月15日。玉音放送が流れたあの日、日本の空には一機の戦闘機も飛ばなくなった。

連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)による占領政策により、日本は一切の軍事航空機の製造・保有を禁じられた。世界に誇った航空技術は完全に封印され、中島飛行機や三菱重工といった航空機メーカーは民生品の製造へと転換を余儀なくされた。

鍋や釜を作る元航空技師たち──その悔しさは想像に難くない。

転機が訪れたのは1950年、朝鮮戦争の勃発だった。東西冷戦の最前線となった日本に、アメリカは防衛力の再建を要求。1952年、「保安隊航空部隊」として日本の空に再び戦闘機が配備された。最初の機体は、アメリカ製のF-86Fセイバー。かつて敵として戦った国の戦闘機で、日本は空の守りを再開したのである。

1-2. 国産戦闘機への執念

「もう一度、自分たちの手で戦闘機を作りたい」

この想いは、敗戦を経験した日本の航空技師たちの心に深く刻まれていた。

1956年、航空自衛隊(正式発足は1954年)は初の国産ジェット練習機T-1の開発に着手。続いて1958年には国産超音速戦闘機F-1の前身となるT-2超音速高等練習機の開発が始まった。

そして1977年、ついに戦後初の国産戦闘機F-1が配備される。性能面では当時の最新鋭機には及ばなかったかもしれない。しかし、「自分たちの手で戦闘機を作る」という悲願を達成した意義は計り知れなかった。

この執念が、後のF-2支援戦闘機開発へとつながっていく。

1-3. ライセンス生産という選択

一方で、最前線で使用する主力戦闘機については、日本は現実的な選択を取った。アメリカの最新鋭機をライセンス生産するという方法である。

F-104J、F-4EJ、そしてF-15J──いずれもアメリカで開発された戦闘機を、三菱重工を中心とした日本企業がライセンス生産した。これにより、日本は最先端の航空技術を学びながら、同時に高性能な戦闘機を自国内で製造する能力を維持・向上させていったのだ。

特にF-15Jのライセンス生産は、日本の航空産業にとって大きな転換点となった。200機以上を生産する過程で蓄積された技術とノウハウは、後の国産戦闘機開発に大きく貢献することになる。


第2章|現代日本の戦闘機戦力の全貌

航空自衛隊は現在、約280機の戦闘機を13個飛行隊で運用している。<<5>> これは世界的に見ても相当な規模の航空戦力だ。

では、具体的にどのような戦闘機が日本の空を守っているのか。主要3機種を詳しく見ていこう。<<1>><<3>>


第3章|F-15J/DJ「イーグル」|日本の空の絶対王者

3-1. イーグルという伝説

「撃墜スコア104対0」

この驚異的な戦績を誇る戦闘機が、F-15イーグルだ。1970年代にアメリカで開発されたこの戦闘機は、登場から50年近く経った今でも、世界最強クラスの制空戦闘機として君臨し続けている。

航空自衛隊が運用するF-15J/DJは、このイーグルを日本向けにカスタマイズした機体だ。<<4>> 1981年から配備が始まり、現在でも航空自衛隊の主力戦闘機として、日本各地の基地に配備されている。

3-2. 圧倒的な格闘戦能力

F-15の最大の特徴は、その卓越した空中戦闘能力にある。

主要スペック:

  • 最高速度:マッハ2.5(時速約3,000km)
  • 推力重量比:1以上(機体重量より推力の方が大きい)
  • 武装:20mm機関砲、AIM-9サイドワインダー、AIM-7スパロー/AIM-120 AMRAAM
  • 行動半径:約1,900km

推力重量比が1を超えるというのは、理論上は垂直上昇が可能ということだ。実際、F-15のデモンストレーション飛行では、ほぼ垂直に上昇していく姿を見ることができる。この運動性能こそが、F-15が半世紀近く第一線で活躍し続けられる理由である。

3-3. 小松基地のイーグルたち

F-15Jは航空自衛隊の複数の基地に配備されているが、中でも石川県の小松基地は「イーグルの聖地」として知られている。<<4>>

小松基地では第6航空団がF-15を運用しており、日本海側の防空を担当している。ロシア機への緊急発進(スクランブル)も多く、F-15パイロットたちは常に高い緊張感の中で任務にあたっている。

航空祭などで小松基地を訪れると、滑走路に並ぶ何機ものF-15の姿を見ることができる。その勇姿は、まさに「空の守護者」と呼ぶにふさわしい。

3-4. 近代化改修プログラム

さすがの名機F-15も、設計から50年が経過すると、電子装備の面で最新鋭機に劣る部分が出てきた。

そこで航空自衛隊は、F-15の一部機体に大規模な近代化改修を実施している。新型レーダーの搭載、電子戦能力の向上、そして最新のネットワーク機能の追加──これにより、F-15は21世紀の空でも第一線で戦える戦闘機として生まれ変わった。

この改修プログラムにより、F-15Jは今後も長期にわたって日本の空を守り続けることになる。

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第4章|F-2A/B「バイパーゼロ」|日本独自の支援戦闘機

航空自衛隊F-2A支援戦闘機の地上展示

4-1. 国産戦闘機への再挑戦

1980年代後半、航空自衛隊は老朽化したF-1支援戦闘機の後継機開発を決定した。

当初、日本は純国産の次期支援戦闘機(FSX)を開発する計画だった。戦後初の国産戦闘機F-1の経験を活かし、今度こそ世界水準の戦闘機を──そんな想いが開発チームにはあった。

しかし、アメリカからの強い政治的圧力により、日米共同開発という形に変更される。ベース機体はアメリカのF-16戦闘機。多くの技術者が悔しさを感じたことだろう。

だが、結果的にこの決定は日本の航空技術に大きな飛躍をもたらすことになる。

4-2. F-16を超えた日本の技術

F-14のドッグファイト

F-2の開発において、日本は単なるF-16の改良版を作ったわけではない。

F-2の独自技術:

  • 複合材主翼(世界初の一体成型複合材主翼)
  • 機体の大型化(F-16より約25%大型化)
  • AESA(アクティブ・フェーズドアレイ)レーダーの搭載
  • 対艦ミサイル4発同時搭載能力
  • 日本の気象条件に最適化された電子装備

特に複合材主翼は、F-2の最大の技術的成果だ。炭素繊維複合材料で主翼を一体成型することで、軽量かつ高強度な翼を実現した。この技術は、後に民間航空機のボーイング787にも採用されるなど、世界の航空機産業に大きな影響を与えた。

4-3. 「バイパーゼロ」の愛称の由来

F-2は、パイロットたちから「バイパーゼロ」という愛称で呼ばれている。<<4>>

「バイパー」はF-16の愛称、「ゼロ」は零戦を意味する。つまり「F-16の血統と零戦の魂を持つ戦闘機」というわけだ。この愛称には、日本の航空技術への誇りと、かつての名機への敬意が込められている。

個人的には、この愛称を聞くたびに胸が熱くなる。敗戦で途絶えた航空技術の系譜が、F-2という形で現代に蘇ったのだと感じるからだ。

4-4. 対艦攻撃のスペシャリスト

F-2の主任務は対艦攻撃だ。

四方を海に囲まれた日本にとって、海上からの脅威に対処する能力は極めて重要である。F-2は最大4発のASM-2対艦ミサイルを搭載し、敵艦船を精密に攻撃できる。

この能力は、島嶼防衛において特に重要だ。万が一、日本の離島が侵攻を受けた場合、F-2は敵の上陸船団や護衛艦を攻撃し、上陸作戦を阻止する役割を担う。

4-5. 東日本大震災の試練

2011年3月11日、東日本大震災が発生した。

宮城県の松島基地に配備されていたF-2は、津波の直撃を受けた。18機のF-2が被災し、そのうち多くが大きな損傷を受けた。整備員たちが必死で守ろうとした機体が、無情にも波に呑まれていく──その映像は、今でも心が痛む。

しかし、航空自衛隊は諦めなかった。被災した機体の復旧作業が開始され、多くの機体が第一線に復帰した。この復旧作業は、日本の航空技術者たちの執念と技術力の高さを示すものだった。

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第5章|F-35A「ライトニングII」|次世代ステルス戦闘機

5-1. ステルス時代の到来

2018年1月、青森県の三沢基地に一機の戦闘機が降り立った。

航空自衛隊が導入する最新鋭ステルス戦闘機、F-35Aの初号機である。<<1>> この日、日本は「第5世代戦闘機」を運用する国の仲間入りを果たした。

F-35は、アメリカを中心とした9カ国が参加する国際共同開発プログラムで生まれた戦闘機だ。「統合打撃戦闘機(Joint Strike Fighter)」として開発され、ステルス性、センサー融合、ネットワーク戦闘能力を統合した、まさに21世紀の戦闘機である。

5-2. ステルス性能の秘密

F-35の最大の特徴は、その高いステルス性能にある。

ステルス技術のポイント:

  • 機体形状の最適化(レーダー波を反射しにくい角度設計)
  • レーダー吸収材料(RAM)の使用
  • 武装の内蔵化(外部パイロンを使わない)
  • エンジン排気の赤外線低減
  • 電波放射の管理

これらの技術により、F-35のレーダー反射断面積(RCS)は、従来機の100分の1以下とされる。敵のレーダーからは、鳥ほどの大きさにしか見えないのだ。

この能力は、敵の防空網を突破し、第一撃を加える任務において絶大な効果を発揮する。

5-3. センサー融合という革命

しかし、F-35の真価はステルス性能だけではない。

F-35には機体各部に複数のセンサーが配置されており、それらが取得した情報を統合処理する「センサー融合」システムが搭載されている。レーダー、赤外線センサー、電子戦装置、データリンク──これらすべての情報が統合され、パイロットに分かりやすく表示される。

パイロットは、従来のように複数の計器やディスプレイを見る必要がない。ヘルメットマウントディスプレイに表示される統合された戦術情報を見るだけで、周囲360度の状況を完全に把握できるのだ。

これは戦闘機の概念を変える革命だった。F-35は単なる「戦闘機」ではなく、「空飛ぶ情報ハブ」として機能する。

5-4. 三沢基地の最強戦闘機部隊

F-35Aは、三沢基地の第302飛行隊と第301飛行隊に配備されている。<<1>>

三沢基地は、アメリカ空軍も駐留する日米共同使用基地だ。ここには米軍のF-16戦闘機も配備されており、日米の戦闘機が並ぶ光景を見ることができる。そんな中に、最新鋭のF-35が加わった意義は大きい。

航空自衛隊は今後、F-35Aを147機調達する計画だ。これは実質的に、F-15Jの後継として、F-35が日本の防空の中核を担うことを意味する。

5-5. B型導入という新展開

さらに2024年、航空自衛隊は短距離離陸・垂直着陸(STOVL)能力を持つF-35Bの導入を決定した。

F-35Bは、短い滑走路や、改修された護衛艦「いずも」「かが」から運用できる。これにより、日本は実質的な「空母運用能力」を獲得することになる。

戦後、日本は長らく攻撃型空母の保有を自制してきた。しかし、周辺国の軍事的脅威の増大により、防衛政策の転換が必要となった。F-35Bの導入は、その象徴的な出来事と言える。

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第6章|退役した戦闘機たち|日本の空を守った名機の記憶

現在の主力はF-15、F-2、F-35の3機種だが、これまで多くの戦闘機が日本の空を守ってきた。

6-1. F-4EJ改「ファントムII」

「空飛ぶレンガ」──そんな不名誉なあだ名を持ちながら、世界中で愛された戦闘機がF-4ファントムIIだ。

航空自衛隊は1971年からF-4EJを導入し、後に近代化改修を施したF-4EJ改として長年運用した。特に百里基地(茨城県)の偵察型RF-4Eは、2020年まで現役を続け、最後のファントム運用国として注目を集めた。<<2>>

太くずんぐりとした機体形状、双発エンジンから噴き出す黒煙──ファントムは決して美しい戦闘機ではなかった。しかし、その頑丈さと信頼性、そして何より「飛ばしてて楽しい」とパイロットに愛された機体だった。

2020年の退役式典では、多くのファンが別れを惜しんだ。あの独特のエンジン音が二度と聞けないのは、本当に寂しい。

6-2. F-1「日本初の国産戦闘機」

1977年に配備開始されたF-1は、戦後日本が初めて独自開発した戦闘機だった。

性能面では同時期の外国製戦闘機に劣る部分もあった。しかし、「自分たちの手で戦闘機を作る」という悲願を達成した意義は計り知れない。F-1で培われた技術とノウハウが、後のF-2開発の基礎となったのだ。

F-1は2006年に全機退役したが、各地の基地で展示機として保存されている。その姿を見るたび、戦後日本の航空技術復興への執念を感じずにはいられない。

6-3. F-104J「栄光(スターファイター)」

「有人ミサイル」とも呼ばれたF-104スターファイター。

細長い機体に短い主翼という独特のシルエットは、マッハ2を超える高速飛行に最適化された結果だった。航空自衛隊は1960年代から1980年代まで運用し、日本の防空任務に貢献した。

ただし、高速性能と引き換えに運動性能や安全性を犠牲にした設計は、世界中で多くの事故を引き起こした。日本でも複数の墜落事故が発生し、「未亡人製造機」という不名誉な別名もつけられてしまった。

しかし、その美しいシルエットは今でも多くのファンを魅了し続けている。

6-4. F-86F「セイバー」

戦後、日本の空に初めて戻ってきたジェット戦闘機がF-86Fセイバーだった。

朝鮮戦争でMiG-15と熾烈な空中戦を繰り広げたこの機体は、1950年代から1960年代にかけて航空自衛隊の主力として活躍した。後に一部の機体は航空自衛隊のアクロバットチーム「ブルーインパルス」の初代機体としても使用された。

美しい後退翼を持つシルエット、そして当時最新鋭だったジェットエンジンの轟音──F-86Fは、戦後日本に航空戦力が復活したことを象徴する機体だった。

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第7章|日本の戦闘機と世界比較

日本の戦闘機戦力は、世界的にどの程度の水準なのだろうか。

7-1. 保有機数での比較

航空自衛隊の戦闘機保有数は約280機。<<5>> これは世界の主要国と比較すると:

  • アメリカ:約3,300機(圧倒的世界一)
  • ロシア:約1,500機
  • 中国:約1,200機
  • インド:約600機
  • 韓国:約400機
  • 日本:約280機
  • イギリス:約200機
  • フランス:約270機
  • ドイツ:約220機

数だけ見れば、アメリカ、ロシア、中国には大きく劣る。しかし、質という観点では話が変わってくる。

7-2. 質での優位性

航空自衛隊の戦闘機は、すべて第4世代以降の近代的な機体だ。

特にF-15Jは、世界でも最高クラスの制空戦闘機である。さらにF-35Aという最新鋭ステルス戦闘機も導入済みだ。保有機数では劣るものの、1機あたりの戦闘能力では世界トップクラスと言える。

また、航空自衛隊パイロットの練度の高さも特筆すべき点だ。年間飛行時間、訓練の質、整備レベル──いずれも世界最高水準を維持している。

7-3. 周辺国との比較

日本周辺には、強力な空軍力を持つ国々が存在する。

中国人民解放軍空軍:

  • 保有機数:約1,200機
  • 主力機:J-10、J-11(Su-27コピー)、J-16、J-20(ステルス戦闘機)
  • 特徴:数的優勢、急速な近代化

ロシア航空宇宙軍:

  • 保有機数:約1,500機(ただし極東配備は一部)
  • 主力機:Su-27、Su-30、Su-35、Su-57(ステルス戦闘機)
  • 特徴:高い機動性能、長距離侵攻能力

韓国空軍:

  • 保有機数:約400機
  • 主力機:F-15K、KF-16、F-35A
  • 特徴:米国製最新鋭機の大量導入、国産戦闘機開発(KF-21)

数では劣勢だが、日米同盟、高い練度、最新鋭機の導入により、一定の抑止力を維持している。

7-4. ドイツとの比較|かつての盟友

個人的に興味深いのが、かつての同盟国ドイツとの比較だ。

第二次世界大戦では日独伊三国同盟を結び、ともに戦ったドイツ。Me262という世界初のジェット戦闘機を開発しながらも敗れたドイツも、戦後は日本と似た道を歩んだ。

現代のドイツ空軍(ルフトヴァッフェ)は約220機の戦闘機を保有している。主力はユーロファイター・タイフーンで、最近はF-35Aの導入も決定した。

興味深いのは、ドイツが戦後、独自戦闘機開発をほぼ放棄し、国際共同開発に注力した点だ。トーネード、ユーロファイター、そしてF-35──すべて多国間プロジェクトである。

一方、日本はF-1、F-2と、国産戦闘機開発にこだわり続けた。この違いは、両国の戦後の歩みを象徴している気がする。

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第8章|航空自衛隊の主要基地とその役割

日本全国に配置された航空自衛隊の基地。それぞれが独自の役割を担っている。

8-1. 北の守り|千歳基地・三沢基地

千歳基地(北海道)

ロシアに最も近い主要戦闘機基地である千歳基地には、F-15Jが配備されている。ここから発進した戦闘機が、ロシア機のスクランブルに対応することも多い。

冬季の厳しい気象条件下での運用は、パイロットと整備員に高い技術を要求する。氷点下20度の中での整備作業──その過酷さは想像を絶する。

三沢基地(青森県)

前述の通り、最新鋭F-35Aが配備されている三沢基地。日米共同使用基地として、アメリカ空軍のF-16も駐留している。

三沢基地は、日本の防空体制において極めて重要な位置を占める。太平洋側からの脅威への対処、そして有事の際には米軍との共同作戦の拠点となる。

8-2. 日本海の盾|小松基地

石川県の小松基地は、「イーグルドライバーの聖地」として知られる。

日本海を挟んで対峙するロシア、中国、北朝鮮──これら全ての国からの潜在的脅威に対処するため、小松基地のF-15は常に高い即応態勢を維持している。

小松基地の航空祭は人気が高く、毎年多くのファンが訪れる。滑走路に並ぶ何機ものF-15の姿は圧巻だ。轟音とともに離陸していくイーグルの勇姿を見れば、「日本の空は守られている」と実感できるはずだ。

8-3. 首都防衛の要|百里基地・入間基地

百里基地(茨城県)

首都東京に最も近い戦闘機基地が百里基地(茨城空港との共用)だ。ここにはF-2が配備されており、首都圏防空の一翼を担っている。

かつてはF-4EJ改が配備され、最後のファントム基地として注目を集めた。2020年のファントム退役式典は、多くのファンの記憶に残る感動的なものだった。

入間基地(埼玉県)

入間基地は戦闘機部隊こそ配備されていないものの、航空祭の規模と来場者数では日本最大級だ。都心から近いこともあり、毎年30万人以上が訪れる。

ブルーインパルスの展示飛行、各種航空機の地上展示──ミリタリーファンにとって、入間基地航空祭は外せないイベントだ。

8-4. 西の防人|築城基地・新田原基地

築城基地(福岡県)

九州北部に位置する築城基地には、F-2が配備されている。東シナ海方面の防空を担当し、近年増加する中国機へのスクランブルにも対応している。

築城基地は、有事の際の展開基地としても重要な位置づけだ。滑走路が頑丈に作られており、戦時下でも運用可能な設計となっている。

新田原基地(宮崎県)

九州南部の新田原基地にもF-2が配備されている。南西諸島方面の防空、そして対艦攻撃任務において重要な役割を果たす。

新田原基地の航空祭も人気が高く、F-2の機動飛行展示は圧巻だ。バイパーゼロの美しい機動を間近で見られる貴重な機会である。

8-5. 南西の最前線|那覇基地

沖縄県の那覇基地は、現在日本で最も緊張度の高い基地かもしれない。

東シナ海を挟んで中国と対峙するこの基地には、F-15Jが配備されている。スクランブル発進回数は日本の基地の中でも突出して多く、パイロットたちは極めて高い緊張感の中で任務にあたっている。

尖閣諸島周辺での中国機の活動増加に伴い、那覇基地の重要性はますます高まっている。日本の主権を守る最前線──それが那覇基地なのだ。


第9章|スクランブル(緊急発進)の実態

「スクランブル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

これは、日本の領空に接近する国籍不明機に対して、戦闘機が緊急発進する行動のことだ。

9-1. スクランブルとは

日本周辺の空域には、レーダーサイトが24時間365日、空を監視している。国籍不明の航空機が日本に接近すると、航空自衛隊の司令部に情報が集約される。

その機体が日本の領空に侵入する可能性があると判断された場合、最寄りの基地から戦闘機が緊急発進(スクランブル)する。

待機中のパイロットたちは、警報が鳴ると同時に駆け出す。フライトスーツを着て、ヘルメットをかぶり、戦闘機に乗り込む。エンジン始動から離陸まで、わずか数分。その緊張感は想像を絶する。

9-2. 年間1000回を超える緊急発進

航空自衛隊のスクランブル回数は、近年増加傾向にある。

2022年度の緊急発進回数は1000回を超えた。これは冷戦時代のピークに匹敵する数字だ。その大部分は中国機とロシア機への対応である。

特に中国機の活動は活発で、東シナ海や太平洋上での飛行が頻繁に確認されている。航空自衛隊のパイロットたちは、休む間もなく対応に追われている。

9-3. パイロットたちの使命感

スクランブル任務は、極めて高い緊張を伴う。

相手は、中国やロシアの最新鋭戦闘機である場合も多い。万が一の不測の事態が起これば、それは国際問題に発展する。だからこそ、パイロットたちは冷静かつ毅然とした対応を求められる。

あるF-15パイロットのインタビューで印象的だった言葉がある。

「自分たちが飛ぶことで、日本の領空は守られている。その誇りと責任を常に感じながら操縦桿を握っています」

この使命感こそが、日本の空を守る力の源なのだ。


第10章|次世代戦闘機開発|日本の空を守る未来の翼

F-15Jの後継として、日本は新たな国産戦闘機の開発を進めている。

10-1. F-3(次期戦闘機)開発プログラム

2020年、日本政府は次期戦闘機(当時はF-Xと呼ばれた、現在はF-3の名称)の開発方針を決定した。

これは、F-2以来となる本格的な国産戦闘機開発プロジェクトだ。三菱重工を主契約企業として、イギリス、イタリアとの国際共同開発という形で進められている。

F-3の目標性能:

  • 第6世代戦闘機としての能力
  • 高度なステルス性能
  • AI(人工知能)との協調戦闘能力
  • 無人機との連携運用
  • 次世代ネットワーク戦闘能力
  • 配備目標:2035年

10-2. 第6世代戦闘機とは

「第6世代」とは、F-35のような第5世代を超える次世代戦闘機の概念だ。

具体的には:

  • 有人・無人の協調運用:1機の有人戦闘機が複数の無人機(ロイヤル・ウィングマン)を統制
  • AI技術の本格活用:状況判断、目標選定の支援
  • 指向性エネルギー兵器:レーザーやマイクロ波兵器の搭載
  • 極超音速兵器への対応:マッハ5以上で飛来する兵器への迎撃能力
  • 高度なサイバー戦能力:電子戦・ネットワーク戦の統合

もはやSFの世界だが、これが2030年代の戦闘機の姿なのだ。

10-3. 国産エンジン開発への執念

F-3開発において、日本が特にこだわっているのがエンジンの国産化だ。

IHI(石川島播磨重工業)が開発する「XF9-1」エンジンは、世界最高クラスの推力重量比を実現している。このエンジンこそが、F-3の心臓部となる。

戦闘機のエンジンは、その国の工業力の結晶だ。F-3で完全国産エンジンを実現することは、日本の技術力の証明でもある。

10-4. かつての夢、再び

F-1、F-2と続いてきた日本の国産戦闘機開発。

F-2は日米共同開発という形になり、純国産とは言い難い面もあった。アメリカの政治的圧力により、純国産開発を断念せざるを得なかった悔しさは、今でも関係者の心に残っている。

しかし、F-3では状況が変わった。日本の技術力が認められ、イギリス、イタリアという対等なパートナーとの共同開発が実現した。これは、戦後日本の航空技術が、ついに世界トップレベルに到達したことの証でもある。

零戦を作り上げた技術者たちの魂が、80年の時を超えて、再び日本の空に羽ばたこうとしている。


第11章|日本の戦闘機を支える人々

戦闘機が飛ぶためには、パイロットだけでなく、多くの人々の支えが必要だ。

11-1. 整備員たちの献身

戦闘機1機を飛ばすために、何人の整備員が関わっているかご存知だろうか。

答えは、数十人である。エンジン、機体構造、電子装備、武装──それぞれの専門整備員がチームを組み、1機の戦闘機を完璧な状態に保つ。

特にF-35のような最新鋭機では、整備の複雑さは極めて高い。コンピューター診断システムを使いこなし、最先端の電子装備を整備する──そのスキルは、民間企業のエンジニアと比べても遜色ない。

真夏の猛暑、真冬の厳寒──どんな環境でも、整備員たちは黙々と作業を続ける。彼らの献身がなければ、どんな名機も飛ぶことはできない。

11-2. 管制官と警戒管制部隊

空を飛ぶ戦闘機を地上から支えるのが、管制官たちだ。

航空管制官は、戦闘機の離着陸を安全に誘導する。警戒管制部隊は、レーダーで空域を監視し、国籍不明機の接近を察知する。これらのプロフェッショナルたちの連携があってこそ、戦闘機は任務を遂行できる。

特にスクランブル時には、警戒管制官の的確な情報提供が極めて重要だ。「目標は方位○○度、距離○○マイル、高度○○フィート」──正確な情報が、パイロットの判断を支える。

11-3. 技術研究本部の開発者たち

最新技術を研究開発するのが、防衛装備庁(旧技術研究本部)の研究者たちだ。

彼らは、次世代戦闘機の要素技術、新型ミサイル、レーダー技術など、日本の防衛技術の最先端を切り開いている。その研究成果が、F-3のような次世代戦闘機に結実する。

民間企業で働けば、より高い給与を得られたかもしれない。しかし、「日本を守る技術を作る」という使命感が、彼らを支えている。

11-4. 基地を支える地域住民

忘れてはならないのが、基地周辺の地域住民の理解と協力だ。

戦闘機の騒音は相当なものだ。特にF-15やF-2のアフターバーナー使用時の轟音は、慣れていない人には耐え難いものかもしれない。

しかし、多くの基地周辺住民は、航空自衛隊の任務を理解し、協力してくれている。「うるさいけど、日本を守ってくれているから」──そんな声を聞くたび、頭が下がる思いだ。


第12章|戦闘機ファンのための楽しみ方

最後に、戦闘機ファンのための「楽しみ方」を紹介したい。

12-1. 航空祭に行こう

戦闘機の魅力を体感する最高の方法が、航空祭への参加だ。

主要な航空祭:

  • 入間航空祭(埼玉県・11月):来場者数日本一
  • 小松基地航空祭(石川県・9月):F-15の大編隊
  • 築城基地航空祭(福岡県・不定期):F-2の機動飛行
  • 百里基地航空祭(茨城県・不定期):F-2とファントムの思い出
  • 三沢基地航空祭(青森県・9月):F-35と米軍機の共演

間近で見る戦闘機の迫力、エンジン音の轟き、アフターバーナーの青い炎──これらは実際に体験しないと分からない感動だ。

特に機動飛行展示では、戦闘機の運動性能を存分に見ることができる。急上昇、急降下、高速旋回──パイロットの技術と機体性能が融合した、空中のバレエだ。

12-2. プラモデルを作ろう

戦闘機の構造を理解する最良の方法が、プラモデル製作だ。

日本のプラモデルメーカー(タミヤ、ハセガワなど)の製品は、世界最高水準の精度を誇る。特に航空自衛隊機のキットは、細部まで精密に再現されている。

おすすめキット:

  • タミヤ 1/48 F-15J イーグル
  • ハセガワ 1/72 F-2A 支援戦闘機
  • タミヤ 1/48 F-35A ライトニングII
  • ハセガワ 1/48 F-4EJ改 ファントムII

組み立てながら、「この部分がエアインテークか」「武装はここに取り付けるのか」と理解が深まる。完成したモデルは、部屋に飾れば最高のインテリアにもなる。

Amazonで「航空自衛隊 プラモデル」と検索すれば、豊富な選択肢が見つかるはずだ。

12-3. 専門書で知識を深めよう

戦闘機の技術的側面をより深く知りたいなら、専門書がおすすめだ。

おすすめ書籍:

  • 「航空自衛隊戦闘機総覧」(イカロス出版)
  • 「F-15イーグル 完全ガイド」(イカロス出版)
  • 「航空ファン」(文林堂):月刊誌で最新情報をキャッチアップ
  • 「世界の傑作機」シリーズ(文林堂):各機種の詳細解説

これらの書籍は、豊富な写真と詳細な技術解説で、戦闘機への理解を大きく深めてくれる。Amazonのレビューも参考に、興味のある一冊を選んでみてほしい。

12-4. 動画で臨場感を味わう

YouTubeには、航空自衛隊の公式チャンネルをはじめ、多くの戦闘機動画がアップロードされている。

コックピット視点の動画、地上からの撮影、航空祭のダイジェストなど、様々な角度から戦闘機の魅力を楽しめる。特にF-35のヘルメットマウントディスプレイの映像などは、最新技術の凄さを実感できる。

通勤中、休憩時間に、スマホで気軽に戦闘機の世界を楽しんでみてはどうだろう。

12-5. 基地周辺でスポッティング

上級者向けになるが、基地周辺での「スポッティング(撮影・観察)」も人気だ。

基地外周の公道や公園から、離着陸する戦闘機を観察・撮影する。望遠レンズを使えば、迫力ある写真も撮れる。

ただし、注意点もある:

  • 基地の敷地内には絶対に入らない
  • 撮影禁止エリアを守る
  • 地域住民の迷惑にならないよう配慮
  • 不審な行動は避ける(警察に職務質問されることも)

マナーを守って、正しく楽しもう。


まとめ|日本の空を守る翼への感謝と誇り

敗戦から80年。

かつて零戦や隼が散った空を、今はF-15、F-2、F-35が守っている。

大日本帝国の航空戦力は、あの日完全に途絶えた。多くの優秀なパイロットが散り、技術者たちは鍋や釜を作る日々を送った。その悔しさ、無念さは、どれほどのものだったろう。

しかし、日本は諦めなかった。

戦後の混乱期を乗り越え、航空自衛隊を再建し、F-1という国産戦闘機を作り上げた。アメリカの圧力に屈しながらも、F-2で国産戦闘機開発の灯を守り続けた。そして今、F-3という次世代戦闘機の開発が、日英伊の対等な協力関係のもとで進んでいる。

現代の航空自衛隊が保有する約280機の戦闘機。その一機一機に、戦後日本の航空技術復興への執念と、国を守る使命感が込められている。

主要3機種のおさらい:

F-15J/DJ イーグル

  • 日本の主力制空戦闘機
  • 撃墜スコア104対0の伝説的戦闘機
  • 小松基地を中心に全国に配備
  • 近代化改修で今後も長期運用

F-2A/B バイパーゼロ

  • 日本が誇る国産(日米共同開発)支援戦闘機
  • 世界初の一体成型複合材主翼
  • 対艦攻撃のスペシャリスト
  • 日本の技術力の結晶

F-35A/B ライトニングII

  • 最新鋭第5世代ステルス戦闘機
  • 三沢基地を中心に配備拡大中
  • センサー融合技術で戦闘の概念を変革
  • 今後147機を導入予定

これらの戦闘機を操るパイロットたち、整備する整備員たち、地上から支える管制官たち──すべての人々の献身が、日本の空を守っている。

スクランブル発進は年間1000回を超える。中国、ロシアからの脅威は増大し続けている。しかし、航空自衛隊の戦闘機部隊は、24時間365日、日本の空を見張り続けている。

私たちが安心して日常生活を送れるのは、この見えない盾のおかげだ。

2035年には、F-3が日本の空に舞う。零戦の魂を受け継ぎ、最新技術で武装した日本の翼が、再び世界の空に挑む。

その日を、私は心から楽しみにしている。

そして願う──二度と、あの悲劇を繰り返さないために。日本の空が、いつまでも守られ続けることを。

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