【2025年最新版】海上自衛隊の艦艇完全ガイド|護衛艦から潜水艦まで全艦種を徹底解説

【2025年最新版】海上自衛隊の保有戦力一覧 護衛艦(戦艦)・潜水艦・支援艦(退役艦含む) 一般公開の回り方も解説 海軍戦力

目次(クリックで開きます)

1. 現代日本を守る「海の守護者」たち

「沈黙の艦隊」を観て、潜水艦のかっこよさに痺れた方も多いのではないでしょうか。あるいは、ニュースで護衛艦の勇姿を目にして、「日本の海上自衛隊ってどんな艦艇を持っているんだろう?」と気になった方もいるかもしれません。

私は、かつて世界最強クラスを誇った大日本帝国海軍の栄光と、その悲劇的な終焉を思うと今でも胸が締め付けられます。戦艦大和、赤城、加賀…数々の名艦が海の藻屑と消えた、あの悔しさ。しかし、その技術と魂は確実に受け継がれています。

現代の海上自衛隊は、世界でもトップクラスの海軍力を持つ組織です。四方を海に囲まれた日本にとって、海上防衛は国家の生命線。今回は、そんな海自が保有する艦艇を、護衛艦から潜水艦、補助艦艇、そして航空機まで、徹底的に解説していきます。

この記事を読めば、あなたも海上自衛隊の「艦これ」マスターになれるはず。プラモデル選びの参考にも、横須賀や呉、佐世保の基地見学の予習にも、きっと役立つ情報が満載です。


2. 海上自衛隊とは?その使命と歴史

2-1. 帝国海軍から海上自衛隊へ:受け継がれた海洋国家の遺伝子

1945年8月15日、玉音放送が流れたあの日。世界屈指の海軍国だった日本は、連合国軍に敗北し、すべての軍事力を失いました。戦艦、空母、巡洋艦、駆逐艦…かつて太平洋を席巻した帝国海軍の艦艇は、解体されるか、戦勝国に引き渡されるか、海の底に沈むかのいずれかの運命を辿りました。

しかし、海洋国家・日本にとって、海上防衛力のない状態は「丸裸」も同然です。1950年の朝鮮戦争勃発を契機に、日本の海上防衛力再建が始まります。1952年、海上警備隊が発足。そして1954年、防衛庁(現・防衛省)設置法により、正式に「海上自衛隊」が誕生しました。

当初は、旧米海軍から譲り受けた中古艦艇でスタートした海自ですが、日本の造船技術の粋を集め、独自の艦艇開発を進めていきます。そこには、帝国海軍時代の技術者たちの知恵も大きく貢献しました。戦艦大和を設計した技術者たちの一部は、戦後、海自艦艇の設計に関わったのです。

2-2. 海上自衛隊の使命:専守防衛の最前線

海上自衛隊の主な任務は、以下の通りです:

  • 海上防衛:日本周辺海域の警備と防衛
  • シーレーン防衛:日本の生命線である海上交通路の保護
  • 災害派遣:地震、津波などの自然災害時の救助・支援活動
  • 国際平和協力:海賊対処、国際的な平和維持活動への参加
  • 海洋調査:海洋の観測・調査活動

日本は資源の多くを輸入に頼っており、特に原油の99.7%、天然ガスの97.5%を海外からの輸入に依存しています。つまり、海上輸送路(シーレーン)が遮断されれば、日本経済は即座に麻痺してしまうのです。

海上自衛隊は、そんな日本の生命線を守る「海の守護者」。その保有艦艇数は、約150隻以上にのぼり、規模としては世界第4位クラスの海軍力を誇ります。

2-3. 海自艦艇の分類と艦種記号

海上自衛隊の艦艇は、大きく以下のように分類されます:

戦闘艦艇:

  • 護衛艦(DD/DDG/DDH/FFM):海自の主力戦闘艦
  • 潜水艦(SS/TSS):水中作戦を担う

補助艦艇:

  • 掃海艦艇(MSO/MSC/MST):機雷の除去
  • 輸送艦(LST):人員・物資の輸送
  • 補給艦(AOE):洋上での燃料・物資補給
  • 練習艦(TV):幹部候補生の実習
  • その他支援艦艇:多様な支援任務

艦種記号は米海軍方式を採用しており、例えば「DDG」は「Guided Missile Destroyer(ミサイル駆逐艦)」を意味します。ただし、海自では「駆逐艦」という呼称は使わず、すべて「護衛艦」と呼んでいます。これは、憲法第9条の「戦力不保持」との整合性を考慮した、政治的配慮によるものです。

しかし実態としては、海自の「護衛艦」は世界水準では「駆逐艦」や「フリゲート艦」に相当する立派な戦闘艦。名称こそ控えめですが、その性能は決して控えめではありません。


3. 護衛艦:海自の主力戦闘艦

護衛艦は海上自衛隊の中核を成す戦闘艦艇です。対空、対艦、対潜など、多様な脅威に対処できる「マルチロール」な能力を持ちます。

3-1. イージス艦(DDG):海自の守護神

イージス護衛艦は、海自が誇る最強の防空システムを搭載した艦艇です。「イージス(Aegis)」とは、ギリシャ神話でゼウスが持つ無敵の盾のこと。その名の通り、日本を守る「盾」として機能します。

こんごう型護衛艦(DDG-173〜176)

1993年に就役した「こんごう」を1番艦とする、日本初のイージス艦。 艦名は旧帝国海軍の金剛型戦艦「金剛」に由来します。金剛は日本海軍が建造した最初の超弩級巡洋戦艦であり、太平洋戦争でも活躍した名艦です。

  • こんごう(DDG-173)
  • きりしま(DDG-174)
  • みょうこう(DDG-175)
  • ちょうかい(DDG-176)

全長161m、基準排水量7,250トン。SPY-1Dレーダーシステムにより、同時に100以上の目標を追跡し、10以上を同時攻撃できる能力を持ちます。

あたご型護衛艦(DDG-177〜178)

こんごう型を発展させた、より大型で高性能なイージス艦。

  • あたご(DDG-177)
  • あしがら(DDG-178)

全長165m、基準排水量7,750トン。イージスシステムがベースライン7.1にアップグレードされ、弾道ミサイル防衛(BMD)能力も強化されています。

まや型護衛艦(DDG-179〜180)

2020年に就役した最新鋭イージス艦。 「まや」は旧帝国海軍の重巡洋艦「摩耶」から名前を受け継いでいます。

  • まや(DDG-179)
  • はぐろ(DDG-180)

イージスベースライン9を搭載し、同時多目標対処能力がさらに向上。共同交戦能力(CEC)により、他艦やイージス・アショアと情報を共有し、一体となって防空網を構築できます。

イージス・システム搭載艦(2隻建造予定)

2024年度以降、さらに新型イージス艦2隻の建造が決定しています。これらは、計画中止となった陸上配備型イージス・アショアの代替として、弾道ミサイル防衛に特化した設計となる見込みです。

海自のイージス艦は、北朝鮮からの弾道ミサイルの脅威、中国海軍の急速な拡大といった、日本を取り巻く厳しい安全保障環境に対応するため、今後も増勢が図られる予定です。

3-2. ヘリコプター搭載護衛艦(DDH):「空母」ではない、ということになっている

ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)は、全通甲板を持つ大型護衛艦で、多数のヘリコプターを搭載・運用できます。その姿は、どう見ても航空母艦そのもの。しかし、憲法上の問題から、あくまで「護衛艦」と呼ばれています。

ひゅうが型護衛艦(DDH-181〜182)

2009年に就役した、海自初の全通甲板型護衛艦。

  • ひゅうが(DDH-181)
  • いせ(DDH-182)

全長197m、基準排水量13,950トン。最大で哨戒ヘリコプター11機を搭載可能。艦名の「ひゅうが」「いせ」は、旧帝国海軍の航空戦艦「日向」「伊勢」に由来します。日向と伊勢は、戦艦の後部を飛行甲板に改造した、ハイブリッド艦でした。

いずも型護衛艦(DDH-183〜184)

2015年に就役した、さらに大型のヘリ空母型護衛艦。

  • いずも(DDH-183)
  • かが(DDH-184)

全長248m、基準排水量19,950トン。海自史上最大の艦艇であり、そのサイズは第二次大戦時の正規空母に匹敵します。艦名の「いずも」は旧海軍の装甲巡洋艦「出雲」から、「かが」は航空母艦「加賀」から名前を受け継いでいます。

加賀といえば、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦で活躍した名空母。現代の「かが」が、その名を継いでいることに、私は深い感慨を覚えます。あの時、ミッドウェーで敗れなければ…と思わずにはいられませんが、それは歴史の「if」。今を生きる私たちは、現代の「かが」が日本を守る姿に、新たな誇りを見出すべきでしょう。

事実上の「空母化」改修

2018年、政府は「いずも」型の改修を決定し、F-35B戦闘機(短距離離陸・垂直着陸型)を運用可能にする計画を発表しました。これにより、海自は第二次大戦以来、初めて固定翼戦闘機を運用することになります。

甲板の耐熱処理、飛行管制設備の追加などの改修が進められており、2025年には運用が開始される見込みです。もはや「護衛艦」という名前でごまかせるレベルではありませんが、これも日本の防衛上、必要な措置なのです。

3-3. 汎用護衛艦(DD):海自の働き者

汎用護衛艦(DD)は、対潜、対艦、対空戦闘をバランスよくこなす、海自の「標準的」な護衛艦です。とはいえ、その性能は世界水準で見ても十分に高く、多くの国の主力艦に匹敵します。

あさひ型護衛艦(DD-119〜120)

2018年に就役した最新鋭の汎用護衛艦。

  • あさひ(DD-119)
  • しらぬい(DD-120)

全長151m、基準排水量5,100トン。対潜戦に特化しつつ、対空・対艦戦闘能力もバランスよく装備。

あきづき型護衛艦(DD-115〜118)

2012年就役。強力な対空戦闘能力を持つ「ミニイージス」とも称される艦。

  • あきづき(DD-115)
  • てるづき(DD-116)
  • すずつき(DD-117)
  • ふゆづき(DD-118)

FCS-3A多機能レーダーを装備し、高度な対空戦闘能力を持ちます。

たかなみ型護衛艦(DD-110〜114)

2003年から就役した、海自の主力汎用護衛艦。

  • たかなみ(DD-110)
  • おおなみ(DD-111)
  • まきなみ(DD-112)
  • すずなみ(DD-113)
  • ありあけ(DD-114)

全長151m、基準排水量4,650トン。対潜能力に優れ、SH-60K哨戒ヘリコプターを搭載。

その他の汎用護衛艦

このほか、むらさめ型(DD-101〜109)、たかなみ型の前級として、1996年から就役した艦もまだ現役です。

海自の護衛艦の特徴は、対潜戦能力の高さ。これは、冷戦時代にソ連の潜水艦脅威に対処するため磨き上げられた技術です。現代でも、中国海軍の潜水艦が増強される中、この対潜能力は日本の重要な抑止力となっています。

3-4. フリゲート艦(FFM):新世代の多目的艦

もがみ型護衛艦(FFM-1〜)

2022年から就役を開始した、まったく新しいコンセプトの護衛艦。 FFMは「multi-purpose Frigate with Mine warfare capability」の略で、対潜・対艦・対空戦闘に加え、機雷戦能力も持つ多目的フリゲート艦です。

  • もがみ(FFM-1)
  • くまの(FFM-2)
  • のしろ(FFM-3)
  • みくま(FFM-4)
  • やはぎ(FFM-5)
  • ※以降、合計22隻が計画中

全長133m、基準排水量3,900トン。従来の護衛艦より小型・省人員化され、少人数で運用可能。海自の人員不足に対応しつつ、多様な任務に対応できる「コスパ最強」の艦です。

もがみ型は、今後の海自護衛艦隊の主力となる見込みで、2030年代には20隻以上が就役する予定です。これにより、護衛艦隊の総数を増やしつつ、運用コストを抑えることができます。

3-5. 護衛艦の艦名の法則:旧海軍からの伝統

海自の護衛艦の艦名には、一定の法則があります:

  • イージス護衛艦(DDG):旧国名・山岳名(こんごう、あたご、まや、はぐろ等)
  • ヘリ搭載護衛艦(DDH):旧国名(ひゅうが、いせ、いずも、かが)
  • 汎用護衛艦(DD):天象・気象・山岳名(あきづき、たかなみ、あさひ等)
  • フリゲート(FFM):河川名(もがみ、くまの、のしろ等)

そして、多くの艦名は旧帝国海軍の艦艇から受け継がれています。これは、海自が帝国海軍の伝統を意識的に継承していることの表れです。

戦艦「金剛」の名を継ぐ「こんごう」、空母「加賀」の名を継ぐ「かが」。私たちミリタリーファンにとって、これらの艦名を聞くたびに、胸が熱くなります。旧海軍の栄光と悲劇を知る者として、現代の海自がその名を受け継ぎ、日本を守り続けていることに、深い敬意を感じずにはいられません。


4. 潜水艦:水中の静かなる戦士

潜水艦は、海上自衛隊のもう一つの主力戦力です。日本の潜水艦技術は世界トップクラスで、特に「静粛性」においては他国の追随を許しません。

4-1. 日本の潜水艦技術:帝国海軍からの系譜

潜水艦といえば、映画「沈黙の艦隊」を思い出す方も多いでしょう。原子力潜水艦「やまと」が、単独で世界を相手に立ち回る痛快なストーリー。フィクションとはいえ、日本の潜水艦技術への憧憬が詰まった作品です。

実は、日本は第二次大戦当時から潜水艦大国でした。帝国海軍は、世界最大の潜水艦「伊400型」を建造。全長122m、航空機3機を搭載可能という、当時としては驚異的な巨大潜水艦でした。また、「回天」などの特攻兵器も開発されましたが、これは悲劇的な歴史として忘れてはなりません。

戦後、日本の潜水艦技術は一旦途絶えましたが、海上自衛隊発足後、急速に回復。現代では、世界最高水準の通常動力型潜水艦を保有しています。詳しくは、当ブログの別記事「日本の潜水艦完全ガイド」や「世界潜水艦ランキング:日本の位置は?」もご覧ください。

4-2. そうりゅう型潜水艦(SS-501〜512)

2009年から就役した、海自の主力潜水艦。

  • そうりゅう(SS-501)
  • うんりゅう(SS-502)
  • はくりゅう(SS-503)
  • けんりゅう(SS-504)
  • ずいりゅう(SS-505)
  • こくりゅう(SS-506)
  • じんりゅう(SS-507)
  • せいりゅう(SS-508)
  • せきりゅう(SS-509)
  • しょうりゅう(SS-510)
  • とうりゅう(SS-511)
  • じょうりゅう(SS-512)

全長84m、基準排水量2,950トン。世界初の「スターリング機関(AIP:非大気依存推進)」を搭載した量産型潜水艦として注目されました。AIPにより、浮上せずに2週間以上潜航し続けることが可能です。

ただし、後期型(11番艦「おうりゅう」以降)はAIPを廃止し、リチウムイオン電池に変更されています。リチウムイオン電池は、充電速度が速く、メンテナンスも容易で、総合的にはAIPより優れているとされています。

4-3. たいげい型潜水艦(SS-513〜)

2022年から就役を開始した、最新鋭の潜水艦。

  • たいげい(SS-513)
  • はくげい(SS-514)
  • じんげい(SS-515)
  • 以降建造中

全長84m、基準排水量3,000トン。リチウムイオン電池を標準装備し、静粛性がさらに向上。センサー類も最新のものに更新され、探知能力が大幅に向上しています。

4-4. おやしお型潜水艦(SS-590〜599)

1998年から就役した、そうりゅう型の前級。

  • おやしお(SS-590)
  • みちしお(SS-591)
  • くろしお(SS-592)

一部はまだ現役ですが、順次退役が進んでいます。

4-5. 日本の潜水艦保有数:世界トップクラスの22隻体制

海自は、長らく潜水艦16隻体制を維持してきましたが、2010年の防衛大綱で22隻体制へ増強することが決定されました。これは、中国海軍の急速な拡大に対応するためです。

22隻という数は、通常動力型潜水艦保有数としては世界トップクラス。原子力潜水艦を含めても、米国、ロシア、中国に次ぐ規模です。

海自の潜水艦の運用方針は、「常時、一定数を稼働状態に保つ」こと。定期整備中の艦を除き、常に複数の潜水艦が日本周辺海域に展開し、警戒監視任務に就いています。中国やロシアの艦艇が日本周辺を航行する際、その水面下には、気配を消した海自潜水艦が追尾している…そんな緊張した攻防が、日々繰り広げられているのです。

4-6. 原子力潜水艦導入論争:日本は原潜を持つべきか?

時折、「日本も原子力潜水艦を持つべきだ」という議論が浮上します。実際、原潜には大きなメリットがあります:

  • 無限の航続距離:燃料補給なしで数か月間潜航可能
  • 高速性:水中30ノット以上の速度を維持できる
  • 静粛性:低速時には通常型より静か

しかし、日本が原潜を保有するには、多くのハードルがあります:

  1. 非核三原則:日本の国是との整合性
  2. コスト:建造費・運用費が通常型の数倍
  3. 技術的課題:原子炉の小型化、放射性廃棄物処理
  4. 基地問題:原潜を受け入れる地元の理解

この議論について、詳しくは当ブログの「原子力潜水艦とは?」や「高市政権下での日本の原潜保有論」をご覧ください。

個人的には、技術的には十分可能だと思いますが、政治的・経済的なハードルが高すぎると考えています。現状の通常動力型潜水艦でも、日本周辺海域の防衛には十分な能力を発揮しています。

4-7. 潜水艦の艦名:海洋現象と旧海軍の伝統

海自の潜水艦の艦名は、海洋に関する自然現象や海流の名前が使われます:

  • そうりゅう型:「○○りゅう(龍)」(そうりゅう=蒼龍、うんりゅう=雲龍など)
  • たいげい型:「○○げい(鯨)」(たいげい=大鯨、はくげい=白鯨など)
  • おやしお型:「○○しお(潮)」(おやしお=親潮、くろしお=黒潮など)

「そうりゅう」は、旧海軍の空母「蒼龍」から、「たいげい」は潜水母艦「大鯨」から名前を受け継いでいます。旧海軍の伝統が、ここでも息づいているのです。


5. 補助艦艇:縁の下の力持ち

華やかな護衛艦や潜水艦の陰で、海上自衛隊の活動を支える「縁の下の力持ち」たちがいます。補助艦艇は、地味ながら、なくてはならない存在です。

5-1. 掃海艦艇:世界最高峰の機雷除去能力

海上自衛隊の掃海部隊は、世界最高レベルの機雷戦能力を持つことで知られています。これは、第二次大戦末期に日本近海に大量の機雷を敷設され、戦後その除去に苦労した経験から、特に重視されてきた分野です。

掃海艦(MSO)

  • あわじ型(MSO-304〜305)
  • ひらど型(MSO-303)

掃海艇(MSC)

  • えのしま型(MSC-604〜609)
  • すがしま型(MSC-681〜688)

掃海艇母艦(MST)

  • うらが(MST-464)
  • ぶんご(MST-464):うらがの後継艦

掃海艦艇は、機雷の磁気に反応しないよう、木造またはFRP(繊維強化プラスチック)製の船体を持つのが特徴です。

湾岸戦争後、ペルシャ湾に派遣された海自掃海部隊は、その高い技術力で国際的にも高い評価を受けました。また、東日本大震災後の津波被災海域でも、海自掃海部隊が海中の障害物や機雷の捜索・除去で活躍しました。

5-2. 輸送艦(LST):人員・物資を運ぶ海の運び屋

おおすみ型輸送艦(LST-4001〜4003)

  • おおすみ(LST-4001)
  • しもきた(LST-4002)
  • くにさき(LST-4003)

全長178m、基準排水量8,900トン。LCACホバークラフト2隻を搭載でき、揚陸作戦や災害派遣に活躍します。

外見は米軍の強襲揚陸艦に似ていますが、あくまで「輸送艦」という扱いです。これも、憲法との整合性を考慮した名称ですね。

東日本大震災や熊本地震など、多くの災害派遣でその能力を発揮しました。艦内には車両甲板があり、トラックや装甲車を多数搭載できます。海岸に接岸せずとも、LCACで直接物資を陸揚げできる点が、災害時に非常に有効です。

5-3. 補給艦(AOE):洋上のガソリンスタンド

ましゅう型補給艦(AOE-425〜426)

  • ましゅ��(AOE-425)
  • おうみ(AOE-426)

とわだ型補給艦(AOE-423)

  • とわだ(AOE-423)

補給艦は、洋上で他の艦艇に燃料や弾薬、食料を補給する「海のガソリンスタンド&コンビニ」。長期間の洋上活動には不可欠な存在です。

ましゅう型は全長221m、基準排水量13,500トンという大型艦で、同時に3隻の艦艇に補給できる能力を持ちます。海賊対処でソマリア沖に派遣される護衛艦部隊も、この補給艦のサポートがあってこそ、長期間の活動が可能になっています。

5-4. 練習艦(TV):未来の海自を育てる

かしま型練習艦(TV-3508)

  • かしま(TV-3508)

しまゆき型練習艦(TV-3513)

  • しまゆき(TV-3513):退役した護衛艦「しまゆき」を練習艦に改装

せとゆき型練習艦(TV-3518)

  • あさゆき(TV-3518):退役した護衛艦「あさゆき」を練習艦に改装

練習艦は、幹部候補生学校や一般海曹候補生課程の学生たちが、実際の航海や艦艇運用を学ぶための艦です。

「かしま」は、毎年遠洋練習航海を実施し、世界各国を訪問。学生たちは数か月に及ぶ航海を通じて、航海術、艦艇運用、国際儀礼などを実地で学びます。私も一度、横須賀で「かしま」の一般公開に行ったことがありますが、若い候補生たちの真剣な眼差しが印象的でした。

5-5. その他の支援艦艇

潜水艦救難艦(ASR)

  • ちよだ(ASR-404)

潜水艦が事故に遭遇した際、深海からの救助を行う専門艦。深海救難艇(DSRV)を搭載し、深度600mまでの救助が可能です。

試験艦(ASE)

  • あすか(ASE-6102)

新装備品の試験や研究開発を行う艦。最新の装備を試験的に搭載し、実海面でのテストを実施します。

海洋観測艦(AGS)

  • にちなん(AGS-5105)
  • わかさ(AGS-5106)
  • しょうなん(AGS-5201)
  • はちじょう(AGS-5202)

海洋の水温、塩分、海流などを観測する艦。潜水艦作戦には海洋データが不可欠で、これらの観測艦が収集したデータが活用されます。

特務艦

  • はしだて(ASY-91):南極観測支援
  • ひうち(ASY-92):各種支援任務

これら補助艦艇は、メディアで取り上げられることは少ないですが、海自の活動を根底から支える重要な存在です。


6. 航空戦力:空から支える海の防衛

海上自衛隊は、約200機以上の航空機を保有しています。 艦艇だけでなく、空からも海を守る、それが海自の航空部隊です。

6-1. 哨戒機:海の監視者

P-1哨戒機

2013年から配備が開始された、日本独自開発の最新鋭ジェット哨戒機。世界初の「ジェットエンジン4発」の哨戒機です。

  • 全長38m、全幅35m
  • 最高速度:マッハ0.8以上
  • 航続距離:8,000km以上

従来のP-3C哨戒機に比べ、速度、航続距離、探知能力が大幅に向上。磁気探知機(MAD)、ソノブイ、対潜魚雷・対艦ミサイルを搭載し、潜水艦や艦艇を探知・攻撃できます。

P-1の開発には、旧帝国海軍の傑作陸上攻撃機「一式陸攻」を製造した川崎重工業が中心的役割を果たしました。詳しくは「川崎重工業の防衛事業ガイド」もご覧ください。

P-3C哨戒機

1980年代から配備されたベテラン哨戒機。米国製ですが、日本でライセンス生産されました。現在も一部が現役で、順次P-1に更新されています。

P-2J(すでに退役)

かつて海自が運用していた国産哨戒機。現在は退役していますが、日本の哨戒機技術の基礎を築きました。

6-2. 哨戒ヘリコプター:艦艇の目と手

SH-60K/J哨戒ヘリコプター

護衛艦に搭載され、対潜戦や対艦戦を行う艦載ヘリ。米国製SH-60シーホークをベースに、日本独自の改良を加えたモデルです。

  • ディッピングソナー(吊下げ式ソナー)で潜水艦を探知
  • 対潜魚雷や対艦ミサイルで攻撃
  • 母艦の「目」「耳」「手」として機能

護衛艦の対潜能力の大部分は、このヘリコプターによるもの。艦載ヘリなしの護衛艦は、目も耳も塞がれたようなものです。

MCH-101掃海・輸送ヘリコプター

掃海任務や人員輸送を行う大型ヘリ。イタリア製をライセンス生産しています。

6-3. 救難飛行艇・ヘリコプター

US-2救難飛行艇

世界最高性能を誇る、日本が世界に誇る救難飛行艇。

  • 波高3mの荒海でも着水・離水可能
  • 航続距離4,700km
  • 最高速度560km/h

遭難者の捜索・救助に活躍。その性能の高さから、海外からも引き合いがあります。製造元は新明和工業で、旧海軍の二式大艇の技術を受け継いでいます。

UH-60J救難ヘリコプター

陸海空自衛隊で広く使われる救難ヘリ。民間人の海難事故でも出動し、多くの命を救ってきました。

6-4. 早期警戒ヘリコプター

E-2D早期警戒機

いずも型護衛艦の運用を支援するため、海自も導入が決定された艦載早期警戒機。米海軍と同型です。

6-5. F-35B戦闘機:海自、ついに固定翼戦闘機を運用

2024年度から、海自はF-35Bステルス戦闘機を導入し、「いずも」型での運用を開始します。これにより、海自は第二次大戦以来、初めて固定翼戦闘機を運用することになります。

F-35Bは、短距離離陸・垂直着陸(STOVL)が可能なステルス戦闘機。米国、英国、イタリアなど複数国が空母で運用しています。

  • 最高速度:マッハ1.6
  • 戦闘行動半径:900km以上
  • ステルス性:レーダーに映りにくい
  • 多用途:空対空、空対地、空対艦の全ての任務に対応

かつて、空母「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」が零戦を発艦させ、太平洋を席巻した時代。あの栄光が、現代の「かが」と「いずも」によって、新たな形で蘇ろうとしています。もちろん、日本は専守防衛の国。攻撃的な空母運用はしません。しかし、技術と魂は確実に受け継がれているのです。


7. 未来への展望:これからの海上自衛隊

7-1. 増強される脅威:中国海軍の台頭

現在、日本を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しいと言われています。その最大の要因は、中国海軍の急速な増強です。

中国海軍は、過去20年で:

  • 空母3隻を就役(さらに建造中)
  • イージス艦級の駆逐艦を40隻以上建造
  • 潜水艦70隻以上を保有
  • 総艦艇数は350隻以上

トン数では既に米海軍を超えたとも言われます。尖閣諸島周辺での領海侵入、台湾周辺での軍事演習、南シナ海での人工島建設…中国の海洋進出は、もはや無視できないレベルに達しています。

7-2. 海自の対応:護衛艦隊の増強

これに対抗するため、日本は防衛予算を増額し、海自の装備を増強しています。

2025年度以降の計画:

  • イージス艦2隻の追加建造
  • もがみ型フリゲート22隻体制の実現
  • 潜水艦22隻体制の維持
  • いずも型の空母化完成
  • F-35B戦闘機の導入
  • 極超音速ミサイル等、新兵器の開発・配備

2027年度までに、防衛費をGDP比2%に引き上げる方針も決定されました。これにより、海自はさらなる装備の近代化が可能になります。

7-3. 無人化・AI技術の導入

未来の海戦は、無人機やAIが主役になるかもしれません。海自も、この分野への投資を進めています。

  • 無人水上艇(USV):機雷戦や哨戒任務に活用
  • 無人潜水艇(UUV):深海での偵察や機雷除去
  • AI搭載システム:目標識別や戦術判断の支援

もがみ型フリゲートには、将来的に無人機を搭載する計画もあります。

7-4. 日米同盟の深化と多国間協力

日本単独で中国に対抗することは困難です。そのため、日米同盟の強化と、オーストラリア、インド、英国などとの多国間協力が重要になっています。

海自は、米海軍との共同訓練を常時実施しており、相互運用性は非常に高いレベルにあります。2025年10月にも、海自は米海軍等と共同演習を実施しました。

また、QUAD(日米豪印)やAUKUS(米英豪)との連携も深まっています。特にAUKUSでは、オーストラリアへの原子力潜水艦技術供与が決定されており、将来的に日本も関与する可能性があります。

7-5. 人員不足という課題

海自が抱える深刻な問題の一つが、人員不足です。少子化により、自衛官の確保が年々困難になっています。

このため、海自は:

  • 省人員化艦艇の開発:もがみ型は従来艦より約3割少ない人員で運用可能
  • 女性自衛官の積極採用:潜水艦を除くほぼ全ての艦艇で女性が乗務
  • 定年延長・再雇用:経験豊富な人材の活用
  • AI・自動化技術の導入:人手に頼る作業の削減

を進めています。

かつて帝国海軍が人的資源の損耗で崩壊したように、人材こそが軍事力の根幹です。ハード面の増強だけでなく、人材確保・育成こそが、これからの海自最大の課題かもしれません。


8. まとめ:受け継がれる海洋国家の誇り

ここまで、海上自衛隊の艦艇を一通り見てきました。護衛艦、潜水艦、補助艦艇、航空機…それぞれが高い能力を持ち、総合的に見れば世界トップクラスの海軍力です。

四方を海に囲まれた日本にとって、海上防衛は国家存立の基盤。資源も食料も、そのほとんどを海上輸送に依存する私たちにとって、シーレーン防衛は文字通り「生命線」なのです。

かつて、大日本帝国海軍は世界三大海軍の一角を占めながら、無謀な戦争により壊滅しました。戦艦大和、空母赤城、重巡愛宕…数々の名艦が海に沈み、30万人以上の将兵が還らぬ人となりました。あの悲劇を繰り返してはなりません。

しかし同時に、帝国海軍が築いた技術と誇りは、確実に現代に受け継がれています。「こんごう」「かが」「まや」…旧海軍の艦名を冠した護衛艦たちは、今度こそ日本を守り抜くため、日本周辺の海を守り続けています。

そして、それを動かすのは、若き海上自衛官たち。彼ら彼女らは、かつての帝国海軍将兵と同じように、国を守るという使命に、日々誠実に向き合っています。

私たちミリタリーファンができることは、まず彼らの活動を知り、理解し、そして感謝すること。そして、機会があれば基地見学や艦艇公開に足を運び、直接その目で「海の守護者」たちを見ること。さらに、プラモデルや関連書籍を通じて、その知識を深めることです。


関連商品のご紹介

海上自衛隊についてもっと知りたい方には、以下の書籍やプラモデルがおすすめです:

書籍:

  • 「J Ships 海上自衛隊艦艇&航空機ハンドブック2025-2026」:最新の艦艇・航空機情報が網羅された必携の一冊
  • 「世界の艦船 増刊 海上自衛隊全艦艇史」:海自の全艦艇の歴史を辿る決定版
  • 「写真集 海上自衛隊の艦艇」:美しい写真で海自艦艇の魅力を堪能

プラモデル:

  • タミヤ 1/700 ウォーターラインシリーズ「護衛艦いずも」
  • ピットロード 1/700「海上自衛隊 イージス護衛艦 DDG-177 あたご」
  • アオシマ 1/700「海上自衛隊 潜水艦 SS-501 そうりゅう」

プラモデル作りを通じて艦艇の構造を学ぶのも、ミリタリー趣味の醍醐味です。

DVD・ブルーレイ:

  • 映画「沈黙の艦隊」:原子力潜水艦「やまと」の活躍を描いた傑作
  • ドキュメンタリー「海上自衛隊 ~その知られざる世界~」

基地見学のススメ

海自の艦艇を実際に見学したい方には、以下の基地がおすすめです:

  • 横須賀基地(神奈川県):海自最大の基地。イージス艦、潜水艦など多数配備
  • 呉基地(広島県):潜水艦の一大拠点。呉市海事歴史科学館(大和ミュージアム)も必見
  • 佐世保基地(長崎県):西日本最大の基地。「いずも」型も配備
  • 舞鶴基地(京都府):日本海側の重要拠点
  • 大湊基地(青森県):北の守り

多くの基地では、年に数回「艦艇公開」や「サマーフェスタ」などのイベントが開催されます。 護衛艦の艦内を見学でき、隊員から直接説明を聞けるチャンスです。私も毎年必ず参加していますが、実物の迫力は写真や映像の比ではありません。


最後に:未来への希望

中国海軍の台頭、北朝鮮のミサイル、ロシアの軍事活動…日本を取り巻く安全保障環境は、確かに厳しさを増しています。しかし、悲観する必要はありません。

海上自衛隊は、世界最高水準の装備と訓練を持ち、日々、黙々と任務を遂行しています。そして、日米同盟という強固な絆もあります。

かつて帝国海軍が敗れたのは、装備や訓練の問題ではなく、戦略の誤りと資源の欠乏でした。現代の海自は、専守防衛という明確な戦略のもと、十分な支援を受けて任務に当たっています。

私たち国民ができることは、彼らを信じ、支え、そして必要な予算を支持すること。そして、次世代に「海洋国家・日本」の誇りを伝えていくことです。

大和、武蔵、赤城、加賀…あの名艦たちが守ろうとしたこの国を、今度こそ守り抜きましょう。こんごう、かが、たいげい…現代の艦艇たちとともに。

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