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戦車のプラモデルを作り終えて、さあ汚してみようと模型店の塗料の棚に行くと、たいてい途方に暮れる。タミヤのウェザリングマスターだけでもAからHまでセットがあり、スミ入れ塗料は9色、そこに汚し用の塗料、つや消しのスプレー、筆やスポンジまで並んでいる。どれが要って、どれが要らないのかがわからない。
戦車プラモデル初心者のおすすめでは「戦車は汚すほど上手に見える」と書き、汚しの3段階を紹介した。この記事では、そのとき何を買えばいいのかに絞って書く。作業のやり方より、そろえる物の選び方だ。結論を先に言うと、最初は4つで足りる。そして、その4つの「色」は、作る戦車の車体の色で決まる。
- 最初にそろえるのは、スミ入れ塗料1色、ふき取り用のエナメル溶剤と綿棒、つや消しクリアー、ウェザリングマスターAセットの4つ
- スミ入れの色は「車体の色より少し暗い同系色」が基本。黒は明るい車体のとき以外、強すぎることが多い
- ウェザリングマスターは、泥と砂ぼこりのAセットから。2つ目は履帯の金属感とサビのCセット
- 作業の順番は、スミ入れ→デカール→つや消し→パウダーの汚し。パウダーは、つや消しのあとにのせるとよく付く
- 2台目からは、泥を厚く盛るウェザリングスティックや、塗料なしでドライブラシができるウェザリングマスターEセットを足す
結論:最初の4点セット
まず、最初の1台の汚しに要る物を表にしておく。
この4つがあれば、汚しの3段階のうち、スミ入れと泥・ほこりの2段階ができる。3段階目のドライブラシは、手持ちの明るい色の塗料と平筆でもできるし、あとで紹介するウェザリングマスターEセットを足してもいい。

汚しの用品は5種類ある
店頭に並ぶ汚しの用品は、大きく分けると5種類になる。それぞれ得意なことが違う。
| 種類 | 代表的な商品 | 得意なこと | 扱いやすさ |
|---|---|---|---|
| スミ入れ塗料 | タミヤ スミ入れ塗料 | 溝や境目を暗くして、形を浮かび上がらせる | 塗るというより「置く」だけ。ふき取りでやり直せる |
| パウダー | タミヤ ウェザリングマスター | 泥、砂ぼこり、すす、サビ、金属の光り | 化粧品のようにこすりつけるだけ。いちばん簡単 |
| スティック | タミヤ ウェザリングスティック | 泥や雪を厚く盛る | パウダーより立体的に付けられる |
| 油彩系の汚し塗料 | GSIクレオス Mr.ウェザリングカラー | 雨だれ、オイルの染み、全体の色味の調整 | 筆で塗ってぼかす。少し慣れがいる |
| つや消しクリアー | Mr.スーパークリアー つや消し、タミヤ TS-80 フラットクリヤー | 全体のつやを消し、汚しをなじませる | 缶スプレーを吹くだけ。湿気の多い日は避ける |
最初の1台で使うのは、このうちスミ入れ塗料とパウダー、それにつや消しクリアーの3種類だ。スティックと油彩系の塗料は2台目以降でいい。とくに油彩系の塗料は表現の幅が広いぶん、ぼかし方に慣れがいる。
ウェザリングマスターはどのセットを買う?
いちばん迷うのが、タミヤのウェザリングマスターだ。化粧品のパレットのような小さなケースに3色のパウダーが入っていて、付属の筆やスポンジでこすりつけて使う。セットごとの色と、戦車での使いどころはこうなる。
| セット | 入っている色 | 戦車での使いどころ |
|---|---|---|
| A | サンド、ライトサンド、マッド | 足まわりの泥、車体の砂ぼこり。最初の1つはこれ |
| B | スノー、スス、サビ | 冬の戦車の雪、砲口や排気管のすす、さびた部分 |
| C | アカサビ、ガンメタル、シルバー | 履帯のさびと、地面にこすれて光る金属の部分 |
| D | 青焼け、赤焼け、オイル | 排気管の焼け色、エンジンまわりの油汚れ |
| E(ドライブラシカラー) | 黄、灰色、緑 | 角や出っ張りを明るくするドライブラシの代わり |
| F | チタン、ライトガンメタル、カッパー | 金属の質感。戦車より飛行機のエンジンまわり向き |
| G・H | フィギュア用 | 戦車兵の人形の顔や服 |
最初の1つは、迷わずAセットだ。戦車の汚しのほとんどは、足まわりの泥と車体の砂ぼこりで、Aセットの3色でまかなえる。タミヤの説明でも、サンドは土ぼこり、ライトサンドは明るい車体色に付いた土ぼこり、マッドは戦車の足まわりの泥に向くとされている。
2つ目に買うなら、Cセットをすすめたい。戦車の履帯は、地面と触れる部分が金属の地肌になって光り、ほかの部分はさびている。Cセットのアカサビで履帯全体をさび色にし、ガンメタルとシルバーで接地面をこすると、履帯が一気に本物らしくなる。履帯が戦車の顔だと思っている私は、AセットとCセットの2つを、戦車の汚しの基本セットと考えている。
Bセットは、冬の戦車を作るときと、砲口や排気管のすすを表現したいときに出番がある。DセットはBセットのすすより一歩進んだ、排気管の焼け色向けだ。どちらも、最初の1台では急がなくていい。
スミ入れ塗料は何色を選ぶ?
タミヤのスミ入れ塗料は、ブラック、グレイ、ダークグレイ、ライトグレイ、ブラウン、ダークブラウン、ディープブラウン、オレンジブラウン、ピンクブラウンの9色がある。流し込みにちょうどいい濃さに調整してあり、キャップに筆が付いているので、そのまま溝に置くだけで使える。
色選びの基本は、「車体の色より少し暗い同系色」だ。黒はいちばん効きそうに見えるが、緑やグレーの車体に黒を流すと、線がくっきりしすぎて、かえって模型っぽくなることが多い。黒が似合うのは、ダークイエローのような明るい車体のときくらいだ。
| 車体の色 | 合わせやすいスミ入れの色 |
|---|---|
| オリーブドラブ(米軍の戦車) | ブラウン、ダークブラウン |
| ジャーマングレー(大戦初期のドイツ戦車) | ダークブラウン、ブラック |
| ダークイエロー(大戦後半のドイツ戦車) | ブラウン、ブラック |
| ソ連の緑 | ダークブラウン |
| 陸上自衛隊の2色迷彩 | ダークブラウン、ダークグレイ |
ジャーマングレーのように暗い車体だと、スミ入れの効果はあまり目立たない。そういう車体では、スミ入れより、あとのドライブラシで角を明るくするほうが立体感が出る。
はみ出した分は、エナメル溶剤を少しだけ含ませた綿棒でふき取る。溶剤をたっぷり付けると、部品の継ぎ目に染み込んで割れることがあるので、綿棒は「湿らせる」くらいにとどめたい。
車体の色別:組み合わせの早見表
ここまでの話を、作る戦車の車体の色ごとに1つの表にまとめておく。冒頭で触れた戦車プラモデルの記事で紹介したキットとの対応も書いた。
| 車体の色 | キットの例 | スミ入れ | ウェザリングマスター | ひとこと |
|---|---|---|---|---|
| オリーブドラブ | M4A3E8 シャーマン | ブラウン | A(マッド・サンド)、C(履帯) | いちばん汚しが映える色 |
| ジャーマングレー | I号戦車B型 | ダークブラウン | A(ライトサンド)、B(スス) | 明るい砂ぼこりで車体の暗さを和らげる |
| ダークイエロー | タイガーIの迷彩、パンサー | ブラウン | A(マッド)、C(履帯) | 泥は暗めのマッドで |
| ソ連の緑 | T-34-85 | ダークブラウン | A(マッド)、B(スノー) | 泥と雪、どちらの季節にもできる |
| 陸自の2色迷彩 | 10式戦車、16式機動戦闘車 | ダークブラウン | A(サンド)を薄く | 手入れの行き届いた車両なので、汚しは控えめに |
陸上自衛隊の車両は、演習場の土ぼこりを薄くのせる程度にとどめると、らしく見える。逆に、大戦中の東部戦線のソ連戦車は、泥だらけにしてかまわない。実際、1941年の秋のロシアでは、雨で道が泥の海になり、ドイツ軍の戦車の進撃が大きく遅れた。その様子はモスクワの戦いの解説で書いている。汚しの濃さは、その戦車がどこを走っていたかで決まる。
つや消しはいつ、何で吹く?
順番は「スミ入れ→デカール→つや消し→パウダー」
汚しでいちばん間違えやすいのが、作業の順番だ。私がすすめるのは、次の順番だ。
| 順番 | 作業 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 車体の塗装 | 全体の色を決める |
| 2 | スミ入れ | つやがある面のほうが、はみ出した塗料をふき取りやすい |
| 3 | デカール | つやがある面のほうが、デカールが密着しやすい |
| 4 | つや消し | 全体のてかりと、デカールの縁のつやを消す |
| 5 | パウダーの汚し | つや消しのざらついた面のほうが、パウダーがよく付く |
パウダーの汚しを先にして、その上からつや消しを吹くと、せっかくのせた砂ぼこりの色がくすんだり、吹き付けの勢いで散ったりすることがある。パウダーは最後、と覚えておけばいい。
つや消しクリアーの選び方
つや消しクリアーの缶スプレーは、大きく分けてラッカー系と水性がある。
ラッカー系は、乾きが早く、塗膜が強い。GSIクレオスのMr.スーパークリアー つや消しや、タミヤのTS-80 フラットクリヤーがこれにあたる。タミヤはTS-80を、戦車のようなAFV模型に向くつや消しとして案内している。においが強いので、屋外か、よく換気した場所で使う。
水性は、においが少ないのが利点だ。部屋の中で作業することが多いなら、水性のつや消しも選択肢になる。
どちらの場合も、湿気の多い日に吹くと、表面が白く曇ることがある。雨の日や、梅雨どきの夜は避けたほうがいい。缶をよく振って、少し離れた位置から、薄く何回かに分けて吹くのがこつだ。
2台目から足したい用品
1台目で汚しの楽しさがわかったら、次の用品を足していくと表現の幅が広がる。
| 用品 | できること | こんな人に |
|---|---|---|
| ウェザリングマスターCセット | 履帯のさびと金属の光り | 履帯を本物らしくしたい人 |
| ウェザリングマスターEセット | 塗料なしで角を明るくする | ドライブラシを手軽にやりたい人 |
| ウェザリングスティック(マッド) | 泥を厚く盛る | 足まわりを泥だらけにしたい人 |
| ウェザリング用スポンジ筆 | パウダーを狙った場所にのせる | 付属の道具では大きすぎると感じた人 |
| Mr.ウェザリングカラー | 雨だれ、オイルの染み、全体の色味の調整 | 汚しをもう一段リアルにしたい人 |
Eセットは、とくにすすめたい。ドライブラシは、筆の塗料をほとんどふき取ってから角をこする技法で、慣れないうちは塗料が付きすぎて失敗しやすい。Eセットなら、パウダーを筆でこするだけで、角を明るくする効果が出せる。黄はダークイエローの車体、緑はオリーブドラブやソ連の緑の車体、灰色はジャーマングレーの車体に合わせやすい。
ウェザリングスティックは、口紅のような形をした汚し材で、マッド、スノー、サンド、ライトアースの色がある。パウダーより厚く、立体的に付けられるので、泥の塊がこびりついた足まわりや、雪をかぶった車体が作れる。
GSIクレオスのMr.ウェザリングカラーは、油彩系の汚し塗料だ。筆で塗ってから、専用のうすめ液を含ませた筆でぼかしていく。上から下に流れる雨だれや、オイルの染みのような、パウダーでは出しにくい表現ができる。
1台ぶんの汚しを1日で終える段取り
汚しは、塗装やデカールが終わったあとの仕上げの工程なので、1日あれば1台ぶんを終えられる。乾かす時間を挟みながら進める目安を書いておく。
| 時間の目安 | やること | 気をつけること |
|---|---|---|
| 朝 | スミ入れ塗料を溝に置き、表面が乾くまで少し待ってから、エナメル溶剤の綿棒でふき取る | 綿棒は湿らせる程度。溶剤を流しすぎない |
| 昼前 | デカールを貼る | 貼ったらしっかり乾かす |
| 昼すぎ | 屋外か換気した場所で、つや消しクリアーを薄く2〜3回に分けて吹く | 湿気の多い日は避ける |
| 夕方 | ウェザリングマスターAで、足まわりに泥、車体の下側に砂ぼこりをのせる | 足まわりは濃く、上に行くほど薄く |
| 夜 | Cセットがあれば履帯のさびと接地面の光り。最後に全体を写真に撮って見直す | 肉眼より写真のほうが、汚しすぎがわかりやすい |
最後に写真を撮るのは、私がいちばんすすめたい習慣だ。肉眼で見ているとちょうどよく見える汚しも、写真にすると濃すぎたり、まだらだったりすることがよくわかる。
失敗しないための3つの注意
汚しは失敗してもやり直しやすい作業だが、それでも気をつけたいことが3つある。
1つ目は、やりすぎないことだ。汚しは、気づくと全体が同じ茶色になりがちだ。足まわりは濃く、車体の上に行くほど薄く。この濃淡だけは守りたい。実物の写真を1枚横に置いて、泥がどこに、どれくらい付くのかを見ながら少しずつ足すと失敗しにくい。
2つ目は、溶剤を流しすぎないことだ。スミ入れのふき取りでエナメル溶剤を使いすぎると、部品の継ぎ目に染み込んで、力のかかった部分が割れることがある。とくに、組み上がった砲身の付け根や、履帯をはめた足まわりは注意したい。
3つ目は、汚しの前に必ず1枚写真を撮っておくことだ。汚しを始める前の、塗装とデカールまで終わった状態を撮っておけば、汚しすぎたと感じたときに、どこまで戻せばいいかがわかる。
道具全体のそろえ方はミリタリープラモデルの道具一式にまとめた。
汚しの練習におすすめの戦車
最初の汚しを試すなら、オリーブドラブ一色のシャーマンがいちばん向いていると思う。車体の色が汚しの茶色と相性がよく、スミ入れも砂ぼこりもはっきり効く。タミヤの1/35のM4A3E8は、履帯がベルト式で組みやすいので、汚しまでたどり着きやすい。シャーマンという戦車そのものの話はM4シャーマンの解説で書いた。
次に汚しを楽しみたいなら、ダークイエローのドイツ戦車がいい。泥の色が映えるうえ、迷彩と汚しが重なって、仕上がりの見ごたえが大きい。タイガーIなら、実車の重さで足まわりがどれほど泥に沈んだかを想像しながら汚せる。実車の話はティーガーIの解説にある。どの戦車にするか迷ったら、ドイツ戦車10選から選ぶのもいい。
よくある質問
化粧品のアイシャドウや、画材のパステルでも代わりになる?
代わりに使う人もいる。ただ、模型用のウェザリングマスターは、泥やさびの色があらかじめそろっていて、プラスチックに付きやすいように作られている。最初は専用品を使ったほうが、色選びで迷わずにすむ。
エアブラシは要る?
要らない。この記事で紹介した用品は、どれも筆、綿棒、スポンジ、缶スプレーで使える。エアブラシは、車体の迷彩をぼかして塗りたくなったときに考えればいい。
汚しすぎたら元に戻せる?
パウダーの汚しなら、綿棒でこすれば大部分は取れる。スミ入れのはみ出しも、エナメル溶剤を含ませた綿棒でふき取れる。つや消しを吹いたあとのパウダーは定着しやすいので、少しずつ足していくのが確実だ。
飛行機や艦船にも使える?
使える。ウェザリングマスターのDセットの焼け色やオイルは飛行機のエンジンまわり、Fセットの金属色は飛行機の排気口、Bセットのすすは艦船の煙突まわりにも合う。戦車で汚しを覚えると、ほかのジャンルの模型の仕上げも一段上がる。
陸上自衛隊の車両はどれくらい汚せばいい?
控えめがいい。陸上自衛隊の車両は手入れが行き届いていることが多いので、演習場の土ぼこりを足まわりに薄くのせる程度で十分らしく見える。10式戦車や16式機動戦闘車の実車の話は、10式戦車の解説でも書いている。
まとめ
- 最初はスミ入れ塗料1色、エナメル溶剤と綿棒、つや消しクリアー、ウェザリングマスターAセットの4つで足りる
- スミ入れの色は、車体より少し暗い同系色。黒は明るい車体のときだけ
- ウェザリングマスターは、まずA(泥と砂ぼこり)、次にC(履帯のさびと金属)
- 順番は、スミ入れ→デカール→つや消し→パウダー。パウダーは最後
- 2台目からは、Eセットで手軽なドライブラシ、ウェザリングスティックで厚い泥、Mr.ウェザリングカラーで雨だれやオイルの染み
汚しは、戦車の模型づくりでいちばん楽しい工程だと私は思っている。きれいに組み上げた戦車に泥をのせていくと、それまで棚の上の模型だった戦車が、どこかの戦場を走ってきた1台に変わっていく。まずはAセットひとつから、その変化を試してみてほしい。
長い作業のお供に。







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