いま日本の防衛産業が注目される理由(最新事情の要点)
1-1. 政局:高市早苗・自民党総裁の誕生と“防衛”への視線
2025年10月上旬、自民党は高市早苗氏を総裁に選出。高市氏は日本初の女性首相に就任する見通しで、就任準備として党人事を進めています。これにより、防衛政策・産業政策の一体強化への期待が高まり、株式市場も敏感に反応しました。
- 「安全保障の抜本強化」を掲げる与党トップの交代は、装備移転(輸出)ルールや増産枠組み、共同開発の推進など、産業基盤に関わる制度面の議論を加速させる可能性があります。政策論点の射程は、防衛費の確保だけでなく**生産・技術基盤(production & technological bases)**の持続性にも及びます。
1-2. 国家方針:3文書と防衛力整備の“重点能力”
日本は2022年12月の国家安全保障戦略(NSS)、国家防衛戦略(NDS)、**防衛力整備計画(DBP)**の「3文書」で中期の優先領域を定めました。以降の年次白書・予算資料でも一貫して、次の重点能力が掲げられています。
- スタンド・オフ防衛能力(長射程・島嶼防衛を含む)
- 統合防空ミサイル防衛(IAMD)
- 無人アセットの活用(空・海・陸)
- C4ISR/クロスドメイン(宇宙・サイバー・電磁波を含む統合)
2025年版『防衛白書ダイジェスト』も同趣旨で、上記の柱(英語版では “stand-off / IAMD / unmanned / cross-domain” 等)を明示しています。
1-3. 予算とプロジェクトの進捗(2025年度時点)
防衛省は「防衛力の抜本的強化」に関する年次資料で、2025年度(令和7年度)予算・概算要求の具体的な位置づけや、Type-12地対艦の能力向上型など主要案件の進捗を公表しています。2024年10~11月に能力向上型12式の試射を実施するなど、スタンド・オフ関連のマイルストンが示されています。
また、2024年公表の英語ダイジェストは、「約3,000km直径の領域防衛」を視野にスタンド・オフ能力を強化する方針を説明。長射程化と多層的な対処を前提に、IAMDや無人運用の体系化が進みます。
報道ベースでも、2025年度は記録的水準の防衛予算(約8.5兆円規模の要求・計上)が続く見通しとされ、無人システムや長射程弾薬への重点配分が注目されています。
1-4. 産業サイド:基盤強化と“撤退リスク”の同居
一方で、国内の調達量・採算・人材確保の課題から、一部企業の撤退や縮小が長年の懸念となってきました。2025年の研究レポートでも、産業基盤の持続性確保と輸出(装備移転)環境の整備が喫緊の論点として整理されています。
このギャップを埋める鍵が、ATLA(防衛装備庁)が打ち出す**「生産・技術基盤の戦略」に沿った施策(増産ライン整備、サプライヤー維持、共同開発・輸出の実務支援)です。国内市場の規模制約を前提に、「量の平準化」「多年度・長期契約」「国際共同」**といった設計が、企業の研究開発投資や人材育成の意思決定を左右します。
1-5. まとめ:なぜ“今”、企業リストが役立つのか
- 政策面は「スタンド・オフ/IAMD/無人/クロスドメイン」が明確化し、需要の山がどこに立つかが見えやすい。
- 予算面は高水準が続き、長射程弾薬・無人化・センサー/指揮通信に資金が流れやすい。
- 産業面は基盤維持とサプライチェーン強靭化が課題。企業ごとの“得意分野”と“関与プログラム”を押さえることで、ニュースの意味や受注の波及、協業の可能性が読み解けます。
2. 日本の防衛関連企業マップ(分野別一覧)
まずは“どの会社が何を得意にしているか”が一目で分かるように、主要企業を分野別にざっと把握します。社名は代表例で、実際は多数の中小サプライヤーが層を成しています。

2-1. 造船・艦艇(護衛艦/潜水艦/艦装)
- 三菱重工業(MHI) — 護衛艦、潜水艦、艦システムの主契約。代表例:もがみ型護衛艦、たいげい型潜水艦、各種艦載システム、対潜兵器など。MHI公式の防衛ページに護衛艦・潜水艦・誘導兵器のラインアップがまとまっています。
- 川崎重工業(KHI) — 潜水艦の長年の建造実績(80隻超)、政府船も担当。たいげい型のビルダーの一角。
- ジャパンマリンユナイテッド(JMU)/JMUディフェンスシステムズ — 護衛艦・将来艦(DDX/DDGX)コンセプト提示、艦装システム。
- 三井E&S — 艦装・舶用機器、各種海洋関連のエンジニアリング(会社プロフィール)。
最近の注目:MHIはもがみ型ベースの輸出案で豪州フリゲート契約の選定先に。日本の防衛装備輸出として過去最大級の案件と報じられています(正式契約は段階的)。
2-2. 航空・宇宙・エンジン
- IHI — 航空エンジンの主力メーカー(防衛用ターボファン/ターボシャフト、ロケット関連)。
- 三菱重工業(MHI) — 航空機・誘導兵器(ASM等)、防衛航空エンジン、F-2・F-15近代化支援など。
- SUBARU(旧富士重工/スバル) — 陸自の新多用途ヘリコプター UH-2の量産・納入。
- 新明和工業 — US-2救難飛行艇(短距離離着水・荒天下運用が特徴)を製造。
- NEC — 宇宙分野で衛星バス・地上系システム等(約80機の衛星開発に関与)。
2-3. 電子・レーダー・C4ISR・サイバー
- 三菱電機 — 艦載多機能レーダー、地上警戒レーダー、航空火器管制レーダーなど、日本の代表的レーダーメーカー。空自向けAESAレーダーの国産開発実績も明示。
- NEC — 固定式長距離警戒レーダーを空自へ納入(DSEI Japan 2025の現地取材)。C4ISR系の実績多数。
- 富士通 — 指揮統制・ネットワーク、HPC/AI活用、サイバー・情報領域のソリューション。
- 防衛省(IAMD体系) — 日本の防空・ミサイル防衛では、固定警戒レーダーや艦載・地対空システムの統合運用が進展。
2-4. 地上装備・車両・火砲
- 三菱重工業 — 10式戦車、16式機動戦闘車などの“特装車”分野。MHIの防衛サイトに両車両を明記。 Mitsubishi Heavy Industries, Ltd.
- コマツ — 陸自向け装輪車両・建機系技術の供給(公式は総合案内中心。車両個別はMHI主契約案件が多い)。
- 日本製鋼所(JSW) — 砲身・火砲の老舗。近年は艦載レールガン開発の主契約者と報道。
- (参考:16式のプログラム背景や運用像)
2-5. 小火器・弾薬・個人装備
- 豊和工業(Howa Machinery) — 陸自の次期制式小銃**20式(Type 20)**の開発・製造企業。
- 住友重機械(旧・機関銃製造の流れ) — 7.62mm機関銃等で歴史的関与。現在は事業再編が進み、防衛特化の露出は限定(公式は総合機械中心)。
- 弾薬・薬莢関連 — 大手素材・化学系(※本稿ではサプライヤー名は総称扱い。後章で可能な範囲を補足)。
※小火器は海外報道・Wikiに頼らず、Type 20=Howaという一次級の事実だけを明確化しています。公式銃器ページはスポーツライフル中心のため、制式採用は公的情報(Wiki出典併用)で補完。
2-6. センサー・電子戦・材料・周辺領域
- 電子部品(村田製作所、ミネベアミツミ等) — レーダー・無線・慣性系でサプライ。※本稿では社名列挙に留め、個別機種は後章で。
- 高級素材(日本製鉄ほか) — 船体用鋼材、装甲材、特殊合金。
- 学術・研究機関 — 電磁波・宇宙・量子通信などの基盤研究(IAMDやC4ISRへ波及)。
- ATLAの産業基盤施策 — 「生産・技術基盤戦略」や装備移転ガイドラインでサプライチェーン維持を後押し。 防衛省+1
付録:分野別・主要企業クイック一覧(保存版)
分野 | 企業 | 代表装備・役割(例) |
---|---|---|
艦艇 | 三菱重工 | もがみ型、たいげい型、誘導武器 |
艦艇 | 川崎重工 | 潜水艦建造(80隻超実績) |
艦艇 | JMU/JMU DS | 次期駆逐艦(DDX/DDGX)構想、艦装 |
航空 | SUBARU | UH-2(新多用途ヘリ) |
航空 | 新明和工業 | US-2救難飛行艇 |
エンジン | IHI | 航空エンジン(防衛) |
電子 | 三菱電機 | 艦載/地上AESA、航空火器管制 |
電子 | NEC | 固定式長距離レーダー、C4ISR |
情報 | 富士通 | C2/ネットワーク/サイバー |
地上 | 三菱重工 | 10式戦車、16式機動戦闘車 |
火砲 | 日本製鋼所 | 砲身・レールガン主契約(報道) |
小火器 | 豊和工業 | 20式小銃 |
3. 企業別ミニカタログ(A→Z 主要30社)
1) Fujitsu(富士通)
C4ISR・指揮統制・サイバー領域のSIに強み。艦・航空・基幹ネットの統合や海外レーダー協業(SPY-7部材でLockheedと連携)。
2) Hamamatsu Photonics(浜松ホトニクス)
光センサー/検出器の大手。EO/IR・レーザー観測などの要素部品で存在感(研究・試験用途も)。
3) Hitachiグループ(参考)
重電・制御で下支えするが防衛専業色は薄め。陸上インフラ・電力・センサー系のサプライへ。
4) Howa Machinery(豊和工業)
陸自の**20式小銃(Type 20)**を量産。2019年度選定、2020年度以降の調達が進行。
5) IHI
航空エンジン分野で国内シェア約70%。防衛省向け主契約エンジンの製造・整備や国際協業を展開。
6) JMU Defense Systems(JMU DS)
JMUグループの防衛子会社。護衛艦の艤装・システム、将来艦の提案等を担当。
7) Kawasaki Heavy Industries(川崎重工:KHI)
潜水艦の名門。建造80隻超の実績、たいげい型の建造や新概念艦(VLS搭載案)を提示。
8) Komatsu(コマツ)
装輪装甲車など陸自向け実績(軽装甲機動車など)。建機技術を転用した車両・保全も。
9) MinebeaMitsumi(ミネベアミツミ)
精密ベアリング/センサーで航空宇宙・防衛サプライに幅広く参画。アクチュエータや高周波デバイスも。
10) Mitsubishi Electric(三菱電機)
レーダーの雄。艦載多機能、地上警戒、航空火器管制など。世界初の実用AESA空対空レーダーの国産開発も掲げる。
11) Mitsubishi Heavy Industries(三菱重工:MHI)
総合主契約。もがみ型・あさひ型・たいげい型等の艦艇、誘導兵器、特装車(10式/16式)まで。豪州向けフリゲート案件でも注目。
12) Mitsui E&S(三井E&S)
艦装・舶用機器や港湾クレーンなど。MHIと海自艦のMRO/機器で補完関係。
13) Murata Manufacturing(村田製作所)
ミリ波レーダーモジュール/高周波モジュールなど、レーダー・通信の要素部品で存在感。
14) NEC
固定式長距離警戒レーダーほか、衛星バス・地上系を含む宇宙/C4ISRに強い。衛星は「約80機関与」の実績。
15) NEC Space Technologies
衛星搭載機器を供給。JAXA案件含め、200機以上の衛星へ部品供給実績。
16) Nikon(ニコン)
高精度光学・測定・撮像のコア技術でEO/IR分野を支える(双用途中心)。
17) NTT / NTT DATA / NTT Security
サイバー防衛・SOC/MDR。政府・同盟国と連携する取り組みも(JCDC参加、Locked Shields参画など)。
18) OKI(沖電気工業)
**高信頼PCB(HiRel)**や公共・防衛のミッションクリティカル通信を供給。
19) Panasonic Connect(TOUGHBOOK)
堅牢タブレット/端末で現場支援(自衛隊・警察・消防の双用途)。※総説扱い。
20) Shimadzu(島津製作所)
**航空機装備(空調/フライトコントロール/計器)**などを供給。
21) ShinMaywa(新明和工業)
US-2救難飛行艇のメーカー。荒天・短距離STOL特性で海難救助に強み。
22) SUBARU(スバル)
**UH-2(新多用途ヘリ)**を陸自へ納入。回転翼・構造製造で実績。
23) Toshiba(東芝)
電源・エネルギー・電子で防衛向けサブシステムを供給(双用途中心)
24) Furuno(古野電気)
航海/水中音響・レーダー等の海洋エレクトロニクスで艦船向けにも貢献(双用途)。
25) Japan Steel Works(日本製鋼所:JSW)
砲身など重装備素材の老舗。艦載レールガンの海上射撃試験で注目。
26) JRC(日本無線)
通信・航法・レーダーで海自/海保向けに納入実績(双用途中心)。※総説扱い。
27) Hoya(HOYA)
光学ガラス・フォトニクスでEO/IR・センサー分野を下支え(双用途)。※総説扱い。
28) Nidec(日本電産)
モータ/アクチュエータで航空・防衛のサブシステム需要に対応(双用途)。
29) Yamaha Motor(ヤマハ発動機)
無人機/水上無人艇などのプラットフォーム技術(双用途)。※総説扱い。
30) Alps Alpine(アルプスアルパイン)
スイッチ・センサー等の要素部品。堅牢電子や車載規格の知見を防衛へ活用
4. 注目プログラム(ミサイル・艦・航空・センサー・基盤)と主要サプライヤー早見表
ねらい:どのプログラムに、どの日本の防衛企業が関与しているかを一望。一次情報(防衛省・ATLA・企業公式)を優先し、最新の契約・進捗は必要に応じて出典を付記しています。
4-1. ミサイル/スタンド・オフ防衛(火力)
プログラム(装備) | 目的・概要 | 主契約(プライム) | 主なサプライヤー例 | 注目ポイント/キーワード |
---|---|---|---|---|
12式地対艦誘導弾 能力向上型(艦・空・潜) | 射程延伸・多プラットフォーム化。艦・航空機・潜水艦からスタンドオフ打撃 | 三菱重工 | 三菱電機(AESA/誘導関連)、IHI(推進系一部)、各車両/艦装メーカー | 2025/10/7に艦発型・潜水艦発射型の量産契約成立を公表。日本のスタンドオフ防衛の柱。 |
中SAM(03式中距離地対空誘導弾・改善型) | 統合防空ミサイル防衛(IAMD)の中核となる地対空 | 三菱電機(システム) | 三菱重工(誘導弾)、東芝(レーダ関連) | 防衛省資料にプライム/構成の記載。IAMDの要素結合の代表例。 |
背景:スタンド・オフ防衛能力は3文書(NSS/NDS/DBP)と白書で重点化。2024–2025年の資料・発表で「多様なプラットフォームからの12式能力向上型」や衛星コンステレーション構築(目標探知・追尾強化)が明記。
4-2. 艦艇・BMD(海上戦力/統合防空)
プログラム | 目的・概要 | 主契約 | サプライヤー例 | 注目ポイント/キーワード |
---|---|---|---|---|
FFM「もがみ」型 | 多機能フリゲート(機雷・対潜・対水上・無人運用素地) | 三菱重工/JMU | 三菱電機(戦闘系)、古野電気/JRC(航海・ソナー系の一部)ほか | 海自公式に艦番一覧。コスト効率と多機能性で増勢中。 |
たいげい型潜水艦 | 最新世代の通常動力潜水艦(静粛・新型ソナー) | MHI/川崎重工(建造分担) | 三菱電機(ソナー/電子)、JRC等 | 海自装備ページに要目。潜発型スタンドオフのプラットフォーム化が進む。 |
イージス・システム搭載艦(ASEV) | BMD(弾道ミサイル防衛)専任の大型艦を2隻建造 | MHI/JMU | ロッキード(SPY-7)、国内電機各社 | アショア代替として27–28年度就役見込みの方針。装備はSPY-7等。 |
4-3. 航空・回転翼・飛行艇(海空輸送/救難)
プログラム | 目的・概要 | 主契約 | サプライヤー例 | 注目ポイント/キーワード |
---|---|---|---|---|
P-1 哨戒機 | 海自の次世代対潜/対水上哨戒 | 川崎重工 | IHI(F7-10エンジン)、島津/ナブテスコ(機装)ほか | 速度・航続・搭載量重視の国産専用設計。メーカー公式に概要。Kawasaki Heavy Industries, Ltd. |
C-2 輸送機(RC-2含む) | 長距離・重量物輸送、情報収集派生型 | 川崎重工 | IHI、島津、住友精密 等 | 公式紹介に性能/任務。派生のRC-2は2020配備開始。Kawasaki Heavy Industries, Ltd. |
UH-2(SUBARU BELL 412EPXベース) | 陸自の新多用途ヘリ | SUBARU | ベル、国内機装サプライヤー | 量産・納入実績、メーカーの沿革ページ・ニュースあり。 |
US-2 救難飛行艇 | 悪天候・外洋での救難(波高3mに離着水) | 新明和工業 | MHI/川重(一部構造)等 | 公式に性能・技術解説。世界的ニッチ。shinmaywa.co.jp |
4-4. レーダー/C4ISR/装備移転(輸出)
プログラム | 目的・概要 | 主契約 | サプライヤー例 | 注目ポイント/キーワード |
---|---|---|---|---|
J/FPS-5・J/FPS-7 系列(空自固定レーダー) | 広域警戒・弾道対処・低RCS対応 | 三菱電機 / NEC | 東芝、OKI(基盤)等 | FPS-5はAESA・BMD対応、FPS-7は更新用。公的/解説資料に記載。 |
フィリピン空軍向け 警戒管制レーダー移転 | **完成品輸出(装備移転)**の代表案件 | 三菱電機 | (政府間) | 2020契約、2023–24に固定式・移動式を納入と公式発表。輸出実績として重要。 |
4-5. 産業基盤(弾薬増産・サプライチェーン強化)
施策/制度 | 概要 | 関連省庁・実施主体 | 企業への影響 |
---|---|---|---|
防衛生産基盤強化法 | 装備生産の持続性確保(長期契約・計画支援ほか) | 内閣官房/防衛省 | 受注の平準化・設備投資の根拠強化。 |
ATLA「君シカオラン サポートデスク」 | 中小・サプライヤ支援窓口(計画作成・サイバー対策等) | 防衛装備庁 | 参入促進・サプライチェーン維持に寄与。防衛省 |
白書・経済財政資料にみる計画額増 | DBPで契約ベース43.5兆円規模へ増額(前計画17.2兆円) | 内閣府/防衛省 | 日本の防衛産業(日本の軍事企業一覧)全体の受注拡大の背景。内閣府ホームページ |
メモ:2025年10月7日付の防衛省発表では、潜水艦発射型誘導弾・12式能力向上型(艦発)の量産契約が明記。今後も「スタンドオフ」「IAMD」「無人」「C4ISR」の4本柱に沿って、国内の防衛企業(日本の軍事企業一覧)の商機が波及していきます。防衛省
5. 海外協力・輸出の動き(装備移転三原則の運用と事例)
5-1. 何が変わった?— 三原則の見直し(2023年12月/2024年3月)
- 日本政府は2023年12月22日に「防衛装備移転三原則」と運用指針を改定し、同日、米国向けパトリオット迎撃ミサイルの供給準備を公式に打ち出しました。従来より厳しかった「致死性装備」移転の運用を、透明性確保の下で拡げたのがポイントです。防衛省
- さらに2024年3月には、国際共同開発品の第三国輸出(例:日英伊の次期戦闘機GCAP)に道を開く方向で運用が整備。日本の防衛産業(軍事企業)一覧に載る大手メーカーの海外案件が、現実的な商機として可視化されました。
- 三原則そのものの条文・考え方は外務省の公式ページにまとまっており、**「禁止ケース」「許可されうるケース」**と審査の基本を確認できます。外務省
5-2. 代表事例:フィリピン向けレーダー移転とOSA
- 完成品輸出の代表例が、フィリピン空軍向けの移動式警戒管制レーダー(三菱電機)。同社は2024年3月に1基を引き渡したと発表。契約は2020年8月で、設計・製造・試験は日本国内。今後の納入も続きます。
- 2023年には固定式の長距離監視レーダーの初号移転が公表され、2026年までに残りの装備も整備される見通しです(ATLA発表・地域専門誌)。
- 併せて、2023年から始まったOSA(政府安全保障能力強化支援)で、比海軍向け沿岸監視レーダーやRHIBなどの供与が決定。2025年3月の外務省資料は、フィリピン向けOSAの概要と、空軍レーダー関連機器の供与も追記しています。(OSAは“無償資機材供与”で、三原則とは別枠)。
ねらい(SEO):日本 防衛 企業 一覧/装備移転 三原則/レーダー 輸出 フィリピン/OSA
読み方:完成品輸出(GtoG/GtoG+商社)とOSAの無償供与は別仕立て。主契約:三菱電機、政策窓口:ATLA/外務省で追うと把握が速いです。
5-3. 次期戦闘機GCAP:共同企業体の立ち上がりと焦点
- **GCAP(英伊日)は、共同企業体の設立・承認が2025年に進展。英・伊・日の主企業による新JV(持分3社均等)**が発表され、EUの競争当局も承認しました。初の国際契約獲得を次のマイルストンに据えるとの報道も。
- 一方で、技術共有の度合いや新規参加国(例:サウジ)の是非など、政治・制度側の論点が2025年も浮上。動向はロンドン/ローマ/東京の三都で要確認です。
- 公式の計画骨子はメーカー各社のGCAPページが概説。就役目標は2035年。日本側ではMHI・IHI・三菱電機などが深く関与する見込みです。
5-4. BMDとASEV:海上の大型共同
- アショア代替として進むイージス・システム搭載艦(ASEV)では、SPY-7関連の主要サブシステムの日本向け納入と試験進展が2025年に相次ぎました。7月7日にアンテナ初号シップセット納入、その後機能試験の開始が公表。プライムは日本造船大手で、ロッキードと三菱商事等を介したDCSが組み合わさる構図です。
6. まとめ:投資・技術・人材の“三位一体”で伸びる日本の防衛産業
- 政策の追い風:スタンド・オフ/IAMD/無人/C4ISRに明確な資金の流れ。2025年の『防衛白書ダイジェスト』も同趣旨を確認。(最新動向は年次更新で要確認)。
- 輸出・国際共同の現実味:パトリオット供給・フィリピン向けレーダー・GCAP JV承認で、「内需だけでは細る」という課題への対処が前進。
- 産業基盤の維持:増産・長期契約・人材確保がボトルネック。売上増による人材確保改善が望めるか。
付録A:分野別・主要企業クイック一覧(保存版)
分野 | 企業(日本の防衛関連企業) | 代表装備・製品例(日本の軍事企業一覧の文脈で押さえる) |
---|---|---|
造船・艦艇 | 三菱重工/JMU/川崎重工 | もがみ型FFM、たいげい型潜水艦、(将来)ASEV |
航空・宇宙 | 川崎重工/SUBARU/新明和/IHI | P-1、C-2、UH-2、US-2、各種ターボファン |
レーダー・C4ISR | 三菱電機/NEC/富士通/OKI/日本無線/古野電気 | J/FPS系列、指揮通信、海洋エレクトロニクス |
地上装備・火砲 | 三菱重工/日本製鋼所/コマツ | 10式MBT、艦砲・砲身、装輪・装軌の系譜 |
小火器・弾薬・火工 | 豊和工業/日本工機/NOF/ダイセル | 20式小銃、各種弾薬、固体推進薬、分離装置 |
材料・部品 | 東レ/日本製鉄/ミネベアミツミ/浜松ホトニクス/村田製作所 | CFRP、厚鋼板、航空ベアリング、光検出器、MLCC |
サイバー・通信 | NTTグループ/NEC/富士通 | SOC運用、戦術通信、クラウド・セキュア基盤 |
付録B:略語ミニ辞典
- ATLA(防衛装備庁):調達・技術管理・国際協力を所管する防衛省の外局。国際移転は三原則に従い厳格に運用。防衛省
- 三原則(装備移転):Three Principles on Transfer of Defense Equipment and Technology。禁止・許容・審査の枠組み。外務省
- OSA:Official Security Assistance。同盟・同志国の安全保障能力を無償で強化する日本の新制度。比への沿岸監視レーダー等が案件化。
- GCAP:英・伊・日の次期戦闘機の共同開発計画。JV設立が進み、初の国際契約獲得へ注力と報道。
- ASEV:Aegis System Equipped Vessel。弾道ミサイル対処の大型艦。SPY-7の納入・試験が進行。
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