2000年代の終わり、アフガニスタン南部のヘルマンド州。イギリス軍の歩兵分隊は、ある問題に悩まされていた。
敵が遠すぎるのだ。タリバンは、見通しのいい畑や灌漑水路の向こうから、汎用機関銃や狙撃銃で撃ってくる。距離は500m、時には800mを超える。ところが英軍の兵士が持つ制式小銃は、5.56mm弾を使うL85。この距離になると、撃ち返してもなかなか効き目がない。
そこで英国防省は、2009年に「緊急作戦要求(UOR)」を出した。いますぐアフガニスタンに送れる、7.62mm弾の半自動小銃がほしい。こうして、わずか数か月の選定を経て採用されたのがL129A1だ。
ここには、ちょっとした皮肉がある。イギリス軍は1980年代、7.62mm弾を使う半自動小銃L1A1(FN FALの英国版)を捨てて、5.56mm弾のL85に切り替えた国なのだ。それから四半世紀たって、戦場の現実に押され、7.62mmの半自動小銃を急いで買い戻すことになった。
この記事では、L129A1がどうやって生まれ、どんな中身で、分隊の中でどんな役割を持たされたのかを見ていく。後半では、6.5mmクリードモア弾に改めたL129A2と、これからの英軍小銃の行方まで触れる。
- L129A1は、英軍がアフガニスタンで使うために2009年に急いで採用した7.62mmの半自動小銃。アメリカのLMT社の製品をもとにしている
- 狙撃兵の銃ではなく、歩兵分隊の中の1人「シャープシューター」に持たせ、400〜800mの敵を相手にする銃
- 銃身を交換しやすい構造が特徴で、のちに6.5mmクリードモア弾へ改めたL129A2が生まれた
- 英国での採用をきっかけに、製造元のLMTはニュージーランドやエストニアの主力小銃にも選ばれた
L129A1とは|基本情報

写真・素材:Stuart Hill/Wikimedia Commons(OGL v1.0)
L129A1は、イギリス軍が「シャープシューター・ライフル」として使う7.62×51mm NATO弾の半自動小銃だ。作っているのは、アメリカ・イリノイ州のルイス・マシン・アンド・ツール(LMT)社。同社のLM308MWSという小銃がもとになっていて、輸出向けにはLM7という名前でも知られる。
| 項目 | L129A1 |
|---|---|
| 製造 | LMT(米国) |
| 原型 | LM308MWS(輸出名LM7) |
| 弾薬 | 7.62×51mm NATO |
| 作動方式 | ガス利用式・ロータリーボルト(AR-10系) |
| 銃身長 | 16インチ(約406mm) |
| 重量 | 約4.4kg |
| 弾倉 | 20発 |
| 標準照準器 | トリジコンACOG 6×48(上にRMRドットサイト) |
| 有効射程 | 約800m |
| 採用 | 2009年10月(アフガニスタン投入は2010年) |
| 調達数 | 当初440丁、2014年末までに3,000丁超 |
見た目は、黒くて大きいAR-15、という印象だと思う。実際、構造の系譜はAR-15の兄貴分にあたるAR-10で、7.62mm弾を撃つために一回り大きく作られている。
なぜ生まれたのか|英軍が7.62mmを手放した歴史と、アフガンの「500m問題」
L129A1の誕生を理解するには、少し時計の針を戻す必要がある。
イギリス陸軍は、1950年代から長くFN FALを国産化したL1A1を使っていた。7.62mm弾を撃つ半自動小銃で、遠くまでよく届き、威力もある。ただし重く、反動も強く、持てる弾の数も限られる。
そこで1980年代半ば、英軍はNATOの流れに合わせて、5.56mm弾を使うブルパップ小銃L85(SA80)に切り替えた。弾が軽いので多く持てるし、反動も小さく、市街地や近い距離での撃ち合いには向いている。冷戦期のヨーロッパで想定された戦いには、これで十分だと考えられた。
ところが、アフガニスタンの戦場は違った。ヘルマンド州は開けた畑と土塀の集落が広がる土地で、撃ち合いの距離が長い。米陸軍の資料では、2011年のアフガンでの小火器の交戦の半分以上が、500mを超える距離の敵を相手にしたものだったという。タリバン側はPKMのような汎用機関銃や狙撃銃を使い、900m以上離れたところから撃ってくることもあった。
5.56mmのL85は、この距離では力不足だった。分隊の機関銃はあっても、敵を1人ずつ正確に狙って黙らせる手段が足りない。狙撃兵はいるが、数が少なく、すべての分隊にはつけられない。必要なのは、分隊の中の誰かが持てて、遠くの敵を素早く何発も撃てる、7.62mmの半自動小銃だった。2009年のUORは、まさにこの穴を埋めるために出された。
選定|HK417、SCAR-H、そして決勝で勝ったLMT

写真・素材:Stuart Hill/Wikimedia Commons(OGL v1.0)
緊急の要求だったので、選定は早かった。
候補には、ドイツのHK417、ベルギーのFN SCAR-H、アメリカのセイバー・ディフェンスのXR-10、そしてLMTのLM308MWSなどが名乗りを上げた。試験の末に残ったのはHK417とLMTの2つで、最後に勝ったのがLMTだった。英国側の窓口になったのは、同社と組んだ英国の会社ロー・エンフォースメント・インターナショナル(LEI)だ。
当時のLMTは、AR系の部品やグレネードランチャーで知られる会社で、HK417やSCARほどの知名度はなかった。有名どころを押しのけての勝利は、ちょっとした番狂わせだったと言える。最初の契約は440丁、総額約150万ポンド。2009年10月に正式採用され、2010年の春にはアフガニスタンの部隊に届き始めた。要求を出してから前線に届くまで、1年もかかっていない。平時の兵器調達では考えられない速さだ。
その後も追加の購入が続き、2014年12月までに3,000丁を超えるL129A1が英軍に納められている。
なお、ライバルになったHK417の系統は、ドイツ軍のG28やアメリカ軍のM110A1、そして陸上自衛隊のG28E2として、別の道を歩んでいる。同じ「7.62mmのAR-10系」でも、英国はLMT、ドイツや日本はH&Kと、選んだ答えが分かれたわけだ。
中身|AR-10系の「交換しやすい銃身」
L129A1の一番の特徴は、上半分の作りにある。
普通のAR系の小銃は、機関部の上部(アッパーレシーバー)と銃身の周りを覆うハンドガードが別々の部品になっている。LMTはこれを一体の金属から削り出した「モノリシック・レイル・プラットフォーム」という形にした。機関部からハンドガードの先までが一本の背骨のようにつながっているので、照準器やレーザーを載せても位置がずれにくい。
そして、銃身を交換しやすい構造になっている。2本の固定ボルトを緩めるだけで銃身を抜き差しでき、付け直しても照準のずれがほとんど出ないとされる。戦場で銃身が傷んでも、その場で替えればいい。この仕組みが、のちに口径を変えたL129A2につながっていく。
作動方式は、AR-15と同じく発射ガスを機関部まで導いてボルトを動かす方式だ。弾倉はAR-10系で広く使われるSR-25タイプの20発。弾は普通の7.62mm弾も撃てるが、試験で一番成績がよかった155グレインの狙撃用弾が公式の支給弾になった。
照準器の組み合わせも、アフガンの戦場をよく表している。メインはトリジコンのACOGで、倍率は6倍。その上に、RMRという小さなドットサイトを載せている。遠くの畑の向こうの敵はACOGでのぞき、集落の土塀の角で鉢合わせした敵は、頭を少し上げてRMRで撃つ。遠い敵と近い敵が同じ日に出てくる戦場だったから、2つの照準器を重ねて持たせたわけだ。
役割|スナイパーではなく「分隊のシャープシューター」

写真・素材:Stuart Hill/Wikimedia Commons(OGL 3)
L129A1を語るうえで、いちばん大事なのは使い方だと思う。
この銃は、狙撃兵の銃ではない。英軍の歩兵分隊はだいたい8人で、そのうちの1人が、普通の小銃の代わりにL129A1を持つ。これが「シャープシューター(選抜射手)」だ。分隊の中には、ほかにも3人ほどがこの銃の扱いを訓練されていて、シャープシューターが倒れたら代わりに持つ。
シャープシューターの仕事は、分隊と一緒に動きながら、400〜800mの距離にいる敵を正確に撃つことだ。機関銃で頭を押さえ、シャープシューターが1人ずつ仕留める。狙撃兵のように何時間も隠れて1発を狙うのではなく、撃ち合いの最中に、分隊のために遠くの敵を素早く片づける。
日本の陸上自衛隊が、同じ7.62mmの半自動小銃G28E2を「狙撃銃」として狙撃手に配っているのとは、考え方がかなり違う。英軍はL129A1を、あくまで分隊の火力の一部として扱っている。
もっとも、狙撃チームにもL129A1は配られた。英軍の狙撃は2人1組で動き、1人がボルトアクションの大型狙撃銃を持ち、もう1人がそれを援護する。この援護役向けに、シュミット・アンド・ベンダーの3-12倍スコープと消音器を付けた「狙撃支援火器(SSW)」仕様のL129A1が用意された。同じ銃でも、照準器と装備を替えて二つの役割をこなしているのが面白い。
英国の「狙い撃ち」の系譜の中で
イギリスは、もともと「狙い撃ち」にこだわる国だ。
第二次世界大戦では、リー・エンフィールドNo.4に望遠照準器を付けた狙撃型を使い、戦後はそれを7.62mm弾に改めたL42A1を長く使った。その後に来たのが、オリンピックの射撃金メダリストが設計したL96A1と、その発展型のL115A3だ。アフガンでは、L115A3で2,000mを超える距離の敵を撃った英兵の記録も生まれている。
L129A1は、この系譜の中で少し変わった位置にいる。狙撃兵の銃の系譜に属しながら、狙撃兵ではない普通の歩兵の手に渡った。言ってみれば、職人の道具を、現場の全員が使える道具に近づけた銃だ。ボルトアクションの名狙撃銃の国が、分隊の中に「半自動の狙い撃ち役」を置いたことは、英軍の歩兵戦術にとって小さくない変化だったと思う。
L129A2|6.5mmクリードモアへの衣替え
採用から10年以上たって、L129は大きく姿を変えた。
2023年、イギリス海兵隊(ロイヤル・マリーンズ)が、口径を6.5mmクリードモアに改めたL129A2を採用した。銃身は16インチから18インチに伸び、照準器はACOGからルーポルドの3.6-18倍の可変倍率スコープ「Mark 5HD」に替わった。消音器は標準装備になり、ハンドガードは今どきのM-LOK規格、銃床は細かく調整できるマークスマン向けのものになっている。
ここで、さっきの「交換しやすい銃身」が生きてくる。L129A2の上部は、もとのL129A1の7.62mm銃身もそのまま付けられる。つまり、まったく新しい銃を買うのではなく、銃身や部品を替えて作り直せる。2024年7月には、陸軍の手持ちのL129A1をA2に改修し、足りない分を新しく買い足す約2,000万ポンドの契約が結ばれたと報じられた。
6.5mmクリードモアにした理由は、遠くでの弾の性能だ。細長くて空気抵抗の小さい弾を高速で撃ち出すので、800m前後から先でも弾道が落ちにくく、風に流されにくい。改修によって、有効な距離はおよそ200m伸びるとされる。その代わり、新しい弾を補給の系統に加える手間がかかり、銃身の寿命も短くなるという弱点がある。
6.5mmと聞いて、私は旧日本陸軍の三八式歩兵銃と九九式小銃の話を思い出してしまった。日本陸軍は、反動が小さく当てやすい6.5mm弾を長く使ったが、威力不足を理由に、日中戦争のころから7.7mm弾の九九式へ切り替えていった。それから80年たって、イギリスは逆に7.62mmから6.5mmへと口径を下げている。もちろん、同じ6.5mmでも中身はまったく違う。今の6.5mmクリードモアは弾頭が長く重く、むしろ遠距離の性能を上げるための選択だ。それでも「6.5mmは弱い」と言われた時代を知っていると、なんとも不思議な気分になる。
LMTを世界に知らしめた小銃

写真・素材:Stuart Hill/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
L129A1の採用は、製造元のLMTの運命も変えた。
英軍の採用で名前が知られたLMTは、その後、より新しい「MARS」シリーズの小銃を各国に売り込んでいく。ニュージーランド軍は2015年に、それまでのステアーAUGに代わる主力小銃として5.56mmのMARS-Lを選んだ。エストニアも、このシリーズを自国向けに仕立てた小銃を「R20 ラヘ」として主力に採用し、7.62mmのマークスマン仕様も使っている。アメリカの特殊作戦軍も、6.5mmクリードモアのMARS系の小銃を調達したと伝えられる。
L129A2の下半分(ロアレシーバー)には、このMARSシリーズの左右どちらの手でも操作できる部品が使われている。アフガンの緊急調達で生まれた銃が、メーカーを育て、そのメーカーの新しい技術がまた元の銃に戻ってきた。兵器の世界ではときどきこういう循環が起きる。
これから|英軍の小銃はどこへ向かうのか
L129の周りも、少しずつ動いている。
英軍は、今の制式小銃L85(SA80)の後継を探す「プロジェクト・グレイバーン」を進めていて、約15万丁規模の大きな計画になると報じられている。契約は2026年末から2027年初めごろになる見込みとされる。ただ、これはあくまでL85の後継の話で、L129が置き換えられるかどうかは公表されていない。L129A2への改修が進んでいることを考えると、シャープシューターの銃としては、しばらくL129系が使われ続ける可能性が高いと私は見ている。
精鋭部隊のほうでは、2023年に海兵隊と陸軍のレンジャー連隊が、ナイツ・アーマメントの5.56mm小銃KS-1をL403A1として採用している。分隊の主力小銃は変わっても、「分隊の中に遠くを撃てる者を1人置く」という考え方は、アフガン以来すっかり英軍に根づいている。この「選抜射手」という役割は、ソ連のSVDドラグノフが先にやっていたことでもあり、西側がアフガンとイラクで「再発見」した戦い方だとも言える。
サバゲーで「L129風」を楽しむなら
残念ながら、L129A1そのもののエアガンは手に入りにくい。それでも、シャープシューターの雰囲気を楽しむ方法はある。
ひとつは、L129A1の選定で最後まで争ったHK417系のガスガンを選ぶことだ。G28はHK417をもとにしたマークスマン向けの銃で、同じ時代の「7.62mmのAR-10系」の空気をよく伝えてくれる。
もうひとつは、照準器の組み合わせをまねることだ。L129A1の「倍率スコープの上に小さなドットサイト」という構成は、サバゲーのフィールドでも理にかなっている。遠くの相手はスコープで、近くに飛び出してきた相手はドットで。まずは可変倍率のショートスコープと、小型のドットサイトから試すといい。
よくある質問
L129A1は今も使われている?
使われている。ただし、口径を6.5mmクリードモアに改めたL129A2への改修が進んでいて、英海兵隊はすでにA2を使っている。陸軍の手持ちのA1も、2024年の契約でA2へ作り直されている。
L129A1は狙撃銃?
厳密には狙撃銃ではない。歩兵分隊の中の1人「シャープシューター」が持ち、400〜800mの敵を素早く撃つための半自動小銃だ。ただし、狙撃チームの援護役向けの仕様もある。
L129A1とHK417の違いは?
どちらも7.62mm弾を使うAR-10系の半自動小銃だが、メーカーが違う。L129A1は米国LMT社の製品がもとで、HK417はドイツのH&K社の製品だ。英軍の選定では両者が最後まで争い、LMTが勝った。
L129A2とは何が違う?
L129A2は、口径を6.5mmクリードモアに改め、銃身を長くし、可変倍率のスコープと消音器を標準にした改良型だ。2023年に英海兵隊が採用し、陸軍のL129A1もA2への改修が進められている。
自衛隊はL129A1を使っている?
使っていない。陸上自衛隊が採用した7.62mmの半自動小銃は、H&K社のG28E2で、狙撃銃として配備されている。
まとめ|L129A1は「戦場の距離」に合わせて作り直された英軍の答え
L129A1は、イギリス軍が1980年代に手放した「7.62mmの半自動小銃」を、アフガニスタンの戦場で取り戻した銃だった。
開けた畑の向こうから撃ってくる敵に、5.56mmでは届かない。その現実に対して、英軍は狙撃兵を増やすのではなく、分隊の中に「遠くを撃てる者」を1人置くという答えを出した。選ばれたのは、当時まだ大手とは言えなかったLMTの銃で、銃身を交換しやすい設計が、のちの6.5mm化への道を開いた。
戦場の距離が変われば、銃も、銃を持つ人の役割も変わる。L129A1は、その当たり前のことを、とても分かりやすい形で見せてくれる一丁だと思う。ほかの狙撃銃との比較は最強スナイパーライフルランキングに、銃の種類の全体像は銃の種類完全ガイドにまとめている。
最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。
出典・参考資料
表紙の写真素材:
写真・素材:Stuart Hill/Wikimedia Commons(OGL v1.0)。背景・レイアウト・文字を編集。







コメント