
自衛官のボーナスには、民間企業と決定的に違う点が一つある。金額が「会社の業績」ではなく「法律」で決まることだ。景気が良くても悪くても、部隊が忙しくても暇でも、6月30日と12月10日に、俸給の何か月分と決まった額が振り込まれる。
ただし、その「何か月分」は毎年少しずつ動く。2026年は年間4.65月で始まり、8月7日の人事院勧告で4.70月への引き上げが勧告された。勧告どおりに給与法が改正されれば、上乗せ分は12月の冬ボーナスにまとめて乗る。この記事では、階級と年齢ごとの額面と手取り、入隊1年目の夏ボーナスが3割しか出ない理由、そして営内で暮らす若い自衛官のボーナスが「額面以上の価値」を持つ仕組みまで、2026年9月時点の公開情報で整理する。
年収全体の話は自衛官の年収・給料モデル、手当の一覧は自衛官の手当一覧で扱った。この記事はボーナスだけを掘る。
30秒でわかる、自衛官のボーナス

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 期末手当+勤勉手当(合わせて「期末勤勉手当」) |
| 2026年の年間支給月数 | 4.65月(夏2.325月は支給済み)。8月の人事院勧告で4.70月へ引き上げ見込み |
| 支給日 | 夏:6月30日、冬:12月10日(土日祝なら直前の平日) |
| 基準日 | 夏:6月1日、冬:12月1日。原則としてこの日に在職。基準日前1か月以内の退職者等にも一定の要件で支給される |
| 計算の基礎 | 期末・勤勉それぞれの基礎額×月数×在職・勤務期間の割合。扶養手当は期末のみ |
| 手取りの目安 | 額面の75〜80%(所得税と共済掛金が引かれ、住民税は引かれない) |
つまり自衛官のボーナスは、自分の俸給月額に4.65か4.70を掛ければ額面の目安が出る。俸給月額は階級だけでなく、学歴、職歴、号俸、昇給などで決まる。年齢と階級だけでは実額は確定しない。
階級・年齢別の額面と手取り|2士から1佐まで

以下は、俸給月額を仮定し、年間4.70月で計算した例である。2士は防衛省募集サイトの現行高卒初任給239,500円を使用し、それ以外は計算の仕組みを示す仮定の額を置いた。年齢は例示であり、その階級・年齢の平均給与や、令和8年勧告後の確定俸給を示す表ではない。地域手当20%を「都市部」、なしを「地方」とし、扶養手当と階級に応じた加算は含めない。手取り欄は額面の77%で概算した。実額は号俸、勤務地、扶養家族、勤務成績で変わり、4.70月への改定には法改正が必要になる。
| 階級(例) | 年齢設定(例) | 計算に使う俸給月額 | 年間ボーナス額面(地方) | 年間ボーナス額面(都市部) | 手取りの目安(地方) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2士 | 18歳 | 239,500円(現行高卒初任給) | 約113万円 | 約135万円 | 約87万円 |
| 士長 | 22歳 | 24万円(仮定) | 約113万円 | 約135万円 | 約87万円 |
| 3曹 | 25歳 | 約24.5万円 | 約115万円 | 約138万円 | 約88万円 |
| 2曹 | 30歳 | 約27万円 | 約127万円 | 約152万円 | 約97万円 |
| 1曹 | 40歳 | 約33万円 | 約155万円 | 約186万円 | 約119万円 |
| 曹長 | 45歳 | 約36万円 | 約169万円 | 約203万円 | 約130万円 |
| 3尉 | 25歳 | 約25.5万円 | 約120万円 | 約144万円 | 約92万円 |
| 1尉 | 35歳 | 約34万円 | 約160万円 | 約192万円 | 約123万円 |
| 3佐 | 40歳 | 約40万円 | 約188万円 | 約226万円 | 約145万円 |
| 1佐 | 50歳 | 約50万円 | 約235万円 | 約282万円 | 約181万円 |
この表の仮定で面白いのは、25歳の3曹と25歳の3尉の差が意外に小さいことだ。俸給月額で1万円、年間ボーナスで5万円ほどしか違わない。この計算例では30代以降の幹部と曹の差が開き、1尉と2曹を比べると年間30万円以上、3佐と1曹では30万円以上の差になる。そして1佐になると、階級に応じた加算が乗るため、実際の額面は表の数字より1割から2割多くなる。1佐の冬ボーナスは、地域手当と加算を含めれば150万円を超えるケースがある。
表の年齢設定で見ると、40歳の1曹と40歳の3佐で年間ボーナスの差は約33万円。年収全体の差はもっと大きいが、ボーナスだけを見るなら、曹で長く勤めた自衛官のボーナスは、同年齢の民間企業の平均を上回ることが多い。
入隊1年目の夏ボーナスが「3割」しか出ない理由
4月に入隊した新隊員が最初にぶつかるのが、6月30日の夏ボーナスである。同じ部隊の先輩が数十万円もらっている横で、自分の明細は数万円。これは減額でも査定でもなく、制度どおりの計算だ。
期末手当は、基準日(6月1日)の前6か月間の在職期間で支給割合が決まる。6か月なら100%、5か月以上6か月未満なら80%、3か月以上5か月未満なら60%、3か月未満なら30%である。勤勉手当は別の期間率表で計算し、2か月以上2か月15日未満なら30%。4月1日採用で除算期間などがない例では、両方が30%になるが、すべての在職期間で同じ割合になるわけではない。
高卒の現行初任給239,500円、地域・扶養手当なし、標準の成績率という単純な例なら、夏は239,500円×1.2625月×30%の期末手当と、239,500円×1.0625月×30%の勤勉手当を合わせて約16.7万円、手取りは約12.5万〜13.4万円となる。冬は在職期間を満たし、俸給を同額に据え置いて2.375月への改定を仮定すると約56.9万円。合計約73.6万円で、同じ俸給の満額年の3分の2ほどになる。実際には秋の昇任や昇給、法改正の成立状況でも変わる。
令和8年度から任期制自衛官は「自衛官候補生」ではなく最初から2等陸・海・空士として採用されるようになった。以前の自衛官候補生の期間は俸給ではなく手当で、ボーナスの扱いも異なっていたが、現在は入隊初日から2士の俸給とボーナス制度が適用される。任期制と一般曹候補生の違いは別記事で整理してある。
営内で暮らす自衛官のボーナスは「実質1.3倍」である
ここが、私がこの記事で一番伝えたい部分だ。
若い自衛官の多くは営内、つまり駐屯地や基地の宿舎で生活する。家賃はかからず、食事は3食支給され、光熱費もかからない。同じ22歳で手取り80万円のボーナスをもらう民間の会社員と、士長の自衛官では、そのボーナスの「使える割合」がまったく違う。
会社員の月々の生活費を家賃7万円、食費4万円、光熱費1万円の計12万円と置くと、年間144万円が生活の維持に消える。営内の自衛官はこれがほぼゼロで、月給の手取りの大半が残る。そのうえでボーナスが振り込まれるのだから、ボーナスは丸ごと自由に使えるか、丸ごと貯められる。
同じ額面のボーナスでも、営内者にとっては民間の1.3倍から1.5倍の価値がある、というのが私の見立てである。実際、任期制で4年勤めた隊員が退職時に数百万円の貯金を持っているのは珍しくなく、その大半はボーナスの積み上げだ。自衛官の貯金で書いたとおり、自衛隊は「貯金が勝手に貯まる職場」である。
手取りの計算|ボーナスから引かれるもの、引かれないもの

自衛官のボーナスから引かれるのは、所得税(源泉徴収)と共済掛金(短期・長期・介護)である。共済掛金は民間の社会保険料に相当し、合わせて額面の15%前後。所得税は前月の給与額と扶養人数で税率が決まり、5%から10%程度。合計で額面の20〜25%が引かれ、手取りは75〜80%になる。
引かれないのは住民税だ。住民税は前年の所得に対して課税され、毎月の給与から6月〜翌5月の12回に分けて天引きされるため、ボーナスからは引かれない。「ボーナスの手取りが月給より率が良い」と感じる自衛官が多いのは、この住民税の有無による。
2026年冬のボーナスはどうなるか
2026年8月7日の人事院勧告は、年間支給月数を4.65月から4.70月へ0.05月引き上げる内容だった。月例給も平均3.51%の引き上げで、5年連続のプラス改定である。
勧告は法律ではないので、この後、政府が閣議決定し、給与法改正案が国会を通る必要がある。例年どおりなら秋に成立し、月例給の引き上げは4月にさかのぼって適用され、その差額は冬のボーナスと同時期に一括で支給される。夏の2.325月はすでに支給済みなので、0.05月の上乗せは冬に加算され、冬の支給月数は2.375月になる見込みだ。
俸給30万円の2曹なら、冬ボーナスの額面は30万円×2.375月で約71万円、これに4月からの月例給引き上げの差額(月1万円前後×8か月)が加わる。12月10日の振込額が「思ったより多い」と感じたら、それが勧告の効果である。
自衛官のボーナスは、こうして人事院勧告とその後の法改正を通じて民間の水準と調整される。人事院が調べるのは前年8月から当年7月までの直近1年間の民間ボーナスであり、必ず1年遅れで反映されるわけではない。民間の賃上げが続くかどうかは、自衛官にとっても無関係ではない。
ボーナスがもらえない自衛官、少ないボーナスの自衛官
予備自衛官と即応予備自衛官には期末勤勉手当はない。訓練招集手当と予備自衛官手当が支給される仕組みで、予備自衛官の手当で整理した。
防衛大学校と防衛医科大学校の学生は、学生手当に加えて期末手当が支給される。年2回、学生手当の1か月分強が出るので、ボーナスがあると言えばある。防衛医大卒の初任給とキャリアも参照してほしい。
基準日の直前に退職した場合は、退職日によって支給されないか減額される。任期満了で退職する任期制隊員は、退職日が基準日の後になるよう調整されることが多い。退職時には別に特例退職手当(任期満了金)が出るが、これはボーナスとは別の制度である。
懲戒処分を受けた場合や勤務成績が著しく低い場合は、勤勉手当の成績率が下がる。逆に成績優秀者は成績率が上がるが、上げ幅の原資は部隊内で配分されるため、誰かが上がれば誰かが標準になる。
支給日の部隊の空気|6月30日と12月10日に起きること
制度の話ばかりでは面白くないので、支給日の駐屯地の空気も書いておく。
12月10日の朝、営内の若い隊員の話題はほぼ一つで、「振り込まれたか」である。給与は口座振込なので現金の封筒はないが、スマートフォンの残高を見て小さく声が出る。その日の夕方、駐屯地近くの家電量販店と自動車販売店の駐車場に自衛隊の私有車が並ぶのは、全国共通の風景だ。曹の先輩が後輩に「頭金で車を買うな」と言い、後輩が翌週に車を買う。これも全国共通である。
6月30日は少し違う。新隊員にとっては3割支給の「洗礼」の日で、先輩から「冬は満額出る」と慰められる日でもある。そして幹部にとっては、7月の異動内示と重なる時期で、ボーナスの額より次の勤務地が気になる。
私がこの風景を書くのは、自衛官のボーナスが「法律で決まった数字」であると同時に、18歳の若者が初めて手にするまとまった金であることを忘れたくないからだ。数字の記事は数字で終わるが、金は使う人の人生で意味を持つ。
私が自衛官のボーナスを「うらやましい」と思う理由
投資家として自衛官のボーナスを見ると、民間にはない強みが二つある。
一つは、額が事前にわかることだ。俸給×支給月数で計算でき、支給日も基準日も法律で決まっている。「今年は業績が悪くてボーナスなし」という事態が原理的に起きない。これは資産形成において、実は最も価値のある条件である。金額が読めるということは、毎年同じ額を同じ時期に投資に回す計画が立てられるということだからだ。
もう一つは、若いうちの営内生活と組み合わさることだ。22歳で年間100万円のボーナスをほぼ丸ごと残せる職業は、日本にほとんどない。この100万円を毎年NISAに入れるだけで、任期満了の4年後には元本400万円が積み上がる。任期制で入って民間に転職する隊員も、この4年間で作った元本は持って出られる。
私が自衛隊を支持する理由は安全保障だけではない。18歳から22歳の若者に、住居と食事を保証したうえで年100万円を残させる制度は、それ自体が若者への投資だと思っている。その制度を使い切れるかどうかは、ボーナスの振込先を「使う口座」にするか「増やす口座」にするかで決まる。
よくある質問
自衛官のボーナスは何か月分か
2026年は年間4.65月で、8月の人事院勧告で4.70月への引き上げが勧告された。勧告どおり改正されれば、夏2.325月、冬2.375月になる。
自衛官のボーナスの支給日はいつか
夏が6月30日、冬が12月10日。土日祝日にあたる場合は直前の平日に支給される。基準日は6月1日と12月1日で、原則としてこの日に在職。基準日前1か月以内の退職者等にも一定の要件で支給される場合がある。
新隊員の最初のボーナスはいくらか
4月1日採用で除算期間などがなく、地域・扶養手当なしの高卒2士を例にすると、現行初任給239,500円で夏の額面は約16.7万円。期末手当と勤勉手当を別々に計算した結果、この条件では両方の期間割合が30%になる。冬は同じ俸給と2.375月への改定を仮定して約56.9万円だが、昇任・昇給などで実額は変わる。
自衛官のボーナスの手取りはいくらか
額面の75〜80%が目安。所得税と共済掛金が引かれ、住民税は引かれない。額面100万円なら手取り75〜80万円である。
1佐のボーナスはいくらか
俸給月額約50万円として年間額面約235万円、地域手当と階級に応じた加算を含めると250万円を超える。手取りは190万円前後が目安になる。
自衛官のボーナスは民間より多いか
同年齢の民間平均と比べると、20代前半では同程度かやや多く、30代以降の曹・幹部では上回ることが多い。ただし民間の大企業の平均には及ばない。営内生活を考慮した「使える額」では、若い自衛官が民間を大きく上回る。
まとめ|俸給×4.70月、そして営内の魔法
自衛官のボーナスは俸給月額×支給月数で決まり、2026年は年間4.65月から4.70月へ引き上げが見込まれる。表の仮定では2士で年間約113万円、2曹で約127万円、1佐で約235万円の額面となり、手取りはその75〜80%。4月1日採用の上記条件では夏は3割支給、住民税は引かれない、扶養手当は期末手当にだけ乗る。この3つを知っておけば、明細の数字で驚くことはない。
そして営内で暮らす若い自衛官にとって、ボーナスは額面以上の価値を持つ。使うか、増やすか。その選択を最初の冬ボーナスでしておくことが、任期満了後の人生を一番変える。使い道の考え方は自衛官の貯金の記事と退職金シミュレーターで続きを書いている。
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出典・参考
- 人事院「令和8年人事院勧告」(2026年8月7日)— 年間支給月数4.65月→4.70月、月例給3.51%引き上げ
- 内閣官房内閣人事局「令和7年6月期・12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」— 2025年の平均支給額
- 防衛省「防衛省の職員の給与等に関する法律」および自衛官俸給表 — 階級別俸給月額の根拠
- 人事院規則9―40(期末手当及び勤勉手当)および一般職給与法第19条の4〜第19条の7 — 在職・勤務期間の割合と支給要件
- 防衛省 自衛官募集サイト — 現行初任給239,500円(高卒)、258,500円(大卒)
- 本記事の俸給月額は、2士のみ防衛省募集サイトの現行高卒初任給を使用し、他の階級は計算例の仮定である。号俸・勤務地・扶養状況・成績率により実額は異なる。冬の支給月数は給与法改正の成立を前提とした見込みである






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