自衛官候補生の給料は、2026年度から根本的に変わった。
理由は単純で、「自衛官候補生」という制度そのものが2026年度の採用から廃止されたからだ。それまで任期制で入隊する人は、最初の約3か月を自衛官ではない「候補生」の身分で過ごし、月額19万500円の候補生手当(2025年度末の水準)を受け取っていた。一般曹候補生が入隊初日から2士として23万9,500円を受け取っていたのに対し、4万円以上低い。この差が人手不足の原因の一つだとして、防衛省は候補生の身分を廃止し、入隊初日から「2等陸・海・空士(任期制自衛官)」として採用する制度に切り替えた。
2026年度採用の任期制自衛官の初任給は、月額23万9,500円から。2025年度末の候補生手当より4万9,000円高い。さらに営内に住む限り1年ごとに20万円の調整金がつき、賞与は年4.65か月分、任期を終えれば任期満了金が出る。防衛省の資料では、士の入隊1年目の年収は2024年度当初と比べて60万円以上増えたとされる。
ただし「初任給23万9,500円」は額面で、手取りではない。本記事は、この数字から共済掛金と税を引いた手取りの目安、営内生活で実際に出ていく生活費、昇給の仕組み、1年目の年収の概算までを、防衛省の公表資料で整理する。「自衛官候補生」で検索してこの記事に来た人は、その言葉がもう採用区分としては存在しないことを、まず押さえておいてほしい。任期制と一般曹候補生のどちらを選ぶかは自衛官候補生と一般曹候補生の違いに譲る。
結論——2026年度入隊の任期制自衛官の給料を1枚で
| 項目 | 金額・内容 |
|---|---|
| 初任給(額面) | 月額23万9,500円から。学歴・職歴・地域で異なる |
| 手取りの目安(1年目・営内) | 約20万円前後 |
| 手取りの目安(2年目以降・営内) | 約19万円前後(住民税が引かれ始める) |
| 賞与 | 基本給等の年4.65か月分。1年目は在職期間に応じて減額 |
| 指定場所生活調整金 | 営内・艦内居住の間、1年ごとに20万円。最大6年で120万円 |
| 任期満了金 | 陸(2年)約88万円、海空(3年)約136万円。2任期目は約186〜191万円 |
| 1年目の年収の目安 | 額面で約380万円(初任給据置・賞与約3か月分と仮定。1年経過時の調整金まで含む) |
| 営内の固定費 | 家賃0円、食費原則0円、光熱費0円 |
| 旧制度との差 | 旧自衛官候補生手当19万500円(2025年度末)から4万9,000円の増額 |
一言でまとめると、2026年度の任期制自衛官は「額面24万円弱、手取り20万円前後、営内の家賃・食費・光熱費の負担が抑えられる」職業だ。手取りの額は民間の高卒初任給と大差ないが、家賃も食費も引かれない点で、可処分所得は民間よりはるかに大きい。以下、項目ごとに見ていく。
制度の変更——「自衛官候補生」は2026年度で消えた

| 項目 | 旧制度(2025年度採用まで) | 新制度(2026年度採用から) |
|---|---|---|
| 身分 | 入隊から約3か月は「自衛官候補生」。自衛官ではない | 入隊初日から「2等陸・海・空士(任期制自衛官)」 |
| 最初の給与 | 自衛官候補生手当 月額19万500円(2025年度末) | 2士の俸給 月額23万9,500円から |
| 3か月後 | 2士に任官し俸給に切り替わる | 変化なし |
| 一般曹候補生との差 | 初任給で4万円以上低い | 同等 |
| 調整金 | 2025年度採用から新設 | 年20万円、最大120万円 |
| 任期 | 陸2年、海空3年。以後2年ごと | 同じ |
旧制度では、候補生の3か月間は自衛官の身分がないため、俸給ではなく「手当」が支払われ、額も低かった。教育隊で最もきつい時期に最も安い給与という構造で、早期退職の一因と指摘されていた。2024年12月の政府の基本方針で廃止が決まり、2026年4月の採用から新制度に切り替わった。
なお、2025年度採用の候補生には、指定場所生活調整金の最大120万円と自衛官任用一時金34万4,000円を合わせ、要件を満たせば累計154万4,000円となる措置が取られている。2024年度以前の採用者にも、一定の要件で調整金が支給される。自分がどの年度の採用かで、受け取れる額が変わる。
初任給の中身——23万9,500円の内訳
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 俸給 | 自衛官俸給表の2士の号俸。学歴と職歴で号俸が加算される |
| 第二種初任給調整手当 | 2025年の給与改正で新設。地域別最低賃金を下回らない水準を確保する手当 |
| 地域手当 | 勤務地により俸給の数パーセントから20パーセント。地方の駐屯地はゼロの場合もある |
| その他の手当 | 通勤、扶養、住居(営外者のみ)など該当者に支給 |
「23万9,500円から」の「から」は、この内訳のうち俸給が学歴・職歴で上がり、地域手当が勤務地で変わるためだ。大卒や職歴のある人は号俸が加算され、東京近郊の駐屯地なら地域手当がつく。地方の駐屯地で高卒なら、ほぼ下限の額になる。2025年12月の法改正で、2025年4月に遡って全号俸の俸給が引き上げられており、2026年度の初任給はその後の水準だ。手当の種類は自衛官の手当一覧に整理してある。
手取りはいくらか——額面から引かれるもの

以下は前年に課税所得がない高卒・営内居住者を想定した概算で、実際の給与明細ではない。掛金・税・私的な控除は個人の条件で変わる。
| 控除項目 | 月額の目安(額面23万9,500円の場合) |
|---|---|
| 共済組合の短期掛金(医療) | 約1万円 |
| 共済組合の長期掛金(年金) | 約2万2,000円 |
| 雇用保険 | 自衛官は対象外(0円) |
| 所得税 | 約4,000〜5,000円 |
| 住民税 | 前年の課税所得がなければ1年目は原則0円。2年目の6月以降は前年所得などによる |
| 手取り(1年目) | 約20万円前後 |
| 手取り(2年目以降) | 約19万円前後 |
自衛官は国家公務員なので、社会保険は共済組合、雇用保険はない。共済の掛金は額面の約13〜14パーセントで、ここが最も大きい控除だ。住民税は前年の所得に課税されるため、前年に課税所得がない新卒者なら1年目は原則かからず、2年目の6月から負担が生じる。入隊前に働いていた人などは、1年目から課税される場合がある。「2年目に手取りが減った」と驚く隊員は毎年いる。
さらに営内者は、給食費が原則として給与から引かれない。営内者の食事は以前から支給されており、候補生制度の廃止によって初めて無料になったわけではない。営外の民間人が手取りから家賃・食費・光熱費で10万円以上を払うのに対し、営内の自衛官はその全部がゼロだ。手取り約20万円のうち、私生活の支出を引いた額を貯蓄などに回せる。
生活費——営内で実際に出ていくお金

| 項目 | 月額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 家賃・光熱費 | 0円 | 営内居住 |
| 食費 | 0〜1万円 | 隊員食堂は無料。外出時の外食分のみ |
| スマホ・通信費 | 1万円前後 | |
| 外出・娯楽・交際費 | 2〜4万円 | 週末の外出、同期との飲食 |
| 日用品・PX | 5,000〜1万円 | 営内の売店 |
| 生命保険・共済 | 5,000〜1万円 | 任意 |
| 帰省・交通費 | 5,000〜1万円 | 距離による |
| 合計 | 5〜8万円 |
手取り20万円から生活費5〜8万円を引くと、月に12〜15万円が残る。年間で150万円前後、賞与と調整金を足せば200万円を超える。これが「自衛官は貯金が貯まる」と言われる根拠で、具体的な試算は自衛官は5年で1,000万貯まるかに書いた。ただし、営内には給料日に外出とPXで手取りが消える隊員も多い。貯まる制度であって、貯まる人だけが貯まる。
入隊前の出費も忘れてはいけない。地方の駐屯地では車がないと休日の行動範囲が極端に狭く、多くの人が入隊前の春に普通免許を取る。合宿免許なら2週間前後で取得でき、入隊前の準備として最も多い出費の一つになる。
民間の初任給と比べると——額面は同じ、残る額が違う
| 項目 | 任期制自衛官(営内) | 民間の高卒初任給(一人暮らし) |
|---|---|---|
| 額面 | 約24万円 | 約19〜20万円 |
| 手取り | 約20万円 | 約16万円 |
| 家賃・光熱費 | 0円 | 7〜9万円 |
| 食費 | 0〜1万円 | 3〜4万円 |
| 自由に使える額 | 12〜15万円 | 3〜5万円 |
民間の高卒初任給の平均は20万円前後で、手取りにすると16万円ほど。都市部で一人暮らしをすれば家賃と食費で10万円以上が消え、手元に残るのは数万円だ。任期制自衛官は額面で4万円ほど高く、手取りで4万円ほど高く、そこから固定費が引かれない。自由に使える額で比べると3倍前後の差になる。私が「手取り20万円」という数字を民間と同じ物差しで見ないよう勧める理由は、ここにある。
陸海空で給料は違うのか
初任給は陸海空で共通で、俸給表も同じだ。違いは手当と任期満了金に出る。海上自衛隊の艦艇勤務には乗組手当と航海手当がつき、長期の航海では月に数万円の上乗せになる。航空自衛隊の航空手当は搭乗員に限られ、任期制の士にはほぼ関係ない。任期満了金は初任期が陸2年で約88万円、海空3年で約136万円と、任期の長さに応じて海空が多い。海自の給与の詳細は海上自衛官の給料・年収で扱っている。
賞与——4.65か月分と、1年目の按分
賞与は期末手当と勤勉手当を合わせて年4.65か月分で、6月と12月に支給される。ただし1年目は在職期間に応じて減額され、4月入隊なら6月も在職期間に応じて支給され、12月は在職6か月を満たせば通常の算定対象になる。額面23万9,500円の場合、フルに支給される2年目以降の年間賞与は約110万円、ここでは1年目の賞与を基本給約3か月分の約72万円と置いて試算する。実際の額は採用日・勤務期間・成績や昇任によって変わる。賞与の計算は自衛官のボーナスに階級別で整理してある。
調整金と任期満了金——月給以外の大きな収入
指定場所生活調整金は、営内または艦内に住む限り、採用日から1年経過するごとに20万円が支給される。6年で最大120万円。営外に出れば支給は止まる。任期満了金は、陸で2年、海空で3年の初任期を終えると支給され、陸で約88万円、海空で約136万円。2任期目を終えれば約186〜191万円になる。任期制で3任期目まで残れば、月給とは別に累計で数百万円が入る計算だ。詳細は任期満了金の記事を参照してほしい。
1年目の年収——概算

| 項目 | 金額(額面・概算) |
|---|---|
| 月給12か月分 | 約287万円 |
| 賞与(6月と12月の合計を約3か月分と仮定) | 約72万円 |
| 指定場所生活調整金(1年経過時) | 20万円 |
| 合計 | 約380万円(調整金20万円を含む) |
防衛省の資料が「入隊1年目の年収は2024年度当初比で60万円以上増加」としているのは、この構造による。この比較が2024年度当初を基準としていることを踏まえれば、改善幅は大きい。2年目以降は賞与が通常の年額で支給される。初任給を据え置いた単純計算でも、年間基本給約287万円、賞与約111万円、調整金20万円を合わせて約420万円で、実際には昇給や手当でも変わる。階級別の年収モデルは自衛官の年収・給料モデルに詳しい。
昇給——号俸と階級で上がる仕組み

| 時期 | 階級 | 何が上がるか |
|---|---|---|
| 入隊 | 2士 | 初任給 |
| 入隊後約6か月 | 1士 | 階級が上がり俸給が上がる |
| 入隊後約1年半〜2年 | 士長 | 同上 |
| 毎年1月 | 全階級 | 号俸が上がる(定期昇給) |
| 3曹昇任試験に合格 | 3曹 | 任期制から定年制へ。自衛官俸給表で適用する階級の欄が変わる |
自衛官の給与は「階級」と「号俸」の二軸で決まる。階級は2士から1士、士長へと自動的に近い形で上がり、号俸は毎年1月に定期昇給する。任期制のまま士長として勤務を続ける道もあり、一律に3任期・7年で終わる制度ではない。任期の更新や3曹への昇任は、本人の希望や選考などの条件による。3曹に昇任すれば定年制に移り、俸給の伸びも大きくなる。階級と年齢の関係は自衛隊の階級と年齢の目安に、定年までの流れは自衛隊の定年は何歳かにまとめてある。
2027年度から「自衛隊独自の給与体系」へ
防衛省は2027年度に、既にある自衛官俸給表の水準や算定方法の独自見直しを目指している。24時間の即応態勢や危険を伴う任務を、従来の一般職との均衡に加え、基本給の算定へ適切に反映させるためだ。具体的な改定額は検討中で、若手が一律に月額数万円増えると確定したわけではない。2026年度の初任給23万9,500円は、この移行前の水準であり、2027年度以降はさらに上がる可能性がある。
貯まった手取りをどうするか
手取り20万円から生活費を引いた12〜15万円を、そのまま普通預金に置く隊員と、NISAで運用に回す隊員では、任期満了時の資産は運用結果によって増減し、預金を下回る場合もある。営内は使う時間が少ない分、投資の基礎を学ぶ時間は作りやすい。入門書とネット証券の口座は、入隊直後に揃えておくと後が楽だ。投資判断は各自の責任で、本記事は特定の金融商品を勧めるものではない。
まとめ——額面24万円、手取り20万円、固定費ゼロ
自衛官候補生は2026年度に廃止され、任期制で入隊する人は初日から2士として月額23万9,500円からの初任給を受け取る。手取りは1年目で20万円前後、2年目から住民税が引かれて19万円前後。営内なら家賃も食費も光熱費もゼロで、賞与4.65か月分、年20万円の調整金、任期満了金が別に入る。上記の仮定では、1年経過時の調整金まで含めて額面約380万円になる。
私がこの数字で伝えたいのは、額面ではなく「引かれるもの」と「引かれないもの」の構造だ。私は自衛官ではなく軍事を書く側の人間だが、防衛省の資料を数年分読み比べて、これほど短期間に入口の条件が動いた職業を他に知らない。手取り20万円は民間の高卒初任給と変わらないが、そこから家賃と食費が引かれない。この差が、20代の自衛官の貯金力の正体で、それを使うかどうかは本人次第だ。制度全体の損得は自衛隊に入るメリット・デメリットで整理した。
自衛隊の給与制度や資産形成をもっと知りたい人は、元自衛官の体験記や家計の本をAudibleで通勤中に聞くこともできる。
よくある質問
自衛官候補生の給料はいくらか?
自衛官候補生制度は2026年度採用から廃止された。任期制で入隊する人は初日から2士として採用され、初任給は月額23万9,500円から。旧制度末期の候補生手当は19万500円だった。
自衛官の初任給の手取りはいくらか?
額面23万9,500円の場合、共済掛金と所得税を引いて1年目は約20万円前後、2年目から住民税が引かれて約19万円前後が目安。営内なら家賃・食費・光熱費は引かれない。
指定場所生活調整金とは?
営内または艦内に居住する限り、採用から1年経過するごとに20万円が支給される制度。最大6年で120万円。営外に出ると支給は止まる。
任期満了金はいくらか?
初任期を終えると陸(2年)で約88万円、海空(3年)で約136万円。2任期目を終えれば約186〜191万円が支給される。
自衛官の給料は毎年上がるのか?
上がる。毎年1月に号俸が上がる定期昇給があり、2士から1士、士長へ階級が上がるごとに俸給も上がる。3曹に昇任すれば俸給表の適用が変わり、伸びが大きくなる。
2027年度に給料はさらに上がるのか?
防衛省は2027年度に自衛官独自の給与体系への移行を目指しており、若手を中心に引き上げが見込まれている。具体的な額は未公表。
出典・参考
- 厚生労働省ハローワーク掲載の防衛省求人(2026年1月、旧候補生手当19万500円) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA110010.do?action=kyujinhyoBtn&iNFTeikyoRiyoDtiID=&kJKbn=1&kJNo=4201001375561&kSNo=&screenId=GECA110010
- 防衛省:2026年自衛官採用案内(給与・衣食住・任期更新) https://www.mod.go.jp/pco/toyama/content/09-nyuusatu/images/pannfuretto.pdf
- 人事院規則九―四〇(期末手当及び勤勉手当。在職・勤務期間別の算定) https://laws.e-gov.go.jp/law/338RJNJ09040000
- 防衛省:自衛官俸給表の改正検討の基本方針 https://www.mod.go.jp/j/policy/agenda/meeting/jinji/pdf/giji_shoguu_10_02.pdf
- 防衛省 新潟地方協力本部「令和8年度採用時の基本給等一覧」2026年2月27日作成(2士の初任給、賞与4.65か月、任期満了金) https://www.mod.go.jp/pco/niigata/HP/02-honbu/03-kouhoushitu/r8.2.27kyuuyo.pdf
- 防衛省「自衛官の処遇・生活・勤務環境の改善について」(自衛官候補生の廃止、指定場所生活調整金、1年目年収60万円増) https://www.mod.go.jp/j/profile/treatment/pdf/treatment.pdf
- 内閣官房「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」参考資料(令和6年12月20日、調整金と経過措置) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/jieikan/gijisidai/dai4/sankou.pdf
- 防衛省「防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の概要」2025年12月8日(全号俸の引き上げ、第二種初任給調整手当の新設) https://www.mod.go.jp/j/presiding/houan/pdf/219_20251208/01.pdf
- Jディフェンスニュース「自衛官・防衛省職員らの給与アップ改正案を閣議決定、国会に提出」2025年12月 https://j-defense.ikaros.jp/docs/mod/004340.html
- 日本経済新聞「自衛官候補生廃止へ、新制度に衣替え 初任給底上げ」2024年11月26日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251AJ0V21C24A1000000/







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