ミリタリーの世界には「M4」が多すぎる。米軍の小銃M4カービン、第二次世界大戦の戦車M4シャーマン、そしてイタリアの散弾銃ベネリM4。ゲームでM1014という名前で覚えた人もいるかもしれない。この記事の主役は三つ目で、米海兵隊などがM1014の名で使ってきた12ゲージの半自動散弾銃だ。
ベネリM4は、生まれ方からして変わっている。アメリカ軍が新しい戦闘用散弾銃を求めたのが1998年5月で、ベネリが試作の5丁をテスト場に届けたのが、そのおよそ3か月後。しかも、それまでベネリの代名詞だった「慣性式」という仕組みをあえて使わず、自社では初めてのガス圧式で作ってきた。
この記事では、ベネリM4の特徴と開発・採用の歴史を、ベネリという会社の系譜と合わせて整理する。ポンプ式の代表であるモスバーグM500との違いや、ドローン対策で散弾銃が見直されている最近の話にも触れる。散弾銃を含む銃の種類の全体像は銃の種類完全ガイドに任せる。
- ベネリM4は、イタリアのベネリが1998年に開発した12ゲージの半自動散弾銃。米軍ではM1014の名で採用された
- 要求が出てから約3か月で試作5丁を出し、比較試験に勝って1999年に採用された
- 慣性式で知られるベネリが、初めてガス圧式(ARGO)を採用した銃でもある
- 半自動で速く撃てる一方、威力の弱い非致死弾は自動で次弾を送れない。だから米軍でもポンプ式は消えなかった
結論:ベネリM4は「軍の要求に合わせて作られた半自動散弾銃」
まずは基本の数字を表にしておく。
| 項目 | ベネリM4(M1014) |
|---|---|
| メーカー | ベネリ(イタリア・ウルビーノ) |
| 開発 | 1998年 |
| 米軍での採用 | 1999年(M1014統合軍戦闘散弾銃) |
| 口径 | 12ゲージ(2と3/4インチ・3インチの弾に対応) |
| 作動方式 | ガス圧作動(ARGO、2本の小さなピストン) |
| 銃身長 | 470mm(18.5インチ) |
| 全長 | 1,010mm(銃床を伸ばした状態)/889mm(縮めた状態) |
| 重量 | 約3.8kg |
| 装弾数 | 軍・警察向けは管状弾倉7発+薬室1発(民間向けは5+1) |
| 照準 | ゴーストリング式の照準器+上部のピカティニーレール |

写真:United States Marine Corps/出典(パブリックドメイン)
「12ゲージ」や「2と3/4インチ」という数字の読み方は、銃弾の名前の読み方で書いた。散弾銃の口径は、小銃や拳銃とはまったく違うルールで呼ばれている。
ひとことで言えば、ベネリM4は「散弾銃という古い道具を、現代の軍が使う装備の一つに仕立て直した銃」だ。銃床は伸び縮みし、上にはスコープやドットサイトを載せられるレールがある。散弾でも一粒の大きな弾(スラッグ)でも、弾の種類を切り替えるたびに銃をいじる必要がない。

ベネリという会社:バイク屋の兄弟と、ボローニャの設計者
ベネリ・アルミは、イタリア中部ウルビーノの銃メーカーだ。もとをたどると、近くの港町ペーザロでオートバイを作っていたベネリ兄弟に行き着く。兄弟は大の狩猟好きで、これからの猟銃は連発式の時代になると考えていたという。
その夢をかなえたのが、ボローニャの設計者ブルーノ・チヴォラーニだった。彼が考えたのは、ガスを使わずに次の弾を送る「慣性式」という仕組みで、撃ったときの反動と、ボルト(遊底)の中に組み込んだばねの力を利用する。ガスの通り道がないので汚れにくく、部品も少ない。チヴォラーニはこの仕組みを作ってくれる会社を探していて、そこに手を挙げたのがベネリ兄弟だった。1967年にベネリ・アルミが設立され、1969年1月に最初の150丁が生まれた。
その後、1983年にイタリアの老舗ベレッタの傘下に入る。ベレッタについてはベレッタ92F/M9の解説で書いた。創業500年の老舗と、バイク屋から生まれた新興メーカー。同じイタリアの銃でも、生い立ちはまるで違う。
ベネリの系譜:M1、M3、そしてM4
ベネリの「スーパー90」の名を持つ散弾銃を並べると、M4がどれだけ異色かがよくわかる。
| モデル | 作動方式 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| M1スーパー90 | 慣性式(半自動) | ベネリの名を広めた慣性式の半自動散弾銃。警察や軍でも使われた |
| M2 | 慣性式(半自動) | M1の後継 |
| M3スーパー90 | ポンプ式と半自動を切り替え | 一丁で二役。威力の弱い弾はポンプ式で撃てる |
| M4スーパー90 | ガス圧式(半自動) | 米軍の要求に合わせて作った、ベネリ初のガス圧式 |
M3の「切り替え式」は面白い発想で、半自動では動かない弱い弾を撃つときだけポンプ式にできる。軍や警察がどんな弾を使いたいかを、ベネリはずっと見ていたのだと思う。その延長線上に、M4がある。
開発と採用:要求から3か月で試作5丁
1998年5月4日、アメリカ陸軍の兵器研究開発の拠点(ピカティニー造兵廠のARDEC)が、新しい12ゲージ半自動戦闘散弾銃の募集を出した。もともと海兵隊が中心になって進めていた計画で、途中から議会の判断で、陸海空と海兵隊が同じ一種類の散弾銃を使うことになった。名前の「統合軍(ジョイント・サービス)」はそこから来ている。
要求の中身は、ざっくり次のようなものだった。
- 半自動であること
- 12ゲージの00バックショット(大粒の散弾)とスラッグを撃てること
- 有効射程は散弾で40m(できれば50m)、スラッグで100〜125m
- 全長は短く縮められること、重さは弾を抜いて約3.9kg以下
- 暗いところでも使える照準器と、付属品を付けるレールを持つこと
ベネリはこれに合わせてM4を設計し、募集から約3か月後の1998年8月、メリーランド州のアバディーン試験場に試作の5丁を届けた。比較試験では、泥やほこり、極端な温度の中での作動を確かめられ、2万5,000発を撃ち続ける耐久試験でも大きな部品を交換せずに済んだと伝えられている。
1999年の初めに契約が決まり、4月に試作を示す「X」が外れてM1014になった。ちなみに、契約の相手は当時アメリカでベネリの輸入元だったヘッケラー&コッホだった。書類上はドイツの会社が、イタリアの散弾銃をアメリカ軍に納めたことになる。海兵隊は約2万丁を受け取ったとされ、アフガニスタンやイラクの戦場にも持ち込まれた。
私が驚くのは、やはり速さだ。要求が出てから試作品が試験場に届くまで、たったの3か月。日本の装備の調達だと、要求の検討だけで年単位かかることも珍しくない。もちろん、ベネリにはM1やM3で積み上げた技術があり、まったくのゼロから作ったわけではない。それでも、「欲しいものを決めて、早く出してきた会社に勝たせる」という調達のやり方は、見習うところがあると思う。
なぜ慣性式の名門が「ガス圧」を選んだのか
ベネリM4の一番の謎がここだ。慣性式で名を上げた会社が、軍向けの銃ではなぜ得意技を使わなかったのか。
慣性式は、撃ったときに銃が後ろへ下がる動きを利用して次の弾を送る。仕組みが簡単で汚れに強い反面、銃がきちんと後ろへ下がれることが前提になる。銃にライトやスコープを載せて重くなったり、伏せや物陰からの射撃のように不自然な構え方をしたりすると、動きが不安定になりやすいと言われている。
軍の散弾銃は、まさにそういう使われ方をする。装備をあれこれ載せ、いろいろな姿勢で、さまざまな弾を撃つ。そこでベネリは、撃ったときのガスで動くARGO(自動調整ガス作動)という方式を新しく作った。薬室のすぐ前に小さなピストンを2本置き、弾の強さに合わせて自動で動きを調整する。部品の数は少なく、汚れも自分で落とせるように工夫されている。
私はこの決断を、職人が自分の看板の技をあえて封印した場面だと見ている。「うちは慣性式の店だから」と言って慣性式で出していれば、試験の結果はわからなかった。客が何を求めているかを優先して、自分の得意技を引っ込める。小さな会社が大きな契約を取るときの、一つのお手本だと思う。
ちなみに、ガスで部品を動かして次の弾を送るという考え方は、第二次世界大戦の米軍小銃にもある。M1ガーランドの解説と比べてみると、半自動の銃が「どこから力をもらって動くか」の違いが見えてくる。拳銃での同じ話はリボルバーと自動拳銃の違いに書いた。
軍用散弾銃が撃つ弾は一種類ではない
散弾銃の強みは、同じ銃でまったく性格の違う弾を撃てることだ。軍や警察が使う主な弾を並べるとこうなる。
| 弾の種類 | どんな弾か | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 00バックショット | 大粒の散弾が9粒ほど入った弾 | 近距離の戦闘。軍の要求の基本になった弾 |
| スラッグ | 一粒の大きな弾 | 遠めの目標、車両や障害物の向こうの相手 |
| 非致死弾(ゴム弾・布袋弾) | 相手を倒すが命は奪いにくい弾 | 暴徒鎮圧、警備 |
| ドア破り用の弾 | 金属の粉を固めた、当たると砕ける弾 | 建物への突入で鍵や蝶番を壊す |
散弾銃は弾を替えるだけで、戦う道具にも、押さえ込む道具にも、ドアを開ける鍵にもなる。私は散弾銃を「弾で性格が変わる銃」だと思っている。そして、この弾の幅の広さこそが、次に書く「ポンプ式が消えなかった理由」につながっている。
半自動が勝ったのに、ポンプ式が消えなかった理由
ここでモスバーグM500との違いを整理しておく。
| 項目 | ベネリM4(M1014) | モスバーグM500/M590 |
|---|---|---|
| 作動方式 | 半自動(ガス圧) | ポンプ式(手動) |
| 次弾の送り方 | 撃つたびに自動 | 前の握りを前後に動かす |
| 連射の速さ | 速い | 撃ち手の腕しだい |
| 威力の弱い弾(非致死弾など) | 自動では送れず、手で操作が必要 | 問題なく撃てる |
| 重さ・値段 | 重めで高め | 軽めで安め |

写真:Cpl. Juan D. Alfonso/出典(パブリックドメイン)
ベネリM4は比較試験に勝ったが、海兵隊の散弾銃をすべて置き換えたわけではない。理由は表の4行目にある。暴徒鎮圧用のゴム弾のように弱い弾は、ガスの力が足りず、次の弾を自動で送れない。警備や治安の任務では、そういう弾を撃つ場面が多い。だから、使用可能な弾薬の範囲で、装薬の弱い弾にも対応しやすいポンプ式が残った。
私はこれを、「速い銃」と「なんでも撃てる銃」の役割分担だと考えている。戦場で建物に突入するならM4、検問や警備で弱い弾も使うならポンプ式。M500が「軍のテストに落ちてから軍の標準になった」話はモスバーグM500の解説にまとめた。二つの記事を続けて読むと、散弾銃が軍の中で生き残ってきた理由がよくわかる。
ベネリM4の弱点
褒めてばかりでは公平でないので、弱点も書いておく。
- 重い:弾を込めると4kgを超え、小銃と一緒に持ち歩くには負担になる。散弾銃は多くの場合「二丁目の銃」なので、この重さは効いてくる
- 値段が高い:ポンプ式と比べると、一丁あたりの値段はかなり高い。軍が全員に配る銃にはなりにくい
- 再装填が遅い:管状の弾倉に一発ずつ込めるので、箱型の弾倉を差し替える小銃のようにはいかない
- 射程が短い:散弾で50m前後、スラッグでも100m台が実用の目安。広い戦場の主役にはなれない
どれも散弾銃という道具そのものの限界でもある。ベネリM4は、その限界の中でいちばんよくできた一丁であって、小銃の代わりになる銃ではない。
世界での採用と、ドローン時代の散弾銃
ベネリM4を使っている、または使ってきた主な国と組織を並べておく。
| 国・組織 | 呼び名・使い方 |
|---|---|
| アメリカ(海兵隊ほか) | M1014。1999年から |
| イギリス | L128A1。アフガニスタンでも使用 |
| イタリア | 軍・警察 |
| アイルランド、スペイン海軍歩兵隊ほか | 軍の戦闘用散弾銃 |
| ベルギー、デンマーク | 小型ドローン対策としての採用(2023年・2025年) |
| ウクライナ | ロシアとの戦争で使用 |
最近の動きで面白いのが、表の下のほうだ。ウクライナの戦場では、低く速く飛んでくる小型の自爆ドローンに対して、最後の備えとして散弾銃を持つ兵士が増えたと伝えられている。点で当てる小銃より、面で広がる散弾のほうが小さな的には当てやすい。ベルギーやデンマークがドローン対策としてベネリM4を採用したのも、この流れの中にある。
私は、いちばん古い種類の銃が、いちばん新しい脅威の前で見直されているところに、戦争の皮肉を感じる。もちろん散弾銃は射程が短く、ドローン対策の主役は迎撃ドローンや電波妨害だ。日本企業がウクライナに送り出した迎撃ドローンの話は迎撃ドローンTerra A1/A2の解説に書いた。散弾銃は、そうした網をすり抜けてきた一機に対する「最後の一発」なのだと思う。
「M4」の名前で混乱しないために
最初に書いたとおり、ミリタリーで「M4」と言えば、まず思い浮かぶのは米軍の小銃M4カービンだろう。整理しておくと、

- M4カービン:米軍の5.56mm小銃。AR-15の系譜。M4カービンとAR-15の違いで解説
- M4シャーマン:第二次世界大戦の米軍の中戦車
- ベネリM4:この記事の主役。米軍での正式名はM1014
ベネリの「M4」はメーカー内の型番で、米軍の命名とは関係がない。米軍の書類やゲームではM1014、民間の売り場ではベネリM4、と覚えておけば混乱しない。
日本でベネリM4に触れるには
日本では、散弾銃を持つには都道府県の公安委員会の許可が必要で、目的も狩猟や有害鳥獣の駆除、標的射撃などに限られる。装弾数などにも細かい決まりがあり、軍用のM1014とは扱いがまったく違う。
もっと気軽に形を楽しみたいなら、エアガンという手がある。国内大手の東京マルイは、M4ではなく先代のM3スーパー90をエアーコッキング式のショットガンとして出してきた。エアガンは18歳以上向けのものが多く、遊ぶときは決められたフィールドで、必ず目を守る道具を着けてほしい。
投資家目線でひとこと
ベネリの親会社であるベレッタ・ホールディングは、ベレッタ家が持つ非上場の会社だ。フィンランドのサコやティッカ、同じイタリアのフランキなど、狩猟・射撃用の銃の名門をいくつも傘下に持つが、株を買って応援することはできない。イタリアの防衛産業に投資の目を向けるなら、上場している大手のレオナルドの解説や、防衛ETF・投資信託の比較のほうが入口になる。
※この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではない。株価や業績は変動し、元本割れの可能性もある。投資判断は自己責任で。
よくある質問
ベネリM4とM1014は同じ銃?
基本的に同じ銃だ。M1014は米軍での正式な名前で、ベネリの型番ではM4スーパー90になる。民間向けは弾倉の長さなどが軍用と違う。
M4カービンと関係はある?
ない。名前がたまたま同じなだけで、M4カービンは米軍の小銃、ベネリM4はイタリア製の散弾銃だ。
ベネリM4は慣性式?
違う。ベネリの多くの散弾銃は慣性式だが、M4はベネリで初めてのガス圧式(ARGO)だ。
なぜ軍用散弾銃なのに半自動が選ばれたの?
連続して素早く撃てるからだ。建物への突入や近い距離での戦いでは、一発ごとに手で操作するポンプ式より有利になる。ただし弱い弾を自動で送れないので、ポンプ式も併用されてきた。
今も使われている?
米海兵隊をはじめ、各国で使われ続けている。最近はウクライナでの戦争や、ドローン対策の装備としても名前が出てくる。
まとめ
- ベネリM4は、イタリアのベネリが1998年に開発した12ゲージの半自動散弾銃で、米軍ではM1014として1999年に採用された
- 要求から約3か月で試作5丁を出し、厳しい比較試験に勝った
- 慣性式の名門ベネリが、軍の使い方に合わせて初めてガス圧式(ARGO)を選んだ銃でもある
- 弱い弾を自動で送れないため、ポンプ式のM500やM590とは役割を分け合ってきた
- ドローンの時代になって、散弾銃は「最後の一発」として改めて注目されている
慣性式の看板を下ろしてまで客の注文に応えた銃が、四半世紀たった今、ドローンという新しい客の前でもう一度呼ばれている。古い道具は、使い方を変えれば何度でも戻ってくる。ベネリM4は、そのいちばんわかりやすい見本だと思う。







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