戦闘機や戦車のプラモデルを作ってみようと思って、まず困るのが道具だ。模型店の工具売り場には、ニッパーだけで何種類も並び、接着剤も塗料も筆も、似たような箱がずらりとある。ネットで「プラモデル 道具」と調べると、出てくるのはほとんどがガンプラ向けの道具リストだ。
ところが、ガンプラの道具リストをそのままミリタリーのプラモデルに使うと、大事なものが抜け落ちる。ガンプラの多くは、部品がはじめから色分けされていて、はめ込むだけで組み上がる。一方、戦闘機も戦車も軍艦も、ほとんどのキットは一色のプラスチックで成形されていて、部品は接着剤でつけ、色は自分で塗るのが前提だ。ガンプラの道具箱には、この接着剤と塗料がそもそも入っていないことが多い。
この記事では、ミリタリーのプラモデルを作るのに必要な道具を、作業の順番に沿って整理した。そのうえで、最初の1個で要る物、2個目以降で欲しくなる物、本格的に始めてから買えばいい物の3段階に分けた。飛行機、戦車、艦船で変わる道具もまとめている。何を買えばいいかだけ知りたい人は、最初の表だけ見てもらえば十分だ。
- 最初の1個で要る道具は10個ほど。ニッパー、デザインナイフ、流し込みタイプの接着剤、紙やすり、マスキングテープ、筆、塗料、塗料皿、カッティングマット、綿棒
- ガンプラの道具箱に足りないのは、プラモデル用の接着剤と塗料。ここだけは必ず足す
- プラモデル用の接着剤は「くっつける」のではなく、プラスチックを溶かして「つなぐ」。だから、つかない素材がある
- 塗料は水性アクリル・ラッカー・エナメルの3種類。重ねるときは「ラッカーが下、エナメルが上」と覚える
- エアブラシや高価な工具セットは、最初はいらない。2個目、3個目で「これが欲しい」と思ってから買えば、無駄がない
結論:最初の1個で要る道具はこれだけ
まず、最初のキットを1個完成させるのに必要な道具を表にまとめた。これだけそろえば、戦闘機でも戦車でも軍艦でも、ひと通り作れる。
| 道具 | 何に使うか | 選び方のポイント |
|---|---|---|
| プラモデル用ニッパー | 部品を枝(ランナー)から切り離す | 刃の薄いプラモデル用を選ぶ |
| デザインナイフ | 切り口の出っ張りを削る | 替え刃もいっしょに買う |
| 接着剤(流し込みタイプ) | 部品をつなぐ | 初心者は流し込みタイプから |
| 紙やすり | 切り口や合わせ目をならす | 400番・600番・1000番くらいがあれば足りる |
| マスキングテープ | 塗り分けの境目を守る | 模型用の細いものが使いやすい |
| 筆 | 細かい部分を塗る | 平筆と細い面相筆を1本ずつ |
| 塗料 | 機体・車体・艦体を塗る | 説明書の指定色から、面積の大きい2〜3色だけ |
| 塗料皿・調色スティック | 塗料を出す、混ぜる | 使い捨ての皿でもいい |
| カッティングマット | 机を守る、部品をなくさない | A4くらいの大きさで十分 |
| 綿棒 | はみ出しをふく、デカールを押さえる | 家にあるもので十分 |
表を見るとわかるとおり、最初からそろえるものは意外と少ない。そして、ガンプラの道具箱から持ってこられるのは、ニッパー、デザインナイフ、やすり、綿棒くらいだ。接着剤、マスキングテープ、筆、塗料、塗料皿は、新しく足すことになる。

ガンプラの道具箱に足りないもの
ガンプラを作ったことがある人のために、もう少しくわしく比べておく。
| 作業 | ガンプラでよくある作り方 | ミリタリーのキット |
|---|---|---|
| 組み立て | はめ込み式で、接着剤はほとんど使わない | 接着剤でつけるのが前提 |
| 色 | 部品がはじめから色分けされている | 一色のプラスチックなので、自分で塗る |
| 塗り分け | シールやマーカーで済むことも多い | マスキングテープで区切って塗る |
| 仕上げ | スミ入れとつや消しで一段上がる | スミ入れ、つや消し、汚しで「実物らしさ」が出る |
こうして並べると、ミリタリーのプラモデルは、ガンプラよりも「接着」と「塗装」の比重がずっと大きいことがわかる。逆に言えば、ニッパーやナイフの使い方に慣れているガンプラ経験者は、接着と塗装の道具さえ足せば、すぐにミリタリーにも入れる。
作業の順番で見る道具
ここからは、プラモデルを作る順番に沿って、道具を1つずつ見ていく。
切る:ニッパーとデザインナイフ
部品は、ランナーと呼ばれるプラスチックの枠につながった状態で箱に入っている。それを切り離すのがニッパーだ。
プラモデル用のニッパーは、刃が薄く、切り口がきれいになるように作られている。工具箱にある電気工事用のニッパーでも切れないことはないが、刃が厚いので、切り口が白く潰れたり、細い部品を折ったりしやすい。ここはプラモデル用を1本買ったほうがいい。
コツは「二度切り」だ。最初は部品から少し離れたところでランナーを切り、部品に少し残った出っ張りを、2回目に部品のぎりぎりで切る。いきなり部品の際で切ろうとすると、切った力で部品がえぐれることがある。もうひとつ、刃の薄いニッパーは、太いランナーや金属線を切ると刃を傷めやすい。太いところは、家にある普通のニッパーで先に切っておくと、薄刃のニッパーが長持ちする。
切り口にわずかに残った出っ張りは、デザインナイフで薄く削り取る。ナイフの刃は消耗品で、切れ味が落ちると力が入って危ないので、替え刃もいっしょに用意しておきたい。刃を自分のほうに向けて動かさない、刃の進む先に指を置かない、という2つだけは必ず守ってほしい。
削る:紙やすり
切り口を整えたり、部品と部品の合わせ目の段差をならしたりするのが、やすりの仕事だ。やすりは「番手」と呼ばれる数字で目の粗さが決まっていて、数字が小さいほど粗く、大きいほど細かい。
| 番手 | 目の粗さ | 主な使い道 |
|---|---|---|
| 400番前後 | 粗い | 段差や大きな出っ張りを削る |
| 600〜800番 | 中くらい | 削った跡をならす |
| 1000〜1500番 | 細かい | 塗装の前の仕上げ |
| 2000番以上 | とても細かい | 透明な部品やつやを出す仕上げ(2個目以降でいい) |
最初は400番、600番、1000番の3種類があれば足りる。粗い番手から順に細かい番手へ進めていくのが基本で、いきなり細かい番手で削ろうとすると、時間ばかりかかってなかなか平らにならない。紙やすりを小さく切って、板や棒に両面テープで貼ると、平らな面を削りやすくなる。最初から当て板つきになったスポンジ状のやすりもあって、曲面にもなじむので使いやすい。
つける:接着剤は4種類を使い分ける
ここが、ガンプラとミリタリーでいちばん違うところだ。
まず知っておいてほしいのは、プラモデル用の接着剤は、のりのように「くっつける」ものではない、ということだ。プラモデルの部品の多くはポリスチレンというプラスチックでできていて、プラモデル用の接着剤はそのポリスチレンを溶かす溶剤でできている。部品の表面を少し溶かし、溶けた面同士がまじり合ってから固まる。いわば、のりづけというより溶接に近い。
この仕組みを知っておくと、2つのことが理解できる。1つ目は、はみ出した接着剤に触ると、溶けた表面に指紋がついたまま固まってしまう理由。2つ目は、ポリスチレン以外の素材にはプラモデル用の接着剤がつかない理由だ。関節に使われる柔らかいポリキャップや、キットによってはベルト式の戦車の履帯のように、別の素材でできた部品がある。そういう部品には、説明書で指定された別の方法を使う。
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 流し込みタイプ | さらさらの液体。部品を合わせてから、すき間に筆で流す | ほとんどの組み立て。初心者はまずこれ |
| 普通タイプ | とろみがある。部品に塗ってから合わせる | 合わせる面が広い部品、すき間を少し埋めたいとき |
| 瞬間接着剤 | すぐ固まる。金属にもつく | 金属のエッチングパーツ、ポリスチレン以外の素材 |
| 透明部品用の接着剤 | 乾くと透明になる水性ボンド | キャノピーや窓など透明な部品 |
最初の1個は、流し込みタイプだけで足りる。部品を手で押さえて位置を決めてから、すき間に筆の先で少しずつ流せばいい。毛細管現象で接着剤が合わせ目に吸い込まれていくので、はみ出しも少ない。
気をつけたいのは、透明な部品だ。キャノピーや艦橋の窓に普通の接着剤を使うと、溶けた成分が内側に回って、白く曇ることがある。瞬間接着剤も、固まるときに出る成分で透明な部品が白くなりやすいので避けたい。透明な部品には、乾くと透明になる水性のボンドを、つまようじの先でほんの少しだけ使う。
普通タイプと瞬間接着剤は、2個目以降で必要になったときに買い足せばいい。戦闘機の座席のシートベルトなど、金属の薄板でできたエッチングパーツが入ったキットを作るときが、瞬間接着剤の出番だ。
守る:マスキングテープ
塗り分けの境目を作ったり、塗りたくない場所を覆ったりするのがマスキングテープだ。模型用のマスキングテープは、貼ってはがしても塗装を傷めにくく、細かい曲線にもなじむようにできている。
戦闘機の上下の塗り分けや、キャノピーの窓枠を塗るときに大活躍する。最初は細い6mm幅が1本あれば足りる。広い面を覆うときは、テープで縁だけ囲って、内側は紙やラップで覆えば節約になる。ドイツ戦車のような、境目のぼやけた迷彩を塗るときは、テープの代わりに練り消しを細くのばして貼ると、境目が自然にぼける。
最近の飛行機のキットには、キャノピーの窓枠に合わせて切り抜かれたマスクシールが入っていることも多い。キットにマスクシールが入っているかどうかは、最初の1個を選ぶときの大事な目安になる。キットの選び方は戦闘機プラモデル初心者のおすすめでくわしく書いた。
塗る:塗料は3種類、重ねる順番に決まりがある
模型用の塗料は、大きく分けて水性アクリル、ラッカー、エナメルの3種類がある。どれか1つを選べばいいのではなく、それぞれ得意なことが違う。
| 種類 | 特徴 | 向いている使い方 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| 水性アクリル | においが少なく、筆塗りしやすい。水で筆を洗えるものも多い | 筆塗り、細部の塗り分け | 塗膜はやや弱い。乾燥に時間がかかる |
| ラッカー | 乾きが速く、塗膜が強い。発色がいい | 缶スプレーやエアブラシでの全体塗装、下地 | においが強い。換気が必須 |
| エナメル | 伸びがよく、ふき取りやすい | スミ入れ、汚し、細部の修正 | 溶剤を流しすぎると部品が割れることがある |
重ねて塗るときは、順番が大事だ。強い溶剤を使う塗料の上に、弱い溶剤の塗料を重ねるのが基本で、タミヤも「ラッカー塗料を下塗りし、その上にアクリル塗料やエナメル塗料を上塗りするのがコツ」と案内している。覚え方は「ラッカーが下、エナメルが上」。逆にすると、上から塗った塗料の溶剤で、下の塗装が溶けてにじむことがある。
最初の1個は、筆で塗れる水性アクリルから始めるのが無難だと私は思う。部屋で使っても、においがきつくない。ただ、水性でも溶剤は入っているので、窓を開けて換気はしておきたい。
塗料は、説明書の指定色を全部そろえる必要はない。まずは機体や車体、艦体の面積の大きい色を2〜3色。コクピットやタイヤ、砲身のような小さい部分は、黒や銀などの基本色で代用しても、十分それらしく見える。
筆は、広い面を塗る平筆と、細かいところを塗る面相筆を1本ずつ用意すればいい。筆塗りのコツは、塗料を少しだけ薄めて、一度で塗りつぶそうとせず、乾かしながら2〜3回に分けて重ねることだ。1回目はムラだらけでも、2回目、3回目で驚くほどきれいになる。
塗料を出して混ぜるのには、塗料皿と調色スティックを使う。調色スティックは、片方がへら、片方がさじになった棒で、塗料をかき混ぜたり、少量をすくって皿に移したりするのに便利だ。
貼る:デカール
国籍マークや部隊マーク、機体番号は、デカールと呼ばれる水転写式のシールで再現する。水に浸けて台紙からずらし、所定の位置に貼る仕組みだ。
デカールを貼るときに使うのは、ハサミ、ピンセット、綿棒、それに水を入れた小皿くらいで、特別な道具はいらない。ただ、下に空気が残ると、乾いたあとで銀色にてかって見える。綿棒で中の水と空気を外へ押し出すのがコツだ。曲面や筋彫りの上に貼るときは、デカールを柔らかくしてなじませる軟化剤や、のりの力を補う定着剤があると、ぴたりと沈む。これは2個目以降でいい。
仕上げる:スミ入れ、つや消し、汚し
組み上がって塗り終えたら、仕上げでぐっと実物らしくなる。ここからは、2個目以降の楽しみと考えてもいい。
1つ目はスミ入れだ。機体や車体に刻まれた細い溝(パネルライン)に、薄めた黒やグレーの塗料を流し込み、はみ出した分をふき取る。溝が線として浮かび上がり、立体感が一段上がる。スミ入れ用の塗料はエナメル系が多く、下のラッカーやアクリルを溶かさずにふき取れる。ただし、溶剤をたっぷり流しすぎると、部品に染み込んで、力のかかった部分が割れることがある。少量を溝に置く、くらいの気持ちで使いたい。
2つ目はつや消しだ。実物の戦闘機や戦車は、多くがつやを抑えた塗装になっている。塗装とデカールが終わったら、最後につや消しのクリアーを全体に吹き付けると、プラスチックのてかりが消え、デカールの段差も目立たなくなる。缶スプレーが多いので、屋外か、よく換気した場所で使う。
3つ目は汚しだ。戦車の足まわりの泥やほこり、艦艇のさびや排気の汚れを加えると、ぐっと「使われている兵器」らしくなる。化粧品のパウダーのような感覚でこすりつける汚し材なら、筆も溶剤もいらず、失敗しても簡単に落とせる。
戦車の汚しの用品は、ウェザリング用品の選び方で車体の色別に選んだ。
飛行機・戦車・艦船で変わる道具
基本の道具は共通だが、作るジャンルによって、出番の多い道具や、つまずきやすい場所が変わる。
| 飛行機 | 戦車 | 艦船 | |
|---|---|---|---|
| 特に出番が多い道具 | マスキングテープ、透明部品用の接着剤 | 汚し材、履帯の接着に使う道具 | ピンセット、細い面相筆 |
| つまずきやすい場所 | キャノピーの塗装と接着、胴体の合わせ目 | 履帯の組み立て、たくさんある転輪 | 小さな部品、マストや手すり |
| 塗装の特徴 | 上下の塗り分けや迷彩が多い | 単色の車体に、迷彩や汚しを重ねる | 艦艇色の2〜3色が中心 |
飛行機は、塗装の比重がいちばん大きいジャンルだ。上下で色が分かれていたり、迷彩が入っていたりするので、マスキングテープの出番が多い。キャノピーの扱いも飛行機ならではで、透明部品用の接着剤があると安心できる。何を作るか迷っている人は、世界最強戦闘機ランキングを眺めて、作りたい1機を探してみてほしい。
戦車でいちばん気をつけたいのは履帯だ。帯状のベルト式と、1枚ずつ、または何枚かずつつなげていく連結式がある。連結式は流し込み接着剤で1枚ずつつないでいけばいいが、ベルト式は、キットによって普通の接着剤でつけられるものと、つけられない素材のものがある。説明書の指示を必ず確認してほしい。また戦車は、泥やほこりの汚しで化けるジャンルなので、汚し材を足すと一気に楽しくなる。どの戦車を作るか迷ったら、ドイツ戦車10選や日本の戦車一覧から選ぶのもいい。
艦船、とくに1/700のウォーターラインのキットは、部品がとても小さい。指でつまめない部品が多いので、ピンセットは最初から用意したほうがいい。塗装は艦艇色を中心に2〜3色で済むことが多く、筆塗りでも十分仕上がる。艦船の最初の1隻の選び方は艦船プラモの入門記事にまとめてある。

最初にそろえる塗料の色:ジャンル別の目安
塗料は、説明書に並ぶ指定色を全部そろえなくていい、と先に書いた。では、最初に何色を買えばいいのか。作るものごとに、最初の1個で買っておきたい色の目安をまとめた。
| 作るもの | 最初に買う色の目安 | 小さい部分の代用 |
|---|---|---|
| 第二次世界大戦の日本海軍機(零戦52型など) | 上面の暗緑色、下面の明灰白色、コクピット色 | プロペラやタイヤは黒系、脚や機銃は銀 |
| 現用の戦闘機(F-35Aなど) | 機体のグレー系1〜2色 | タイヤや排気口は黒系、細部は銀 |
| 第二次世界大戦後半のドイツ戦車 | 車体のダークイエロー、迷彩用の赤茶とグリーン | 履帯は茶や黒系、工具の柄は木の色 |
| 1/700の日本海軍の軍艦 | 船体の軍艦色、甲板の色(リノリウムの茶色か木の色) | 煙突の先などは黒 |
零戦52型の上面の暗緑色と下面の明灰白色の違いや、型ごとの塗装の変化は零戦の解説を読むと、どの色をどこに塗るのかがすっと頭に入る。ドイツ戦車のダークイエローと迷彩は、大戦の後半に広まった塗装で、パンター戦車の解説に出てくる車両の多くがこの塗り方だ。軍艦は、同じ日本海軍でも艦や時期によって甲板が違うので、作る艦の説明書を見て決めたい。最初の1隻に人気の戦艦大和そのものについては、戦艦大和の解説で書いた。
現用機は、同じ機種でも国や年代でグレーの色味が違うので、作るマーキングに合わせて説明書の指定を見る。航空自衛隊のF-35Aがどんな機体かはF-35A/Bの解説にまとめた。
この表の色に、黒と銀、それに薄め液があれば、たいていのキットは最後まで塗れる。最初から色をそろえすぎないほうが、1本1本の色の使い方を覚えられて、かえって上達が早いと私は思う。
塗料のメーカーはそろえたほうがいい?
模型用の塗料で代表的なのは、タミヤとGSIクレオスのものだ。どちらも模型店でよく見かける。説明書の指定色は、そのキットのメーカーの塗料で書かれていることが多いので、最初はキットと同じメーカーの塗料を選ぶと、色の名前で迷わずに済む。
気をつけたいのは、混ぜるときだ。同じ水性アクリルでも、メーカーが違うと成分が違うので、混ぜると固まったり、うまく乾かなかったりすることがある。色を混ぜて作るときは、同じメーカーの、同じ種類の塗料同士にしておくのが無難だ。
ジャンル別・最初の1個の買い物リスト
ここまでの話を、実際の買い物リストにしておく。模型店や通販のかごに入れるときに、このまま確かめてほしい。
飛行機(例:タミヤ1/48の零戦52型)を作るなら
- □ キット
- □ プラモデル用ニッパー、デザインナイフと替え刃
- □ 流し込みタイプの接着剤
- □ 紙やすり(400番・600番・1000番)
- □ マスキングテープ(6mm)
- □ 平筆と面相筆
- □ 塗料:暗緑色、明灰白色、コクピット色、黒、銀、薄め液
- □ 塗料皿、カッティングマット、綿棒
戦車(例:1/35のドイツ戦車)を作るなら、飛行機のリストから暗緑色・明灰白色・コクピット色を外して、次を足す
- □ 塗料:ダークイエロー、迷彩用の赤茶とグリーン、履帯用の茶か黒
- □ 履帯の接着に使うもの(説明書で指定を確認)
- □ あれば汚し材
軍艦(例:1/700の日本海軍の艦)を作るなら、飛行機のリストから機体の色を外して、次を足す
- □ 塗料:軍艦色、甲板の色
- □ ピンセット
- □ 細い面相筆をもう1本
ガンプラの道具をすでに持っている人は、この中からニッパー、デザインナイフ、紙やすり、綿棒を外していい。それでも残る接着剤、マスキングテープ、筆、塗料が、ミリタリーのプラモデルに入るための入場券だ。
3段階でそろえる:最初の1個、2〜3個目、本格的に
道具は、一度に全部そろえる必要はない。むしろ、作りながら「これがあれば楽なのに」と思ったものを足していくほうが、無駄がない。私のおすすめは、次の3段階でそろえていく方法だ。
| 段階 | そろえるもの | このころの作り方 |
|---|---|---|
| 第1段階:最初の1個 | ニッパー、デザインナイフ、流し込み接着剤、紙やすり3種、マスキングテープ、筆2本、塗料2〜3色、塗料皿・調色スティック、カッティングマット、綿棒 | 組んで、筆で塗って、デカールを貼る |
| 第2段階:2〜3個目 | ピンセット、普通タイプの接着剤、瞬間接着剤、スミ入れ塗料、つや消しクリアー、デカールの軟化剤・定着剤、スポンジやすり、塗装用の持ち手、下地用の缶スプレー | スミ入れとつや消しで仕上げを一段上げる |
| 第3段階:本格的に | エアブラシとコンプレッサー、塗装ブース、汚し用の塗料やパステル、細かい番手のやすり、穴あけ用のピンバイス、作業用ライト | ぼかし迷彩、本格的な汚し、細部の作り込み |
第1段階のころは、とにかく1個を完成させることが目標だ。完成させると、自分がどこでつまずいたか、何があれば楽だったかがはっきりわかる。それが、第2段階で何を買えばいいかの答えになる。
第2段階で一度に変わるのは、仕上げだ。スミ入れとつや消しを覚えるだけで、同じキットでも別物のように見える。部品を持ったまま塗れる塗装用の持ち手(クリップのついた棒)もこのころ欲しくなる。
第3段階のエアブラシは、模型の道具の中でいちばん高い買い物になる。そのかわり、境目をぼかした迷彩や、広い面のむらのない塗装は、エアブラシでないと難しい。ドイツ戦車の迷彩や、F-16のようなグレーの濃淡を塗りたくなったら、それが買いどきだ。ラッカー塗料を吹くなら、においと塗料の霧を外に出す塗装ブースも、いっしょに考えておきたい。
本格的に模型を楽しみたくなったら、細かい番手のやすりでキャノピーを磨き上げるのもいい。透明な部品が、もう一段すっきり透き通る。
道具より先に用意したい「作業場所」
道具をそろえる前に、作業する場所を決めておくと、あとが楽になる。
1つ目は換気だ。接着剤も塗料も、程度の差はあれ溶剤を含んでいる。窓のそばで作業するか、換気扇を回せる場所を選びたい。缶スプレーは屋外で使うのが理想だ。溶剤の多くは火がつきやすいので、ストーブやコンロのそばでは使わない。
2つ目は、作業を中断しても片づけなくていい場所だ。接着剤や塗料が乾くのを待つ時間が長いので、作りかけの部品をそのまま置いておける場所があると、続けやすい。小さな部品はすぐになくなるので、ふたつきの箱やチャックつきの袋に部品を分けて入れておくといい。
3つ目は明るさだ。小さな部品の切り口や、筆の先の具合は、暗いところでは見えにくい。机の上を照らすライトが1つあるだけで、作業の正確さがかなり変わる。
小さな子どもやペットがいる家なら、刃物と溶剤は手の届かないところにしまう習慣もつけておきたい。
道具を長持ちさせる手入れ
道具は、手入れ次第でずいぶん長持ちする。どれも1分もかからないことなので、習慣にしておきたい。
ニッパーは、先に書いたとおり、太いランナーや金属線を切らないことがいちばんの手入れだ。刃の薄いニッパーは、硬いものを切ると刃が欠けて、切り口に筋が残るようになる。
筆は、使い終わったらすぐに洗う。水性アクリルなら水か専用の薄め液、ラッカーやエナメルなら、それぞれの溶剤で洗う。塗料が根元に残ったまま固まると、穂先が割れて二度と細い線が引けなくなる。洗ったあとは、穂先を指で整えてから乾かす。
塗料のビンは、ふたを閉める前に、ビンの口についた塗料をティッシュでふき取っておく。これを怠ると、ふたが塗料で固まって開かなくなる。接着剤のビンも同じで、使い終わったらすぐにふたを閉める。開けっぱなしにすると、溶剤が飛んで中身がどんどん濃くなっていく。
デザインナイフの刃は、切れ味が落ちたと感じたら迷わず替える。切れない刃ほど力が入って、手をすべらせやすい。替え刃の値段より、けがのほうがずっと高くつく。
失敗したときに助けてくれる道具と方法
プラモデルを作っていれば、失敗は必ずある。大事なのは、たいていの失敗にはやり直す方法がある、と知っておくことだ。
部品を折ってしまったら、瞬間接着剤で折れ口をつなぐ。細い脚やアンテナのように力のかかる場所は、プラモデル用の接着剤より瞬間接着剤のほうが早く強く固まる。
接着剤がはみ出して表面が荒れたら、触らずにしっかり乾かしてから、紙やすりで平らにならす。あわてて指でふくと、かえって跡が広がる。
塗装がむらになったら、乾いてから上に薄く重ねて塗る。それでもうまくいかないときは、塗装をはがす専用の液や、溶剤を含ませた布で落としてやり直す方法もある。ただし、強い溶剤はプラスチックを傷めることもあるので、目立たない場所で試してからにしたい。
部品をなくしたり、壊して使えなくなったりしたときは、メーカーに部品を注文できることがある。タミヤなどは、説明書の部品番号をもとに、足りない部品を取り寄せられる仕組みを用意している。床に落とした小さな部品を探すときは、懐中電灯を床すれすれに当てると、影ができて見つけやすい。
最初は買わなくていい道具
逆に、最初は買わなくていい道具もある。
1つ目は、高価な工具のセット。何十点も入ったセットは魅力的だが、最初の1個で使うのはそのうちの数点だ。必要なものを1つずつ買うほうが、結局は安くつくし、自分に合った道具が選べる。
2つ目は、エアブラシ。先に書いたとおり、筆と缶スプレーで作れるキットはいくらでもある。エアブラシは、筆では塗れない迷彩に挑戦したくなってからで遅くない。
3つ目は、全色の塗料。説明書に並ぶ指定色を全部そろえようとすると、それだけで大きな出費になる。面積の大きい色から買い、小さい部分は手持ちの色で代用すればいい。
道具は、腕と一緒に増やしていくものだと私は思っている。最初から全部そろえるより、1個作るごとに1つずつ道具が増えていくほうが、上達もはっきり感じられる。
よくある質問
100円ショップの道具でもいい?
カッティングマット、綿棒、塗料皿、ピンセット、部品を分ける小さな箱などは、100円ショップのもので十分だ。ただ、ニッパーと接着剤は、模型用のものを買ったほうがいい。ニッパーは刃の薄さで切り口がまるで変わるし、接着剤はプラスチックを溶かしてつなぐ専用のものでないと、きちんとつかない。
ガンプラ用に買ったニッパーは使える?
そのまま使える。ミリタリーのキットでも、部品を切り離す作業は同じだ。ガンプラで使い慣れたニッパーがあるなら、新しく買い足すのは接着剤と塗料、マスキングテープ、筆くらいで済む。
水性とラッカー、最初はどっちがいい?
部屋で筆塗りするなら、においの少ない水性アクリルから始めるのが無難だ。広い面を缶スプレーで塗るときはラッカー系が多くなるので、そのときは屋外か、よく換気した場所で使いたい。重ねるときは「ラッカーが下、エナメルが上」を守れば、大きな失敗は避けられる。
においが心配なときは?
接着剤も塗料も、においの少ない製品が増えている。タミヤの接着剤には「低臭」をうたった普通タイプと流し込みタイプがあり、塗料は水性アクリルを選べば、ラッカーよりずっとにおいが少ない。それでも溶剤はゼロではないので、窓を開けるか換気扇を回しながら作業したい。ラッカーの缶スプレーやエアブラシを使うようになったら、有機溶剤用のマスクと塗装ブースを考える時期だ。
最初の1個は、どれくらいで完成する?
1/48の戦闘機や1/72のジェット機くらいなら、組み立てと塗装を合わせて、週末2回ほどが目安だと私は思う。接着剤や塗料が乾くのを待つ時間を、夜や平日に回せば、作業そのものはそれほど長くない。急いで乾かないうちに次の作業へ進むのが、いちばんの失敗のもとだ。
エアブラシはいつ買えばいい?
筆と缶スプレーで何個か作り、「この迷彩は筆では無理だ」と感じたときが買いどきだ。境目のぼやけたドイツ戦車の迷彩や、グレーの濃淡で塗り分けられた現用機を作りたくなったら、考えてみるといい。
道具はどこで買えばいい?
模型店や家電量販店の模型売り場なら、実物を手に取って選べる。ニッパーの握りやすさや、筆の穂先の細さは、実物を見るとよくわかる。近くに売り場がなければ、通販やメーカーの公式オンラインショップでも、この記事で挙げた道具はひと通りそろう。
完成品のほこり対策は?
完成した模型は、ほこりが積もると細かい部分の掃除が難しくなる。扉つきの棚に飾るか、模型の大きさに合った透明なケースに入れるのがいちばんだ。すでにほこりが積もってしまったら、柔らかい筆で払うか、カメラのレンズ用のブロアーで吹き飛ばすといい。
子どもと一緒に作るなら、何に気をつければいい?
刃物と溶剤は大人が受け持つのがいちばん安全だ。デザインナイフは大人が使い、子どもには刃の小さいニッパーで部品を切り離す作業や、デカール貼りを任せるといい。接着剤や塗料を使うときは換気をして、使い終わったらすぐにふたを閉める習慣をつけたい。
まとめ
- 最初の1個で要る道具は10個ほど。ガンプラの道具箱に、接着剤・マスキングテープ・筆・塗料を足すのが基本
- ニッパーはプラモデル用を。二度切りで切り口がきれいになる
- 接着剤はプラスチックを溶かしてつなぐもの。最初は流し込みタイプ、透明部品には乾くと透明になるボンド
- 塗料は水性アクリル・ラッカー・エナメルの3種類。重ねるときは「ラッカーが下、エナメルが上」
- 道具は3段階でそろえる。エアブラシや工具セットは、作りたいものが見えてからで遅くない
道具がそろったら、次は最初の1個選びだ。戦闘機なら先に紹介した戦闘機プラモの入門記事、軍艦なら艦船プラモの入門記事から、自分の最初の1個を見つけてほしい。
タミヤの工具や塗料をまとめて見比べたいなら、公式のオンラインショップが早い。
塗料の乾燥を待つあいだのお供に。







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