プラモデルの入門記事を読むと、だいたい「最初は好きな機体を作るのがいちばん」と書いてある。私もそこには賛成だ。興味のない機体を義務感で組んでも、胴体を貼り合わせたあたりで手が止まる。
ただ、その言葉だけを頼りに模型店へ行くと、ひとつ落とし穴がある。タミヤの1/48スケールの零戦を例にとると、棚には21型と52型が並んでいる。同じメーカー、同じ縮尺、同じシリーズの箱だ。ところが21型のキットが最初に発売されたのは1973年、52型は2008年。見た目はよく似た箱の中身が、生まれた年で35年も違う。
古いキットが悪いと言いたいわけではない。半世紀以上も売られ続けているのは、それだけ形がいいからでもある。ただ、部品同士がぴたりと合うかどうか、説明書がどれだけ親切か、キャノピーを塗るためのマスクシールが入っているか、といった「作る人を助ける仕組み」は、新しいキットほど行き届いている。最初の1機を完成させられるかどうかは、機体の好き嫌いより、こういうところで決まることが多いと私は思っている。
この記事では、戦闘機プラモデルの最初の1機を、完成したときの大きさ、作りやすさ、塗装の手間の3つで選ぶ方法をまとめた。そのうえで、私が初心者に勧めたいキットを6つ挙げる。軍艦から入りたい人は、先に艦船プラモの入門記事を読んでほしい。
- 最初の1機は、1/48か1/72の単発の戦闘機。それも2000年代以降に金型が作られたキットを選ぶ
- 迷ったら、日本機が好きな人はタミヤ1/48の零戦52型、現用機が好きな人はタミヤ1/72のF-35A
- 完成サイズは縮尺だけでは決まらない。同じ1/48でも、F-14は零戦の倍の長さになる
- 塗装の手間は機体の形ではなく塗り分けで決まる。ぼかし迷彩と銀一色は2機目以降でいい
- ミリタリーのプラモデルは接着剤と塗料を使うのが前提。ガンプラと同じつもりで買うと道具が足りない
結論:最初の1機は「4つの質問」で絞れる
模型店やネット通販で迷ったら、次の4つを順番に自分に聞いてみてほしい。上から答えていくと、候補は自然に2つか3つまで減る。
| 順番 | 自分に聞くこと | ここで決まること | 初心者の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | どの時代・どの国の機体が好きか | 候補の機体 | 単発の戦闘機から選ぶ |
| 2 | 完成品をどこに飾るか | 縮尺 | 1/72か1/48 |
| 3 | 塗装にどこまで手をかけるか | 塗装のパターン | 一色か、上下ではっきり分かれる2色 |
| 4 | その金型はいつ生まれたか | 作りやすさ | 2000年代以降に出たキット |
1番目を最初に置いたのは、やはり好きな機体がいちばんの燃料になるからだ。完成までには、接着剤が乾くのを待ったり、塗料が乾くのを待ったりする時間が何度もある。その待ち時間に「早く続きをやりたい」と思えるかどうかは、機体への愛着で決まる。
単発の戦闘機を勧めるのは、エンジンが1基なら胴体も1本で、部品が少なく、形になるまでが早いからだ。双発機や爆撃機は、エンジンまわりや脚の部品が倍になる。エンジンの数で戦闘機の性格がどう変わるかは単発戦闘機と双発戦闘機の違いで書いたが、プラモデルでも話は同じで、数が増えるほど手間も増える。
残りの3つは、このあと1つずつ説明する。

大きさで選ぶ:縮尺より「実機の大きさ」で考える
戦闘機のプラモデルでよく見る縮尺は、1/144、1/72、1/48、1/32の4つだ。1/72なら実物を72分の1に縮めた大きさになる。分母の数字が小さいほど、完成品は大きい。
ここで見落としやすいのが、同じ縮尺でも機体によって完成サイズがまったく違うことだ。実機の大きさがそのまま縮むのだから当たり前の話なのだが、箱を眺めているとつい忘れる。代表的な機体で計算すると、こうなる。
| 機体 | 実機の全長×全幅 | 1/72で作ると | 1/48で作ると |
|---|---|---|---|
| 零戦52型 | 9.1m×11.0m | 約13×15cm | 約19×23cm |
| スピットファイアMk.I | 9.1m×11.2m | 約13×16cm | 約19×23cm |
| F-35A | 15.7m×10.7m | 約22×15cm | 約33×22cm |
| F-15J | 19.4m×13.1m | 約27×18cm | 約40×27cm |
| F-14(主翼を広げた状態) | 19.1m×19.5m | 約27×27cm | 約40×41cm |
※完成サイズは実機の寸法を縮尺で割った目安。キットによって数mmずれる。
身近な紙の大きさに置き換えると、もっとわかりやすい。1/72のF-35AはだいたいA5の紙、1/48のF-35AはA4の紙、1/48のF-15JはA3の紙に近い。1/48の零戦は、B5のノートくらいだ。

もうひとつ面白いのが、形の違いだ。表を見るとわかるとおり、零戦やスピットファイアのようなプロペラ機は、全長より全幅のほうが長い。横に広い飛行機だ。一方、F-35AやF-15Jのようなジェット戦闘機は、全幅より全長のほうがずっと長い。縦に長い飛行機だ。棚に飾るなら、プロペラ機は棚の幅を、ジェット機は棚の奥行きを食う。カラーボックスの奥行きは30cm弱なので、1/48のF-15Jを機首から入れると前にはみ出す。ジェット機の縮尺は、飾る場所の奥行きを測ってから決めたほうがいい。
私の考えでは、第二次世界大戦のプロペラ機は1/48、現用のジェット戦闘機は1/72で作ると、棚の上でだいたい同じくらいの大きさにそろう。1/48の零戦が約19×23cm、1/72のF-35Aが約22×15cm、1/72のF-15Jが約27×18cmで、どれもA4の紙からはみ出さない。時代の違う機体を並べても、大きさがちぐはぐにならない。
1/32と1/144についても触れておく。1/32は迫力が段違いだが、タミヤの1/32のF-15Jは全長が60cmを超える。1/32の零戦52型でも約29×34cmになり、部品の数も塗る面積も1/48とは比べものにならない。最初の1機には大きすぎる。1/144は手のひらに乗るかわいさがあるが、脚やアンテナが爪楊枝より細くなるので、指先の作業がかえって難しい。
逆に「1/72は小さいから難しい」という話もよく聞く。部品が細かいのは事実だが、最近のキットはこれを設計で解決し始めている。あとで紹介するタミヤ1/72のF-35Aは、1/72に合わせて部品の数を抑えていて、エンジンノズルの部品は1/48版の約3分の1になっている。小さい縮尺だから難しい、とは一概に言えなくなってきた。
作りやすさで選ぶ:箱を開ける前に「金型の年」を確かめる
プラモデルの部品は、金属でできた型に溶かしたプラスチックを流し込んで作る。この金型はとても高価で、一度作ると何十年も使い続けられる。だから模型店の棚には、1970年代に生まれた金型のキットと、去年生まれた金型のキットが平気で隣り合っている。
金型が新しいと何が違うのか。いちばん大きいのは、部品の合いだ。設計や加工の技術が進んだ今のキットは、左右の胴体を合わせたときのすき間や段差が少ない。スライド金型と呼ばれる技術が広まり、昔なら3つ4つに分けていた複雑な形の部品を、1つで成形できるようにもなった。部品が少なければ、合わせ目も少ない。合わせ目が少なければ、ヤスリがけの手間も減る。
付属品も変わった。最近のタミヤの戦闘機キットには、キャノピーを塗るときに窓枠以外を覆うマスクシールが入っているものが多い。丸いキャノピーにテープを細く切って貼る作業は、初心者がいちばん苦労するところのひとつなので、これがあるだけでずいぶん楽になる。
金型の年を調べる方法は簡単で、メーカーのサイトの製品ページを開けば発売日が書いてある。タミヤの1/48傑作機シリーズの場合は、シリーズ番号もヒントになる。番号はおおむね発売順についているので、大きいほど新しい。
| シリーズ番号 | キット | 発売 |
|---|---|---|
| No.16 | 零戦21型 | 1973年 |
| No.103 | 零戦52型 | 2008年 |
| No.115 | 飛燕I型丁 | 2016年 |
| No.117 | メッサーシュミットBf109 G-6 | 2017年 |
| No.119 | スピットファイアMk.I | 2018年 |
| No.124 | F-35A | 2022年 |
番号の若いキットにも、名作として長く愛されているものはある。古いキットに手を入れて仕上げるのは、それはそれで模型の楽しみだ。ただ、それは2機目以降に取っておけばいい。最初の1機は、メーカーが「作る人を助けよう」と工夫を詰め込んだ新しい金型に頼ったほうが、完成までたどり着ける確率が上がる。
塗装の手間で選ぶ:難しさは「形」ではなく「塗り分け」で決まる
最初の1機を選ぶとき、私がいちばん重視してほしいのがここだ。プラモデルの難しさは、組み立てより塗装で決まることが多い。そして塗装の難しさは、機体の形の複雑さではなく、どう塗り分けられているかで決まる。
| 塗装のパターン | 代表的な機体 | 初心者にとって | 理由 |
|---|---|---|---|
| ほぼ一色 | F-35A(暗いグレー一色の機体)、零戦21型 | やさしい | 筆でも缶スプレーでも塗れる |
| 上下ではっきり2色 | 零戦52型 | ふつう | 境目をテープで区切れば筆でも塗れる |
| 2色の迷彩 | スピットファイアMk.I | ややむずかしい | 上面の模様を写し取る作業が増える |
| ぼかし迷彩・斑点 | F-16、Bf109 G-6 | むずかしい | きれいにぼかすにはエアブラシがほしい |
| 銀一色 | 無塗装のP-51D、飛燕の一部の機体 | 見た目よりむずかしい | 下地のヤスリ跡や指紋がすべて浮き出る |
表に入れたF-16は、3種類のグレーを境目をぼかしながら塗り分けた機体で、写真で見るとほとんどグレー一色に見えるのに、作るとなると手間がかかる代表格だ。境目をぼかすには、塗料を霧にして吹き付けるエアブラシがほぼ必要になる。
意外に思われるのが、いちばん下の銀だ。一色で塗れるのだから簡単そうに見える。ところが銀色の塗料は、下地の小さな傷やヤスリの跡、合わせ目のわずかな段差まで、光の反射で全部見せてしまう。グレーや緑なら気にならない程度の跡が、銀だとはっきり浮かぶ。第二次世界大戦のアメリカ機には無塗装の銀色の機体が多いが、P-51ムスタングのような機体を銀で仕上げるのは、腕を上げてからの楽しみにしたほうがいい。
もうひとつ、時代による「楽さの交換」もある。現用のジェット戦闘機はグレーの濃淡で塗られることが多く、色の数は少ない。そのかわり、機体のあちこちに注意書きの小さな文字や記号が描かれていて、キットではそれをデカールで1枚ずつ貼ることになる。第二次世界大戦の機体はその逆で、迷彩の塗り分けに手がかかるかわりに、デカールは国籍マークと機体番号くらいで済むことが多い。塗装が楽な時代の機体は、デカールで時間を取られる。この交換を知っておくだけでも、作業の見通しが立てやすくなる。
それから、最初の1機は全部を完璧に塗らなくてもいい、とも言っておきたい。機体の色とコクピットとタイヤだけ塗って、細かい部分は成形色のまま、という仕上げでも十分に飛行機に見える。塗り残しに気づいたら、それは2機目でやることのリストに書き足せばいい。
ガンプラ経験者がつまずくのは「接着剤」と「塗料」
ガンプラを作ったことがある人ほど、ここで戸惑うかもしれない。ガンプラの多くは、部品がはじめから色分けされていて、はめ込むだけで組み上がる。一方、戦闘機のプラモデルは、ほとんどが一色のプラスチックで成形されていて、部品は接着剤でつけ、色は自分で塗るのが前提だ。ガンプラの道具箱をそのまま持ち込むと、接着剤と塗料が丸ごと抜け落ちる。
最初にそろえたい道具は、次のとおりだ。
| 道具 | 何に使うか | 最初から要るか |
|---|---|---|
| プラモデル用ニッパー | 部品を枝(ランナー)から切り離す | 要る |
| デザインナイフ | 切り口の出っ張りを削る | 要る |
| 模型用接着剤(流し込みタイプ) | 部品の合わせ目を溶かしてつける | 要る |
| 紙やすり・スポンジやすり | 切り口や合わせ目をならす | 要る |
| マスキングテープ | 塗り分けの境目やキャノピーを守る | 要る |
| 塗料と筆、または缶スプレー | 機体・コクピット・タイヤを塗る | 要る |
| ピンセット | 小さな部品やデカールをつまむ | あると楽 |
| スミ入れ用の塗料 | 機体の筋(パネルライン)を引き立てる | 2機目からでいい |
| エアブラシ | ぼかし迷彩や広い面を吹き付ける | 2機目以降 |
接着剤は、プラスチックを溶かしてくっつける模型用のものを使う。瞬間接着剤や木工用ボンドとは別物だ。模型用には、ハケで塗ってから部品を合わせる普通のタイプと、部品を合わせてからすき間に流し込むタイプがある。初心者には流し込みタイプを勧めたい。部品を手で押さえて位置を決めてから流せるので、ずれにくく、はみ出しも少ない。
塗料は、筆で塗れる水性のアクリル塗料と、広い面を一気に塗れる缶スプレーの組み合わせから始めれば十分だ。説明書には、複数の色を混ぜる細かい指定が書かれていることも多いが、最初の1機でそこまでこだわる必要はないと私は思う。近い色で塗れば、ちゃんとその機体に見える。
初心者におすすめの戦闘機プラモデル6選
ここからが本題だ。ここまでの4つの質問に照らして、私が最初の1機に勧めたいキットを6つ選んだ。5つがタミヤのキットになったが、これは身びいきではない。新しい金型と、マスクシールのような初心者を助ける付属品が両方そろっているキットが、今のところタミヤに多いからだ。
| キット | 完成サイズ | 発売 | 塗装の手間 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|
| タミヤ 1/48 零戦52型 | 約19×23cm | 2008年 | 上下2色 | 日本機が好き |
| タミヤ 1/72 F-35A | 21.8×14.8cm | 2023年 | ほぼ一色 | 現用機・空自が好き、とにかく完成させたい |
| タミヤ 1/48 F-35A | 32.6×22.2cm | 2022年 | ほぼ一色 | 現用機を大きく作りたい |
| タミヤ 1/48 スピットファイアMk.I | 約19×23cm | 2018年 | 2色の迷彩 | 組みやすさ重視、欧州のWW2機が好き |
| タミヤ 1/72 F-14D | 26.5×27.2cm(主翼を広げた状態) | 2026年 | グレーの濃淡 | トップガン・エースコンバットが好き |
| 色分け済みのスナップキット | キットによる | ― | 塗らなくてもいい | 道具をそろえる前に1機作りたい |
※完成サイズのうち、F-35AとF-14Dはメーカーの公表値。零戦52型とスピットファイアは実機の寸法からの計算値。
1. タミヤ 1/48 零戦52型|日本機が好きなら、まずこれ
日本の戦闘機から入りたい人に、私が真っ先に勧めるのがこれだ。タミヤ1/48傑作機シリーズのNo.103、2008年に発売された零戦52型のキットで、製品名のとおり52型と52型甲の両方に対応している。
理由は3つある。1つ目は、単発で小さいこと。1/48でも完成すると約19×23cmで、机の上でも作業しやすい。2つ目は、2008年の金型であること。同じシリーズの21型より35年新しい。3つ目は、塗装がちょうどいい練習になること。52型は機体の上が暗緑色、下が明灰白色で、境目がはっきりしている。マスキングテープで境目を区切って塗る、という戦闘機塗装の基本を、この1機で一通り覚えられる。
零戦の中でも量産の主力になった型なので、作ったあとに語れる話が多いのもいい。21型との違いや、零戦が本当に強かったのかという話は零戦の解説にまとめてある。作りながら読むと、主翼の端が丸く切り詰められている理由や、排気管が1本ずつ後ろへ向いた形に変わった理由が、手の中の部品で確かめられる。
一色で塗れる21型に惹かれる人もいると思う。21型は機体全体が明るい灰色で、塗装だけならこちらのほうが楽だ。ただ、タミヤの1/48の21型は1973年の金型になる。最初の1機は52型で手を慣らし、21型は2機目に回す。この順番を私は勧めたい。
2. タミヤ 1/72 F-35A|いちばん失敗しにくい現用機
現用機が好きな人、とにかく1機目を完成させたい人には、タミヤ1/72ウォーバードコレクションのF-35A(No.92)を勧める。2023年7月に発売された、新しいキットだ。
このキットのいちばんの特徴は、1/72に合わせて部品の数を抑えていることだ。先に書いたとおり、エンジンノズルは1/48版の約3分の1の部品数で済む。キャノピーと、機首の下にあるセンサー(EOTS)の窓を塗るためのマスクシールも入っている。塗装やマーキングの位置は、実物大のカラー図面で指示される。初心者がつまずきやすい場所に、先回りして手すりが付いている感じだ。
マーキングはアメリカ空軍機が1種類と、航空自衛隊機が2種類。航空自衛隊のほうは、部隊マークがカエルとオジロワシになっている。カエルは第301飛行隊、オジロワシは第302飛行隊のマークで、どちらも青森県の三沢基地でF-35Aを飛ばしている部隊だ。航空祭で見た機体を自分の手で作れるのは、自衛隊ファンにはたまらない。この秋冬の航空祭の日程は航空祭ガイドにまとめた。
兵装は、ミサイルや爆弾を機内にしまったステルスモード、主翼の下に空対空ミサイルを付けた空対空モード、主翼の下を兵装で埋めたビーストモードの3つから選べる。最初は兵装を機内にしまった状態で作ると、部品も少なく、F-35らしいすっきりした形になる。
完成サイズは21.8×14.8cmで、ちょうどA5の紙くらい。棚の場所も取らない。F-35Aそのものの話は航空自衛隊のF-35A/Bの解説に書いた。投資家の目線で付け加えると、航空自衛隊のF-35Aの一部は、愛知県にある三菱重工の小牧南工場で最終組み立てが行われてきた。どの日本企業がF-35のどこを作っているかはF-35を作る日本企業一覧で整理している。手元の小さなF-35を眺めながら読むと、供給網の話が急に身近になる。
同じシリーズにはF-35Bもある。護衛艦「いずも」の改修に心を動かされた人は、こちらを選ぶのもいい。
F-35のB型・C型や1/48との違いは、F-35プラモデルの選び方で比べた。
3. タミヤ 1/48 F-35A|同じF-35を「存在感」で選ぶなら
同じF-35Aでも、1/48のほうを選ぶ理由もある。タミヤ1/48傑作機シリーズのNo.124、2022年12月発売のキットだ。完成サイズは32.6×22.2cmで、A4の紙くらいになる。1/72と並べると、面積で倍以上ある。
大きいぶん、作り込める場所が多い。兵装庫の扉は開いた状態と閉じた状態を選べ、キャノピーは開閉それぞれの部品があって、完成後も差し替えられる。レーダー波を吸収する塗装の模様は細かいモールドで表現されていて、その模様を再現するデカールも入っている。マーキングは9か国分あり、生産初期の明るい塗り分けの機体と、2017年以降の暗いグレー一色の機体を選べる。初心者なら、もちろん一色のほうだ。
1/72と1/48、どちらのF-35Aにするか迷ったら、私はこう考える。とにかく1機目を完成させたいなら1/72。兵装庫を開けて中まで見せたい、棚の主役にしたいなら1/48。そして余裕があれば、1/72で1機作ったあとに、1/48で同じF-35Aをもう一度作ってみてほしい。同じ機体を2回作ると、1機目より自分の腕が上がっているのがはっきりわかる。
4. タミヤ 1/48 スピットファイアMk.I|組み心地は最高、塗装は迷彩の練習台
第二次世界大戦のヨーロッパの機体が好きな人には、タミヤ1/48傑作機シリーズのNo.119、2018年発売のスピットファイアMk.Iを挙げたい。
このキットは、とにかく組み心地の評判がいい。海外の模型サイトのレビューでも、主要な部品を仮組みした段階で「すき間がない」と書かれていたほどだ。主翼と胴体がぴたりと決まり、左右の主脚は一体の部品にして角度と高さがそろうよう工夫されている。クリアー部品用のマスキングシールも付属する。
マーキングは3種類で、バトル・オブ・ブリテンの時期の機体や、ダンケルクからの撤退作戦の空を飛んだ部隊の機体を選べる。スピットファイアの戦歴はスピットファイアの解説で書いた。
注意点は2つある。1つは塗装で、上面は2色の迷彩になる。零戦52型の上下2色より一段難しいが、1/48なら境目をくっきり塗り分けても違和感は少ないので、テープや練り消しで区切れば筆でも塗れる。もう1つは、シートベルトが金属の薄板(エッチングパーツ)で入っていることだ。これは瞬間接着剤で付ける部品なので、最初の1機では付けずに済ませても、私はかまわないと思う。迷彩に挑戦してみたい人、組み立ての気持ちよさを味わいたい人に向いたキットだ。
5. タミヤ 1/72 F-14D|トップガンとエースコンバット派への新しい答え
映画『トップガン』やゲームの『エースコンバット』から戦闘機が好きになった人には、タミヤ1/72ウォーバードコレクションのF-14D(No.95)がある。2026年1月に発売された、この記事で挙げる中でいちばん新しいキットだ。
F-14は双発の大きな機体で、正直に言えば、6つの中では手のかかるほうだ。部品も多い。それでも挙げたのは、新しい金型の良さがはっきり出ているからだ。複雑な形の空気取り入れ口は一体の部品で成形されていて、部品同士のずれが少なく、接着剤を使わずに仮組みしやすいと紹介されている。可変翼は左右が連動して動き、組み立てたあとも角度を変えられる。キャノピー用のマスクシールも付属する。
完成サイズは主翼を広げた状態で26.5×27.2cm。タミヤには1/48のF-14Aもあるが、こちらは長さが40cm近くになる。棚に置くことまで考えると、最初は1/72のほうが現実的だ。F-14という機体の物語はF-14トムキャットの解説で、エースコンバット8でどの機体に乗るといいかはAC8のおすすめ機体で書いた。ゲームの中で何十回も飛ばした機体が、手の上で翼を開いたり畳んだりする。それだけで、作った甲斐があったと思えるはずだ。
A型とD型、1/48や発艦セットとの違いは、F-14プラモデルの選び方で比べた。
6. 色分け済みのスナップキット|道具をそろえる前に、まず1機
ここまで紹介したキットは、どれも接着剤と塗料を使う本格的なものだ。それが少し重たいなら、部品がはじめから色分けされ、はめ込み式で組めるキットから入る手もある。
たとえば童友社の「凄!プラモデル」シリーズからは、接着剤なしで組めて、実機に近い色で成形された1/72の戦闘機が出ている(2016年に出たF-4JファントムIIなど)。アカデミーの「MCP(マルチカラーパーツ)」と呼ばれるキットも、色の付いた部品で成形されていて、塗装しなくても形になる。ただしMCPは一部の部品に接着剤が要ることがあるので、説明書で確かめてほしい。
この手のキットは、プラスチックの質感がそのまま出るぶん、塗装したキットより少しおもちゃっぽく見える。種類もまだ多くない。それでも、ニッパーで部品を切り離し、形が組み上がっていく楽しさは本格的なキットと同じだ。子どもと一緒に作る1機目にも向いている。これで「次はちゃんと塗ってみたい」と思えたら、2番目に紹介したタミヤ1/72のF-35Aに進むのがいい。
タミヤのキットや塗料、工具をまとめて見比べたいなら、公式のオンラインショップが早い。
好みで選ぶ早見表と「次の1機」
最初の1機が完成したら、次は何を作るか。好みごとに、最初の1機と次の1機の組み合わせを表にした。次の1機には、最初の1機より一段だけ難しい要素を入れてある。
| こんな人 | 最初の1機 | 次の1機 | 次の1機で増える要素 |
|---|---|---|---|
| 旧日本軍の機体が好き | タミヤ 1/48 零戦52型 | タミヤ 1/48 飛燕I型丁 | 銀の塗装 |
| 航空自衛隊が好き | タミヤ 1/72 F-35A | ファインモールド 1/72 F-2A | 2色の青の迷彩 |
| トップガン・エースコンバットが好き | タミヤ 1/72 F-14D | タミヤ 1/48 F-14A | 大きさと部品の数 |
| 欧州のWW2機が好き | タミヤ 1/48 スピットファイアMk.I | タミヤ 1/48 Bf109 G-6 | ぼかし迷彩と斑点 |
| まず形にしたい | 色分け済みスナップキット | タミヤ 1/72 F-35A | 接着と塗装 |
旧日本軍の機体が好きな人の次の1機に飛燕を選んだのは、キットの出来がいいうえに、塗装で一段上の練習ができるからだ。2016年に出た新しい金型で、キャノピー用のマスクも付いている。塗装例の1つ、第244戦隊の小林照彦機は機体の大半が無塗装の銀で、尾翼が赤い。銀の下地づくりを覚えるのに、ちょうどいい題材になる。日本で量産された戦闘機でただひとつ液冷エンジンを積んだ飛燕の話は飛燕の解説で書いた。
航空自衛隊が好きな人には、F-35Aの次にF-2Aを勧めたい。F-2は海の上で目立たないよう、濃淡2色の青で塗られている。グレーとは違う空自らしい色で、塗り分けの練習にもなる。F-2の任務や退役の見通しはF-2の解説で書いた。
欧州機が好きな人の次の1機は、2017年に出たタミヤ1/48のBf109 G-6だ。グレーの迷彩に斑点を散らす塗装は、エアブラシを買うきっかけになるかもしれない。機体についてはBf109の解説にまとめている。
まだ作りたい機体が決まらないなら、旧日本軍の戦闘機一覧や航空自衛隊の戦闘機一覧を眺めて、気になった1機を探すのも楽しい。
最初の1機で避けたいキット
逆に、最初の1機には向かないキットもある。どれも魅力的なキットなので、作るなとは言わない。順番を後ろに回してほしい、という話だ。
1つ目は、1/32の大型キット。迫力は最高だが、部品の数も、塗る面積も、乾燥を待つ時間も増える。タミヤの1/32零戦52型は、多くの人が「いつか作りたい」と思う名キットだが、だからこそ何機か作って手が慣れてから挑んだほうが楽しめる。いつかの目標として、箱だけ先に買っておくのもありだと思う。
2つ目は、双発・四発の大型機。爆撃機や輸送機は、エンジンも脚も部品が倍以上になり、完成サイズも一気に大きくなる。
3つ目は、銀一色の機体。先に書いたとおり、下地の荒れが全部見える。
4つ目は、古い金型のキットと、長く寝かされた古い在庫品。フリマアプリなどに出ている古いキットは、デカールが黄ばんでいたり、水に浸けると割れたりすることがある。中身の部品は同じでも、デカールの状態は箱を開けるまでわからない。
5つ目は、究極を目指した最新のキット。たとえばファインモールドの1/48零戦21型は、胴体を左右ではなく実機と同じ前後に分けて組む構造を取り入れ、2026年夏の発売予定として発表された。報道では、開発担当者が「簡単ではない」と話している。こうしたキットは、零戦好きなら必ず作りたくなる目標だが、最初の1機ではなく、3機目、4機目の楽しみにしたい。
買う前に確かめたい5つのこと
この記事で挙げた6つ以外のキットを選ぶときも、次の5つを確かめておけば大きく外さない。模型店なら箱の裏と側面、通販なら製品ページで見られる。
- □ 発売年:メーカーのサイトで確かめる。2000年代以降に出た金型か
- □ 完成サイズ:飾る場所の幅と奥行きに収まるか。ジェット機は特に奥行き
- □ 塗装例:一色か、上下ではっきり分かれる2色の塗装例が入っているか
- □ マスクシール:キャノピー用のマスクが付属するか
- □ 接着剤と塗料:要るキットなら、流し込みタイプの接着剤と機体色の塗料も一緒に買う
最後の1つは意外と忘れやすい。キットだけ買って帰り、箱を開けてから接着剤がないことに気づくと、せっかくの週末の作業がそこで止まってしまう。キットと一緒に、接着剤と最初に塗る色だけは必ずかごに入れておきたい。
初心者がつまずきやすい3つの失敗
どのキットを選んでも、最初の1機でよく起きる失敗がある。先に知っておけば、ほとんど避けられる。
1つ目は、接着剤のはみ出しだ。たくさん付ければ強くつく気がするが、模型用の接着剤はプラスチックを溶かすので、はみ出した部分は表面が荒れて、指紋の形のまま固まってしまう。流し込みタイプを細い筆で少しずつ流し、はみ出したら触らずに乾かしてからヤスリでならす。これだけで仕上がりがかなり変わる。
2つ目は、キャノピーの曇りだ。透明な部品に普通の模型用接着剤を使うと、溶けた成分が内側に回って、白く曇ることがある。せっかく塗ったコクピットが見えなくなるので、キャノピーは最後に、透明な部品に使える接着剤をごく少しだけ付けて固定したい。
3つ目は、デカールの浮きだ。水に浸けた台紙からずらして貼るのだが、下に空気が残ると、乾いたあとで銀色にてかって見える。貼る前に水で位置を決め、綿棒で中の水と空気を外へ押し出す。曲面やパネルラインの上には、デカールを柔らかくしてなじませる定着剤を使うと、ぴたりと沈む。
最初の1機を「2回の週末」で完成させる段取り
最後に、作業の進め方の目安を書いておく。1/48の単発機や1/72のジェット戦闘機なら、2回の週末を使えば無理なく完成まで行ける、というのが私の感覚だ。大事なのは、接着剤や塗料が乾く時間を、寝ている間や平日に回すことだ。
| 日 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1週目の土曜 | 説明書を通して読む。コクピットを塗って組む | 先に全体の流れをつかむ |
| 1週目の日曜 | 胴体を貼り合わせ、主翼と尾翼を付ける | 接着したら平日のうちにしっかり乾かす |
| 2週目の土曜 | 合わせ目をならし、マスキングして機体の色を塗る | 塗料は一度に厚く塗らない |
| 2週目の日曜 | デカールを貼り、脚・キャノピー・兵装を付ける | 細い部品は最後に付けると折れにくい |
説明書の順番どおりに作らなくてもいい、というのも覚えておくと楽だ。脚やアンテナのような細い部品を説明書どおりに早めに付けると、塗装中に手が当たって折れやすい。塗装のあとに回せる部品は、あとに回していい。
よくある質問
初心者は1/72と1/48、どちらがいい?
第二次世界大戦のプロペラ機なら1/48、現用のジェット戦闘機なら1/72をまず勧める。プロペラ機は1/72だと完成しても13cm前後と小さく、部品も細かい。ジェット機は1/48だと30cmを超えることが多く、置き場所に困る。どちらの場合も、新しい金型のキットを選ぶのがいちばん大事だ。
塗装しないと完成しない?
多くの戦闘機キットは一色のプラスチックで成形されているので、塗らないと飛行機らしい色にはならない。ただ、全部を塗る必要はない。機体の色とコクピットとタイヤだけでも十分に見栄えがする。まったく塗りたくないなら、色分け済みのスナップキットを選ぶといい。
接着剤はどれを買えばいい?
プラスチックを溶かしてつける模型用の接着剤を選ぶ。初心者には、部品を合わせてからすき間に流し込むタイプが扱いやすい。瞬間接着剤は、金属のエッチングパーツなど一部の部品に使う補助と考えておけばいい。
ガンプラを作ったことがあれば簡単?
ニッパーやヤスリの扱いに慣れているのは大きな強みだ。ただ、接着と塗装はガンプラではあまり使わない工程なので、そこは新しく覚えることになる。接着剤を付けすぎない、塗料は薄く何回かに分けて塗る。この2つを意識するだけで、仕上がりはずいぶん変わる。
子どもと一緒に作るなら?
接着剤も塗料も使わない色分け済みのスナップキットか、部品の少ないタミヤ1/72のF-35Aがいい。デザインナイフなどの刃物は大人が受け持ち、子どもにはニッパーで部品を切り離す作業やデカール貼りを任せると、一緒に作っている感覚が出る。
まとめ
- 最初の1機は「好きな機体」に加えて、縮尺、塗装のパターン、金型の年で選ぶ
- 完成サイズは実機の大きさで決まる。プロペラ機は横に広く、ジェット機は縦に長い
- 塗装の難しさは塗り分けで決まる。一色か、はっきりした上下2色が初心者向き。銀一色は見た目よりむずかしい
- 日本機が好きならタミヤ1/48の零戦52型、現用機が好きならタミヤ1/72のF-35Aから始めれば、まず外さない
- ミリタリーのプラモデルは接着剤と塗料が前提。流し込みタイプの接着剤とマスキングテープは最初から用意する
作りたい機体がまだ決まっていないなら、世界最強戦闘機ランキングを眺めて、気になった1機から始めてもいい。順位より、写真を見て「この形を手元に置きたい」と思えるかどうかのほうが、プラモデルでは大事だ。
塗料の乾燥を待つあいだのお供に。







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