【2025年最新版】世界の軍事費・防衛費ランキング完全解説|日本は何位?各国の戦略と軍事力を徹底分析

「世界で一番軍事費を使っている国はどこ?」

その答えを知っている人は多いだろう。そう、アメリカだ。

だが、こう聞かれたらどうだろうか。

「じゃあ日本は何位?」「中国とアメリカの差はどれくらい?」「ウクライナ戦争で世界の軍事費はどう変わった?」

――答えられる人は、ぐっと少なくなる。

2024年、世界の軍事費総額は約2兆7,180億ドル(約400兆円)に達した。これは冷戦終結以降、最大の金額であり、増加率も9.4%と過去最高を記録している。

ロシアによるウクライナ侵略、中東の混乱、そして台湾海峡をめぐる緊張――。世界はいま、「力の時代」へと逆戻りしつつある。

この記事では、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の最新データをもとに、世界の軍事費ランキングを徹底解説する。単なる数字の羅列ではない。各国がなぜその金額を投じているのか、その背景にある戦略と思惑、そして日本の立ち位置まで、余すところなく語り尽くす。

数字の向こうに見えるのは、各国の「本気度」だ。軍事費を見れば、その国が何を恐れ、何を守ろうとしているのかが見えてくる。

さあ、世界の軍事費の真実を覗いてみよう。


目次

軍事費とは何か?──まず基本を押さえよう

世界の軍事費ランキングを示す世界地図と各国の防衛予算を視覚化したインフォグラフィック

軍事費の定義と範囲

軍事費(Military Expenditure)とは、国家が軍事目的に支出するすべての費用を指す。

具体的には以下のものが含まれる:

  • 軍人の給与・手当
  • 兵器・装備品の購入費
  • 研究開発費
  • 施設の建設・維持費
  • 軍事訓練費
  • 軍事作戦の運用費
  • 退役軍人への恩給(一部の統計)

日本では「防衛費」「防衛関係費」という表現が一般的だが、本質的には同じものを指している。ただし、各国によって計上の範囲が異なるため、単純な比較には注意が必要だ。

なぜ軍事費を比較するのか

軍事費は、その国の「軍事への本気度」を測る最も客観的な指標だ。

もちろん、軍事力は金額だけで決まるものではない。兵士の士気、装備の質、指揮能力、地理的条件など、数値化できない要素も多い。10式戦車が世界最高水準の性能を持つように、「安かろう悪かろう」ではないのが軍事の世界だ。

それでも軍事費を見る価値がある理由は、各国の「意思」が読み取れるからだ。

経済規模に対してどれだけの割合を軍事に投じているか(GDP比)を見れば、その国がどれだけ安全保障を重視しているかがわかる。増加率を見れば、脅威認識の変化が見える。

軍事費は、国際政治を読み解く「羅針盤」なのである。


世界軍事費ランキングTOP15【2024年最新版】

最新ランキング一覧

2025年4月にSIPRIが発表した2024年のデータに基づき、世界の軍事費TOP15を紹介する。

第1位:アメリカ 9,970億ドル(約147兆円)
第2位:中国 3,140億ドル(約46兆円)※推定値
第3位:ロシア 1,490億ドル(約22兆円)※推定値
第4位:ドイツ 885億ドル(約13兆円)
第5位:インド 861億ドル(約13兆円)
第6位:イギリス 818億ドル(約12兆円)
第7位:サウジアラビア 803億ドル(約12兆円)
第8位:ウクライナ 647億ドル(約9.5兆円)
第9位:フランス 647億ドル(約9.5兆円)
第10位:日本 553億ドル(約8.1兆円)
第11位:韓国 476億ドル(約7兆円)
第12位:イスラエル 465億ドル(約6.8兆円)
第13位:イタリア 418億ドル(約6.2兆円)
第14位:オーストラリア 391億ドル(約5.8兆円)
第15位:ポーランド 380億ドル(約5.6兆円)

世界全体の軍事費総額は約2兆7,180億ドル。米中露の3カ国だけで、実に全体の53.7%を占めている。

特筆すべきは、TOP15すべての国が前年比で軍事費を増加させたという事実だ。世界中で軍拡競争が進行していることを、この数字は如実に物語っている。


【第1位】アメリカ:9,970億ドル──世界の36.7%を独占する超大国

空母打撃群とF-35戦闘機で表現されるアメリカの圧倒的軍事力

圧倒的な軍事費の内訳

アメリカの軍事費は約9,970億ドル。これは世界の軍事費総額の36.7%に相当する。

2位の中国から9位のフランスまでの8カ国を合計しても、アメリカ1国の軍事費に及ばない。この圧倒的な差が、アメリカを「唯一の超大国」たらしめている源泉だ。

アメリカの軍事費の特徴は、その「質」にある。単に多くの兵士を雇い、多くの兵器を買っているわけではない。

最先端の研究開発に巨額を投じ、ステルス戦闘機F-35、原子力空母、イージスシステム、GPS衛星網、サイバー戦能力など、他国の追随を許さない技術的優位を維持している。

F-35戦闘機の開発費だけで約4,000億ドル(約60兆円)。これは日本の年間防衛費の7倍以上に相当する。桁が違うのだ。

GDP比3.4%──世界のリーダーとしての「責任」

アメリカの軍事費はGDP比で3.4%。これは先進国の中では比較的高い水準だ。

なぜアメリカはこれほどの軍事費を維持するのか。それは、アメリカが「世界の警察官」としての役割を自認してきたからだ。

日米安全保障条約により日本を守り、NATO条約によりヨーロッパを守り、太平洋からインド洋、大西洋まで、アメリカ軍は世界中に展開している。在日米軍基地の存在も、このグローバルな安全保障体制の一部だ。

しかし、トランプ政権の復活により、この構図が変わりつつある。「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領は、同盟国に対して「応分の負担」を強く求めている。

2025年1月の就任以降、トランプ大統領はNATO加盟国に対してGDP比5%の防衛費を要求。日本に対しても、GDP比3.5%への増額を求めているとされる。

超大国アメリカの軍事的コミットメントは、今後どう変化していくのか。世界中が固唾を飲んで見守っている。


【第2位】中国:3,140億ドル──「公表値」の向こうにある真実

30年連続増加の脅威

中国の軍事費は推定3,140億ドル。世界第2位であり、アジア・オセアニア地域全体の50%を占める。

そして注目すべきは、中国の軍事費が30年以上にわたって連続で増加し続けているという事実だ。2024年も前年比7.0%の増加を記録した。

この30年で中国は、沿岸防衛が中心だった「近海防御」から、遠洋での作戦能力を持つ「遠海護衛」へと軍事戦略を転換。空母「遼寧」「山東」「福建」を次々と建造し、ステルス戦闘機J-20を配備し、極超音速ミサイルを開発した。

かつては「張り子の虎」と揶揄された人民解放軍は、いまや世界有数の軍事力を持つに至っている。

「公表値」は信用できるのか

ただし、中国の軍事費には大きな疑問符がつく。

日本の防衛省は、中国の実際の軍事費は公表値の約1.5倍に達すると推計している。研究開発費や海外からの装備品購入費、準軍事組織への支出などが、軍事予算に計上されていない可能性があるからだ。

SIPRIも中国の数値を「推定値」として扱っている。独裁国家は、軍事費を少なく見せることで国際社会に「平和愛好国」のイメージを広げようとする傾向がある。

仮に公表値の1.5倍だとすれば、中国の実際の軍事費は約4,700億ドル。それでもアメリカの半分に満たないが、その差は着実に縮まっている。

そして中国の場合、購買力平価で換算すると状況はさらに変わる。同じ金額でも、中国国内では兵士の給与や国産装備品のコストが安いため、より多くの「軍事力」を得られる。

台湾海峡をめぐる緊張が高まる中、中国の軍事力増強は日本にとって最も警戒すべき動向だ。日本が保有するミサイルの開発も、この脅威への対応という文脈で理解する必要がある。


【第3位】ロシア:1,490億ドル──戦争が変えた優先順位

ウクライナ侵略で軍事費が「倍増」

ロシアの軍事費は推定1,490億ドル。2024年は前年比38%という驚異的な増加率を記録し、2015年と比較すると実に倍増している。

この急増の理由は明白だ。2022年2月に始まったウクライナ侵略戦争である。

ロシアは当初、短期間でウクライナを制圧できると楽観視していた。しかし予想外の抵抗に遭い、戦争は長期化。大量の戦車、戦闘機、ミサイルを消耗し、その補充のために軍事費を急増させている。

ロシアの軍事費はGDP比で7.1%、政府支出全体の19%に達している。これは社会保障や教育よりも軍事を優先しているということだ。

制裁下でも軍拡を続ける理由

西側諸国の経済制裁により、ロシア経済は打撃を受けている。にもかかわらず軍事費を増やし続けられるのはなぜか。

ひとつは石油・天然ガス収入だ。制裁をかいくぐって中国やインドなどに輸出を続けており、一定の外貨収入を確保している。

もうひとつは、プーチン政権にとって戦争継続が政治的に不可欠だからだ。「勝利なき撤退」は政権の正統性を根底から揺るがす。だから、経済がどうなろうと軍事費は削れない。

しかし、このまま戦争が長期化すれば、ロシア経済は深刻なダメージを受ける。軍事費の膨張は、ロシア自身の首を絞めることにもなりかねない。


【第4位】ドイツ:885億ドル──「歴史的転換」の真実

1000億ユーロの特別基金

ドイツの軍事費は885億ドル。2024年は前年比28%という、先進国としては異例の増加率を記録した。

この背景には、2022年にショルツ首相が発表した「Zeitenwende(時代の転換)」がある。ロシアのウクライナ侵略を受けて、ドイツは1000億ユーロ(約16兆円)の特別防衛基金を創設したのだ。

第二次世界大戦の敗戦国として、ドイツは長らく軍事力の増強に慎重だった。NATOのGDP比2%目標も、なかなか達成できずにいた。

しかし、ウクライナ戦争がすべてを変えた。「平和の配当」を享受してきたドイツは、厳しい現実に直面したのである。

ヨーロッパ最大の軍事大国へ

2024年、ドイツは初めて西ヨーロッパ最大の軍事費支出国となった。

F-35戦闘機の導入、レオパルト2戦車の増産、防空システムの強化など、大規模な軍備増強を進めている。

日本とドイツは、ともに第二次世界大戦の敗戦国であり、戦後は経済発展に注力してきた点で共通している。そのドイツが、いま「軍事大国」への道を歩み始めている。

これは日本にとっても、他人事ではない示唆を含んでいる。


【第8位】ウクライナ:647億ドル──GDP比34%という「異常値」

国家存亡をかけた軍事費

ウクライナの軍事費は647億ドル。金額だけを見れば第8位だが、GDP比で見ると34%という「異常値」を示している。

これは、ウクライナが文字通り「国家の存亡」をかけて戦っていることを意味する。

GDP比34%とは、国の経済活動の3分の1以上を軍事に投じているということだ。税収のすべてを軍事費に回しても足りない計算になる。

この不足分は、アメリカやヨーロッパからの軍事支援で補われている。ウクライナの軍事費には他国からの資金援助や装備品の寄贈分は含まれていないため、実際の「軍事的投入」はさらに大きい。

「侵略されるとこうなる」という教訓

ウクライナの事例は、世界中の国々に強烈なメッセージを送っている。

「ひとたび侵略を許せば、その社会的・経済的影響は甚大なものとなる」

平時にGDP比1〜2%の防衛費を「高い」と感じる人もいるだろう。しかし、戦争が始まれば34%でも足りなくなる。

抑止力としての防衛費と、戦時の軍事費は、まったく別次元の話なのだ。

日本の周辺にも、ウクライナを侵略したロシアと同様の意図を持つ国がある。中国だ。台湾有事は「いつか起きるかもしれない」ではなく、「いつ起きてもおかしくない」段階に入っている。


【第10位】日本:553億ドル──急増する防衛費と「2%目標」

0式戦車、いずも型護衛艦、F-35戦闘機など近代化が進む日本の防衛装備

1952年以来最大の増加率

日本の軍事費は553億ドル(約8.1兆円)で世界第10位。2024年は前年比21%増と、1952年の防衛庁(現防衛省)発足以来、最大の増加率を記録した。

この急増は、2022年12月に閣議決定された「安保関連三文書」に基づくものだ。日本政府は、2023年度から2027年度の5年間で防衛費を約43兆円に増額し、2027年度にはGDP比2%を達成する計画を立てている。

2025年度の防衛省予算は約8.5兆円。関連経費を含めると約9.9兆円で、GDP比1.8%に達している。

かつて日本は「GNP比1%枠」を維持してきた。その枠組みが、いま大きく転換されようとしている。

なぜ日本は防衛費を増やすのか

日本が防衛費を急増させている理由は明確だ。安全保障環境の悪化である。

中国は台湾の武力統一を辞さない姿勢を示し、台湾周辺で軍事演習を繰り返している。尖閣諸島周辺への領海侵入も常態化している。

北朝鮮は核・ミサイル開発を加速させ、2024年だけで40発以上の弾道ミサイルを発射した。

ロシアはウクライナを侵略し、北方領土問題を抱える日本にとっても潜在的な脅威となっている。

こうした環境の中、日本は「反撃能力」(いわゆる敵基地攻撃能力)の保有を決定。12式地対艦誘導弾の射程延伸版や、アメリカ製トマホーク巡航ミサイルの導入を進めている。

航空自衛隊のF-35A/B導入、イージス・システム搭載艦の建造、10式戦車や16式機動戦闘車の配備など、陸海空すべての領域で装備の近代化が進んでいる。

GDP比2%は「ゴール」ではなく「スタートライン」

しかし、日本の防衛費は国際的に見ればまだ低い水準にある。

GDP比1.4%(2024年)は、G7諸国の中で最低だ。アメリカの3.4%、イギリスの2.3%、フランスの2.1%と比較すると、その差は歴然としている。

しかもNATOは、2025年6月のハーグ・サミットで、2035年までにGDP比5%(うち防衛費3.5%、関連投資1.5%)という新目標を採択した。

アメリカのトランプ政権は、日本に対してもGDP比3.5%への増額を求めているとされる。仮に3.5%を達成するとなれば、現在の約2.5倍、金額にして約20兆円規模の防衛費が必要になる。

GDP比2%は「ゴール」ではなく、むしろ「スタートライン」に過ぎないのかもしれない。


【第12位】イスラエル:465億ドル──戦争が生んだ65%増

ガザ戦争の衝撃

イスラエルの軍事費は465億ドル。2024年は前年比65%という、1967年の「六日間戦争」以来最大の増加率を記録した。

この急増は、2023年10月7日のハマスによる大規模攻撃と、それに続くガザでの軍事作戦によるものだ。

イスラエルの軍事費はGDP比で8.8%に達し、ウクライナに次いで世界第2位の「軍事負担率」となっている。

中東の軍拡連鎖

イスラエルの軍事費増大は、中東全体の軍拡を加速させている。

サウジアラビア(803億ドル、第7位)、トルコ(329億ドル)、エジプト、イランなど、周辺国も軍備増強を進めている。

中東の不安定化は、石油価格を通じて世界経済に影響を与える。日本にとっても決して無関係ではない。


【第15位】ポーランド:380億ドル──ロシアの隣国の「覚悟」

NATO最高水準のGDP比4.2%

ポーランドの軍事費は380億ドルで、2024年は前年比31%増。GDP比は4.2%と、NATO加盟国の中で最も高い水準にある。

ポーランドがこれほど軍事費を増やしている理由は、地理的な位置にある。ウクライナと国境を接し、ロシアの飛び地カリーニングラードにも近い。

もしロシアがウクライナを征服すれば、次の標的はポーランドかバルト三国かもしれない――。そうした危機感が、ポーランドの軍拡を駆動している。

日本への示唆

ポーランドの姿勢は、日本にとって示唆に富む。

ロシアの脅威に直面するポーランドと、中国・北朝鮮の脅威に直面する日本は、地政学的に似た立場にある。

ポーランドがGDP比4.2%を投じているのに対し、日本は1.4%。この差は、脅威認識の差なのか、それとも「平和ボケ」の表れなのか。


軍事費ランキングの「落とし穴」──数字だけでは見えない真実

購買力平価の問題

軍事費を国際比較する際、最も注意すべきは「為替レート」の影響だ。

たとえば、同じ100億ドルでも、アメリカ国内と中国国内では「買えるもの」が違う。中国では兵士の給与が安く、国産装備品のコストも低いため、同じ金額でより多くの「軍事力」を得られる。

購買力平価で換算すると、中国の実質的な軍事費はSIPRIの数値より大幅に高くなる可能性がある。

透明性の問題

もうひとつの問題は、各国の軍事費の「透明性」だ。

民主主義国家では、議会や報道機関の監視があり、軍事予算の総額を大きく偽ることは難しい。しかし、独裁国家ではそうした監視が働かない。

中国やロシアの軍事費は「推定値」として扱われているが、実際の数値はさらに大きい可能性がある。

質 vs 量

軍事費は「量」を測る指標だが、軍事力には「質」の要素も大きい。

例えば、日本の10式戦車は、中国の99式戦車よりも少ない金額で開発されたが、性能では同等以上とされる。海上自衛隊の潜水艦は、世界最高水準の静粛性を誇る。

軍事費の絶対額で日本は中国の6分の1に過ぎないが、装備の質や兵士の練度では大きな差がある。

とはいえ、「質」で「量」を完全にカバーすることはできない。どれほど優秀な戦闘機でも、数が圧倒的に少なければ消耗戦で勝つことは難しい。


軍事費はどこへ向かうのか──2025年以降の展望

世界の軍拡トレンドは続く

2024年の軍事費は、10年連続で増加した。そして、この傾向は当面続く見込みだ。

NATOは2035年までにGDP比5%という新目標を掲げた。ヨーロッパ諸国は、これに向けて軍事費を増額し続けるだろう。

中国は、2027年の人民解放軍建軍100周年、2035年の「社会主義現代化」達成、2049年の建国100周年に向けて、軍事力増強を続ける姿勢を明確にしている。

ロシアは、ウクライナ戦争が終わっても、軍事力の再建を進めるだろう。西側との対立構造は、当分続く。

日本の選択

日本もまた、防衛費増額の圧力にさらされている。

2027年度のGDP比2%達成は既定路線だが、その先はどうなるのか。トランプ政権の要求に応じてGDP比3.5%まで引き上げるのか。

GDP比3.5%となれば、年間約20兆円の防衛費が必要になる。現在の約3倍だ。

その財源をどう確保するのか。増税か、国債発行か、他の予算の削減か。いずれにしても、国民生活に大きな影響を与える。

しかし、ウクライナの事例が示すように、「備えなかった」代償はさらに大きい。

防衛費の議論は、単なる「金額の多寡」の問題ではない。「日本をどう守るのか」「何を守るのか」という、国家の根幹に関わる問いなのである。


まとめ──軍事費が映し出す「世界の本音」

2024年軍事費ランキング総括

この記事で見てきた世界の軍事費ランキングを改めて振り返ろう。

世界全体:2兆7,180億ドル(前年比9.4%増、冷戦後最大)

第1位:アメリカ 9,970億ドル(世界の36.7%)
第2位:中国 3,140億ドル(30年連続増加)
第3位:ロシア 1,490億ドル(前年比38%増)
第4位:ドイツ 885億ドル(前年比28%増)
第5位:インド 861億ドル
第6位:イギリス 818億ドル
第7位:サウジアラビア 803億ドル
第8位:ウクライナ 647億ドル(GDP比34%)
第9位:フランス 647億ドル
第10位:日本 553億ドル(前年比21%増)

数字の向こうに見えるのは、各国の「本気度」と「恐れ」だ。

アメリカは「世界の警察官」としての役割と、中国・ロシアとの大国間競争に備えている。

中国は「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、台湾統一と地域覇権を目指している。

ロシアはウクライナ侵略という「賭け」に国運をかけている。

ヨーロッパは、ロシアの脅威に直面して「平和の配当」の時代に別れを告げようとしている。

そして日本は、戦後最も厳しい安全保障環境の中で、防衛力の抜本的強化に舵を切った。

「力の時代」への回帰

冷戦終結後、世界は「グローバリゼーション」と「経済的相互依存」によって平和が維持されると信じてきた。

しかし、ロシアのウクライナ侵略は、その楽観論を打ち砕いた。

経済制裁は戦争を止められなかった。国連安保理は機能しなかった。「国際法」も「主権尊重」も、武力の前には無力だった。

世界は今、「力の時代」へと回帰しつつある。軍事力を持たない国は、持つ国に従属するか、蹂躙されるか、どちらかだ。

日本は、この「力の時代」にどう生き残るのか。

答えは、私たち一人ひとりが考え、選択しなければならない。

平和は「タダ」ではない

最後に、ひとつだけ言っておきたいことがある。

平和は「タダ」ではない。

「軍事費を増やすな」という声がある。その気持ちはわかる。誰だって、戦争などない世界のほうがいい。

しかし、ウクライナの人々は、ある日突然、自分たちの国が侵略されることを経験した。彼らが平和を望んでいなかったわけではない。むしろ、誰よりも平和を望んでいただろう。

それでも、侵略は起きた。

防衛費とは、「戦争をするため」の予算ではない。「戦争をさせないため」の予算だ。

強い防衛力があるから、相手は攻めてこない。「攻めても無駄だ」と思わせることが、最大の抑止力になる。

日本の自衛隊は、決して他国を攻めるために存在しているわけではない。日本を守り、日本の平和を維持するために存在している。

その自衛隊を支えているのが、防衛費だ。

軍事費の数字を見るとき、その向こうにある「平和への願い」も、どうか忘れないでほしい。


※この記事のデータは、SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の2025年4月公表資料に基づいています。各国の軍事費は為替レートの変動や計上方法の違いにより、他の資料と異なる場合があります。


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