PP-19 Vityazとは?カラシニコフとドラグノフ、“二人の息子”の系譜が生んだロシア版MP5を徹底解説

PP-19 Vityazをイメージした博物館展示のアイキャッチ

PP-19 Vityazとは、ロシアのイズマッシュ社(現カラシニコフ・コンツェルン)が2004年に開発したサブマシンガンで、AK系列に通じる操作性を残しながら9mmパラベラム弾用へ再設計された一丁だ。役割は西側のMP5に近いが、設計思想は大きく異なる。

これまでUZI・MP5・P90・MP7・MAC-10と、対テロ・特殊部隊向けの近接戦闘用SMGを西側中心に扱ってきたが、今回は東側、それもかなり現代に近いロシア製の一丁を取り上げる。開発陣の顔ぶれを知ると、この銃がロシア銃器史のいわば”二代目対決”だったことが見えてくる。地味に思えて、実はかなり面白い成り立ちを持つ一丁だ。

この記事でわかること
PP-19 Vityazをイメージした博物館展示のアイキャッチ
PP-19 Vityazは、AK系の操作性を9×19mm短機関銃へ移したロシア独自の設計解だ。
目次

PP-19 Vityazの基本情報

先に押さえる名称
公式仕様の要点
項目内容
開発イズマッシュ社(現カラシニコフ・コンツェルン)
開発年2004年
制式採用2005年(ロシア内務省)
口径9mm(9×19mmパラベラム弾)
全長約698mm(ストック展開時)/約475mm(折りたたみ時)
銃身長約230mm
重量2.85kg以下(空弾倉込み)
装弾数30発(複列箱型弾倉)
作動方式シンプルブローバック、クローズドボルト(ガスシステムなし)
公式資料で確認できる運用組織ロシア内務省、連邦保安庁(FSB)、連邦警護庁(FSO)

開発の背景——AKS-74Uの"力余り"問題

AKS-74Uと都市部治安任務の装備変化を示す展示
短銃身のAKS-74Uと拳銃弾を使う短機関銃では、都市部で求められる役割が異なる。

物語は1980年代に遡る。AK-74を大幅に切り詰めたコンパクトモデル「AKS-74U」(愛称クリンコフ)は、当初空挺部隊・特殊部隊向けに導入されたが、強力なライフル弾を短い銃身で発射するため銃口炎が激しく、取り回しの良さと引き換えに命中精度や制御性を犠牲にしていた。AKS-74Uは軍・治安機関で広く使われたが、都市部の近接任務では、ライフル弾の貫通力や大きな発射炎が常に最適とは限らない。拳銃弾を使う短機関銃には、反動、携行性、周囲への影響を含め、別の設計上の利点があった。ライフル弾とピストル弾では、求められる性能の方向性がまったく違うのだ。

ロシア内務省はここで新型サブマシンガンの開発を要請する。西側ではMP5の完全解説記事のようなSMGが対テロ装備として生き残っており、ロシア側にも都市部の近接任務へ適した9mm火器という独自の需要があった。短機関銃という古典的なカテゴリが、アサルトライフル全盛の時代になってもなお、都市部の近接戦闘という特定のニッチでは根強い需要を持ち続けていたことになる。1996年、まず登場したのが「PP-19 Bizon(バイソン)」だ。銃身と平行に取り付けられた円筒形のヘリカルマガジンで大容量を実現した意欲作だったが、弾薬が減るにつれて重量バランスが変わり、一般的な箱型弾倉より構造と取り扱いが複雑になるという交換条件もあった。

名称の由来——二人の"息子"と、部隊の名誉

カラシニコフ家とドラグノフ家の設計系譜を表す資料室
Bizonはヴィクトル・カラシニコフとアレクセイ・ドラグノフの共同作業から生まれ、Vityazはその系譜を継いだ。
“二人の息子”を正確に読む

このBizonを設計したのは、AKの生みの親ミハイル・カラシニコフの息子ヴィクトル・M・カラシニコフと、SVD狙撃銃の生みの親エフゲニー・ドラグノフの息子アレクセイ・E・ドラグノフという、ロシア銃器界の”二代目”コンビだった。Vityaz自体は、公式資料ではヴィクトル・カラシニコフのチームがBizon-2-01を基礎に開発したものと説明されている。SVDドラグノフの完全解説記事で紹介したドラグノフ家の血筋が、今度はサブマシンガンの世界にも足跡を残していたことになる。偉大な父を持つ二人の設計者がBizonで手を組み、その成果がVityazへつながったという構図は、ロシア銃器史ならではのドラマだと言えるだろう。

ヴィクトル・カラシニコフのチームはBizon-2-01を基礎に、ヘリカルマガジンを一般的な30発箱型弾倉へ置き換えた新型を開発し、2004年に「Vityaz(ヴィーチャズ。ロシア語で騎士、勇士)」として発表した。名称はロシア内務省系の特殊部隊『Vityaz』との関係で説明されることが多いが、資金援助にまつわる逸話は公開一次資料で確認しにくい。公式資料で確実に確認できるのは、2005年にロシア内務省へ採用され、その後は内務省、FSB、FSOの特殊部門で運用されたという点だ。

性能・特徴——AKの操作性をそのまま9mmへ

AK系操作部とVityaz型短機関銃を比較する展示
VityazはAK系に似た操作感を残しながら、作動方式をシンプルブローバックへ改めた。
Bizonからの最大の変更
弾薬公式資料での位置づけ
9×19mm Para一般的な9mmパラベラム弾
9×19mm PRS跳弾低減を意識した弾種
7N21防護装備への対処を意識した高威力弾
7N31現行PPK-20の公式ページでは対応弾として掲載
Bizonのヘリカル弾倉とVityazの箱型弾倉を比較する展示
大容量ヘリカル弾倉から30発箱型弾倉への変更は、Vityazの特徴を最もわかりやすく示す。

Vityazの最大の特徴は、AK-74系列との高い部品共通性にある。初期型はAKS-74Uのレシーバーを、後継のVityaz-SN(2008年)ではAK-105のレシーバーをそれぞれベースにしており、AK系列と高い部品・操作系の共通性を持つと説明される。ライフル弾のような高圧ガスを扱う必要がないため、通常のAK系列が備えるガスピストン機構は撤去され、単純なブローバック方式のクローズドボルトに置き換えられている。トリガーやセーフティといった操作系はAK-74とほぼ共通で、カラシニコフ系列の小銃に慣れた兵士や警察官であれば、追加訓練の負担を最小限に抑えて移行できる設計思想だ。使用弾薬はソ連時代からの9×18mmマカロフ弾ではなく、西側でも標準的な9×19mmパラベラム弾で、公式仕様にはPara、低跳弾型PRS、徹甲弾7N21が挙げられている。

AKS-74Uからの流れを整理すると、この銃がどんな課題を解決したのかがよくわかる。

使用弾薬弾倉特徴
AKS-74U5.45×39mm30発箱型ライフル弾ゆえ都市部では過剰威力・銃口炎大
PP-19 Bizon系列9×18mm/9×19mm64発または53発ヘリカル大容量だが箱型弾倉より複雑
PP-19-01 Vityaz9×19mm30発箱型AK系操作性と一般的な箱型弾倉を両立

ライフル弾の威力を持て余したAKS-74U、大容量だが扱いにくかったBizon、その両方の課題を踏まえて生まれたのがVityazだったことになる。

バリエーションの広がり

VityazからPPK-20とSaiga-9へ続く派生系譜の展示
Vityaz-SNを基礎に、現代化したPPK-20と半自動のSaiga-9が展開された。
モデル位置づけ主な特徴
PP-19 Bizon系列前身ヘリカルマガジン
PP-19-01 Vityaz初期型30発箱型弾倉
Vityaz-SN発展型光学照準器用レールの選択肢
PPK-20現代化型新型ストック、両側セレクター、低音・低閃光装置
Saiga-9半自動カービン367mm銃身、10発弾倉

初期型(バージョン10)に続くVityaz-SN(バージョン20)は、光学照準器用としてレシーバーカバー上のピカティニーレール仕様と、側面ドブテイルレール仕様が公式に案内されている。2020年には『Vityaz-MO』計画で改良型の国家試験が完了し、PPK-20という名称が与えられた。PPK-20はVityaz-SNを基礎に、折りたたみ式テレスコピックストック、着脱式の低音・低閃光装置、両側操作へ改良したセレクターなどを備える。民生向けのSaiga-9はVityaz-SNを基礎にしたセミオート専用カービンで、公式仕様では9×19mm、10発弾倉、銃身長367mmとされる。

どこで使われているのか

ロシア治安機関の近接任務装備をイメージした展示
Vityaz-SNはロシア内務省、FSB、FSOの特殊部門で採用されたと公式資料に記録されている。
確認できる採用先

Vityaz-SNは、ロシア内務省、連邦保安庁(FSB)、連邦警護庁(FSO)の特殊部門で運用されたことが公式資料で確認できる。都市部の対テロ任務、要人警護、施設警備など近距離での使用が想定され、AK系列に慣れた要員が操作を覚えやすい点が強みとなる。Rosoboronexportの輸出カタログにも掲載されているが、国外の採用国と配備数は公開情報だけで一律に確定しにくい。

同時代・同系統の兵器と比較する

PP-19 VityazとMP5の設計思想を比較する展示
MP5が専用機構による精度を重視したのに対し、VityazはAK系の操作習熟と生産基盤を活かした。

同じロシア〜ソ連系の狙撃銃は「SVDドラグノフ」、第二次世界大戦当時のソ連製サブマシンガンはPPSh-41の完全解説記事、同じくソ連製のボルトアクション狙撃銃はモシン・ナガン狙撃銃の完全解説記事にまとめている。開発陣が意識したとされる西側の対テロ装備の定番は「MP5」、戦後イスラエルが生んだサブマシンガンはUZIの完全解説記事を参考にしてほしい。サブマシンガンというカテゴリ全体の評価はサブマシンガン最強ランキングTOP10、現代アサルトライフル全体との比較は世界最強アサルトライフルランキングTOP15、世界の特殊部隊・治安機関の全体像は世界最強特殊部隊ランキングTOP10、銃器全体の分類は銃の種類完全ガイドで押さえておこう。

投資の視点——今回も見送り

投資上の注意

Vityazを生んだカラシニコフ・コンツェルンは、ロシア国家が直接的・間接的に大きな影響力を持つ企業であり、現在は国際的な制裁措置の対象にもなっている。モシン・ナガンやPPSh-41の回でも触れた通り、こうしたロシア系の兵器メーカーは日本の証券会社を通じて個人投資家が直接取引できる対象ではない。防衛産業と地政学、経済制裁の関係を基礎から学びたい人には、こうした入門書も参考になる。

防衛産業への投資という切り口に関心がある人は、制裁対象企業へ直接アクセスしようとせず、継続的に開示資料を出す上場防衛企業を軸に考えたい。たとえばドイツのラインメタル(RHM)株の解説記事を参考にしてほしい。

戦史・軍事ノンフィクションをオーディオブックでじっくり聴きたいという人には、こうしたサービスも選択肢になる。

現代でPP-19 Vityazを"体験"する方法

日本で安全に楽しむ
Vityaz型エアソフトと保護具を並べた安全な趣味用展示
日本では法令と安全ルールに適合したエアソフトを通じて外観と操作感を楽しめる。

エアソフト市場では、海外メーカーからVityaz系の外観を再現したモデルが発売されてきた。ゲーム作品でもロシア・東側陣営を象徴するSMGとして登場している。当ブログのアフィリエイト対象にはまだ登録がないが、購入時は日本の法令に適合した国内流通品か、対象年齢や初速表示、販売店のサポートを確認したい。運搬時はケースへ収納し、ゴーグルとフィールド規則を守って安全に楽しもう。

関連記事|ロシア銃器とサブマシンガンの系譜

参考にした主な資料

仕様・採用先・派生型はRosoboronexportとRostecの公式資料を優先し、制裁情報は米OFACの公表内容を確認した。

よくある質問

Bizonの開発者だったカラシニコフとドラグノフ、なぜ息子たちが手を組んだのですか?

共同設計の詳しい経緯は公開資料が限られるが、ヴィクトル・カラシニコフとアレクセイ・ドラグノフがPP-19 Bizonを共同開発したことはRostec公式資料で確認できる。VityazはそのBizon-2-01を基礎にヴィクトルのチームが開発した。

PP-19 VityazとBizon、何が違いますか?

Bizon系列は大容量ヘリカルマガジンが特徴だが、Vityazは9×19mm弾を使うBizon-2-01の系譜を引き継ぎつつ、一般的な30発箱型弾倉へ変更した。

なぜAK系列をベースにしたのですか?

ロシアの軍・治安機関が使い慣れた操作系と生産基盤を活かせるためだ。作動方式はライフルのガス作動ではなく、拳銃弾に適したシンプルブローバックへ変更されている。

PP-19 VityazとMP5、どちらが優れていますか?

用途と運用基盤で評価が変わる。MP5はローラー遅延式と専用設計による精度を重視し、VityazはAK系の操作習熟、部品・生産基盤、簡潔な構造を活かす方向を選んだ。

PP-19 Vityazは日本でも見られますか?

一般個人が実銃を所持することはできない。エアソフトで楽しむ場合は、日本の法令に適合した国内流通品を信頼できる販売店で確認し、安全規則を守りたい。

まとめ

PP-19 Vityazは、都市部の近接任務における拳銃弾SMGの需要と、Bizonのヘリカル弾倉が持つ複雑さを踏まえて生まれた一丁だ。カラシニコフとドラグノフ、それぞれの父の名を継いだ設計者たちがBizonで手を組み、その系譜をヴィクトルのチームがVityazへ発展させた成り立ちも、この銃をロシア銃器史の中で特別な一丁にしている。西側のMP5が精密機構で命中精度を追求したのに対し、Vityazは使い慣れたAKの操作系をそのまま流用するという、まったく違うアプローチで同じ課題に挑んだ結果だと言えるだろう。同じ「都市部の近接戦闘に適したSMGが欲しい」という要求から、東西でここまで異なる設計解が生まれたという事実は、兵器開発というものが単なる技術競争ではなく、それぞれの国の産業基盤や運用ドクトリンを色濃く反映する営みであることを教えてくれる。

同じロシア〜ソ連系の兵器との関係は、上記の各解説記事もあわせて読んでほしい。

最後まで読んでくれてありがとう。もしこの記事が役に立ったなら、下のリンクから覗いていってもらえると、次に書く記事の力になる。東西のSMG史を並べて読むと、それぞれの国の事情が透けて見えてくるのが面白い。

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