- 潜水艦乗員は、海上自衛官として採用された後に選抜と専門教育を通過した隊員
- 公表されている乗組手当は現在の号俸の55.5%だが、配属前から一律に付くわけではない
- 閉鎖環境への強さだけでなく、報告・確認・共同生活を続けられる適性が重要
海上自衛隊の潜水艦乗りになるには、まず海上自衛官として採用され、その後に潜水艦乗員としての選抜適性検査と専門教育を通過する必要がある。最初から「潜水艦だけ」を受験する独立した採用試験があるわけではない。
この仕事の本質は、狭い艦内で暮らすことではなく、外から助けを得にくい水中で機器、手順、仲間を信頼して任務を続けることにある。給料は高めだが、それは特殊な環境への対価であり、誰にでも向く仕事ではない。
本記事では、2026年7月時点の公表情報を基に、潜水艦乗りへのルート、給料、勤務、適性を整理する。
結論|潜水艦乗りになるまでの流れ

| 段階 | 内容 | 確認点 |
|---|---|---|
| 採用 | 2等海士・一般曹候補生・幹部候補生など | 潜水艦専用の採用試験ではない |
| 基礎教育 | 教育隊・幹部候補生学校 | 規律、体力、水泳、共同生活 |
| 選抜 | 健康診断・耐圧・心理適性・面接 | 希望だけでは決まらない |
| 専門教育 | 海曹士約4か月・幹部約5か月 | 修了後も艦内訓練が続く |
潜水艦乗員になるまでの基本的な流れは次の通りである。
2等海士、一般曹候補生、一般幹部候補生などから海上自衛隊に入る
教育隊や幹部候補生学校で基礎教育を受ける
職域、本人の希望、部隊の需要、適性を基に配置候補となる
潜水艦教育訓練隊で選抜適性検査を受ける
海曹士は約4か月、幹部は約5か月の潜水艦課程を修了する
潜水艦部隊へ配置され、艦内で担当配置の技量を磨く
海上自衛隊の公式説明では、潜水艦教育訓練隊に集まった隊員に対し、健康診断、耐圧試験、心理適性検査、面接を実施する。合格者だけが課程教育へ進み、脱出訓練、防火・防水訓練、乗艦実習、運動・水泳能力測定などを受ける。海曹士課程は約4か月、幹部課程は約5か月である。
つまり、海上自衛隊に合格することと、潜水艦乗員になれることは別問題だ。希望を出すことはできても、最終的には適性と人員配置を含めた選考になる。
潜水艦乗りと「潜水員」は別の仕事
- 潜水艦乗員:潜水艦の運航・機関・通信・武器・補給などを担当
- 潜水員:スクーバ潜水、水中処分、深海救難などを担当
最初に区別しておきたいのが、潜水艦乗員と潜水員である。
潜水艦乗員は、潜水艦の運航、警戒監視、機関、電気、通信、魚雷、補給、給養などを担当する乗組員の総称である。一方、海上自衛隊の「潜水員」は、スクーバ潜水、水中処分、飽和潜水などを行う専門職であり、機雷や不発弾の処分、深海救難などに従事する。名称は似ているが、採用後の教育も任務も異なる。
「潜水艦に乗りたい」と相談するときは、地方協力本部の担当者に「潜水員ではなく、潜水艦乗員を希望している」と伝えた方が話が早い。
潜水艦乗りになる3つの主な採用ルート
| 入口 | 向いている人 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 2等海士 | 現場を早く経験したい人 | 任期制。配属は適性と需要で決定 |
| 一般曹候補生 | 長期勤務と技能蓄積を目指す人 | 部隊の中核となる曹を養成 |
| 一般幹部候補生 | 指揮・計画・安全管理を担いたい人 | 部門や艦全体への責任が大きい |
1.2等海士から入る
高校卒業後や社会人から早く現場に入りたい場合、任期制自衛官である2等海士が入口になる。
2026年3月から応募受付が始まった新制度では、採用と同時に2等海士へ任命され、教育隊で基礎教育を受けた後、部隊へ配属される。応募資格は18歳以上33歳未満で、海上自衛隊の1任期は3年、2任期目以降は2年である。試験は筆記、口述、適性検査、身体検査、経歴評定で構成される。
任期制の長所は、海上自衛隊の仕事が自分に合うかを比較的区切りのある形で確かめられる点にある。潜水艦乗員に選ばれ、そのまま長期勤務を望む場合は、勤務を続けながら曹への昇任を目指すことになる。
一方で、潜水艦乗員になること自体は保証されない。任期制で入った後も、適性、職域、人員需要、教育成績などを踏まえて進路が決まる。
2.一般曹候補生から入る
長く潜水艦部隊で働き、専門技能を積み上げたい人には一般曹候補生が有力である。
一般曹候補生は、部隊の中核となる曹を養成する制度で、18歳以上33歳未満が対象となる。入隊後2年9か月以降、選考により3曹へ昇任する仕組みである。高卒だけでなく、大卒や社会人経験者も受験できる。
私は、最初から潜水艦乗員を長期の職業として考えるなら、一般曹候補生を第一候補に置くのが現実的だと考える。潜水艦は、数か月で覚えて終わる仕事ではない。艦内の担当配置を習熟し、後輩を教え、異常時に判断できる人材になるまでには年単位の経験が必要だからである。
ただし、一般曹候補生に合格しても潜水艦配属は確約されない。面接では希望を明確にしつつ、海上自衛官として他の配置でも任務を果たす意思を示したい。
3.幹部自衛官として潜水艦を目指す
大学卒業者は一般幹部候補生、防衛大学校卒業者は幹部候補生学校を経て、潜水艦幹部を目指す道がある。
幹部は、艦内の一つの機器だけを扱うのではなく、部門の指揮、当直、教育、安全管理、任務計画など、より広い責任を負う。潜水艦教育訓練隊には、初めて潜水艦に乗り組む幹部向けの幹部潜水艦課程が設けられている。
一般幹部候補生の大卒程度試験は、原則として22歳以上26歳未満が中心で、修士課程修了者などには別の年齢枠がある。年度によって条件や採用予定数が変わるため、受験年度の募集要項を確認する必要がある。
潜水艦長を最終目標にするなら幹部の道になる。ただし、幹部は現場技術だけでなく、人員を率いる責任、書類、計画、意思決定の負荷も大きい。「潜水艦が好き」という理由だけでなく、人を動かし、結果に責任を持つ覚悟が問われる。
入隊後、潜水艦乗員に選ばれるまで

- 身体:健康状態と圧力変化への適応
- 心理:閉鎖環境での安定性
- 行動:報告、確認、協調を続けられるか
- 配置:本人希望だけでなく職域と人員需要
基礎教育で海上自衛官の土台を作る
海曹士として入隊すると、横須賀、呉、佐世保、舞鶴などの教育隊で、服務、基本教練、体力、水泳、武器、艦艇勤務の基礎などを学ぶ。教育隊では集団生活が基本となり、起床、点呼、清掃、授業、体力錬成、自習、消灯まで時間で区切られる。呉教育隊が公開する一例では、6時起床、日中の教務と体力錬成、22時消灯という流れになっている。
ここで重要なのは、単に体力があることではない。決められた手順を守る、報告を省略しない、身の回りを整える、同期と協力する、といった基本動作が見られる。
潜水艦では、一人の「まあ大丈夫だろう」が艦全体の危険につながり得る。教育隊の細かな規律は、狭い艦内で安全を守るための予行演習でもある。
職域と潜水艦希望を決める
海上自衛隊には、運用、航海、電測、水測、魚雷、通信、機関、電機、電子整備、応急工作、経理、補給、給養、衛生など、多数の職域がある。潜水艦も一つの職種だけで動くわけではなく、各分野の隊員が一隻の機能を分担している。
たとえば、水測員はソーナーなどで水中の情報を扱い、魚雷員は魚雷と関連装置を扱う。機関員や電機員は推進、発電、電気系統を支え、通信員は外部との通信を担当する。給養員は食事を作り、経理・補給要員は人と物の運用を支える。
潜水艦に乗りたい人ほど、「魚雷を撃つ人になりたい」と一つの場面だけを見ない方がよい。実際の潜水艦戦力は、静粛に機械を維持する者、異音を聞き分ける者、正確に記録する者、温かい食事を出す者まで含めた総合力で成り立つ。
選抜適性検査を受ける
潜水艦教育訓練隊では、健康診断、耐圧試験、心理適性検査、面接が行われる。ここが一般の海上自衛官から潜水艦乗員へ進む大きな関門である。
耐圧試験は、圧力変化のある環境に身体が適応できるかを見るものだ。心理適性検査と面接では、閉鎖環境への耐性、協調性、情緒の安定、任務への理解などが総合的に確認されると考えられる。ただし、詳細な判定基準や配点は公表されていないため、「この質問にこう答えれば合格する」といった攻略法は存在しない。
見栄を張って閉所への不安や既往歴を隠すのは危険である。海中で症状が出れば、自分だけでなく乗員全体の負担になる。適性検査は落とすためだけの試験ではなく、本人を危険な配置から守るための選別でもある。
潜水艦課程で専門教育を受ける
選抜に合格すると、広島県呉市の潜水艦教育訓練隊で専門教育を受ける。海曹士は約4か月、幹部は約5か月で、脱出、防火、防水、乗艦実習、体力・水泳能力測定などが組まれている。
課程を修了した段階は、潜水艦乗員としての入口に立ったにすぎない。実際の艦では、自分の担当機器だけでなく、艦内配置、非常時の動き、他部署との連携を繰り返し覚えることになる。
潜水艦は、鋼鉄の船体で海を隔てる職場ではない。数十人の人間が逃げ場のない距離で互いの判断を支える、小さな社会である。技術を覚える速さだけでなく、信頼を積み上げる姿勢が長く残れるかを左右する。
潜水艦乗りの給料はいくらか

- 基本給と乗組手当を分けて確認する
- 55.5%は現在の号俸を基礎にする公表値
- 教育期間・支給開始時期・控除により実際の手取りは異なる
2026年度の初任給
2026年度の公表額では、2等海士と一般曹候補生の初任給は、高卒で月額23万9,500円、大卒で月額25万8,500円が基本となる。学歴や職歴で変動し、賞与は年2回である。防衛省地方協力本部の資料では、賞与等の年間目安は基本給等の4.65か月分とされている。
一般幹部候補生は月額28万8,300円からが目安である。こちらも学歴、職歴、採用区分で変わる。
潜水艦乗員には55.5%の乗組手当
潜水艦乗員の給与を押し上げる最大の要素が乗組手当である。海上自衛隊潜水艦教育訓練隊の公表では、潜水艦の乗組手当は「各階級の現在の号俸の55.5%」とされている。護衛艦は43%であり、潜水艦の方が高い。
単純計算では、高卒初任給23万9,500円に55.5%を加えると、乗組手当は約13万2,923円、月額は約37万2,423円となる。大卒初任給25万8,500円なら、手当は約14万3,468円、月額は約40万1,968円である。
| 区分 | 基本給の目安 | 55.5%の単純計算 | 月額合計の目安 |
|---|---|---|---|
| 高卒・2等海士または一般曹候補生 | 239,500円 | 約132,923円 | 約372,423円 |
| 大卒・2等海士または一般曹候補生 | 258,500円 | 約143,468円 | 約401,968円 |
| 一般幹部候補生 | 288,300円 | 約160,007円 | 約448,307円 |
ただし、この表は現在の号俸に55.5%を機械的に掛けた概算であり、入隊直後から全員に支給される金額ではない。教育期間中は潜水艦乗員としての配置前であり、実際の支給開始時期、対象期間、他手当、控除は個人ごとに異なる。
高卒初任給を基に、1年間を通して乗組手当が付き、賞与を基本給4.65か月分として単純計算すると、額面年収は約558万円となる。大卒初任給なら約603万円である。しかし、初年度は入隊時期や教育期間があるため、この年収をそのまま受け取れると考えるべきではない。
私は、55.5%という数字を「簡単に稼げる上乗せ」と見るべきではないと考える。長い出港、家族と離れる時間、閉鎖環境、当直、常時の安全責任に対する補償である。公式の先輩隊員も、長い出港や過酷な訓練があると説明している。
衣食住を抑えやすい
営内者などは、食事と光熱水費が無料となり、被服は支給・貸与される。基地や駐屯地内の医務室、自衛隊病院での医療費も原則無料である。現金の給与だけでなく、生活固定費を抑えやすいことが自衛官の家計上の強みになる。
ただし、出港が多いだけで自動的に貯金できるわけではない。潜水艦手当を資産形成につなげるなら、給与日に先取りで貯蓄する仕組みが必要である。
潜水艦乗りの勤務はどれほどきついのか

| 論点 | 潜水艦勤務の特徴 | 事前に考えること |
|---|---|---|
| 勤務 | 出港中は24時間交代で運用 | 睡眠と体調を自己管理できるか |
| 生活 | 閉鎖空間で共同生活 | 一人になれなくても感情を整えられるか |
| 家族 | 連絡・帰宅が制限される場合がある | 家計・育児・緊急連絡を共有できるか |
| 勤務地 | 横須賀・呉が中心 | 転居や配置換えを受け入れられるか |
勤務地は横須賀と呉が中心
海上自衛隊の潜水艦部隊は、神奈川県横須賀市の第2潜水隊群と、広島県呉市の第1潜水隊群を中心に編成されている。潜水艦教育訓練隊も呉にある。2026年7月時点の部隊紹介では、各潜水隊、練習・試験潜水艦、潜水艦基地隊が横須賀と呉に配置されている。
したがって、潜水艦乗員を目指すなら、将来の生活拠点が横須賀か呉になる可能性を受け入れる必要がある。本人の希望だけで勤務地を固定できるとは限らず、艦の異動、教育、昇任に伴う配置換えもある。
出港中は一般企業の勤務時間で考えられない
陸上勤務では通常の課業時間があるが、出港中の潜水艦は24時間動き続ける。乗員は当直と休養を交代しながら、警戒監視、操艦、機器運転、整備、食事、訓練を続ける。
具体的な当直編成や行動日程は任務や艦で異なり、一律には語れない。公式サイトも、水上艦艇勤務より制約が多く、長い出港や過酷な訓練があると説明している。
出港期間中は、自由に外へ出られず、家族や友人との連絡も制限される。急な予定変更もあり得る。自分だけでなく、家族がこの働き方を理解できるかは長期勤務において大きな問題となる。
潜水艦「たかしお」の先任伍長も、家族や大切な人と過ごせる時間は一般の人より少ない一方、自分たちにしかできない仕事だと述べている。
狭さより「逃げ場がない人間関係」が難しい
潜水艦勤務というと、多くの人は狭い通路や窓のない空間を想像する。しかし、実際に適性を左右しやすいのは、狭さそのものより、人間関係から物理的に距離を取れないことである。
苦手な相手がいても同じ艦内で働き、食事を取り、当直を引き継ぐ。気分が落ちても、勝手に一人で外へ出ることはできない。小さな不満を溜め込み、報告や会話を止める人は、本人も周囲も消耗させる。
一方、常に明るく社交的である必要はない。静かでも、必要な報告ができ、相手の役割を尊重し、自分の感情を仕事から切り離せる人は適応しやすい。私は、潜水艦で最も強い人は声の大きい人ではなく、疲れているときほど手順を崩さない人だと考える。
食事と睡眠の自己管理が重要
限られた空間で長期間勤務する以上、睡眠不足、運動不足、食欲の変化は集中力に直結する。潜水艦課程で体力・水泳能力を測るのは、筋力自慢を選ぶためだけではなく、特殊な環境でも任務を継続できる基礎体力を確認する意味がある。
体力が高くても、睡眠を削る癖があり、食事を抜き、体調不良を隠す人は危うい。逆に、特別な運動選手でなくても、日常的に走る、泳ぐ、体重を管理する、早めに不調を申告する人は、教育に適応しやすい。
潜水艦乗りに向いている人の適性

- 不安があっても手順と報告を優先できる
- 確認・復唱・記録を省略しない
- 機械、音、数値の変化を放置しない
- 少人数の組織で自分の役割を果たせる
- 長期出港を家族と具体的に話し合える
1.閉鎖環境でも落ち着いて行動できる
潜水艦では窓から外を見て気分転換することができない。狭い場所が好きである必要はないが、不安や圧迫感が出たときに呼吸と行動を整えられることが重要である。
強い閉所恐怖、高い不安反応、圧力変化への身体的問題がある場合は、根性で克服しようとせず、適性検査で正直に申告すべきである。
2.確認作業を面倒がらない
潜水艦では、スイッチ一つ、弁一つ、数値一つの確認が安全につながる。慣れてきたときほど、指差し、復唱、記録、引継ぎを省略しない性格が向いている。
要領よく近道する人より、同じ手順を毎回正確に繰り返せる人の方が信頼される。IT運用でいえば、障害時に勘で本番環境を触る人ではなく、ログ、手順書、権限、切り戻しを確認してから動く人に近い。
3.機械や音、数値の変化に興味を持てる
潜水艦は高度なセンサー、電気、機械、通信、武器、生命維持設備の集合体である。理系科目が得意なら有利な職域はあるが、入隊時点で専門家である必要はない。
大切なのは、機器の仕組みを覚えることを苦にせず、「いつもと違う音」「いつもと違う温度」「いつもと違う表示」を放置しないことである。異常を早く見つけ、決められた系統で報告する観察力が求められる。
4.少人数の組織で役割を果たせる
潜水艦は一隻ごとに単独で任務を遂行することが基本で、各艦の能力を最大限に発揮する必要があると海上自衛隊は説明している。
誰か一人が欠ければ、残る乗員の負担が増える。自分の仕事だけ終わればよいという考えではなく、全体の進み具合を見て支援できる人が向く。
5.家族や恋人と離れる働き方を受け入れられる
潜水艦乗員の適性は本人だけで完結しない。長い出港や連絡制限を、家族や恋人がどう受け止めるかも重要である。
結婚後も続けるなら、出港前に家計、子育て、緊急連絡、家事の分担を決める必要がある。「国を守る仕事だから分かってくれるはず」と説明を省くと、残された側に負担が偏る。
潜水艦乗りに向いていない可能性がある人
- 閉所・暗所で強いパニック反応が出る
- 体調不良やミスを隠してしまう
- 安全手順を自己判断で省略する
- 共同生活や連絡制限を受け入れられない
次の特徴があるから即不合格という意味ではない。ただし、入隊前に自分を点検した方がよい。
閉所や暗所で強いパニック反応が出る
体調不良やミスを隠す癖がある
決められた手順を「非効率」と考えて飛ばしやすい
他人との共同生活で、音、臭い、生活習慣の違いに強く苛立つ
一人になれないと感情を回復できない
家族と長期間連絡が取れない状況を受け入れられない
配属、勤務地、職域が希望通りでないと働けない
潜水艦適性は、勇敢さの試験ではない。自分の限界を正確に把握し、限界を越える前に報告できるかの試験でもある。
身体検査で見られるポイント
海上自衛官の採用段階では、身長、体重、視力、色覚、聴力、歯、尿検査、胸部X線検査、既往歴などが確認される。一般的な基準では、身長は男性150センチ以上、女性140センチ以上、視力は両眼の裸眼0.6以上または矯正0.8以上、聴力は正常であることなどが示されている。基準は変更される場合がある。
潜水艦乗員候補には、これに加えて健康診断と耐圧試験がある。耳抜きができるか、圧力変化で身体に問題が出ないか、閉鎖環境で安定して行動できるかなどが重要になる。
眼鏡を使っているだけで直ちに潜水艦乗員になれないとは限らない。まず一般採用の矯正視力基準を満たす必要があり、その後の潜水艦適性で個別に判断される。既往歴や手術歴がある人は、自己判断で諦めたり隠したりせず、受験前に地方協力本部へ相談した方がよい。
女性も潜水艦乗員になれる
- 女性の潜水艦配置制限は解除済み
- 採用基準と潜水艦適性を満たすことが前提
- 最新の受け入れ状況は説明会・地方協力本部で確認
現在は女性も潜水艦乗員を目指せる。海上自衛隊では女性の潜水艦配置制限が解除され、2020年に女性隊員が潜水艦教育訓練隊へ入隊した。幹部1名と海曹士4名が第1期生となり、その後も女性隊員が課程を修了している。
防衛白書では、女性隊員が約5か月の教育を経て、2020年6月から練習潜水艦「みちしお」に乗艦した事例が紹介されている。
男女で任務の基本が変わるわけではない。必要なのは、採用基準と潜水艦適性を満たし、艦内の役割を果たすことである。プライバシー設備や勤務体制は艦ごとに整備が進められているが、希望者は説明会や地方協力本部で最新の受け入れ状況を確認するとよい。
潜水艦乗りを目指す人が入隊前にやること
- 水に慣れ、一定距離を落ち着いて泳ぐ
- 走力と自重トレーニングを3か月以上継続
- 歯・耳・鼻の不調を早めに治療
- 海上自衛隊と潜水艦勤務を分けて志望動機を整理
水泳は「速さ」より水への慣れを作る
潜水艦課程では運動・水泳能力が測定される。競泳選手のような速度は不要でも、水に入ることへの恐怖が強い状態は改善しておきたい。
週1回でも継続して泳ぎ、呼吸、浮く感覚、一定距離を慌てず進む感覚を身につける。無理な息止めや単独での潜水練習は危険なので避ける。
走力と自重トレーニングを続ける
教育隊では日常的に体力錬成がある。入隊直前だけ追い込むより、3か月以上かけて走る習慣を作り、腕立て伏せ、腹筋、スクワットなどを継続した方がよい。
体力は選抜を突破するためだけではなく、睡眠不足や慣れない集団生活でも集中力を保つための余裕になる。
歯、耳、鼻の不調を放置しない
圧力変化がある環境では、耳や副鼻腔の不調が問題になり得る。虫歯や欠損歯も一般採用の身体検査項目に含まれる。治療が必要なら、受験直前ではなく早めに歯科や耳鼻科を受診する。
志望動機を「潜水艦が格好いい」で終わらせない
潜水艦への憧れは立派な入口である。しかし面接では、閉鎖環境、長期出港、集団生活、厳格な安全手順を理解した上で希望していることを示したい。
志望動機は、次の三段階で組み立てるとよい。
なぜ海上自衛隊なのか
なぜ潜水艦勤務に関心があるのか
自分の性格や経験をどう生かせるのか
たとえば、機械整備、電気、情報通信、調理、部活動での共同生活、夜勤経験などは、潜水艦の仕事と接続しやすい。経験を大げさに飾るより、手順を守った経験、ミスを報告した経験、チームで困難を解決した経験を具体的に話す方が説得力がある。
まとめ|潜水艦乗りは「選ばれた後も学び続ける仕事」
海上自衛隊の潜水艦乗りになるには、海上自衛官として採用された後、潜水艦乗員としての選抜適性検査と専門教育を通過しなければならない。主な入口は2等海士、一般曹候補生、一般幹部候補生であり、長期的に専門性を積みたいなら一般曹候補生、指揮官を目指すなら幹部ルートが中心となる。
給料は、2026年度の高卒初任給で月額23万9,500円が目安となり、潜水艦乗員には現在の号俸の55.5%に相当する乗組手当が公表されている。単純計算では若手でも月額30万円台後半に達し得るが、その数字は長期出港、閉鎖環境、家族と離れる時間、高い安全責任への対価である。
適性で最も大切なのは、派手な勇気ではない。確認を省かず、体調やミスを隠さず、疲れていても仲間への報告を止めないことである。
潜水艦は一人の英雄で動く兵器ではない。見えない海の下で、乗員全員が自分の役割を静かに果たしたときだけ、一隻の潜水艦として機能する。その働き方に魅力を感じるなら、まず地方協力本部で海上自衛隊の採用区分と潜水艦乗員希望について相談することが第一歩になる。
よくある質問
必ずなれるわけではない。本人の希望に加え、職域、教育成績、健康状態、耐圧試験、心理適性、面接、人員需要などを基に選抜される。公式にも、選抜適性検査に合格した隊員が潜水艦教育訓練隊へ入隊すると説明されている。
水泳能力測定があるため、全く泳げない状態は不利である。ただし、潜水艦乗員は潜水員とは異なり、日常任務で海中を泳ぐ職種ではない。入隊前から水に慣れ、教育に対応できる基礎水泳力を付けることが重要である。
若手の初任給段階で1,000万円に届くわけではない。潜水艦乗組手当は大きいが、年収は階級、号俸、勤続年数、役職、各種手当で決まる。高級幹部や長い勤続を経れば高年収になる可能性はあるが、潜水艦に乗ればすぐ1,000万円という理解は誤りである。
希望は出せても確約はされない。潜水艦部隊の中心は横須賀と呉であり、教育、艦の配属、部隊運用に応じて決まる。
女性の配置制限は解除され、実際に女性潜水艦乗員が勤務している。選抜では身体、心理、職務適性が見られる。男女共通で、特殊な環境に適応し、役割を果たせるかが重要になる。
参考資料・主な出典
防衛省・自衛隊 自衛官募集「2等陸・海・空士」|公式情報を確認
防衛省・自衛隊 自衛官募集「一般曹候補生」|公式情報を確認
海上自衛隊 潜水艦教育訓練隊|公式情報を確認
海上自衛隊 潜水艦隊|公式情報を確認
防衛省・自衛隊 待遇・福利厚生|公式情報を確認
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