
KAANは、トルコが開発中の双発戦闘機である。初飛行には成功したが、2026年8月時点では試験・量産準備の途上であり、完成済みの実用第5世代機ではない。
本稿のテーマは、KAANの本質は一機の完成品ではなく、機体・エンジン・センサー・ソフトウェア・量産基盤を同時に育てる長期的な産業装置にあるという一点だ。TF-XからKAANへの歩み、公開性能、初飛行、F110と国産TF35000、F-35との違い、インドネシア契約まで、一次資料の「確認済み」と「目標」を分けて解説する。
- P0は2024年に2回の公開飛行実績があるが、P1の初飛行完了は2026年8月10日時点の公式発表で確認できない
- 公称マッハ1.8や第5世代能力は設計値・目標であり、初期飛行実績や部隊運用実績とは証拠段階が異なる
- 飛行実績のある推進系はF110で、国産TF35000は公式にも開発中。統合・量産認証の完了を先取りしない
- 国内20機は2028~2030年の納入目標、インドネシア48機は確定契約。どちらも納入済み機数を意味しない
KAAN戦闘機とは|先に結論
- KAAN(カーン)は、トルコ大統領府国防産業庁(SSB)の事業としてTurkish Aerospace(TUSAŞ)が主契約者を務める双発戦闘機計画である
- 旧称はTF-XまたはMMU(Milli Muharip Uçak、国家戦闘機)で、2030年代以降に段階退役するトルコ空軍F-16の後継基盤をつくることが目的だ
- P0は2024年2月に初飛行し、2025年7月にはインドネシア48機の確定売買契約、2026年5月には国内調達契約が署名された
- 一方、低被探知性、センサー融合、超音速巡航、公称マッハ1.8は量産仕様で検証済みの実績ではない
KAAN(カーン)は、トルコ大統領府国防産業庁(SSB)の事業としてTurkish Aerospace(TUSAŞ)が主契約者を務める双発戦闘機計画である。旧称はTF-XまたはMMU(Milli Muharip Uçak、国家戦闘機)で、2030年代以降に段階退役するトルコ空軍F-16の後継基盤をつくることが目的だ。
P0は2024年2月に初飛行し、2025年7月にはインドネシア48機の確定売買契約、2026年5月には国内調達契約が署名された。一方、低被探知性、センサー融合、超音速巡航、公称マッハ1.8は量産仕様で検証済みの実績ではない。
私の評価では、KAANを「F-35に代わるトルコ製ステルス機」と一行で片づけると、計画の半分しか見えない。重要なのは機体の外形より、これまで国外に依存してきた設計・試験・統合・認証を国内で一周させようとしている点だ。
KAANは初飛行済みだが、なお開発中である。公称性能、試作機の実績、量産契約、将来の国産化目標を別々に読む必要がある。
この論点を広く比較するなら、「【2026年最新版】世界最強戦闘機ランキングTOP10|現役配備機限定で徹底比較」もあわせて確認したい。
TF-XからKAANへ|計画名が変わった経緯
- KAANは突然現れた「F-35離脱後の代替案」ではない
- Turkish Aerospaceの公式製品ページによれば、SSBとの開発契約は2016年8月5日に署名された
- 英国政府とBAE Systemsも2017年、TF-Xの初期開発段階へ協力する1億ポンド超の契約枠組みを公表している
- ただしKAANの契約は2016年、英国との協力は2017年であり、F-35問題より前に始まっている
KAANは突然現れた「F-35離脱後の代替案」ではない。Turkish Aerospaceの公式製品ページによれば、SSBとの開発契約は2016年8月5日に署名された。英国政府とBAE Systemsも2017年、TF-Xの初期開発段階へ協力する1億ポンド超の契約枠組みを公表している。
| 呼称 | 意味・使用時期 | 読み方の注意 |
|---|---|---|
| TF-X | Turkish Fighter Experimentalなどと説明される開発呼称 | 初期の国際協力・設計段階で広く使用 |
| MMU | トルコ語Milli Muharip Uçak(国家戦闘機)の略 | 国内公文書・報道で使われた計画名 |
| KAAN | 2023年5月に付与された固有名 | 現在の公式製品名 |
2019年7月、米国防総省はトルコによるロシア製S-400受領を理由に、同国をF-35計画から外す手続きを開始した。ただしKAANの契約は2016年、英国との協力は2017年であり、F-35問題より前に始まっている。
より正確には、F-35離脱がKAANを「誕生させた」のではない。既存の国産戦闘機計画に、代替調達、技術主権、供給途絶への備えという政治的重みを追加したのである。

トルコはなぜ国産戦闘機を開発するのか
- 公式説明の第一目的は、2030年代から段階的に退役するF-16の後継である
- しかし戦闘機の開発には、機体を組み立てる以上の意味がある
- 狙いは、空力・構造・飛行制御を変更できる設計主権、レーダーやソフトを認証できる統合主権、量産・整備を続ける生産主権、輸出仕様と支援を決める裁量を国内へ残すことである
- 一機を輸入するだけでは、この循環は育ちにくい
公式説明の第一目的は、2030年代から段階的に退役するF-16の後継である。しかし戦闘機の開発には、機体を組み立てる以上の意味がある。
狙いは、空力・構造・飛行制御を変更できる設計主権、レーダーやソフトを認証できる統合主権、量産・整備を続ける生産主権、輸出仕様と支援を決める裁量を国内へ残すことである。一機を輸入するだけでは、この循環は育ちにくい。
ただし「国産」は二値ではない。機体設計が国内でも、エンジン、材料、半導体、試験装置、ソフトウェア部品に外国由来の要素はあり得る。現在のKAANがGE AerospaceのF110を使うことは、計画が失敗している証拠ではなく、まず飛行試験を進め、並行して国産エンジンを育てる段階戦略を示す。
国産化率という一つの百分率より、どの技術を自国が設計変更でき、どの部品に輸出許可が要り、どの試験を国内で完結できるかを見る方が実態に近い。
KAANの公開性能|数字は「量産機の実測値」ではない
- Turkish Aerospaceが公開する主要諸元は次の通りである
- これらはメーカーの設計値・公称値であり、2024年の2回の飛行だけで全項目が実証されたわけではない
- 初飛行は高度8,000ft、速度230kt、2回目は10,000ft、230ktだった
- 初期飛行で速度を抑えるのは異常ではなく、飛行領域を段階的に拡大する開発試験の性格による
Turkish Aerospaceが公開する主要諸元は次の通りである。これらはメーカーの設計値・公称値であり、2024年の2回の飛行だけで全項目が実証されたわけではない。
| 項目 | Turkish Aerospace公称値 | 証拠の状態 |
|---|---|---|
| 全長 | 20.3m | 公式製品値 |
| 全幅 | 13.4m | 公式製品値 |
| 全高 | 5m | 公式製品値 |
| 翼面積 | 71.6平方m | 公式製品値 |
| 最大離陸重量 | 34,750kg | 設計上の最大値 |
| エンジン推力 | 2×13,150kgf(2×29,000lbf) | 現行公称構成 |
| 最大速度 | マッハ1.8(高度40,000ft) | 設計目標、公的な実証記録ではない |
| 実用上昇限度 | 55,000ft(16,764m) | 設計目標 |
| 荷重制限 | +9/−3.5G | 設計値 |
とくに「マッハ1.8」は検索結果で独り歩きしやすい。初飛行は高度8,000ft、速度230kt、2回目は10,000ft、230ktだった。初期飛行で速度を抑えるのは異常ではなく、飛行領域を段階的に拡大する開発試験の性格による。
双発・大型機は内部容積と将来改修余地を得やすい一方、重量、製造工数、整備負担を伴う。「双発だから上位」とは言えない。
公称値は完成した量産機の保証値ではない。試験条件、試作機、将来ブロックを区別して評価することが重要だ。

KAANの初飛行と2026年の試作機|何が確認されたのか
- Turkish Aerospaceの初飛行発表は、P0が2024年2月21日に13分間飛行し、高度8,000ft、速度230ktに達したと記録する
- 公式製品ページは、2024年5月6日の2回目の飛行を14分、高度10,000ft、速度230ktとしている
- 静強度試験機は飛ばすためではなく、構造が想定荷重に耐えるかを確かめるための機体である
- 飛行試作機と数を合算して「実戦機が増えた」と読むのは誤りだ
Turkish Aerospaceの初飛行発表は、P0が2024年2月21日に13分間飛行し、高度8,000ft、速度230ktに達したと記録する。公式製品ページは、2024年5月6日の2回目の飛行を14分、高度10,000ft、速度230ktとしている。
| 時点 | 公開された出来事 | そこから言えること | まだ言えないこと |
|---|---|---|---|
| 2023年 | ロールアウト、地上試験へ | 機体組立と基本地上試験の段階 | 戦闘機としての実用性 |
| 2024年2月 | P0初飛行 | 離陸、基本飛行、着陸を実施 | 公称最高速度、全荷重、低被探知性 |
| 2024年5月 | P0第2回飛行 | 初期飛行試験を反復 | センサー融合や量産仕様の完成 |
| 2024年末 | 双発アフターバーナー地上試験を公表 | 地上で両発の試験を実施 | 超音速巡航の実証 |
| 2026年2月 | 静強度試験機と後続飛行試作機を公開 | 複数の試験機を並行製作 | 量産機の認証完了 |
| 2026年5月 | トルコ向け調達契約に署名 | 国が初期調達へ契約上の意思を示した | 予定どおりの納入完了 |
2026年2月、SSB長官の視察時に、実大静強度試験用機と第1・第2飛行試作機が公開された。静強度試験機は飛ばすためではなく、構造が想定荷重に耐えるかを確かめるための機体である。飛行試作機と数を合算して「実戦機が増えた」と読むのは誤りだ。
2026年8月10日現在、今回確認したTurkish AerospaceとSSBの公式公開ページには、後続飛行試作機P1の初飛行完了を示す発表を確認できなかった。地上試験映像や予定日は進展の手がかりだが、初飛行実績とは分ける。

KAANは本当に第5世代戦闘機なのか|呼称と検証を分ける
- 「第5世代」に世界共通の法的認証基準はない
- 一般には、低被探知性、内部搭載、AESAレーダー、電子光学、電子戦、センサー融合、ネットワーク接続、高度なソフトウェアなどの組合せを指す
- Turkish AerospaceとSSBはKAANを第5世代機として位置づけている
- 低被探知性は形だけで決まらず、材料、表面品質、搭載物、整備再現性まで含む
「第5世代」に世界共通の法的認証基準はない。一般には、低被探知性、内部搭載、AESAレーダー、電子光学、電子戦、センサー融合、ネットワーク接続、高度なソフトウェアなどの組合せを指す。Turkish AerospaceとSSBはKAANを第5世代機として位置づけている。
| 第5世代とされる要素 | KAANの公式説明 | 2026年8月時点の読み方 |
|---|---|---|
| 低被探知性 | 機体形状、赤外線痕跡低減、関連試験 | 詳細値は非公開、量産形態での検証は未公表 |
| 内部区画 | 内部兵装区画を設計特徴として掲示 | 統合・分離試験の全体像は未公表 |
| AESAレーダー | 国産レーダーを将来搭載 | ASELSAN資料は開発・将来投入を表現 |
| センサー融合 | 統合アビオニクスと融合を計画 | TÜBİTAK製コンピューターの初飛行使用は確認済み |
| ネットワーク | 友軍資産との相互運用を計画 | 実運用規模での成熟度は未公表 |
| 超音速巡航 | 公式特徴一覧に掲示 | 公開飛行での実証は未確認 |
初飛行は大きな成果だが、「飛べた」と「第5世代能力が統合・認証された」は別の到達点である。低被探知性は形だけで決まらず、材料、表面品質、搭載物、整備再現性まで含む。センサー融合には、データの時刻・位置・信頼度を統合するソフトウェアが要る。
私見では、第5世代というラベルを争うより、各能力について「設計」「試作」「飛行実証」「量産認証」「部隊運用」のどこにいるかを追う方が有益だ。KAANは第5世代を目標にした計画であり、実用能力はこれから証明される。
この論点を広く比較するなら、「【2026年決定版】世界最強ステルス戦闘機ランキングTOP10|見えない空の支配者たち」もあわせて確認したい。

現在のKAANエンジン|GE F110で飛行試験を先行
- KAANの現在の飛行実績は、GE AerospaceのF110系列エンジンによる
- GE自身もF110がKAANを動かすと明記している
- F110はF-16やF-15で長期運用されてきた系列であり、トルコ国内にはF-16運用とTEIを通じた産業経験がある
- 既存エンジンなら、未知の機体と未知の推進系を同時に試すリスクを減らし、機体試験を先行できる
KAANの現在の飛行実績は、GE AerospaceのF110系列エンジンによる。GE自身もF110がKAANを動かすと明記している。F110はF-16やF-15で長期運用されてきた系列であり、トルコ国内にはF-16運用とTEIを通じた産業経験がある。
既存エンジンなら、未知の機体と未知の推進系を同時に試すリスクを減らし、機体試験を先行できる。
しかしF110は米国由来である。追加取得、技術データ、改修、再輸出には契約と輸出管理の影響が残る。KAANが「国産機」であっても、F110を使う段階では推進系の完全な主権を得たとはいえない。
F110の使用は「国産化の偽装」でも「国産エンジン完成の証拠」でもない。機体開発を止めずに、より難しい推進技術を別線で進める橋渡しである。
国産TF35000エンジン|最大の関門であり産業目標
- TEIの公式製品ページは、TF35000をSSBの下でTEIとTRMOTORが共同開発する35,000lbf級ターボファンと説明する
- KAANの第5世代要求に対応し、材料、コーティング、冷却、設計、製造、試験の国内生態系を築くことが目的だ
- 35,000lbfという数字は名称と開発目標であり、飛行認証済み量産エンジンの実測保証ではない
- 高推力戦闘機用エンジンは、圧縮機効率、高温部材料、冷却、燃焼安定、制御ソフト、耐久、再始動、鳥吸込み、振動など多数の試験を通過しなければならない
TEIの公式製品ページは、TF35000をSSBの下でTEIとTRMOTORが共同開発する35,000lbf級ターボファンと説明する。KAANの第5世代要求に対応し、材料、コーティング、冷却、設計、製造、試験の国内生態系を築くことが目的だ。
35,000lbfという数字は名称と開発目標であり、飛行認証済み量産エンジンの実測保証ではない。高推力戦闘機用エンジンは、圧縮機効率、高温部材料、冷却、燃焼安定、制御ソフト、耐久、再始動、鳥吸込み、振動など多数の試験を通過しなければならない。
| 段階 | 確認する内容 | 公開情報の状態 |
|---|---|---|
| 構想・要求 | 推力級、燃費、寸法、発電、低被探知との整合 | TF35000の目的と推力級を公表 |
| 部品・要素技術 | 圧縮機、燃焼器、タービン、材料、被覆 | 開発中と説明 |
| 地上実証 | コア、全機、耐久、環境試験 | 詳細工程・完了日は限定公開 |
| 飛行試験 | 試験機への統合、飛行領域拡大 | KAANでの完了実績は未公表 |
| 型式・量産 | 再現性、寿命、整備、供給網 | 将来目標 |
国産エンジンの価値は推力だけではない。設計変更の自由、輸出先への許可、寿命管理、改修、部品供給を国内で決められることにある。逆に言えば、エンジン完成が遅れれば、KAANの輸出条件と将来ブロックの性能に影響する。
この計画で最も難しいのは、ステルスらしい外形を作ることではなく、数千時間の熱と回転に耐える推進系を量産品質で繰り返すことだと私は考える。航空産業の主権は、派手なロールアウトより、同じ品質のエンジンを何十基も作って支える工程に現れる。
TF35000は開発中である。推力目標、地上実証、飛行統合、量産認証を一つの「完成」にまとめてはならない。

KAANのレーダー・アビオニクス|国産化の中心はソフトウェア
TÜBİTAKは、初飛行時に中央管理コンピューター、アビオニクスデータ集約装置、決定論的ネットワーク、マルチコア実時間OS、ミドルウェアが使われたと公表している。これは「将来搭載予定」ではなく、P0初飛行で確認された国内開発要素である。
一方、レーダーや電子光学などの戦闘システムは段階が異なる。ASELSANの2024年年次報告は、KAAN向けMURAD系レーダーを「今後の年に投入予定」と表現しており、量産仕様での完成を意味しない。
| 層 | 主な役割 | 2026年8月時点の公開根拠 |
|---|---|---|
| 計算機 | 飛行・任務・表示・データ処理 | TÜBİTAK製の一部がP0初飛行で使用 |
| ネットワーク | 異なる重要度のデータを安全・確定時間で伝送 | 初飛行使用を公表 |
| レーダー | 電子的走査、探知・追尾、情報生成 | KAAN向け開発・将来投入を公表 |
| 電子光学・電子戦 | 電磁・赤外線情報の取得と防御 | 公式に計画、成熟度の詳細は限定的 |
| センサー融合 | 複数情報を一つの状況像へ統合 | 設計目標、実用成熟度は未公表 |
戦闘機の世代差は、個別センサーの最大距離だけでは決まらない。故障時も飛行を続ける冗長性、ソフト更新、サイバー安全、時刻同期、試験再現性、操縦者の負荷低減が同じくらい重要である。
本稿ではレーダー周波数、探知距離、電子戦の具体的な対抗方法、兵装の運用手順を扱わない。公開情報でも、現役・開発中システムの弱点分析や攻撃助言へつながる詳細は必要ない。

KAANは航空産業をどう変えるのか|一社では作れない国家事業
KAANはTurkish Aerospaceだけの製品ではない。SSBは2026年の後続試作機公開時、供給網が20都市超、300社超、5,000人超に広がると説明した。人数は変動し得るが、計画が複合材、機械加工、電子機器、ソフトウェア、試験、教育を束ねる事業であることは確かだ。
英国との協力も「完全自力」という単純な物語を修正する。2017年のTF-X協定はBAE Systemsとトルコ側技術者の共同作業を想定していた。国産化とは外国知識を拒むことではなく、協力で得た能力を国内の設計・試験・量産へ定着させることだ。
試作では設計・構造・飛行・ソフトの試験環境、量産では部品追跡と品質保証、輸出では顧客仕様・教育・長期部品供給が問われる。
一機が飛ぶことと、毎年同じ品質で複数機を納めることの間には、航空産業で最も深い谷がある。KAANの成否は最高速度より、この谷を越えられるかで決まる。
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KAANとF-35の違い|代替関係だけで比べない
KAANとF-35はともに第5世代を掲げるが、2026年時点の成熟度は大きく異なる。F-35Aは単発の多国間量産・運用システムであり、KAANは双発の開発・初期調達段階にある。
| 比較軸 | KAAN | F-35A |
|---|---|---|
| 状態 | 飛行試験・量産準備 | 各国で量産・部隊運用中 |
| エンジン | 双発、現段階はF110系列 | 単発F135 |
| 全長 | 20.3m(メーカー公称) | 15.7m(米空軍資料) |
| 最大速度 | マッハ1.8の設計値 | マッハ1.6の公称・運用機値 |
| 計画構造 | トルコ主導、国産化と輸出を重視 | 米国主導の国際共同事業 |
| 主な意味 | 設計・統合・量産主権の獲得 | 成熟した共通機、支援・相互運用網 |
速度だけならKAANの公称値が高いが、未検証の設計値と運用機の公称値を競争させても意味は薄い。F-35の強みは機体単体だけでなく、ソフトウェア、訓練、補給、データ、改修、参加国の共通運用にある。KAANはその規模の運用生態系をこれから築く。
具体的な探知距離、交戦条件、弱点、攻撃方法は比較しない。開発成熟度と産業構造だけで、2026年時点の差は十分説明できる。
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KAANとGCAPの違い|第5世代と次世代計画は時間軸が違う
KAANと日英伊のGCAPも並べられやすいが、計画段階と目標年が異なる。GCAPは2035年の運用開始を目指す次世代戦闘航空計画で、2026年7月には3か国共同の次段階設計契約が英国政府から公表された。
KAANは2024年にP0が飛び、2026年に初期調達契約へ進んだ。GCAPは日英伊が同等の政府間機関と共同企業体を組み、有人機だけでなく無人協働、デジタル開発、将来改修を含む2035年体系をつくる。
KAANはトルコ主導でP0が飛び、2028年からの初期納入を目標とする。GCAPは日英伊が技術・費用・リスクを分担し、2035年運用開始を目標とする設計段階の計画である。
先に飛んだKAANが自動的に「GCAPより先進」なのでも、GCAPが第6世代を名乗るから自動的に上なのでもない。KAANは現在の飛行試験を量産へつなぐ課題、GCAPは将来要求を多国間で一つの設計へまとめる課題を抱える。
この論点を広く比較するなら、「次期戦闘機GCAPとは|日英伊・第6世代機を徹底解説【2026】」もあわせて確認したい。
この論点を広く比較するなら、「第6世代戦闘機一覧【2026】|GCAP・F-47・欧州再編の現在地」もあわせて確認したい。
インドネシア48機契約|輸出「構想」から確定契約へ
KAANの輸出を語る際、覚書と契約を分ける必要がある。Turkish Aerospaceとインドネシア国防省は、2025年6月の政府間合意に続き、同年7月のIDEFで48機の確定売買契約を締結したと双方の公式サイトで発表した。
| 証拠の段階 | 2025年の出来事 | 意味 |
|---|---|---|
| 政府間合意 | 6月11日に48機と協力枠組みを発表 | 政治的・政府間の基本合意 |
| 確定売買契約 | 7月のIDEFで署名 | TUSAŞとインドネシア国防省の拘束的な調達段階 |
| 産業協力 | 現地生産能力、教育、技術協力を含む | 完成機販売だけでない長期事業 |
| 納入実績 | 2026年8月時点では将来 | 契約締結と納入完了は別 |
これは単なる「関心表明」ではない。他方、48機がすでに生産・納入されたわけでもない。エンジン、仕様確定、資金、現地生産分担、認証、日程という履行課題が残る。
とくに初期公表は、120か月以内の納入と国産エンジンを掲げた。国産TF35000がまだ開発中である以上、この条件はエンジン工程と輸出日程を強く結びつける。記事では「契約がある」ことは断定できるが、「予定どおり完成する」ことまでは断定できない。
サウジアラビアなど他国との協力発言は報じられているが、今回確認できたインドネシア同等の確定売買契約ではないため、受注国一覧へ加えない。

量産予定と開発リスク|2028年は保証ではなく目標
2026年5月、SSBとTurkish AerospaceはKAANの国内調達契約へ署名した。SSB長官は、2028年から2030年末までにBlock 10を20機納入する目標を示した。契約は重要な前進だが、開発試験が終わったことを意味しない。
| リスク | なぜ難しいか | 確認すべき節目 |
|---|---|---|
| 後続試作機 | P0から設計変更した機体の検証が必要 | 初飛行、飛行領域拡大、構造試験 |
| ミッションシステム | レーダー、電子戦、光学、計算機を統合 | ハード搭載だけでなく融合・認証 |
| 低被探知性 | 製造ばらつきと整備後の再現性が重要 | 量産形態での試験、品質管理 |
| F110供給 | 米国由来エンジンと技術データに依存 | 契約履行、輸出許可、支援体制 |
| TF35000 | 高温材料、耐久、制御、飛行統合が難しい | 全機地上試験、飛行試験、量産認証 |
| 生産立ち上げ | 試作品と連続生産は別能力 | 部品納期、品質、年産、改修管理 |
| インドネシア契約 | 顧客仕様、現地生産、教育を同時管理 | 設計確定、支払、認証、引渡し |
納入目標を疑うことと、計画を否定することは同じではない。航空機開発では予定を基準に、どの節目が完了し、何が繰り越されたかを継続的に見る必要がある。
KAANを評価する最良の指標は、発表会の回数ではない。後続試作機の反復飛行、量産仕様センサーの統合、エンジン地上・飛行試験、納入後の稼働実績という、地味で検証可能な節目である。
「契約済み」「量産準備中」「納入目標」「部隊運用済み」は同義ではない。2028年は契約上の目標であり、達成済みの事実ではない。
よくある質問
KAANはどこの国の戦闘機ですか?
トルコの戦闘機で、SSBの事業としてTurkish Aerospaceが主契約者を務める。英国BAE Systemsとの設計協力、米国製F110エンジンなど国外との関係もあり、「国内主導」と「全要素が国産」は同義ではない。
TF-XとKAANは別の機体ですか?
別計画ではない。TF-X、MMUは開発段階で使われた呼称で、KAANは2023年に付与された現在の固有名である。
KAANはいつ初飛行しましたか?
最初の飛行用機P0が2024年2月21日に初飛行した。Turkish Aerospaceは13分、高度8,000ft、速度230ktと発表し、同年5月6日に2回目の飛行を行った。
KAANはすでに第5世代戦闘機として完成していますか?
完成していない。第5世代能力を目標に開発されているが、2026年8月時点では後続試作機、センサー統合、飛行領域拡大、量産認証が進行中である。
KAANの最高速度はマッハ1.8ですか?
マッハ1.8はTurkish Aerospaceの設計上の公称値である。公開された初期2飛行は230ktであり、マッハ1.8を実証した公式飛行記録として扱わない。
KAANのエンジンは国産ですか?
現在の飛行実績はGE AerospaceのF110系列による。トルコはKAAN向け35,000lbf級TF35000をTEI・TRMOTORで開発中だが、KAANへの飛行統合・量産認証は完了していない。
KAANとF-35はどちらが高性能ですか?
同条件比較はできない。F-35は量産・部隊運用中、KAANは<span class="swl-marker mark_yellow">開発中である</span>。KAANの設計値とF-35の運用実績を直接競わせず、成熟度、エンジン、産業モデル、支援網を分けて見るべきだ。
インドネシアはKAANを本当に購入したのですか?
はい。2025年7月、Turkish Aerospaceとインドネシア国防省は48機の<span class="swl-marker mark_green">確定売買契約</span>を公式発表した。ただし納入は将来であり、契約締結と履行完了は別である。
KAANはいつトルコ空軍へ配備されますか?
2026年5月の公式発言では、2028年から2030年末までにBlock 10を20機納入することが目標とされた。これは予定であり、試験・認証・生産の進捗に左右される。
まとめ|KAANの本当の価値は「産業装置」にある
KAANは、トルコがF-16後継を国内主導で設計・統合・生産するための双発戦闘機計画である。P0は2024年に初飛行し、2025年にはインドネシア48機の確定契約、2026年にはトルコ国内向け調達契約へ進んだ。
しかし、公称マッハ1.8、低被探知性、センサー融合、超音速巡航、国産エンジンは、同じ成熟段階ではない。試作機で飛んだ要素、開発中の要素、量産目標を分けなければならない。
KAANの成功は、F-35より一つ大きい、速い、といった単純な比較では測れない。F110で飛行試験を前進させながらTF35000を育て、TÜBİTAK、ASELSAN、300社超の供給網を量産品質へ束ね、輸出先の仕様と支援まで履行できるかが核心だ。
だからこそKAANは、一機の飛行機より大きい。戦闘機を自国で設計し、試し、直し、量産し、数十年支える能力そのものを作る産業装置なのである。
主要出典と確認基準
本稿は2026年8月10日時点の公開情報で確認した。メーカー資料は設計値と企業見解、政府資料は契約・政策・公式日程として扱い、将来計画を達成済み事実へ置き換えていない。
1. KAAN公式製品ページ — Turkish Aerospace 2. KAAN初飛行発表 — Turkish Aerospace 3. ssb.gov.tr — SSB 4. TF-X協力合意 — BAE Systems 5. gov.uk — 英国政府 6. defense.gov — 米国防総省 7. F110 MRO Support発表 — GE Aerospace 8. TF35000 Turbofan Engine — TEI 9. tubitak.gov.tr — TÜBİTAK 10. ASELSAN Annual Report 2024 — ASELSAN 11. インドネシア48機の確定売買契約 — Turkish Aerospace 12. インドネシア国防省の契約発表 — インドネシア国防省 13. 2026年の後続試作機公開 — Anadolu Agency 14. 2026年の国内調達契約 — Anadolu Agency 15. F-35A Lightning II Fact Sheet — 米空軍 16. GCAP次段階契約 — 英国政府
参考資料・主な出典
公式製品ページ|資料を確認
初飛行発表|資料を確認
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ssb.gov.tr|資料を確認
TF-X協力合意|資料を確認
gov.uk|資料を確認
defense.gov|資料を確認
F110 MRO Support発表|資料を確認
tubitak.gov.tr|資料を確認
ASELSAN Annual Report 2024|資料を確認
インドネシア48機の確定売買契約|資料を確認
インドネシア国防省の契約発表|資料を確認
2026年の後続試作機公開|資料を確認
2026年の国内調達契約|資料を確認
F-35A Lightning II Fact Sheet|資料を確認
GCAP次段階契約|資料を確認
A Historic Export Deal Signed Between Türkiye and Indonesia for KAAN|資料を確認
SSB Başkanı Görgün: 20 Adet Blok-10 KAAN Uçağını 2028'den İtibaren Teslim Etmeyi Hedefliyoruz|資料を確認
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