2026年版として参照する最新のSIPRI企業データは、2024年の武器・軍事サービス収入を集計し、2025年12月に公表されたものです。記事の更新年と統計の対象年を混同しません。
SIPRI Top 100の2024年武器収入合計は6,790億ドルで、前年比5.9%増でした。これは上位100社の武器・軍事サービス収入であり、世界の防衛市場全体や企業利益の合計ではありません。
- 基準はSIPRIのarms revenues(武器・軍事サービス収入)
- データ年は2024年、記事更新は2026年
- 総売上、武器収入、受注、利益、時価総額は別指標
- 非上場・国有企業を含み、株式の買い推奨表ではない
参考・SIPRI公式資料
SIPRI Top 100(2024年)とSIPRI Arms Industry Databaseを基準にします。
SIPRI 2024年データの上位5社
下表はSIPRIの定義と2024年固定ドルにそろえた上位5社です。旧表にあったCASICの3位、BAEシステムズの6位などは、別ランキングとの混在によるものでした。
| 順位 | 企業 | 国 | 2024年武器収入 |
|---|---|---|---|
| 1 | ロッキード・マーティン | 米国 | 646.5億ドル |
| 2 | RTX | 米国 | 436.0億ドル |
| 3 | ノースロップ・グラマン | 米国 | 378.5億ドル |
| 4 | BAEシステムズ | 英国 | 337.9億ドル |
| 5 | ゼネラル・ダイナミクス | 米国 | SIPRI表の第5位 |
企業1 ロッキード・マーティン|F-35・ミサイル・宇宙

同社を語る上で絶対に外せないのがF-35「ライトニングII」ステルス戦闘機だ。開発から量産まで含めた総事業費は2兆ドルとも言われ、人類史上最も高額な兵器プログラムとして知られる。米国はもちろん、日本、イギリス、イタリア、オーストラリア、韓国など世界20カ国以上がF-35を採用しており、ロッキードは向こう数十年にわたり安定的な売上を見込める。
このほか同社はミサイル防衛システム「イージス」「THAAD」、軍事衛星、極超音速兵器など、アメリカの防衛戦略の根幹を担う製品群を幅広く手がけている。
関連記事として、日本でもF-35Aの導入が進んでいる。詳細は「航空自衛隊のF-35A/Bを徹底解説|ステルス戦闘機の性能・運用・F-15との役割分担とは」を参照してほしい。
企業2 RTX|ミサイル・レーダー・航空エンジン
ミサイルと言えばレイセオン。この評価は今も変わらない。
パトリオットPAC-3(弾道ミサイル迎撃)、トマホーク巡航ミサイル、ジャベリン対戦車ミサイル、スティンガー携帯式防空ミサイル。いずれもウクライナ戦争で威力を発揮し、世界中の注目を集めた。同社はこれらミサイルシステムの増産に追われており、受注残高は過去最高水準を更新し続けている。
RTXの強みは、防衛事業と民間航空事業のバランスにある。傘下のプラット・アンド・ホイットニーは民間航空機エンジンの世界大手であり、旅客需要の回復恩恵も受けられる。純粋な防衛銘柄と比較してリスク分散が効いている点が投資妙味だ。
日本のミサイル防衛システムもRTX製品に大きく依存している。「日本のミサイル防衛システム完全解説|PAC-3・SM-3・イージス艦で弾道ミサイルはどこまで守れるのか」で詳しく解説している。
企業3 CASIC|中国のミサイル・宇宙分野

同社は中国のミサイル開発の中枢を担う国有企業である。DF-17極超音速滑空体、DF-21D「空母キラー」対艦弾道ミサイル、巡航ミサイル「長剣」シリーズなど、中国ロケット軍の主力兵器を次々と生み出している。
中国ロケット軍の脅威については「中国ロケット軍とは何者か?——押すだけで日本が滅ぶ弾道ミサイル部隊の全貌を徹底解説」で詳細に論じている。必読だ。
企業4 ノースロップ・グラマン|B-21・宇宙・ミサイル分野

同社の誇る製品といえば、まずB-2「スピリット」ステルス爆撃機。そして2023年に初飛行を果たした次世代ステルス爆撃機B-21「レイダー」だ。B-21は1機あたり7億ドル以上とされ、100機以上の調達が予定されている。ノースロップにとって向こう20年以上の収益源となる巨大プログラムだ。
さらに同社は次世代大陸間弾道ミサイル(ICBM)「センチネル」の開発主契約者でもある。アメリカの核抑止力の根幹を担う責任重大なプロジェクトだが、開発コストが当初予算を大幅に超過しており、今後の動向には注意が必要だ。
企業5 ゼネラル・ダイナミクス|戦闘車両・潜水艦
陸上では、世界最強の主力戦車M1「エイブラムス」を生産する。同戦車はウクライナにも供与され、対ロシア戦で奮闘している。海では傘下のエレクトリック・ボートがバージニア級攻撃型原子力潜水艦、コロンビア級戦略ミサイル原潜を建造している。アメリカの核抑止力のうち「海の脚」を担う責任は重い。
航空分野ではビジネスジェット「ガルフストリーム」シリーズを製造しており、民間航空市場でも存在感を示す。
世界最強戦車ランキングについては「世界最強戦車ランキングTOP10|次世代MBTの進化が止まらない!」で詳しく解説している。
企業6 BAEシステムズ|欧州・米国の複合事業
同社はF-35の製造パートナーとしてロッキード・マーティンと協業しているほか、ユーロファイター「タイフーン」戦闘機の共同開発者でもある。さらに英国海軍のドレッドノート級戦略原潜、オーストラリア海軍のハンター級フリゲートなど、艦艇分野でも世界的な受注を獲得している。
企業7 ボーイング|軍用機・宇宙と民間航空
同社の防衛部門は、F/A-18E/F「スーパーホーネット」艦上戦闘機、F-15EX戦闘機、KC-46A空中給油機、AH-64「アパッチ」攻撃ヘリコプター、V-22「オスプレイ」ティルトローター機など錚々たる製品ラインを擁する。しかし、新型大統領専用機VC-25Bの開発遅延やコスト超過が足かせとなっている。
一方で明るいニュースもある。2025年、ボーイングは米空軍の第6世代戦闘機プログラム「NGAD」を受注し、F-47と命名された次世代機の開発を手がけることが決まった。この超大型案件は同社の復活に向けた起爆剤となる可能性がある。
中国・ロシア企業を読む際の制約
欧州・米国の電子・航空・造船企業
ラインメタル|弾薬・車両と生産能力
ウクライナ戦争を契機に、同社は欧州の軍需産業を牽引する存在へと躍進した。155mm砲弾の増産、レオパルト2戦車の近代化改修、次世代戦車「パンター」KF51の開発など、受注は殺到している。受注残高は約620億ユーロ(約10兆円)を突破し、今後数年間の成長が確約されている状態だ。
同社は2030年までに売上高を500億ユーロ(現在の約5倍)に拡大する目標を掲げている。この目標が達成されれば、BAEシステムズを抜いて欧州最大の防衛企業となる。
ここでランキング一覧の企業解説は一旦終わりとする。
日本の防衛産業企業|三菱重工・川崎重工の躍進


世界ランキングで日本勢はどの位置にいるのか。
数字だけ見れば欧米の巨人たちに遠く及ばない。しかし、日本の防衛産業は今まさに歴史的な転換点を迎えている。
2023年度から2027年度までの防衛費総額43兆円。政府はGDP比2%の達成を2027年度に前倒しで目指す方針を打ち出した。三菱重工の防衛事業売上高は2022年度の5000億円弱から、2024〜26年度には年間1兆円規模への拡大が見込まれている。川崎重工も2030年度に5000〜7000億円を目標に掲げる。
防衛省との契約利益率が従来の2〜3%から最大15%程度へ引き上げられたことも大きい。「もうからない」と言われた防衛事業が、ついに高収益事業へと転換しつつあるのだ。
さらに防衛装備移転三原則の緩和により、海外輸出への道も開かれた。2025年にはオーストラリアが次期フリゲート艦として三菱重工製の「もがみ型」護衛艦を選定したとの報道もあった。GCAPプロジェクト(日英伊次世代戦闘機)への参画も含め、日本の防衛産業は新たなステージに入りつつある。
日本の防衛企業については「日本の防衛産業・軍事企業一覧【2026年版】主要メーカーと得意分野・代表装備を完全網羅」で詳しく紹介している。また、三菱重工については「三菱重工の防衛産業:軍事部門の割合から防衛装備庁連携、輸出まで」、川崎重工については「川崎重工の防衛事業を徹底解説」を参照してほしい。
イスラエル企業|戦場で鍛えられた実戦技術
イスラエルの防衛企業は規模こそ大きくないが、実戦で磨かれた技術力は世界最高水準だ。
エルビット・システムズ(17位、売上高68億ドル)は誘導弾薬、無人機(UAV)、電子戦システムで知られる。ガザ紛争への対応で需要が急増し、前年比14%増を記録した。
イスラエル航空宇宙工業(IAI、22位)は「アイアンドーム」防空システムの開発元として有名だ。同システムはハマスのロケット弾迎撃で驚異的な成功率を示し、世界中の軍が導入を検討している。
ラファエル(27位)もアイアンドーム、トロフィー(戦車用アクティブ防護システム)の開発に関与しており、イスラエル防衛技術の中核を担う。
新興勢力|アンドゥリル、スペースX、そして無人機の時代
2024年ランキングで注目すべきは、新興テクノロジー企業の台頭だ。
アンドゥリル・インダストリーズは2017年創業ながら、2024年に初めてTOP100入りを果たした(74位)。AI制御の自律型無人機、沿岸監視システム「センチリー・タワー」などを開発している。米空軍のCCA(協調戦闘機)プログラムでYFQ-44を開発するなど、次世代戦争の主役になりつつある。
残念ながらアンドゥリルとスペースXは非上場だが、これらの動向はロッキード・マーティンやノースロップ・グラマンにとって将来的な脅威となりうる。伝統的な軍需企業もAI・無人化への投資を加速させており、業界の構図が変わりつつある。
防衛関連企業を投資対象として見る際の注意
国防予算や受注が増えても、企業利益や株価が同じ比率で上がるとは限りません。長期固定価格契約、原価上昇、納期遅延、開発損失、設備投資、為替、金利、すでに織り込まれた評価倍率を確認します。
| 指標 | 確認する意味 |
|---|---|
| 武器収入 | 防衛分野の規模。利益ではない |
| 受注・受注残 | 将来売上の手掛かり。採算は別 |
| 利益率・CF | 原価超過や設備投資の負担を確認 |
| 評価倍率 | 成長期待が株価へ織り込まれているか確認 |
よくある質問
最新データは2026年の売上ですか?
いいえ。2026年版記事で使う最新SIPRIランキングは2024年の武器収入データです。
6,790億ドルは世界市場全体ですか?
いいえ。SIPRI Top 100に入る100社の武器・軍事サービス収入の合計です。
SIPRIとDefense Newsの順位は同じですか?
定義、回答企業、年度、換算方法が異なるため一致しません。
武器収入が多い会社ほど利益も多いですか?
限りません。原価、開発損失、契約条件、設備投資で利益率は変わります。
中国・ロシア企業も同じ精度で比較できますか?
公開情報と推計範囲が異なるため、不確実性を伴います。
この記事は投資推奨ですか?
いいえ。産業構造の解説で、個別銘柄の購入・売却を推奨しません。
まとめ|「死の商人」か「平和の守護者」か
世界の軍需産業を概観して、私は複雑な感情を抱く。
これらの企業が生み出す製品は、人を殺すための道具だ。一発数億円のミサイル、一機数百億円のステルス戦闘機。巨額の資金が「破壊」のために投じられる現実がある。
一方で、防衛力なくして平和は守れないことも歴史が証明している。ウクライナは西側諸国の兵器供与がなければ、とうの昔にロシアに蹂躙されていただろう。日本列島を北朝鮮の弾道ミサイルから守るPAC-3やイージス艦。これらなくして国民の安全は担保できない。
投資家として防衛銘柄を買うかどうかは、最終的には各人の価値観に委ねられる。ただ一つ言えるのは、好むと好まざるとにかかわらず、防衛産業は今後も拡大を続けるということだ。そして日本もまた、その渦中にあるということだ。
「備えあれば憂いなし」という言葉がある。その「備え」を支える企業群が、本記事で紹介した世界の防衛産業トップ企業たちである。世界情勢を注視しながら、これらの動向を追い続けることをお勧めする。
関連記事リンク集
本記事の内容を深掘りしたい読者のために、関連記事を紹介する。
日本の防衛産業全体像:
個別企業詳細:
- 三菱重工の防衛産業:軍事部門の割合から防衛装備庁連携、輸出まで
- 川崎重工の防衛事業を徹底解説
- IHIの防衛事業を徹底解説|潜水艦から航空機エンジンまで
- 三菱電機の防衛事業完全ガイド
- NECの防衛事業完全ガイド
日本の防衛力詳細:
世界の軍事力:
中国の軍事力:
この記事が参考になったら、応援の意味で以下のリンクから何か購入いただけると幸いです。執筆の励みになります。リンク先以外の商品でも構いません。

コメント