24式機動120mm迫撃砲が変える陸自火力|共通車体・火力支援・機動力を検証

演習場を走行する8輪式の機動迫撃砲車

24式機動120mm迫撃砲の価値は、「120mmという大口径の迫撃砲を手に入れたこと」ではない。陸上自衛隊は以前から120mm迫撃砲RTを運用している。変わるのは、その火力を装輪戦闘部隊と同じ機動テンポの中へ組み込めるようになる点だ。

防衛装備庁が2026年に公表した最新のプロジェクト資料では、共通戦術装輪車は0mから400mまで30秒以内で加速し、16式機動戦闘車(MCV)と同等の前進・後退発進加速性能を実証。C-2輸送機、「おおすみ」型輸送艦、73式特大型セミトレーラによる輸送にも対応し、機動迫撃砲型には120mm迫撃砲2R2Mを搭載する。

24式機動120mm迫撃砲の要点

砲弾の口径は変わらない。変わるのは、火力が必要な場所へ迫撃砲そのものが追いつく速さである。

項目120mm迫撃砲RT96式自走120mm迫撃砲24式機動120mm迫撃砲
基本形態牽引式重迫撃砲装軌式自走迫撃砲装輪式自走迫撃砲
主砲120mm迫撃砲RT120mm迫撃砲RT120mm迫撃砲2R2M
機動の特徴高機動車などで牽引路外機動性と装甲防護、最高速度50km/hMCV同等の発進加速性能を実証
戦略機動牽引車両を含む輸送が必要装軌車として運用C-2空輸、輸送艦、特大型セミトレーラ輸送に対応
24式で変わる点砲と車両が分離自走化済みだが限定的な装軌体系火力・移動・防護・補給整備を共通装輪車ファミリーへ統合
目次

24式機動120mm迫撃砲とは|「迫撃砲を積んだ装甲車」だけではない

24式を単独装備で見ない

24式機動120mm迫撃砲は、陸自が整備を進める「共通戦術装輪車」の機動迫撃砲型である。同じファミリーには、30mm機関砲を搭載する24式装輪装甲戦闘車と、偵察戦闘型の25式偵察警戒車がある。

共通戦術装輪車の狙いは、単に似た外見の車両を3種類そろえることではない。車体のベースやコンポーネントを共通化し、歩兵、偵察、火力支援を同じ装輪車両群の中で動かすことにある。

2026年3月時点の防衛装備庁資料では、共通戦術装輪車全体の取得目標は454両。内訳は歩兵戦闘型245両、機動迫撃砲型88両、偵察戦闘型121両とされている。ただし、この数字はライフサイクルコストを算出するための前提であり、将来の取得数を固定するものではない。

ここで重要なのは、88両という規模だ。96式自走120mm迫撃砲が「装軌式の自走重迫」という限られた存在だったのに対し、24式は共通戦術装輪車という大きな車両ファミリーの一部として整備される。迫撃砲だけを独立して近代化するのではなく、部隊全体の足回りをそろえる発想である。

共通車体の本当の意味|16式機動戦闘車で得た技術を火力支援へ広げる

24式機動120mm迫撃砲を理解するうえで、16式機動戦闘車とのつながりは欠かせない。

三菱重工の技術資料では、同社が長年進めてきた装輪戦闘車両の研究成果を16式機動戦闘車へ反映し、その技術をさらに共通戦術装輪車へ展開した経緯が説明されている。共通化の対象は外板やタイヤだけではない。パワーパック、動力伝達系、懸架系などの主要コンポーネントに加え、操縦・制御系や整備要領まで共通性を高める方向で設計されている。

これは兵站に効く

歩兵戦闘車、偵察車、迫撃砲車がまったく別の車体なら、補用品、工具、教育、故障診断、整備員の習熟をそれぞれ別に抱える必要がある。共通部分を増やせば、部品在庫や整備ノウハウを横断的に使いやすくなる。

防衛装備庁も2026年の評価で、ファミリー化による量産規模の拡大やコスト低減に加え、部品の共通化が可動率維持に寄与すると見込んでいる。一方、初期量産では運用部隊からの改善要求などによる仕様変更が想定されるため、現段階では無理にまとめ買いせず、仕様が安定した後に長期契約やまとめ買いを検討する方針だ。

私は、24式の最大の特徴は2R2Mそのものより、この「火力支援車まで同じ整備生態系に入れる」設計だと見る。戦場で一番困るのは、カタログ上の性能が低い車両より、故障して動かない高性能車だからだ。

三菱重工の防衛事業を俯瞰すると、車両単体ではなく、設計・量産・整備を含む装輪戦闘車ファミリー全体を国内で支える意味も見えてくる。

120mm迫撃砲2R2Mで何が変わる?|威力より「撃つまで」と「撃った後」が重要

2R2Mで見るべきポイント

24式の主武装は、フランスのThalesが開発した120mm迫撃砲2R2Mである。防衛装備庁の最新資料でも、共通戦術装輪車の主要装備品として「120mm迫撃砲2R2M」が明記されている。

2R2Mは、Rifled Recoiled Mounted Mortarの名が示す通り、車載用のライフル迫撃砲システムだ。Thalesは、2R2Mの特徴として半自動装填とライフル砲身による精度を挙げている。

ここで「120mmなら従来のRTと同じではないか」と感じるかもしれない。実際、口径だけならその通りだ。

従来の120mm迫撃砲RTは、重迫撃砲中隊が運用する強力な火器で、107mm迫撃砲の後継として長射程化や対軽装甲弾の導入が図られた。ただし、基本的には砲を牽引し、射撃地点で展開して使う火器である。

24式は、その120mm級火力を最初から車載システムとして扱う。車内に砲員と弾薬を収め、装甲車両として陣地へ進出し、射撃し、再び移動するという一連の流れを短くできる。

迫撃砲は155mm榴弾砲の代用品ではない。射程や弾量だけで見れば、より大型の火砲が担当する領域がある。120mm迫撃砲が強いのは、普通科部隊に近い場所から高い射角で弾を送り、地形や建物の陰にいる敵へ迅速に火力を届けられる点だ。

だから24式で問うべきは「従来より何km遠く撃てるか」だけではない。「部隊から射撃要求が来てから、どれだけ早く撃てる状態を作り、撃った後にどれだけ早く次の地点へ移れるか」の方が、運用上の意味は大きい。

なお、日本向け24式における具体的な最大射程、発射速度、搭載弾数などは、公表資料だけでは断定できない。海外向け2R2Mの数値を、そのまま陸自仕様の性能として扱うのは避けるべきだ。

120mm迫撃砲RT、96式自走120mm迫撃砲、24式機動120mm迫撃砲の比較表
同じ120mm級でも、牽引・装軌・装輪で移動と運用の性格は異なる

牽引式120mm迫撃砲RTから何が変わる?|火力支援が部隊の速度に追いつく

即応機動部隊にとって、迫撃砲は「強ければよい」装備ではない。支援される側が先へ進んだのに、迫撃砲部隊が後方で展開に手間取れば、必要な瞬間に火力が届かない。

牽引式の120mm迫撃砲RTは、砲そのものとは別に牽引車が必要になる。移動、停止、展開、射撃、撤収、再移動という工程を踏むため、自走式に比べれば陣地変換の手間が増える。

24式はここを変える。

共通戦術装輪車は、0mから400mまで30秒以内という発進加速性能を満たし、前進・後退ともMCV同等の加速性能を実証した。最高速度の公式値だけを見て「速い、遅い」と判断するより、停止状態から陣地を離脱し、短時間で道路機動へ移れることの方が迫撃砲車には重要である。

射撃位置に長く居続けなければならない火器ほど、敵に位置を捕捉された後の危険が増える。反対に、必要な火力を短時間で発揮し、位置を変えられるなら、同じ120mm弾でも生存性と再使用性が変わる。

つまり24式は、迫撃砲の「一発の破壊力」を劇的に変える装備ではない。120mm火力を繰り返し使える状態を保つため、移動時間と停止時間を削る装備なのである。

24式機動120mm迫撃砲の進出、射撃、離脱、再配置の流れ
火力支援の価値は一発の威力だけでなく、撃って移るまでの短さで決まる

機動力の核心は最高速度ではない|C-2空輸と「おおすみ」型輸送艦に対応

広域展開まで含めて機動力

24式の機動力を語るとき、道路上の最高速度だけに注目すると本質を外しやすい。

防衛装備庁が実証済みとして示しているのは、共通戦術装輪車ファミリーで全長8.08m、全幅2.98m、全高2.68~2.87mという寸法範囲に収め、航空自衛隊C-2輸送機、海上自衛隊「おおすみ」型輸送艦、73式特大型セミトレーラで輸送できることだ。

この「運ばれやすさ」は、日本の陸上戦力では非常に重い意味を持つ。

陸自は一つの大陸正面だけで戦う軍隊ではない。北海道、本州、九州、南西地域など、部隊を必要な地域へ動かさなければならない。道路を自走できるだけでなく、長距離では航空・海上・トレーラ輸送へ切り替えられる方が、部隊全体の展開選択肢は増える。

16式機動戦闘車が重視してきた「戦車より軽快に広域展開できる直接火力」と同様に、24式は間接火力側にも広域展開性を持ち込む。

前線の普通科が装輪車で動き、偵察部隊も装輪車で動き、直接火力のMCVも道路機動する。その中で重迫撃砲だけが牽引準備や別体系の輸送で遅れれば、編成全体の速度は最も遅い要素に引っ張られる。

24式の機動力は、単体の速さより「編成のボトルネックを一つ減らす」能力として見るべきだ。

96式自走120mm迫撃砲の後継なのか|同じ自走迫撃砲でも役割の置かれ方が違う

陸自には以前から96式自走120mm迫撃砲が存在する。では24式は、その単純な後継車なのだろうか。

公式資料だけから「96式を24式で一対一に置き換える」と断定することはできない。

96式自走120mm迫撃砲は、陸自公式サイトで「機甲師団普通科連隊(重迫撃砲中隊)の中心火力」と説明されている。乗員5名、全備重量23.5t、最高速度50km/hの装軌車で、120mm迫撃砲RTと12.7mm重機関銃を装備する。装甲防護を持ち、路外で機甲部隊に追随するための自走重迫だった。

対して24式は、共通戦術装輪車ファミリーの一員だ。防衛省は選定時、即応機動連隊などへの装備を想定しており、広域かつ迅速な機動、C-2空輸、120mm火力による密接な火力支援を要求している。

両車とも「120mm迫撃砲を自走化する」という点は共通する。しかし96式が装軌式機甲部隊の中で成立した自走迫撃砲なら、24式は道路機動と戦略展開を重視する装輪部隊のために自走化をやり直した車両と考える方が実態に近い。

ここには、90式戦車を中心とした北海道の重い機甲戦力から、16式機動戦闘車を含む全国的な機動展開重視へと陸自の編成が広がってきた変化が、そのまま車輪の数に表れている。陸上自衛隊の戦車・装甲戦闘車一覧と比べると、装軌式と装輪式が担う役割の違いを整理しやすい。

共通戦術装輪車と24式機動120mm迫撃砲の開発・量産計画年表
取得目標は資料更新で102両から88両へ変わり、量産はすでに始まっている

「102両配備」は古い情報|最新の取得目標は88両、予算は8両95億円

24式機動120mm迫撃砲を調べると、「102両」という数字が出てくることがある。これは誤情報というより、資料の更新時期が違う。

2024年に公表された共通戦術装輪車の取得計画では、コスト見積りの前提として全体450両、うち機動迫撃砲型102両としていた。資料には、この数量は将来の取得・運用数を確定するものではないと明記されている。

その後、2026年3月時点の最新評価では全体454両へ見直され、内訳は歩兵戦闘型245両、機動迫撃砲型88両、偵察戦闘型121両となった。

したがって、現在の記事で「24式は102両配備予定」と言い切るのは適切ではない。現時点で使うべき数字は88両だが、これも予算編成や部隊所要によって変わり得る取得目標・コスト算定前提である。

調達そのものはすでに始まっている。令和8年度予算では24式機動120mm迫撃砲8両に95億円が計上された。前年の令和7年度も8両の取得が計画されており、少数試作で終わる装備ではなく量産フェーズへ入っている。

ただし、「95億円÷8両=1両約11.9億円」と単純計算して車両本体の単価とみなすのも危険だ。年度予算には取得に伴う関連経費が含まれ得る。防衛装備庁が2026年に示した平均量産単価14.5億円も、共通戦術装輪車ファミリー全体の平均値であり、24式だけの価格ではない。

スケジュール上、研究・開発段階は令和元年度から令和6年度まで、量産・配備段階は令和6年度から令和25年度まで。運用・維持段階は令和9年度から始まる計画になっている。

2026年8月時点では、具体的な配備部隊や運用状況が公式に広く示されている段階ではない。だからこそ「どの連隊に何両入った」と先走るより、まずは令和9年度以降の運用開始と部隊編成の公表を待つのが妥当だ。

24式が変えるのは「迫撃砲の強さ」ではなく陸自の火力支援テンポ

24式機動120mm迫撃砲を「新しい自走迫撃砲」とだけ見ると、変化を小さく見積もってしまう。

主役は120mmという数字ではない。2R2Mによる車載火力、MCV同等の発進加速、C-2や輸送艦での展開、そして歩兵戦闘型・偵察戦闘型と共通化された車体体系が一つにつながるところに意味がある。

一方で、24式が155mm榴弾砲を置き換えるわけでも、あらゆる地形で装軌車より優れるわけでもない。装輪車が得意な道路・広域機動と、重迫撃砲が得意な近接間接火力を組み合わせた装備だ。

私なら24式を「迫撃砲の近代化」ではなく、「即応機動部隊の時間差を埋める車両」と評価する。歩兵、偵察、直接火力が先へ進めても、間接火力だけが遅れては戦闘力は完成しない。共通戦術装輪車が狙っているのは、そこを車体ごと揃えることだ。

制式名は「24式機動120mm迫撃砲」だが、本当に機動化されるのは砲そのものではない。火力支援の流れ全体なのである。

よくある質問

24式機動120mm迫撃砲は何が新しいのですか?

120mmという口径そのものではなく、2R2Mを共通戦術装輪車へ載せ、射撃・陣地変換・広域輸送を一つの車両体系で行える点が新しいところです。歩兵戦闘型や偵察戦闘型との部品・整備の共通化も狙われています。

24式機動120mm迫撃砲は96式自走120mm迫撃砲の後継ですか?

公式資料は一対一の置き換えとは明記していません。96式は装軌式機甲部隊に追随する自走重迫、24式は道路機動と戦略展開を重視する共通戦術装輪車ファミリーの火力支援型という違いがあります。

24式機動120mm迫撃砲は何両配備される予定ですか?

2026年3月時点の防衛装備庁資料では、ライフサイクルコスト算定上の取得目標は88両です。ただし将来の取得数を確定する数字ではなく、予算や部隊所要によって変わる可能性があります。

陸上自衛隊の新装備を続けて読む

出典・参考資料

あわせて読みたい関連記事

この記事が参考になったら、応援の意味で以下のリンクから何か購入いただけると幸いです。執筆の励みになります。リンク先以外の商品でも構いません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

コメント

コメントする

目次