2019年4月1日、アメリカ陸軍が新型短機関銃の採用を発表した。
多くの銃器メディアが最初に疑ったのは、これがエイプリルフールのネタではないかということだった。無理もない。世界最大の軍隊が選んだのは、ドイツのH&Kでもアメリカのシグ・ザウエルでもなく、スイスの従業員70人ほどの会社が作った銃だったからだ。しかもその会社が試験用サンプルを納入したときの契約額は、2万7,364ドル81セント。日本円にして400万円ほどである。
その銃がB&T APC9K。制式名称はSCW、サブ・コンパクト・ウェポンという。
私がこの銃を面白いと思うのは、性能そのものよりも「MP5の後継市場をどこが取るのか」という30年越しの問いに、初めて明確な答えが出た事例だからだ。しかもその答えを出した会社は、もともとH&K製MP5SDのサプレッサーを作るところから始まっている。
この記事では、APC9Kという銃の中身と、MP5Kとの設計思想の違いを整理する。
- B&T APC9Kの基本構造と米陸軍SCW計画の経緯
- APC9KとMP5Kを分ける作動方式・操作系・拡張性
- 要人警護で隠匿性とマガジン互換性が重視される理由
- B&Tの企業史と現代SMG市場での位置づけ
B&T APC9Kの基本データ
まず数字から。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | B&T APC9K(米軍制式名 SCW) |
| メーカー | B&T AG(旧Brügger & Thomet、スイス・トゥーン) |
| 口径 | 9×19mm パラベラム |
| 作動方式 | クローズドボルト・単純ブローバック+油圧バッファ |
| 銃身長 | 約4.3インチ(約109mm) |
| 全長 | 約13.6インチ(約345mm)※ストック収納時 |
| 装弾数 | 15/30発(Glock互換仕様は33発も) |
| 採用 | 米陸軍(2019)、米空軍、オーストリアEKOコブラほか |
APCは Advanced Police Carbine の略で、Kはドイツ語の Kurz(短い)を意味する。この命名のロジックはMP5Kとまったく同じで、そこも狙ったのだろうと私は思っている。
そもそも短機関銃という区分が何を指すのかは銃の種類完全ガイドで、アサルトライフルとの線引きはサブマシンガンとアサルトライフルの違いでそれぞれ整理している。
B&Tという会社|MP5SDのサプレッサーから始まった

- 1991年にスイスで創業した精密加工企業である
- サプレッサーから完成銃へ製品分野を広げた
- TMPの権利取得とMP9の開発が大きな転機になった
APC9Kを理解するには、作った会社の来歴を知っておくと腑に落ちる。
B&Tは1991年5月、カール・ブリュガーとハインリッヒ・トメットの2人が、スイスのトゥーン湖畔シュピーツで「ブリュガー&トメット・ファインテクニーク」として創業した。ブリュガーが技術、トメットが商売という役割分担だった。
最初の製品はサプレッサーである。スイスにはスポーツ射撃でサプレッサーを使う文化が19世紀末から根づいており、市場があった。そして創業の動機のひとつが、H&K MP5SD用の高品質なサプレッサーへの需要だったと伝えられている。
つまりB&Tは、H&Kの銃を良くするための部品屋として始まった会社だ。しかもB&Tの商社部門は現在もスイス国内でH&K製品の代理店を務めている。売っている相手の後継市場を、自社製品で奪ったことになる。
転機は2001年のTMP買収
B&Tが完成銃メーカーへ移行したきっかけは、シュタイヤー・マンリッヒャーからTMP(タクティッシェ・マシーネンピストーレ)の設計図面、特許、治工具、意匠権の一切を買い取ったことだった。これを30か所以上改良して自社製品MP9として売り出したのが2004年。ここからAPR308/APR338狙撃銃、GL-06擲弾発射器と製品を広げていく。
1997年に株式会社化され、2004年にブリュガーが単独所有者となった。従業員は70人規模、本社はスイス陸軍の戦車学校と下士官学校があるトゥーンにある。射場が1キロ先にあるため、社内では戦車砲や機関銃の音が日常的に聞こえるという。
規模でいえば町工場に毛が生えた程度の会社だ。それが世界最大の軍隊の制式採用を勝ち取った。
米陸軍SCW計画|MP5の後継を選ぶ競争
APC9Kの採用は、単発の商談ではなく正式な調達計画の結果だった。
何のための銃だったのか

- 拳銃では火力が足りない場面を補う
- M4カービンより小さく隠しやすい
- 車両への乗降と狭所での取り回しを重視する
出発点は憲兵科である。陸軍長官または参謀総長が指定した高リスク人員(HRP)には、身辺警護班(PSD)がつく。イラク戦争で、安全とはいえない地域を移動する指揮官を守るために生まれた仕組みだ。
この任務では、拳銃では火力が足りず、M4カービンでは大きすぎる。要求されたのは「拳銃より致死性が高く、ライフルより隠せる」武器だった。車両への乗降、車内からの射撃、狭所での取り回し。この3つが設計を規定する。
同じ需要は各国の要人警護部門に共通していて、シークレットサービスがMP5やUZIを使ってきたのも同じ理由による。UZIとはで扱ったレーガン暗殺未遂の映像で、警護官が鞄からUZIを抜く場面はその象徴だった。
競争の経緯
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2018年5月2日 | 陸軍がSCWに関する情報提供依頼(RFI)を公示 |
| 2018年 | 13社に打診。うち6社が試験評価用の契約を獲得 |
| 2018年9月 | 各社が試験用に10丁ずつ納入 |
| 2019年3月29日 | B&T USAのAPC9Kを選定 |
| 2019年4月1日 | 公表。350丁+最大1,000丁のオプション、総額約257万5,811ドル |
打診を受けた企業には、コルト、CMMG、CZ、H&K、LMT、ノベスケ、PTR、クォーターサークル、ゼニス、アングスタットといった名前が並ぶ。試験段階に残った6社はグローバル・オードナンス、アングスタット・アームズ、シールド・アームズ、シグ・ザウエル、トライデント・ライフルズ、そしてB&Tだった。
下馬評ではシグのMPXコッパーヘッドが本命視されていた。全長14.5インチ、折りたたみ式ブレースを備えた意欲的な設計で、要求仕様がシグに有利に書かれているという声すらあった。それを退けたのがB&Tである。
M3グリースガン以来の制式短機関銃
この採用が持つ意味は、契約金額の小ささに反して大きい。
アメリカ軍が9mm短機関銃を正式な調達計画(program of record)として採用したのは、これが初めてだった。そしてSMGそのものの制式採用としては、第二次世界大戦期のM3グリースガン以来である。トンプソンとM3が退場して以降、米軍にとってSMGは特殊部隊が個別調達する道具であって、軍として制式化するものではなかった。その扱いが70年以上ぶりに変わった。
その後、アメリカ空軍もAPC9K PROを調達している。要人警護と特定任務向けという用途は陸軍と同じだ。
APC9KとMP5Kの違い|5つの軸で比較

- MP5Kはローラー遅延方式による滑らかな作動が特徴である
- APC9Kは油圧バッファと現代的な操作系を組み合わせる
- レール、左右対称操作、マガジン選択肢が時代差を示す
ここが本題である。同じ「短縮型9mm短機関銃」でありながら、2つの銃の設計思想は45年ぶんずれている。
| 項目 | B&T APC9K | H&K MP5K |
|---|---|---|
| 登場 | 2010年代 | 1976年 |
| 作動方式 | 単純ブローバック+油圧バッファ | ローラー遅延ブローバック |
| 銃身長 | 約109mm | 115mm |
| 全長 | 約345mm(ストック収納) | 約325mm(ストックなし) |
| 発射速度 | 約1,000発/分前後 | 約900発/分 |
| 操作系 | AR系レイアウト・完全アンビ | HK系・右利き基準 |
| コッキングハンドル | 非往復・自動折りたたみ | 往復式 |
| マガジン | 専用またはGlock互換 | 専用 |
| 拡張 | M-Lok+ピカティニー標準 | 後付けが基本 |
① 作動方式|ローラー遅延という「贅沢」
MP5系の心臓部は、ローラー遅延ブローバックである。ボルトヘッドの左右にローラーが出入りし、それが薬室の凹部に食い込むことで開放を遅らせる。この方式のおかげでMP5は同クラスの銃より反動が滑らかで、命中精度が高い。MP5とはで詳しく扱った通り、対テロ部隊がこの銃を選び続けた理由の相当部分はここにある。
ただし代償がある。ローラーと薬室の寸法公差が極端にシビアで、製造にも整備にも手間がかかる。同じ理屈がH&K G3にも当てはまり、H&Kが後年ローラー遅延を捨ててガスピストンへ移行した背景でもある。その転換点になったのがHK416だった。
対するAPC9Kは、単純ブローバックである。仕組みとしては最も原始的で、ボルトの重さとスプリングだけで薬莢の後退を抑える。1930年代のSMGと基本原理は変わらない。
② 油圧バッファ|古い方式を現代に引き戻した部品

- 単純ブローバックの衝撃を緩和する
- 複雑な作動方式を増やさず射撃感触を整える
- 製造・整備・操作性のバランスを狙った設計である
では単純ブローバックの弱点である反動をどうしたのか。B&Tの答えが油圧バッファである。
レシーバー後端に油圧式の緩衝器を仕込み、ボルトが後退しきる瞬間の衝撃を吸収する。ボルトが金属同士でぶつかる「ガツン」という打撃を、油の粘性で「ズッ」に変える。実射レビューで一様に「反動が柔らかい」と評されるのはこのためだ。
設計としての面白さは、高価で複雑なローラー遅延を使わずに、部品ひとつで似た体感を作りにいった点にある。安く作り、簡単に整備でき、しかも撃ちやすい。米陸軍が求めていたのはまさにその組み合わせだった。
反動の絶対的な滑らかさでは、いまなおMP5のローラー遅延に軍配が上がるという評価が多い。だがそれは「MP5のほうが高い銃だから」という説明でもある。
③ 操作系|AR-15を知っていれば触れる
APC9Kの操作レイアウトは、意図的にAR-15/M4に寄せてある。セレクターの位置と回転方向、ボルトホールドオープン、そしてグリップがM4互換で交換可能。M16・M4カービンで育った兵士が、訓練コストほぼゼロで扱える。
しかも全操作系が完全な両手対応になっている。セレクター、マガジンキャッチ、ボルトキャッチ、コッキングハンドルのすべてが左右にある。車内での射撃や、遮蔽物の左右を使い分ける状況で効いてくる設計だ。
MP5系の操作系は、良くも悪くも1960年代のドイツ製である。慣れれば速いが、慣れるまでに時間がかかる。
④ コッキングハンドル|非往復・自動折りたたみ

- 衣服や装備へ引っかかりにくい形状を重視する
- 車内や狭い場所での携行と操作を想定する
- 隠匿性は全長だけでなく突起部の処理でも決まる
地味だが実用上は大きい差がここだ。
MP5のコッキングハンドルは射撃中に前後する。APC9Kのそれは非往復式で、しかも使い終わると自動的に折りたたまれる。B&Tが公式に挙げている理由は、衣服や装備への引っかかりを減らすことだ。
要人警護は私服で行われることが多い。スーツの下に隠した銃が、抜くときに裏地へ引っかかる。この一瞬が任務の成否を分ける。SCW計画が求めた「高度に隠匿可能」という要求は、こういう細部の積み重ねで満たされる。
⑤ マガジン|Glock互換という現実解
APC9Kには、Glockのダブルスタック9mmマガジンをそのまま使える下部レシーバーが用意されている。G17やG19のマガジンが流用でき、33発の延長マガジンも使える。
これが何を意味するか。警護班は拳銃と短機関銃を同時に携行する。両者でマガジンが共通なら、補給も装備も単純になる。世界で最も普及した拳銃マガジンに乗るというのは、性能ではなく兵站の話だ。
MP5Kは専用マガジンしか使えない。1976年当時、それが問題になる発想自体がなかった。
Glockのマガジン形状を手元で確かめると、この互換設計の意味が実感しやすい。エアガンでも同じマガジンの寸法感は再現されている。
「MP5の時代は終わった」のか
ここは慎重に書きたい。
APC9Kの採用をもって「MP5は終わった」と書く記事をよく見かけるが、事実としては違う。MP5は現在も世界中の警察・軍の特殊部隊で現役であり、日本の警察の特殊部隊や自衛隊も運用している。トルコ、イラン、ギリシャ、フランス、中国でライセンス生産またはクローン生産が続いており、生産数は増え続けている。
変わったのは「新規に選ぶとき何を選ぶか」という部分だ。
MP5が設計された1976年、光学サイトを載せる標準的な方法はなく、レールという概念も普及していなかった。ライトもレーザーも後付けだった。そこから半世紀のあいだに、銃に求められる拡張性の水準が完全に変わってしまった。MP5に現代的な装備を載せようとすると、専用アダプターを重ねる形になる。
APC9Kは最初からM-Lokとピカティニーレールを持っている。それだけの話であり、それが決定的な話でもある。
同じ論理は他の現代SMGにも当てはまる。チェコのScorpion EVO 3、ロシアのPP-19 Vityazも、それぞれの国のMP5後継候補として同じ課題に答えを出そうとしている。
なお、より小さな弾を高速で撃つPDWという別解もある。MP7の4.6×30mm弾とP90の5.7×28mm弾は、防弾装備の貫通を狙った設計だ。米陸軍のSCW計画はこの道を選ばず、9mmパラベラムに留まった。理由は明快で、軍全体で流通している弾を使えるからである。仕様書には「9×19mmミリタリーグレード互換」と明記されていた。
各SMGの相対的な立ち位置はサブマシンガン最強ランキングにまとめてある。
MP5系の設計思想を実物大で確かめるなら、電動ガンが最も手軽な入口になる。ローラー遅延そのものは再現されないが、レシーバーの形状とグリップアングルは実銃の設計を写している。
APC9Kのエアガンは、記事執筆時点で国内主要メーカーからの製品化を確認できていない。手に取れる形で近い体験ができるのは、上記のようなMP5系か、AR系レイアウトのモデルになる。
APC9Kのバリエーション
B&Tはこのプラットフォームをかなり広く展開している。
| モデル | 特徴 |
|---|---|
| APC9K PRO | 完全アンビ化した現行標準型 |
| APC9K PRO-G | Glockマガジン対応の下部レシーバー搭載 |
| APC9K PRO SBR | 伸縮ストック付きの短小銃仕様 |
| APC9K SD2 | 一体型サプレッサー装備。SCW計画にも提出された |
| APC45/APC10 | .45ACP/10mmオート口径版 |
APC9K SD2は、SCWの試験に提出されながら採用されなかった構成だ。B&Tは後年、要望に応える形で限定生産している。サプレッサー一体型という発想はMP5SDと同じで、そもそもB&Tの創業製品がMP5SD向けサプレッサーだったことを思うと、系譜としては筋が通っている。一体型サプレッサーの設計思想はVSSヴィントレスも参照になる。
採用国では、オーストリアの対テロ部隊EKOコブラが同系の銃を使っている。
日本から見た論点
日本の読者にとって、この話はどこにつながるか。
自衛隊と警察の短機関銃は、いま更新の局面にある。陸上自衛隊は国産の9mm機関けん銃を持ち、一部部隊がMP5系を運用してきた。拳銃は9mm拳銃SFP9への更新が進んでおり、これもH&K製である。SFP9とはで扱ったように、防衛装備庁の契約実績からH&K製品の調達は継続的に確認できる。
一方で、H&K以外の選択肢が世界的に増えてきたのも事実だ。米陸軍がスイス製を選んだという事実は、調達を検討する側にとって「H&K一択ではない」という前例になる。日本が同じ判断をするかどうかは別の話だが、選択肢の地図が広がったことは確かだ。
なお、要人警護に使う銃の選定は、対テロ部隊が使う銃の選定とは要求が違う。前者は隠匿性と即応性、後者は精度と制圧力に重心がある。同じ「短機関銃」という言葉でくくると、この違いが見えなくなる。機関銃とマシンガンの違いで整理した用語の混乱と、根は同じ問題だ。
産業構造の視点|従業員70人の会社が米軍調達に勝つということ
最後に、この一件を産業側から見ておきたい。
B&Tは非上場のスイス企業で、従業員は70人規模。オーナーはいまも創業者のカール・ブリュガー個人である。この規模の会社が、米陸軍の制式採用を取った。
小火器の調達では、こういうことが起こりうる。戦闘機や艦艇と違い、開発費が数千億円規模にならないからだ。SCW計画の総額は約257万ドル、日本円で4億円に満たない。逆に言えば、大企業にとっては旨味が薄い市場でもある。
| 企業 | 上場状況 | 本記事との関係 |
|---|---|---|
| B&T AG | 非上場(スイス) | APC9Kのメーカー |
| ヘッケラー&コッホ | ユーロネクスト・パリ上場 | MP5・MP5Kのメーカー |
| シグ・ザウエル | 非上場 | SCW計画でMPXを提出 |
| 豊和工業 | 東証上場 | 日本の小銃・小火器メーカー |
小火器分野で日本の投資家が実際に触れられる欧州銘柄は、事実上H&Kに限られる。この記事に出てくる会社のうち、B&Tもシグも非上場だからだ。国内では豊和工業が国産小火器を担っており、日本の防衛産業の企業別の役割分担は日本の防衛産業・軍需企業一覧で整理した。
防衛関連銘柄を追う前提として、こうした調達の仕組みそのものを押さえておくと、ニュースの読み方が変わる。契約金額の大小と、その採用が持つ象徴的な意味は、必ずしも一致しない。
なお、ここで挙げた企業は特定の売買を推奨するものではない。制式採用という出来事から産業構造を読む、という視点の一例として受け取ってほしい。投資判断は各自の責任で行うものである。
防衛産業の構造そのものを体系的に押さえたい人には、この分野を地政学の側から扱った一冊が入口になる。
よくある質問
APC9Kの「K」は何の意味か
ドイツ語のKurz(短い)を指す。MP5Kの「K」とまったく同じ由来である。B&Tはスイス企業だが、この呼称の慣習はドイツ語圏で共通している。
米陸軍は何丁のAPC9Kを買ったのか
2019年の契約は350丁で、最大1,000丁まで追加できるオプション付き。総額は約257万5,811ドルだった。その後アメリカ空軍も同系のAPC9K PROを調達している。
APC9KとMP5Kはどちらが優れているのか
用途によって答えが変わる。反動の滑らかさと射撃感触ではMP5Kのローラー遅延方式が依然として高く評価される。一方で、光学機器やライトの搭載、左右対称の操作系、Glockマガジン互換といった現代的な要件ではAPC9Kが上回る。米陸軍が後者を選んだのは、要人警護という具体的な任務でそれらが効くと判断したためである。
なぜシグ・ザウエルのMPXが選ばれなかったのか
陸軍は選定理由の詳細を公表していない。試験項目は合否判定式で行われたとされ、B&TのAPC9Kがそれらを満たしたという以上のことは公開情報からはわからない。
APC9Kは民間でも買えるのか
アメリカではセミオート版が市販されており、ピストル形態と短小銃形態がある。日本国内では実銃の所持は認められていない。エアガンについては、記事執筆時点で国内主要メーカーからの製品化を確認できていない。
B&Tはどんな会社か
1991年創業のスイスの銃器メーカー。本社はベルン近郊のトゥーン。もともとサプレッサーの専業メーカーで、現在も従業員70人規模。スイス国内ではH&Kなどの代理店業務も行っている。
まとめ|部品屋が本丸を取った話
APC9Kという銃を一言でまとめるなら、「贅沢な機構を捨て、部品ひとつで同じ答えを出した銃」になる。
ローラー遅延ブローバックは1950年代のドイツが到達した見事な解だった。だが公差にうるさく、作るのも直すのも高くつく。B&Tは単純ブローバックという最も古い方式に戻り、そこへ油圧バッファを足すことで、実用上十分な射撃感触を安く手に入れた。あとはAR系の操作系、完全な両手対応、Glockマガジン互換、標準装備のレールを重ねた。
技術的な飛躍はどこにもない。あるのは、いま必要とされているものを正確に読んだという判断だけだ。米陸軍がM3グリースガン以来となる制式短機関銃にこれを選んだのは、そういう理由だと私は思っている。
創業の動機がMP5SD用サプレッサーの製作だった会社が、45年後にMP5Kの後継市場を取った。銃器史の中でも、なかなか味わい深い巡り合わせである。
現代SMGの全体像を掴みたい場合は、本文中で触れた各機種の個別解説から広げていくと、この分野の地図が頭に入る。実物を手に取れない日本で銃器の設計を体感する手段としては、サバゲー初心者完全ガイドで扱ったエアガンが現実的な入口になる。APC9Kが採り入れたAR系操作レイアウトの中身については、M4カービンとAR-15の違いを読むと、なぜこの配置が「訓練コストゼロ」になるのかが分かる。







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