
F-15JSIとF-15EXの違いは、レーダーやミサイルの種類だけでは説明できない。F-15JSIは航空自衛隊が保有するF-15Jへ新しいセンサー、電子戦装置、コンピューター、兵装運用能力を組み込む改修機であり、F-15EXは最新のF-15系列を新造する機体である。外形はよく似ていても、両者が買っているのは別のものだ。日本は既存戦力を次世代戦闘機まで使い切るための時間を買い、米国は今後数十年にわたって能力を追加できる新しい器を買っている。
結論から述べると、機体寿命、搭載量、操縦系統、コックピット、将来拡張性を含むプラットフォーム全体ではF-15EXが上である。一方、F-15JSIも単なる延命改修ではない。APG-82(V)1 AESAレーダー、最新世代の電子戦装置、JASSM運用能力などを得ることで、日本の防空とスタンド・オフ防衛を支える実戦的な戦力となる。両者の共通点と相違点を切り分ければ、「F-15JSIは日本版F-15EXなのか」という疑問にも答えが見えてくる。
- F-15JSIとF-15EXの違いは、レーダーやミサイルの種類だけでは説明できない
- F-15JSIは航空自衛隊が保有するF-15Jへ新しいセンサー、電子戦装置、コンピューター、兵装運用能力を組み込む改修機であり、F-15EXは最新のF-15系列を新造する機体である
- 外形はよく似ていても、両者が買っているのは別のものだ
- 日本は既存戦力を次世代戦闘機まで使い切るための時間を買い、米国は今後数十年にわたって能力を追加できる新しい器を買っている
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F-15JSIとF-15EXの違いを比較表で確認
- 日本が導入する計画は公表されていない この表で最も重要なのは、レーダーだけを見れば両者がかなり接近している一方、機体そのものには埋められない差が残る点である
- 私は、F-15JSIとF-15EXを分ける最大の要素は火器管制レーダーではなく、機体寿命と成長余地だと見る
| 比較項目 | F-15JSI | F-15EX Eagle II |
|---|---|---|
| 機体の成り立ち | 既存F-15Jの能力向上改修 | 最新仕様の新造機 |
| 主な運用国 | 日本 | 米国 |
| 乗員 | 基本はF-15Jを母体とする単座 | 2名 |
| 機体寿命 | 既存機の残存寿命に依存 | 新造時から2万飛行時間超を想定 |
| レーダー | APG-82(V)1 | APG-82(V)1系の先進AESA |
| 電子戦 | 2019年通知のDEWSから、2022年通知でEPAWSS追加 | EPAWSS |
| ミッションコンピューター | ADCP II | 新造機向けの現代的なミッションシステムと開放型設計 |
| 操縦系統 | 既存F-15Jの機体・操縦系統を基礎とする | デジタル・フライ・バイ・ワイヤ |
| コックピット | 改修範囲は公表資料で限定的 | オールグラス化、大型表示装置を備える |
| 空対空兵装 | 搭載ミサイル数を増加する計画。最終構成の詳細は未公表 | Boeing公表値でAIM-120を最大12発搭載可能 |
| 対地攻撃 | JASSMの運用能力を追加 | 多様な大型・長射程兵器を前提 |
| 最大搭載量 | 公開資料でEX同等値は確認できない | Boeing公表値で約13.4トン |
| 将来拡張 | 改修可能だが旧機体の制約を受ける | 開放型アーキテクチャと新造機体で余裕が大きい |
| 日本国内での作業 | 三菱重工など国内企業が機体改修を担当 | 米国で新造。日本が導入する計画は公表されていない |
この表で最も重要なのは、レーダーだけを見れば両者がかなり接近している一方、機体そのものには埋められない差が残る点である。私は、F-15JSIとF-15EXを分ける最大の要素は火器管制レーダーではなく、機体寿命と成長余地だと見る。
F-15JSIとは何か
- F-15JSIは、航空自衛隊のF-15J近代化改修機に対して、さらに大規模な能力向上を施す計画である
- JSIはJapanese Super Interceptorの略称だ
- 防衛装備庁の取得戦略では、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加を目的とし、68機を対象に機体改修を進める方針が示されている
- 国内で取得できない搭載機器はFMSで調達し、航空機への搭載作業は国内企業が担う
F-15JSIは、航空自衛隊のF-15J近代化改修機に対して、さらに大規模な能力向上を施す計画である。JSIはJapanese Super Interceptorの略称だ。防衛装備庁の取得戦略では、電子戦能力の向上、スタンド・オフ・ミサイルの搭載、搭載ミサイル数の増加を目的とし、68機を対象に機体改修を進める方針が示されている。国内で取得できない搭載機器はFMSで調達し、航空機への搭載作業は国内企業が担う。[1]
米国の2019年FMS通知では、最大98機をJSI構成へ改修する可能性が示され、APG-82(V)1 AESAレーダー、ADCP IIミッションコンピューター、ALQ-239 DEWSなどが列挙された。[2] ただし、この98機は米議会へ通知された上限であり、日本の現行計画の改修数と同じではない。防衛装備庁が管理上の前提としているのは68機である。
さらに電子戦装置については情報が更新されている。2022年に米議会へ通知された変更では、AN/ALQ-250 EPAWSSが103セット追加された。[3] 私は、この更新を追わずにDEWSとEPAWSSの差をそのままJSI対EXの差として語る比較は危ういと考える。現在公開されている通知を追う限り、JSIもEPAWSSを取り込む方向に能力が引き上げられている。
対地攻撃能力では、防衛省が2024年3月に、能力向上改修後のF-15へ搭載するJASSMの取得に関するLOAへ署名した。[4] F-15Jは長く防空を中心に運用されてきたが、JSI化によって遠方の目標へ対処するスタンド・オフ打撃能力を持つことになる。ただし、公開資料から確認できるのはJASSM取得と搭載計画までであり、実戦配備時期、搭載本数、すべての任務ソフトウェアの完成状況まで断定することはできない。
[内部リンク: target_slug=tomahawk-cruise-missile-guide]
F-15EXとは何か
- F-15EX Eagle IIは、最新のF-15系列を米空軍向けにまとめた新造機である
- 外見は従来のF-15に近いが、デジタル・フライ・バイ・ワイヤ、デジタルコックピット、現代化されたアビオニクス、EPAWSS、開放型ミッションシステムを備える
- 米空軍は新造機体の設計寿命を2万飛行時間として説明している
- BoeingはF-15EXについて、最大速度マッハ2.5、最大離陸重量約36.7トン、兵器搭載量約13.4トン、AIM-120を最大12発搭載できるとしている
F-15EX Eagle IIは、最新のF-15系列を米空軍向けにまとめた新造機である。外見は従来のF-15に近いが、デジタル・フライ・バイ・ワイヤ、デジタルコックピット、現代化されたアビオニクス、EPAWSS、開放型ミッションシステムを備える。米空軍は新造機体の設計寿命を2万飛行時間として説明している。[5]
BoeingはF-15EXについて、最大速度マッハ2.5、最大離陸重量約36.7トン、兵器搭載量約13.4トン、AIM-120を最大12発搭載できるとしている。また、2人乗りと開放型アーキテクチャを生かし、有人機・無人機を束ねる空中指揮役への発展も打ち出している。[6] 私は、メーカー値を作戦時の保証値として扱うべきではないと考える。それでも、大型兵器と多数の空対空ミサイルを扱う余裕が設計思想に組み込まれていることは明白だ。
2026年7月時点で米空軍は嘉手納基地への将来配備に向けて習熟訓練を進め、第67戦闘飛行隊を同基地最初のF-15EX運用部隊と位置付けている。2026年6月の飛来ではMQ-28 Ghost Bat無人機との連携飛行も実施された。米会計検査院は2026年、F-15EXが技術成熟度7以上で迅速配備経路に入り、5年以内に全規模生産へ移行したと評価した。一方、統合開発・運用試験はなお継続中であり、「すべての構想が完成済み」と見るのも早い。[7][13]

違い1:改修機と新造機では残り時間が違う
- F-15JSIは既存のF-15Jを使う
- レーダー、電子戦装置、コンピューターを新しくしても、主翼、胴体、配線、配管、構造材のすべてが新品に戻るわけではない
- 改修対象は状態を確認され、必要な整備や補強を受けるが、残存寿命や疲労の蓄積は機体ごとに異なる
- 能力向上後も、旧機体ゆえの部品枯渇や整備負担は長期的な課題として残る
F-15JSIは既存のF-15Jを使う。レーダー、電子戦装置、コンピューターを新しくしても、主翼、胴体、配線、配管、構造材のすべてが新品に戻るわけではない。改修対象は状態を確認され、必要な整備や補強を受けるが、残存寿命や疲労の蓄積は機体ごとに異なる。能力向上後も、旧機体ゆえの部品枯渇や整備負担は長期的な課題として残る。
F-15EXは新造機であり、米空軍が説明する設計寿命は2万飛行時間である。2030年代以降に兵器、通信装置、センサー、無人機管制機能を追加しても、改修投資を回収できる期間が長い。空間、電力、冷却、重量余裕だけでなく、「追加した能力を何年間使えるか」まで違う。
F-15JSIは古い刀に新しい目と耳を与える改修であり、F-15EXは同じ刀の姿を残しながら鍛え直した新刀である。似て見えるのは輪郭であって、国家が買っている時間の長さは同じではない。
違い2:操縦系統とコックピットはF-15EXが一世代新しい
- F-15EXはデジタル・フライ・バイ・ワイヤを採用する
- 操縦入力を電気信号で処理し、コンピューターが機体の応答を制御するため、搭載物や飛行特性の変化へ対応しやすい
- 大型表示装置を中心としたグラスコックピットも、複数センサーやデータリンクの情報を統合して扱う前提で設計されている
- F-15JSIはADCP IIミッションコンピューターや新しい通信・任務計画装置を得るが、母体は既存F-15Jである
F-15EXはデジタル・フライ・バイ・ワイヤを採用する。操縦入力を電気信号で処理し、コンピューターが機体の応答を制御するため、搭載物や飛行特性の変化へ対応しやすい。大型表示装置を中心としたグラスコックピットも、複数センサーやデータリンクの情報を統合して扱う前提で設計されている。
F-15JSIはADCP IIミッションコンピューターや新しい通信・任務計画装置を得るが、母体は既存F-15Jである。公表された改修項目から、F-15EXと同じデジタル・フライ・バイ・ワイヤへ全面更新されるとは確認できない。コックピットも能力向上を受けるとしても、新造時から大型画面、2人乗り、開放型設計を統合したEXと同じ条件ではない。
一方、長距離攻撃、電子戦、無人機連携、複数経路の通信を同時に管理する任務では、後席の兵装システム士官が使えるF-15EXに余裕がある。将来の空戦でパイロットの仕事が「操縦して撃つ」から「多数のセンサーと僚機を管理する」へ広がるほど、この差は効いてくる。
違い3:レーダーは接近するが、センサー全体では同じにならない
- F-15JSIの中核装備はAPG-82(V)1 AESAレーダーである
- AESAは多数の送受信素子を電子的に制御し、複数目標の追跡、空対空・空対地モードの切り替え、信頼性の向上に寄与する
- RTXはAPG-82(V)1について、空中・地上の複数目標を長距離で探知、識別、追跡し、情報共有へつなげられると説明している
- F-15EXも先進AESAレーダーを搭載し、現行機はAPG-82(V)1を基礎としている
F-15JSIの中核装備はAPG-82(V)1 AESAレーダーである。AESAは多数の送受信素子を電子的に制御し、複数目標の追跡、空対空・空対地モードの切り替え、信頼性の向上に寄与する。RTXはAPG-82(V)1について、空中・地上の複数目標を長距離で探知、識別、追跡し、情報共有へつなげられると説明している。[8]
F-15EXも先進AESAレーダーを搭載し、現行機はAPG-82(V)1を基礎としている。[12]したがって、レーダー名称だけを並べて「JSIは旧式、EXは最新」と分類するのは適切ではない。JSIが得るレーダー能力は非常に大きく、従来F-15Jからの飛躍幅ではJSIの方が劇的である。
ただし、同じレーダーを載せれば同じ戦闘機になるわけではない。処理装置、電源、冷却、表示装置、電子戦装置、通信系、搭載兵器、ソフトウェアの統合度によって、センサーが生み出した情報をどこまで使い切れるかが変わる。私は、ここを無視した「レーダーが同じだからJSIはEX同等」という評価には賛成できない。
違い4:電子戦装置は意外に近い
- F-15JSIとF-15EXの比較で、もっとも誤解されやすいのが電子戦装置である
- 初期のFMS通知ではJSIにALQ-239 DEWSが記載されていたが、その後の通知ではAN/ALQ-250 EPAWSSが追加された
- EPAWSSはレーダー警戒、電波源の測位、状況認識、電子妨害、自己防御を統合する全デジタルの電子戦システムである
- F-15EXもEPAWSSを主要装備とする
F-15JSIとF-15EXの比較で、もっとも誤解されやすいのが電子戦装置である。初期のFMS通知ではJSIにALQ-239 DEWSが記載されていたが、その後の通知ではAN/ALQ-250 EPAWSSが追加された。EPAWSSはレーダー警戒、電波源の測位、状況認識、電子妨害、自己防御を統合する全デジタルの電子戦システムである。[3][9]
F-15EXもEPAWSSを主要装備とする。この点では、JSIは旧機体の制約を抱えつつも、EXと共通性の高い電子戦能力へ接近する。脅威レーダーを見つけ、位置を推定し、妨害と回避判断へつなげる能力は、非ステルス機であるF-15系列が生き残るうえで不可欠だ。
ただし、EPAWSSを積んだからステルス機になるわけではない。F-15の大きな機体と外装兵器はレーダー反射を生みやすい。電子戦は探知を完全に消す魔法ではなく、敵の認識と射撃を遅らせ、自機の戦術選択肢を増やす装備である。F-15JSIもF-15EXも、強力なレーダーと長射程兵器を使い、脅威圏の外側または縁から戦うことが基本になる。
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違い5:兵器搭載量と大型兵器への余裕はF-15EXが上
- 防衛装備庁はF-15JSIについて、搭載ミサイル数の増加を明記している
- しかし、最終的な空対空ミサイル搭載数、各パイロンの構成、任務別の標準搭載例は公開資料だけでは確定できない
- ネット上ではEXと同じ最大12発、あるいはそれ以上とする説明も見られるが、日本の公的資料が確認できない数字は断定すべきではない
- F-15EXはBoeing公表値でAIM-120を最大12発、総搭載量約13.4トンとされる
防衛装備庁はF-15JSIについて、搭載ミサイル数の増加を明記している。しかし、最終的な空対空ミサイル搭載数、各パイロンの構成、任務別の標準搭載例は公開資料だけでは確定できない。ネット上ではEXと同じ最大12発、あるいはそれ以上とする説明も見られるが、日本の公的資料が確認できない数字は断定すべきではない。
F-15EXはBoeing公表値でAIM-120を最大12発、総搭載量約13.4トンとされる。大型・長射程兵器や将来兵器を統合する余裕も重視されている。空対空ミサイルを多数運ぶ「ミサイルトラック」、スタンド・オフ兵器を遠方まで運ぶ攻撃機、無人機群を支援する通信ノードという複数の役割へ振りやすい。
F-15JSIにもJASSM運用能力が加わるため、従来のF-15Jより任務範囲は大きく広がる。それでも、既存の単座制空戦闘機を改修するJSIと、F-15E系の大型搭載能力を継承した新造複座機では、兵器の量と任務の複雑さに対する余裕が違う。純粋な「運べる火力」の比較ならF-15EXが優位である。
違い6:JSIは日本の防空をつなぎ、EXは戦力の土台を更新する
F-15JSIの中心任務は、日本周辺の防空を維持しつつ、F-35や早期警戒管制機などと連携し、必要に応じてJASSMによるスタンド・オフ攻撃を担うことだ。F-35が得た情報を受け、JSIが多数のミサイルを運ぶ役割分担も考えられるが、具体的な交戦手順やデータリンク構成には非公表部分が多い。
F-15EXは、米空軍のF-15C/D更新と同時に、将来の有人・無人協同、長射程火力、空中戦闘管理へ発展する土台として導入されている。2026年の嘉手納飛来でMQ-28との連携が試されたことは、その方向性を象徴する。F-15EXの価値は「今載っている装備」だけでなく、今後追加される兵器やソフトウェアを受け止める新造プラットフォームにある。
この違いを一言で表せば、JSIは橋であり、EXは次の道路である。JSIはF-35の配備拡大と2030年代のGCAP登場まで、日本のF-15部隊、整備基盤、練度を切らさずにつなぐ。EXは米空軍がF-15系戦力を数十年先まで残すため、道路そのものを新しく敷き直す選択だ。
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違い7:調達と産業基盤の構造が違う
F-15JSIでは、米国からレーダーや電子戦装置などをFMSで取得し、国内企業が機体への搭載改修を行う。2019年の米側通知では、FMS部分の主契約者をBoeing、直接商業契約部分の主契約者を三菱重工とし、Boeingが統合を支援する構造が示された。[2] 国内にF-15Jの改修・整備能力を残せる点も重要である。
F-15EXは米国で新造される完成機である。既存F-15部隊の施設や整備資産を利用しやすい利点はあるが、日本が新たに導入する場合、機体取得、教育、補用品、兵装統合、基地改修、運用試験を含む別の大事業になる。単純に「JSI改修費が高いからEXを買えばよい」とはいえない。新造機のカタログ価格と、日本仕様で部隊運用を成立させる総事業費は別物だからだ。
私は、日本がJSIを選んだ合理性は機体性能だけでなく、既存飛行隊を止めずに改修し、国内のF-15整備能力を維持しながらF-35とGCAPへ移る点にあると考える。反対に、改修の遅延やコスト上昇で使用可能な期間が短くなれば、この合理性は薄れる。旧機体への投資は、完成が遅れるほど回収期間を失うからである。
[内部リンク: target_slug=mitsubishi-industries-defense]

違い8:価格は単価だけで比べられない
F-15JSI計画の費用は大きく増えている。防衛装備庁が2022年に示した68機対象の暫定ライフサイクルコストは6465億円だった。[1] 2025年3月の分析・評価では、為替補正後の基準見積り9432億円に対し、最新の年度見積りは1兆16億円となった。68機、30年という前提で算定した値であり、将来の取得・運用数量を確定するものではない。[10]
ここで1兆16億円を68で割り、「JSIは1機約147億円」とだけ書くと誤解を招く。この金額には、機体改修だけでなく試験、施設、教育訓練、支援、対象部分の維持整備などが含まれる。しかも、修理役務やPBLなど見積りが固まっていない項目もある。単純な機体価格ではない。
F-15EXも年度ごとに機体、エンジン、予備品、初度費、支援機材の含み方が異なる。私は、カタログ価格とFMS総額を混ぜず、同じ費用範囲で何年間、何機を、どの稼働率で使えるかを見るべきだと考える。
JSIは機体を新造しないため初期の導入障壁を抑えられる反面、残存寿命が短く、古い部分の維持費が増える可能性がある。EXは取得額が大きくても、新造機として長期間使え、将来改修を回収しやすい。短期の現金支出ではJSI、長期の成長余地ではEXが有利になりやすいが、公開資料だけで正確な損益分岐点を出すことはできない。
F-15JSIは日本版F-15EXなのか
答えは「センサーと電子戦の一部は近いが、機体全体としては別物」である。
JSIとEXは、F-15系列という共通の機体形状を持ち、APG-82系AESA、現代的な処理装置、EPAWSS、長射程兵器、ネットワーク戦を重視する。この共通性から、JSIを日本版F-15EXと呼びたくなる理由は分かる。実際、従来のF-15Jと比べれば、JSIは飛躍的にEXへ近づく。
しかし、JSIには新造機体、2万飛行時間の設計寿命、デジタル・フライ・バイ・ワイヤ、2人乗りの任務管理余力、EXの兵器搭載余裕がそのまま付いてくるわけではない。JSIはF-15EXの主要な電子装備を旧F-15Jへ移植する計画に近く、F-15EXそのものを日本仕様にした機体ではない。
したがって、記事や動画で「F-15JSIはF-15EXと同等」と言い切る場合は、何を同等とするのか確認が必要だ。レーダーか、電子戦装置か、搭載兵器か、機体寿命か、将来拡張性か。比較軸を示さない「同等」は、技術的な説明として粗すぎる。
結局どちらが強いのか
一対一の機体能力を総合すれば、F-15EXが上である。新造機体、長い寿命、大きな搭載量、デジタル操縦系統、複座コックピット、開放型アーキテクチャは、近代化改修だけでは完全に再現できない。特に、多数の兵器を運ぶ任務、長期的な能力追加、無人機群の管理ではEXの優位が大きい。
一方、日本の防空任務で必要な機数を早期に確保し、既存の基地、操縦者、整備員、補給網を活用するなら、F-15JSIには独自の価値がある。F-35だけですべての警戒待機、要撃、長時間の滞空、ミサイル運搬を賄うのは効率的ではない。JSIが非ステルスの大容量センサー・兵器母機として残れば、F-35をより危険度の高い任務へ集中させやすい。
私なら、「どちらが強いか」にはF-15EXと答える。しかし「日本はF-15EXを買うべきだったか」には即答しない。日本が必要としているのは最強の1機ではなく、F-35、F-15JSI、F-2、早期警戒機、地上防空、将来のGCAPを組み合わせ、常時飛ばせる航空戦力だからである。
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日本がF-15EXを導入する可能性はあるか
2026年7月時点で、日本政府がF-15EXを導入すると公表した計画は確認できない。日本は近代化に適さないF-15をF-35A/Bへ置き換え、改修可能なF-15をJSI化し、F-2後継としてGCAPを進めている。この三つの線がすでに動いているため、さらにF-15EXを加えると、予算、人員、教育、兵站が分散する。
米軍のF-15EXが嘉手納基地へ配備されれば、日本周辺ではF-15JSIとF-15EXが同時に運用される可能性が高い。これは日本がEXを保有することとは違うが、日米のF-15系部隊が整備、訓練、データリンク、兵器運用の知見を共有する機会は増えるだろう。JSIとEXは競合するだけでなく、同盟全体では補完関係を作れる。
ただし、F-15JSI計画が大幅に遅れたり、改修対象機の残存寿命が想定より短かったりすれば、代替策の議論は再燃し得る。その場合も、選択肢はF-15EXだけではない。F-35の追加取得、無人機、長射程ミサイル、GCAP前倒し、地上発射システムとの配分を含めて検討する必要がある。
よくある質問
F-15JSIの改修対象は何機か
防衛装備庁の取得戦略は68機を目標としている。2025年のコスト評価でも68機を見積り上の前提としているが、同資料は将来の取得・運用数量を確定するものではないと注記している。2019年の米FMS通知にある最大98機は、米議会通知上の上限であり、現行の日本側計画数とは区別が必要だ。
F-15JSIとF-15EXのレーダーは同じか
F-15JSIにはAPG-82(V)1が通知されている。F-15EXもAPG-82(V)1を運用するため、レーダーの基盤は近い。ただし、機体側の処理、表示、冷却、通信、兵装統合まで同じではないため、レーダー名だけで機体能力全体を同等とは評価できない。
F-15JSIもEPAWSSを搭載するのか
2019年通知はDEWSを挙げていたが、2022年の米側通知は日本向けにEPAWSS 103セットを追加している。公開通知上はEPAWSS導入へ能力が引き上げられたと読むのが妥当である。ただし、最終的な機体ごとの搭載状況や配備日程は、今後の日本側公表を確認する必要がある。
F-15JSIはJASSM-ERを使えるのか
防衛省は能力向上改修後のF-15に搭載するJASSM取得のLOA署名を公表している。米国側の関連通知にはJASSM-ER系の試験・訓練用装備が示されているが、日本側発表はJASSMという名称を用いている。[11]本稿では、公開範囲を超えて配備弾種や数量を断定しない。
F-15EXはステルス戦闘機か
ステルス戦闘機ではない。電子戦装置や長射程兵器で生存性を高めるが、F-35やF-22のように機体形状と内部兵器庫を使って低被探知性を追求した設計ではない。F-15EXの強みは、速度、航続力、搭載量、センサー、電子戦、ネットワーク能力を組み合わせる点にある。
F-15JSIとF-15EXはどちらが高いか
公表数字の範囲が違うため、単純比較はできない。JSIの1兆16億円は68機、30年を前提にした能力向上部分のライフサイクルコストである。F-15EXの年度別価格やFMS総額は、予備品、支援、兵装、施設などの範囲が案件ごとに異なる。同じ費目と運用期間をそろえなければ、正しい比較にはならない。
まとめ:似ているのは装備、違うのは機体が背負える未来
F-15JSIとF-15EXは、APG-82系AESA、EPAWSS、現代的なミッションコンピューター、長射程兵器という共通項を持つ。従来型F-15Jから見れば、JSIは別世代に近い能力向上となる。日本の防空、スタンド・オフ防衛、F-35との役割分担を支える重要な改修である。
それでも、F-15JSIは既存機の改修であり、F-15EXは新造機だ。残存寿命、操縦系統、複座化、兵器搭載量、開放型設計、将来改修を回収できる期間ではEXが優位に立つ。F-15JSIを「日本版F-15EX」と呼ぶなら、センサーと電子戦装備の一部が近いという限定付きで理解すべきである。
JSIが買うのは、最新装備だけではない。GCAPが来るまでの時間と、航空自衛隊が積み上げてきたF-15部隊の練度を途切れさせないための連続性である。EXが買うのは、その先も能力を積み上げられる新しい機体だ。この違いを押さえれば、両機を優劣だけでなく、日米が何を守り、何年先まで戦力を残そうとしているかという視点で比較できる。
[収益化候補プレースホルダー: pochipp_id=2524 / タミヤ 1/32 F-15J / 配置候補=まとめ直前またはF-15JSI概要直後]
参考資料
- <a href="https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/project/gaiyo_r040204.pdf">防衛装備庁「取得戦略計画の概要(F-15能力向上)」</a>
- <a href="https://media.defense.gov/2024/Dec/12/2003610524/-1/-1/0/JAPAN_19-65.PDF">media.defense.gov</a>
- <a href="https://public-inspection.federalregister.gov/2024-12950.pdf">public-inspection.federalregister.gov</a>
- <a href="https://www.mod.go.jp/j/press/news/2024/07/04c.pdf">防衛省「スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について」</a>
- <a href="https://www.af.mil/News/Features/Article/2500770/f-15ex-completes-first-flight/">米空軍公式</a>
- <a href="https://www.boeing.com/defense/fighters-and-bombers/f-15ex-eagle">Boeing, “F-15EX”</a>
- <a href="https://www.af.mil/News/Article-Display/Article/4538664/f-15ex-returns-to-pacific/">U.S. Air Force, “F-15EX returns to Pacific”</a>
- <a href="https://www.rtx.com/raytheon/what-we-do/air/apg82v1">RTX Raytheon, “AN/APG-82(V)1 AESA Radar”</a>
- <a href="https://www.baesystems.com/en-us/product/eagle-passive-active-warning-survivability-system-epawss">BAE Systems公式</a>
- <a href="https://www.mod.go.jp/atla/soubiseisaku/project/gaiyo_r070417.pdf">mod.go.jp</a>
- <a href="https://www.govinfo.gov/content/pkg/FR-2024-09-12/pdf/2024-20738.pdf">govinfo.gov</a>
- <a href="https://www.airandspaceforces.com/new-radar-for-f-15ex-more-range-without-demanding-more-power/">Air & Space Forces Magazine</a>
- <a href="https://www.gao.gov/products/gao-26-108457">gao.gov</a>
編集用メモ
- 判定: new_article
- 記事タイプ: C(比較)
- メインHUB: HUB-FJ
- サブHUB: HUB-JSD<span class="swl-marker mark_blue">F-</span>FIGHTER
- 所属クラスタ: CL-MODERN-AIR / CL-DEFENSE-INDUSTRY
- メインKW: <span class="swl-marker mark_yellow">F-15JSI</span> <span class="swl-marker mark_blue">F-15EX</span> <span class="swl-marker mark_green">違い</span>
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参考資料・主な出典
防衛装備庁「取得戦略計画の概要(F-15能力向上)」|資料を確認
media.defense.gov|資料を確認
public-inspection.federalregister.gov|資料を確認
防衛省「スタンド・オフ防衛能力に関する事業の進捗状況について」|資料を確認
米空軍公式|資料を確認
Boeing, “F-15EX”|資料を確認
U.S. Air Force, “F-15EX returns to Pacific”|資料を確認
RTX Raytheon, “AN/APG-82(V)1 AESA Radar”|資料を確認
BAE Systems公式|資料を確認
mod.go.jp|資料を確認
govinfo.gov|資料を確認
Air & Space Forces Magazine|資料を確認
gao.gov|資料を確認
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