F-15J Pre-MSIPとは、航空自衛隊が導入したF-15Jのうち、後年の大規模な能力向上を前提とするJ-MSIP仕様が生産段階で組み込まれる前の初期型を指す通称である。防衛省の公文書では、Pre-MSIPという呼び方よりも「F-15(非近代化機)」と表現されることが多い。
結論からいえば、Pre-MSIPはF-35AとF-35Bへの置き換えが決まった近代化対象外機であり、今後も主力として長期運用される機体ではない。ただし、2026年時点で全機が一斉に退役したわけではなく、個別の用途廃止日や最終退役時期も公表されていない。また、2018年に報じられた米国への売却構想も、機体売却の契約や移転実績が政府から公表された段階には至っていない。
同じF-15Jのシルエットでも、片方は「新しい能力を受け止める器」として残り、もう片方は「第五世代機へ席を譲る時間表」になった。本記事では、この分岐を生んだPre-MSIPの意味、近代化対象外となった理由、F-35への更新、退役後の処遇、売却構想の現実性まで整理する。
F-15J Pre-MSIPの要点

- Pre-MSIPは初期生産型を示す通称
- 近代化対象外でF-35への更新対象
- 完成機売却は2026年7月時点で未確認
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Pre-MSIPの意味 | J-MSIP仕様が導入される前に生産された初期型F-15Jを指す通称 |
| 防衛省の主な表現 | F-15(非近代化機) |
| 一般的な区分 | 初期の約100機。航空資料では製造番号001〜098をPre-MSIPとする整理が多い |
| 近代化対象外の意味 | 飛行不能という意味ではなく、大規模能力向上の投資対象から外れたという意味 |
| 後継 | F-35A。一部はF-35Bで置換 |
| 退役時期 | 順次更新中だが、全機共通の最終退役日は公表されていない |
| 売却 | 2018年に米国への売却検討が報じられたが、2026年時点で成約の公表なし |
| 残るF-15J | 近代化改修済みの機体から68機を能力向上する計画 |
関連事項は航空自衛隊の戦闘機一覧で詳しく確認できる。
Pre-MSIPとは何を意味するのか
MSIPはMulti-Stage Improvement Programの略で、直訳すれば「多段階能力向上計画」である。F-15を一度完成させて終わりにするのではなく、レーダー、コンピューター、電子戦装置、兵装などを段階的に更新できるよう、機体側の電子系統や拡張性を整える考え方だ。
日本で後期生産型に取り入れられた仕様はJ-MSIPと呼ばれる。これに対し、その仕様が導入される前の初期生産機を区別するために使われるのがPre-MSIPである。一般的な航空資料では、F-15Jの製造番号001から098、機体番号では02-8801から82-8898までをPre-MSIP、099号機以降をJ-MSIPと整理することが多い。
この98機は生産時の区分であり、事故損耗や個別改修を反映した2026年の現存数を意味しない。
ただし、Pre-MSIPは航空自衛隊が日常的に前面へ出す正式な機種名ではない。防衛政策上の文書では「近代化改修機」と「非近代化機」という分け方が中心であり、製造時の仕様区分と、現在どの改修を受けているかという運用上の区分は分けて考える必要がある。
ここは誤解されやすい。Pre-MSIPだから1980年代の状態のまま一切手を加えられていない、という意味ではない。安全性、整備性、通信、識別装置など、運用継続に必要な変更が施されることはあり得る。一方で、最新レーダーや高度な電子戦装置、長射程兵器を統合する大規模改修の土台としては、J-MSIP機より不利である。この「飛べるかどうか」と「今後も高額投資を続けるかどうか」の違いが、Pre-MSIPを理解する核心だ。
Pre-MSIPとJ-MSIPの違い

両者は外観だけを見れば同じF-15Jであり、最大速度や基本的な機体形状も大きく変わらない。差が表れるのは、電子装備の内部構成と将来改修への対応力である。
| 比較項目 | Pre-MSIP | J-MSIP |
|---|---|---|
| 生産時期 | 導入初期 | 後期生産 |
| 電子システム | 初期仕様を基礎とする | 段階的能力向上を意識した構成 |
| データ伝送・配線 | 大規模な兵装統合で制約が生じやすい | 新装備を追加するための余地が大きい |
| 近代化適性 | 改修範囲が限定され、費用対効果が悪化しやすい | レーダー、コンピューター、電子戦装置などの更新に適する |
| 政策上の扱い | F-35への置換対象 | 選抜機を能力向上して継続運用 |
戦闘機の近代化は、レーダーだけを新品に交換すれば終わる作業ではない。新しいセンサーが増えれば、電力供給、冷却、信号処理、ソフトウェア、表示装置、兵装管理、試験設備まで連鎖して変更が必要になる。機体の内部配線やデータバスが古ければ、装備品の代金に加えて「載せるための工事」が膨らむ。
私は、Pre-MSIPを「性能が低いから捨てる機体」とだけ見ると本質を外すと考える。問題は単純な強弱ではない。残りの機体寿命、改修費、工期、試験リスクを合わせたとき、同じ予算を第五世代機へ振り向ける方が将来戦力を大きくできる、と政府が判断したのである。
関連事項はF-15Jの近代化改修とJSIで詳しく確認できる。
「Pre-MSIPは近代化できない」は正確なのか
技術的な絶対不可能ではなく、残存寿命と費用を含む投資判断として対象外になった。
インターネット上では、Pre-MSIPを「構造上、近代化改修できない機体」と説明する例が多い。しかし、より正確には「現在計画されている大規模能力向上の対象に選ばれていない機体」と表現すべきだ。
技術的に絶対不可能かどうかと、実用的な予算と期間で改修する価値があるかどうかは別問題である。配線、電力、冷却、コンピューター、コックピット、電子戦装置を広範囲に入れ替えれば、古い機体でも一定の能力向上は理論上可能だろう。しかし、初期型は機齢が高く、改修後に使える年数が後期型より短い。機体ごとの疲労状況を調べ、補強し、米国製装備と国産装備を再統合し、飛行試験をやり直す費用まで考えれば、新しいF-35を取得する選択肢と競合する。
防衛装備庁が2026年5月に公表した取得プログラム評価では、F-15能力向上の対象は「F-15近代化改修機」68機であり、電子戦能力、スタンド・オフ・ミサイル搭載、ミサイル搭載数、レーダー性能を高める計画が予定どおり進捗している。つまり、航空自衛隊は全F-15Jを均等に延命するのではなく、改修に適した機体へ資金を集中する方針を明確にしている。
2019年に米国務省が議会へ通知したFMSでは、最大98機をF-15JSI仕様へ改修する可能性が承認された。一方、日本側の現在の取得目標は68機である。ネット上で「98機」と「68機」が混在するのは、前者が米側の輸出承認上限、後者が日本政府の現行プログラム数だからだ。米側の承認通知には、売却が成立したことを意味しないとの注意書きもある。
Pre-MSIPが退役対象になった理由
機体年齢と残存寿命
Pre-MSIPは航空自衛隊がF-15Jを導入した初期に製造された。戦闘機の寿命は単純な暦年だけでは決まらず、飛行時間、離着陸回数、高荷重飛行、腐食、部品交換歴によって変わる。それでも、同じ改修費を投じるなら、残りの運用期間が長い後期型を選ぶ方が一年度当たりの効果は高い。
電子装備の基礎設計が古い
現代の空戦では、レーダー探知距離だけでなく、妨害環境での生存性、味方との情報共有、長射程ミサイルの統合、任務データの更新速度が重要になる。初期型へこれらを載せるには、装備単体ではなく機体内部の基盤から手を入れなければならない。
改修費とF-35取得費が競合する
F-15能力向上計画のライフサイクルコストは、2022年時点の取得戦略計画で暫定6,465億円とされた。その後、2026年の評価資料ではプログラム全体のライフサイクルコストが1兆286億円と整理されている。対象を選別しても巨額であり、初期型まで追加すれば費用、工期、整備負担はさらに増える。
ここで大切なのは、Pre-MSIPの退役がF-15という設計の失敗を意味しないことだ。むしろ約40年以上にわたり第一線を支えたからこそ、機体の優秀さと電子システムの世代差が同時に見える。丈夫な船体を持つ艦艇でも、センサーと戦闘指揮系統が旧式なら改修か更新を迫られる。F-15Jも同じ段階へ入ったのである。
人員と整備資源を新世代機へ移す必要がある
戦闘機を一機種維持するには、操縦者だけでなく、整備員、補給、教育、シミュレーター、試験器材、格納庫、ソフトウェア管理が必要だ。旧型を長く残せば機数は維持できても、F-35部隊の立ち上げへ回す人員と施設が不足する。退役は機体の性能評価だけでなく、組織全体の移行計画でもある。
Pre-MSIPはF-35AとF-35Bに置き換えられる

防衛省は2019年版防衛白書で、F-15の非近代化機をF-35Aに代替し、その一部をF-35Bへ置き換える方針を明記した。F-35Aは通常離着陸型で、F-35Bは短距離離陸・垂直着陸能力を持つ。両者はPre-MSIPの単純な後継機というより、航空自衛隊の戦い方そのものを変える装備である。
F-35はステルス性を備え、センサーで得た情報を統合し、他の航空機や地上・海上部隊と共有する能力を重視する。F-15Jが高速・大搭載量・長い航続力を生かす制空戦闘機なら、F-35は敵の探知圏へ入り、情報を集め、味方全体の攻撃と防御を組み立てる第五世代機だ。
更新はすでに実動段階へ入っている。2025年4月には小松基地へF-35Aが配備され、同年8月には新田原基地へF-35Bが配備された。2026年度予算案でもF-35Aを8機、F-35Bを3機取得する経費が計上されている。防衛力整備計画では2023〜2027年度にF-35Aを40機、F-35Bを25機取得し、F-15能力向上を54機分進める計画である。54機は五年間の整備規模であり、F-15能力向上プログラム全体の取得目標68機とは集計範囲が異なる。
関連事項は航空自衛隊のF-35AとF-35Bで詳しく確認できる。
Pre-MSIPの退役はいつ完了するのか
2026年7月時点で、防衛省はPre-MSIP全機に共通する最終退役日を公表していない。したがって「2027年に全機退役」「2030年まで確実に残る」といった断定はできない。
更新は、F-35が納入された瞬間に同数のF-15Jを廃棄する単純な差し替えではない。新機種の操縦者養成、整備員教育、部隊編成、施設整備、兵器・ソフトウェアの受領、警戒待機任務の引き継ぎが必要になる。F-35の稼働態勢が整う前に旧型を減らしすぎれば、防空の空白が生じるからだ。
一方、航空自衛隊のF-15は2026年にも飛行を続けている。千歳基地は2026年のF-15航過飛行を告知し、統合幕僚監部も同年7月の日米共同訓練に第9航空団のF-15が参加したと発表した。ただし、これらの発表はF-15全体が現役であることを示すだけで、参加機がPre-MSIPかどうかを明らかにするものではない。
筆者の見立てでは、Pre-MSIPの退役は次の条件がそろった部隊から段階的に進む。
F-35AまたはF-35Bの必要機数が到着する
操縦者と整備員の転換教育が完了する
基地の格納庫、試験器材、情報保全設備が整う
警戒待機と訓練を維持できる稼働率を確保する
退役機から外した部品の再利用先と処分方法を決める
このため、最後まで残る機体が必ずしも製造番号の新しい順になるとは限らない。飛行時間、整備状態、部品在庫、部隊の任務によって、個体ごとの退役順は変わる可能性がある。
退役したPre-MSIPはどう処分されるのか

退役機の行き先は売却だけではない。航空機は高価な部品の集合体であり、用途廃止後も複数の選択肢がある。
部品取りとして活用する
最も現実的なのは、残存するF-15J/DJの可動率を支えるために、エンジン、脚、油圧系統、操縦系統、構造部材、地上支援器材などを再利用する方法だ。すべての部品をそのまま移せるわけではないが、製造終了品の確保は長期運用機にとって大きな意味を持つ。
教育・地上訓練に使用する
機体を飛ばさず、整備教育、救難訓練、消防訓練、損傷復旧訓練へ転用することも考えられる。実機の構造を使えるため、教材としての価値は高い。ただし、機密装備を外し、安全に保管する費用が必要になる。
基地や博物館で展示する
歴史的価値のある初号機、記念塗装機、特定部隊にゆかりのある機体は保存候補になり得る。ただし、すべてを展示保存する場所はなく、屋外展示では腐食対策と維持費も発生する。
解体・破砕する
売却や転用に適さない機体は、機密装備を撤去した上で解体される。軍用機の場合、単に中古金属として売るのではなく、再利用を防ぐ部位、輸出管理対象、危険物、複合材などを分けて処理しなければならない。
海外へ移転する
機体として再使用でき、移転先、米国政府、日米メーカー、輸出管理当局の条件を満たせば、海外移転の余地はある。ただし、これが最も手続きと費用の大きい選択肢だ。
2018年に報じられた「旧型F-15J約100機の売却構想」
Pre-MSIPの売却が注目されたきっかけは、2018年12月の報道である。報道では、日本政府が近代化できない旧型F-15約100機を米国へ売却し、米国が東南アジア諸国などへの再移転を検討する構想が伝えられた。売却代金をF-35取得費の一部へ充てる狙いも報じられた。
この構想には、日本が直接買い手を探すより、F-15の原設計国であり輸出管理権限を持つ米国を窓口にした方が調整しやすい、という理屈がある。米国へ戻せば、米側が機体状態を評価し、必要な改修、部品供給、訓練、第三国への移転条件を一体で設計できる。
しかし、2018年の報道は「検討」であり「決定」ではなかった。機数、価格、引き渡し時期、改修費、最終使用国は確定しておらず、政府間契約が締結されたという内容でもない。この段階の構想を、その後も「日本は100機の売却を決めた」と読み替えるのは正確ではない。
2026年時点でF-15Jの売却は決まったのか
公表情報を確認した限り、2026年7月時点でPre-MSIPの機体売却契約、引き渡し開始、買い手となる国は政府から発表されていない。経済産業省が2026年4月に公表した令和6年度の防衛装備海外移転の年次報告は、2024年4月から2025年3月までの許可状況をまとめているが、F-15J完成機の売却実績は示していない。
したがって、現状は「売却構想が過去に報じられ、制度上の可能性は拡大したが、成約は確認できない」と整理するのが妥当だ。
私は、売却の有無を判断するときは、報道された機数よりも、政府間合意、輸出許可、米政府承認、受け入れ国の予算という四つの痕跡を見るべきだと考える。中古戦闘機は、政治的合意だけでも、買い手の興味だけでも動かない。四つが同時にそろって初めて、機体が国境を越える。
2026年の制度改正で売却しやすくなったのか
2026年4月21日、日本政府は防衛装備移転三原則と運用指針を見直した。従来より移転可能な範囲を広げ、装備品は制度上原則として移転可能とし、個別案件で厳格に判断する仕組みへ改めた。戦闘機のような殺傷・破壊能力を持つ「武器」は、日本と防衛装備品・技術移転協定を結ぶ国などに移転先が限定され、国家安全保障会議での審査、移転後の管理、国会への報告が求められる。
見直し時点の協定締結国は、米国、英国、豪州、インド、フィリピン、フランス、ドイツ、マレーシア、イタリア、インドネシア、ベトナム、タイ、スウェーデン、シンガポール、UAE、モンゴル、バングラデシュの17カ国とされた。また、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国への移転は、原則として認めない枠組みである。
制度改正によって、完成した戦闘機を海外へ移す法政策上の入口は以前より広くなった。しかし、F-15Jが自動的に売れるわけではない。F-15Jは米国設計を日本でライセンス生産した機体であり、米国由来の技術、部品、ソフトウェアを含む。日本側の承認に加え、米側の再移転同意と技術保全が不可欠になる。
Pre-MSIP売却を難しくする五つの壁
1. 米国の同意と技術管理
F-15Jは純粋な国産戦闘機ではない。機体、エンジン、レーダー、兵装統合には米国由来の要素が多く、第三国へ移転する場合は米国の輸出管理と安全保障上の審査を避けられない。日本と買い手が合意しても、米側が認めなければ成立しない。
2. 日本独自装備の撤去
3. 機体寿命と改修費
買い手は中古機の購入価格だけでなく、構造検査、腐食修理、エンジン整備、部品交換、耐空性確認に費用を払う。日本で長年運用された初期型を輸出仕様へ直す費用が高ければ、新造F-16、FA-50、グリペン、あるいは別の中古機を選ぶ方が合理的になる。
4. 運用基盤の大きさ
F-15は双発の大型戦闘機である。操縦者教育、整備員、予備エンジン、レーダー試験器材、広い格納庫、長い滑走路、兵装、データリンクをそろえなければ戦力化できない。機体を安く入手しても、維持費と部隊立ち上げ費が高ければ「安い中古戦闘機」にはならない。
5. 買い手の戦略と政治
F-15を必要とする国は、長距離防空や大型ミサイル搭載を重視する一方、中国や周辺国との関係、米国との軍事協力、国防予算、国内世論も考えなければならない。欲しい国があることと、売れる国があることは同じではない。
現実的な処遇シナリオを順位づけする
私が最も現実的だと見る順番は、次のとおりである。
第1位 段階退役と部品取り
近代化型F-15Jを長く使う以上、旧型から確保できる共通部品には価値がある。機体ごと輸出するより手続きが少なく、航空自衛隊の可動率へ直接貢献する。すべての機体が部品取りになるわけではないが、退役初期の中心的な処遇になりやすい。
第2位 教材・展示・地上用途への限定転用
歴史的価値のある機体を保存し、残りの一部を整備教育や救難訓練へ使う案である。飛行させないため耐空証明の問題は小さくなるが、機密撤去と保管費は必要だ。
第3位 部品・エンジン単位の海外移転
完成機よりも、米国やF-15運用国が必要とする部品を選別して移転する方が成立しやすい。もっとも、部品の型式、残存寿命、知的財産、米側承認を一つずつ確認しなければならない。
第4位 少数機の完成機移転
機体状態の良いものを選び、米国または協定国へ少数移転する可能性は制度上排除できない。ただし、買い手が改修と支援パッケージに十分な予算を出すことが条件になる。
第5位 約100機を一括して第三国へ売却
Pre-MSIP退役後もF-15Jは残る

Pre-MSIPの退役を「航空自衛隊のF-15Jがすべて消える」と受け取ってはいけない。防衛装備庁の現行計画では、近代化改修機68機に対して能力向上を行い、電子戦能力、レーダー、ミサイル搭載力、スタンド・オフ攻撃能力を強化する。
これは「F-15かF-35か」という機種人気の争いではない。限られた予算、人員、基地を使い、どの機体へどの任務を割り当てるかというポートフォリオの再設計である。投資でいえば、古い銘柄を全部売るのでも、全部買い増すのでもなく、成長余地のある資産へ追加投資し、役割を終えた資産を順次入れ替える判断に近い。
F-15J Pre-MSIPに関するFAQ
Pre-MSIPはすでに全機退役したのか
全機退役を示す政府発表は確認できない。F-35への更新は進んでいるが、個別機の用途廃止時期や残存数は公表されていない。F-15全体は2026年にも警戒・訓練任務で運用されている。
Pre-MSIPはJ-MSIPへ改修できないのか
絶対に不可能と断定するより、現行の大規模能力向上の対象として費用対効果が合わない、と理解する方が正確だ。機齢、内部配線、電力・冷却、試験費、残存寿命を含めて判断される。
Pre-MSIP約100機は米国へ売却されるのか
2018年に検討が報じられたが、2026年7月時点で約100機の売却契約や引き渡しは公表されていない。今後移転があるとしても、機体状態の良い少数機、部品、エンジンなどへ分割される可能性を考えるべきだ。
F-15Jの近代化機は何機残るのか
防衛装備庁のF-15能力向上プログラムの取得目標は68機である。防衛力整備計画にある54機は2023〜2027年度の整備規模であり、計画全体の68機と矛盾しない。
売却すればF-35の購入費を大きく回収できるのか
売却価格だけを見れば収入になるが、機密装備の撤去、構造検査、改修、輸送、契約管理にも費用がかかる。買い手が負担する範囲によって日本側の手取りは変わるため、F-35取得費を大幅に賄えると断定する根拠はない。
まとめ
F-15J Pre-MSIPは、J-MSIP仕様導入前の初期生産型を指す通称であり、防衛省の政策文書では主に「F-15(非近代化機)」として扱われる。飛行性能を失った機体ではないが、大規模な電子装備更新へ投資するには、機齢、内部構成、残存寿命、改修費の条件が不利になった。
政府は非近代化機をF-35Aへ置き換え、一部をF-35Bで代替する方針を進めている。一方、近代化改修済みのF-15Jから68機を選び、電子戦、レーダー、ミサイル搭載、スタンド・オフ攻撃能力を強化する。F-15Jは一括退役するのではなく、残す機体と退かせる機体へ明確に分かれたのである。
売却については、2018年に旧型約100機を米国へ売る構想が報じられたものの、2026年時点で成約は公表されていない。2026年の防衛装備移転制度改正で法政策上の可能性は広がったが、米国の同意、機密装備の撤去、機体寿命、改修費、買い手の運用基盤という壁は残る。
Pre-MSIPの行方を決めるのは、名機への評価ではなく、次の20年にどの戦力へ資源を配るかという計算だ。約40年にわたり日本の空を守った初期型イーグルは、第五世代機への更新を支え、残るF-15Jへ部品と運用経験を渡したとき、最後の任務を終えることになる。
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