H&K Mk23とは|世界一有名な「SOCOMピストル」は現場に嫌われた──攻撃用拳銃という思想、USPとの関係、メタルギアと東京マルイ

H&K Mk23 記事表紙
要点

ところが実物のMk23は、それを使うはずだった特殊部隊の隊員たちから、大きすぎる、重すぎると言われ続けた。1996年に納入が始まり、2000年代のうちに現場の主力から外れ、今はもっと小さい拳銃に置き換わっている。「史上最も厳しくテストされた拳銃」が、テストに通った後で人間に拒否された。この記事では、Mk23がなぜあの形になったのか、何が優れていて何が余計だったのか、USPとどういう関係なのか、そしてなぜ日本でだけ異様に有名なのかを追っていく。

目次

Mk23を一言で言うと

サプレッサーを装着したH&K Mark 23。
サプレッサーを装着したH&K Mark 23。写真:Joe Loong/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.0
Mk23を一言で言うと

数字を並べておく。比較のために、同じH&Kで同時期に開発されたUSPの.45口径版を隣に置いた。

項目Mk23 Mod 0USP .45
口径.45ACP(+P対応).45ACP
装弾数12発12発
全長245mm200mm
銃身長150mm(ネジ切り)112mm
重量(弾なし)約1,100g約790g
命中精度25mで直径約5cmに集弾一般的な軍用拳銃の水準
耐久試験+P弾3万発以上2万発規模
採用年1996年1993年

全長24.5cm、重さ1.1kg。ガバメントより一回り大きく、サプレッサーとLAMを付けると全長は40cmを超え、重さは1.5kg近くになる。小さなカービンに近い。この大きさこそがMk23の全てで、褒める理由も嫌われる理由もここから出てくる。

「攻撃用拳銃」という思想──1991年、SOCOMの要求

1991年8月、アメリカ特殊作戦軍が「攻撃用拳銃システム」(OHWS)の要求を出した。普通の軍隊にとって拳銃は、小銃が使えない時のための補助兵器だ。だが特殊部隊は少人数で建物の中や船の中に入る。そこでは拳銃が主武器になる場面が普通にある。だから「守るための拳銃」ではなく「攻める拳銃」を作れ、というのがこの計画の出発点だった。

この発想自体が珍しい。拳銃を主武器として本気で設計した軍用拳銃は、それまでほとんどなかった。だから要求も普通ではなかった。25mで5cm以内に集弾する狙撃銃並みの精度、サプレッサーを付けても確実に作動すること、+P高圧弾で3万発撃っても壊れないこと、海水と泥と砂に漬けても撃てること。ナイフで言えば包丁ではなく、料理も薪割りもできる万能ナイフを作れ、という注文だった。

口径は早い段階で.45ACPに決まった。9mmは威力不足と判断され、FBIが採用した10mmは強すぎて銃の寿命を縮める。結局、古くからある.45ACPに高圧の+P仕様を加えて使うことになった。ここで面白いのは、実績のあるM1911が最初から候補から外されたことだ。+P弾に耐えられず、サプレッサーを付けると作動が不安定になる。70年使った名銃を改造するより、新しく作った方が安いと判断された。M1911の記事で書いた「ブローニングの傑作」は、1990年代の特殊部隊の要求にはもう届かなかった。

.45が選ばれたもう一つの理由──最初から音速以下

.45が選ばれたもう一つの理由──最初から音速以

サプレッサーは銃口から出るガスの音を抑える装置だが、弾丸そのものが音速を超えていると、弾が空気を切る衝撃波の音は消せない。9mmパラベラムの標準弾は音速を超える。だから9mmで静かに撃つには、わざわざ火薬を減らした亜音速弾を用意しなければならず、そうすると威力も作動の確実性も落ちる。一方.45ACPは、重い弾をゆっくり飛ばす設計で、標準弾のままで最初から音速以下だ。サプレッサーを付ければそのまま静かに撃てて、しかも威力は落ちない。

「攻撃用拳銃」の要求がサプレッサーを前提にしていた以上、.45は威力と静粛性の両方で都合が良かった。10mmが落とされたのは強すぎて銃の寿命を縮めるからだが、音速を超える弾でもあり、そもそも静かに撃つ用途に向かなかった。Mk23の大きさの半分は、この重い.45弾を+P仕様で3万発撃っても壊れない強度のために使われている。

コルトとの一騎打ち──なぜH&Kが勝ったか

競争に参加したのはH&Kとコルトの2社だけだった。コルトの試作銃は、+P弾や.45スーパーのような高圧弾を安定して撃てず、さらに銃口にマズルブレーキを付けていたため、サプレッサーの取り付けが面倒だった。H&Kの試作銃は最初から銃身にネジを切ってあり、サプレッサーを前提に設計されていた。この差でH&Kが勝った。

H&Kは自社製の四角い箱型サプレッサーも提案したが、これは採用されず、ナイツ・アーマメント社の円筒形のものが選ばれた。H&Kの箱型は試作品しか残っていない。レーザー照準モジュールはインサイト社が担当し、ウィルコックス社も独自の分割式モジュールを作ったが、こちらも量産には至らなかった。1994年1月に開発契約、1996年5月に初納入。計画では7,500丁、うち1,950丁がサプレッサーとLAM付きの完全システムとして調達される予定だった。

中身──なぜ拳銃が狙撃銃並みに当たるのか

照準用モジュールとサプレッサーを備えたMark 23。
照準用モジュールとサプレッサーを備えたMark 23。写真:UNHchabo(Commons掲載名)/Wikimedia Commons/CC BY-SA 2.5
中身──なぜ拳銃が狙撃銃並みに当たるのか

仕組みはいくつかある。まず銃身はマッチグレードで、ポリゴナルライフリングという多角形の内面加工がしてある。次に銃身とスライドの間にOリング(ゴムの輪)が入っていて、発射のたびに銃身が同じ位置に戻る。この輪は消耗品で、一定の弾数で交換する。そして反動を軽減する二重構造のリコイルスプリングがあり、+P弾を撃っても跳ね上がりが小さい。銃身が長いのも精度に効いていて、150mmはガバメントより2cm以上長い。

もう一つ、サプレッサーを付けて撃つための工夫がある。普通の自動拳銃は銃身が後退しながら少し傾いて作動するが、先端に重いサプレッサーを付けると、その重さで動きが狂って弾詰まりを起こす。Mk23は最初からそれを見越して作動が設計されていて、サプレッサー付きで確実に動く。これが「守る拳銃」と「攻める拳銃」の一番の違いで、USPとの決定的な差でもある。

テストの風景──「史上最も厳しくテストされた拳銃」の中身

テストの風景──「史上最も厳しくテストされた拳銃

海水に漬けてから撃つ。泥に埋めて掘り出して撃つ。砂を吹き付けて撃つ。氷点下で凍らせて撃つ。落として撃つ。整備しないまま2,000発以上撃ち続けて、その間に止まった回数を数える。そして+P高圧弾で3万発。普通の軍用拳銃は1万発から2万発で寿命と見なされるので、その1.5倍から3倍だ。そのうえで25mで5cm以内という競技用の精度を、耐久試験の後にも維持しなければならない。

この試験は、この銃を「壊れない」ようにした一方で、「大きい」銃にもした。3万発の+P弾に耐えるフレームとスライドは、必然的に肉厚になる。精度のための長い銃身と重いスライドは、必然的に前が重くなる。SOCOMは頑丈さと精度を最優先し、その代償として大きさを受け入れた。テストに合格する銃を作れという要求に、H&Kは正直に応えた。要求を書いた側が、その銃を腰に下げて走る想像をどこまでしていたかは分からない。

レーザー照準モジュールと「Mk23 Mod 0」という名前

Mk23が「システム」と呼ばれるのは、拳銃だけで完結しないからだ。トリガーガード前の溝に取り付けるレーザー照準モジュールは、可視光レーザーと赤外線レーザー、それに白色光のライトを一つの箱に収めていて、暗視ゴーグルを着けた隊員には赤外線の点が、着けていない隊員には赤い点が見える。切り替えはグリップを握ったまま親指で行う。1990年代前半にこれを軍用拳銃の標準装備として要求したのは早く、今の拳銃用ライトやレーザーの原型がここにある。

名前の「Mk23 Mod 0」はアメリカ海軍式の兵器命名で、「マーク23、改修0」を意味する。海軍がこの命名を使うのは、SOCOMの中でこの銃を最も多く受け取ったのがSEALsだったからだ。民間向けにはサプレッサー対応の銃身だけ変えた「MARK 23」が売られていて、こちらはスライドに「USSOCOM」の刻印がない。実物の軍用型はスライドに「US GOVT」か「USSOCOM」と刻まれている。

現場の評価──通ったのはテスト、落ちたのは人間

大型拳銃の携行を支えるホルスターとベルト。
大型拳銃の携行を支えるホルスターとベルト。

ここからが本題だ。Mk23はテストの全てに通った。そして現場で嫌われた。

理由は大きさだ。1.1kgの拳銃を腰に下げて、それにサプレッサーとLAMを付けて、船の中や建物の中で小銃と持ち替える。ホルスターに入らない。太腿に吊るしても重い。「ちょっと小さいサブマシンガン」という皮肉が飛んだ。特殊部隊の隊員は小銃を主武器にし、拳銃は小銃が故障した時や近すぎる時に一瞬使うものだと考えている。要求書には「攻撃用拳銃」と書いてあっても、使う人間の頭は変わっていなかった。

もう一つ、そもそも「拳銃を主武器にする」場面が想定ほど多くなかった。1990年代後半以降、特殊部隊はサプレッサー付きのMP5や短銃身のM4を普通に持ち歩くようになった。サプレッサー付きの拳銃でやる仕事は、サプレッサー付きのサブマシンガンの方がずっと上手くできる。MP5やMP7のような銃が特殊部隊に行き渡ると、Mk23が主武器を張る場面は消えた。

結果として、Mk23はSEALsを中心に配備されたものの、多くの隊員はより軽いSIG P226やP220を選び続けた。SIG P226がなぜ特殊部隊に長く愛されたかを考えると、Mk23の失敗は裏返しでよく分かる。P226は普通の大きさで、普通に当たり、普通に信頼できた。Mk23は異常に当たるが、異常に大きかった。

その後──Mk24、そしてMk27

Mk23の「サプレッサー付きの.45」という役割は、2010年前後に同じH&KのHK45コンパクト・タクティカルが引き継いだ。SEALsでの制式名はMk24で、Mk23の思想をそのまま小さくした銃だ。ネジ切り銃身、高い照準器、サプレッサー対応、ただし全長は20cm台で重さは800g前後。要するに「Mk23の中身をUSPの大きさに収めた」銃で、Mk23の要求が最初から過大だったことを後から証明したような存在だと思う。

そしてさらにその後、特殊作戦軍全体で拳銃はグロック19に寄っていった。海軍での制式名はMk27。9mm、コンパクト、安い、部品が世界中にある。.45で攻撃用の拳銃を作る、という1991年の思想は、30年経ってほぼ完全に否定された。9mm弾そのものが改良されて威力の差が縮まったこと、そして拳銃が主武器になる状況を作らない方が合理的だと現場が学んだことが理由だ。グロック17が世界中で採用されている理由と、Mk23が消えた理由は同じ場所にある。

USPとの関係──兄と弟ではなく、双子

「Mk23はUSPの軍用版」とよく言われるが、順番が逆に近い。H&KはOHWSの開発と並行してUSPを設計していて、USPが1993年に先に市場へ出た。Mk23の開発で得た機構、特にリコイル軽減スプリングやポリマーフレームの設計は、USPに先に載って売られた。つまりMk23で試したものをUSPで商品化し、Mk23本体はその後1996年に納入された。

見た目も操作もほぼ同じで、違いは大きさと精度と、サプレッサー前提の作動設計だ。USPは「普通の大きさで、普通に信頼できる」ことを狙った銃で、あちらは世界中の軍と警察に売れた。同じ設計思想から出た双子で、片方は売れ、片方は伝説になった。USPがなぜ売れたかはUSPの記事で書いたので、Mk23と読み比べてもらうと面白い。

メタルギアと東京マルイ──日本で異様に有名な理由

エアソフトの準備に使う保護ゴーグル、フェイスガード、BB弾。
エアソフトの準備に使う保護ゴーグル、フェイスガード、BB弾。

Mk23が世界で一番有名になったのは、たぶん日本だ。

『メタルギアソリッド』でスネークが使う「SOCOM」はMk23そのもので、レーザーサイトが付いていて、サプレッサーを後から拾って装着する。続編ではこれの麻酔銃版が主武器になる。ゲームの中で「サプレッサーを付けた拳銃で音を立てずに進む」という遊び方を覚えた人にとって、Mk23は拳銃の原型になった。

そしてもう一つ、東京マルイの固定スライドガスガンだ。1990年代末に出たこのモデルは、スライドが動かない代わりに作動音がほとんどなく、ガスの消費が少なく、冬でも安定して撃てて、しかも当たる。サバゲーの世界で「一番静かで一番当たるハンドガン」として今も現役で売られている。実銃が「静かに、正確に」という要求で作られ、エアガンもまったく同じ理由で評価されているのは、ちょっと出来すぎた話だと思う。実銃は大きすぎて嫌われたが、エアガンでは大きさはほとんど問題にならない。

サバゲー用のハンドガンをどう選ぶかはハンドガンおすすめ10選に、ガスガンと電動の違いはこちらにまとめてある。

自衛隊と投資の目で見るMk23

自衛隊の話を少しだけ。陸海空自衛隊は2020年に、9mm拳銃(SIG P220の国産版)の後継としてH&KのSFP9を採用した。40年ぶりの拳銃刷新で、選ばれたのはグロックでもベレッタでもなくH&Kだった。SFP9の記事で書いたとおり、これはUSPとMk23の血を引くポリマーフレーム拳銃の、いわば孫の世代にあたる。特殊作戦群のような部隊が何を使っているかは公開されていないが、自衛隊全体の拳銃がH&K系になったこと自体、Mk23の時代から30年かけてH&Kが「軍用拳銃の標準」の一角を取ったことの結果だ。

投資の話としては、H&Kは非上場に近い扱いで日本から直接は買いにくく、しかも拳銃は防衛産業の中で最も金額の小さい分野だ。Mk23の調達計画7,500丁は、戦闘機1機の値段にも届かない。むしろこの分野で日本の投資家が見るべきなのは、SFP9を含む小火器を自衛隊向けに扱う国内メーカーの方で、豊和工業がその代表になる。ただし小火器の市場は小さく、防衛株全体は予算と政治で大きく動く。この記事は特定銘柄の売買を推奨するものではなく、投資判断は自分で情報を集めたうえで行ってほしい。

まとめ──要求に完璧に応えた銃が、要求そのものに殺された

Mk23は、1991年にアメリカ特殊作戦軍が出した「攻める拳銃」という要求に、ほぼ完璧に応えた。25mで5cm、+P弾3万発、海水と泥の中でも作動、サプレッサー付きで確実に動く。テストで落とせなかった。落としたのは、それを腰に下げて走る人間だった。

その後の30年で、特殊部隊の拳銃はMk24、Mk27と小さく軽くなり、口径は.45から9mmへ戻った。Mk23が示したのは「拳銃を主武器にする」という発想の限界で、その教訓は今の軍用拳銃の全てに刻まれている。

そして、その銃がゲームとエアガンを通じて、使うはずだった特殊部隊員より日本の若者にずっと愛されたのは、この銃の一番面白い結末だと思う。拳銃の系譜を一通り見たい人は世界の軍用拳銃一覧を、そもそもの銃の種類から知りたい人は銃の種類完全ガイドを合わせて読んでもらえると、Mk23がどこに位置する銃なのかが見えてくるはずだ。


出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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