HK433とは|G36とHK416、H&Kが自社の「二つの魂」を一丁にまとめた小銃──設計思想・構造・HK437とG39まで

HK433 G36とHK416の先へ

ヘッケラー&コッホ(H&K)の小銃には、大きく分けて二つの家系がある。

ひとつは、1990年代からドイツ連邦軍の制式小銃だったG36。樹脂を多用した軽い機関部、横に折れる銃床、上に跳ね上がる槓桿(コッキングハンドル)が特徴の、いかにもH&Kらしい銃だ。もうひとつは、アメリカのAR-15(M4)の形をそのままに、中身をH&K流のピストン式に作り替えたHK416。世界中の特殊部隊が使う、もう一つの看板商品である。

2017年、H&Kはこの二つを一丁にまとめた小銃を発表した。それがHK433だ。会社自身の宣伝文句は「一つの口径に、二つの魂」。G36に慣れた兵士が持っても、HK416やM4に慣れた兵士が持っても、すぐに扱えるように作られている。

この記事では、HK433がどんな考え方で設計されたのかに絞って見ていく。G36の後継選びの経緯はG36の記事に譲り、ここではHK433そのものの中身、つまり「二つの家系の、どこをどう混ぜたのか」を部品ごとに分解する。

この記事のポイント
目次

HK433とは|基本情報

HK433の側面輪郭。
HK433の側面輪郭。
写真・素材:Auge=mit/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
項目 HK433
メーカー ヘッケラー&コッホ(ドイツ)
発表 2017年(同年3月のEnforce Tacで正式公開)
弾薬 5.56×45mm NATO
作動方式 ショートストロークピストン、ロータリーボルト
銃身長 11〜20インチの6種類(2026年時点の短銃身型を含めると7インチから)
重量 約3.25kg(11インチ)〜約3.5kg(16.5インチ)
発射速度 毎分約850発
弾倉 30発(STANAG規格)
主な派生型 HK437(.300ブラックアウト)、HK433PDW

見た目は、ひとことで言うと「G36の顔をしたAR」だ。横から見るとM4に近い一直線の形をしているが、銃床の形や槓桿の位置にはG36の名残がある。

H&Kの家系図の中のHK433

HK433の操作系を考える手掛かりとなるHK416。写真はHK416。
HK433の操作系を考える手掛かりとなるHK416。写真はHK416。
写真・素材:Dybdal ./Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)

HK433の設計を理解するには、H&Kの小銃の「家系図」を一度ながめておくと分かりやすい。

戦後のH&Kを有名にしたのは、7.62mm弾のG3と、その仕組みを小さくした短機関銃MP5だった。どちらもローラーを使ってボルトの後退を遅らせる独特の方式で、精度と信頼性で世界に知られた。HK433がG36式として選べるようにした「弾倉の後ろの板状レバー」も、もとをたどればこの時代の操作だ。

1990年代になると、H&Kはローラー式を離れ、ガス圧でピストンを押す方式のG36を作る。さらに2000年代には、アメリカのAR-15の形に自社のピストン方式を組み合わせたHK416を出した。こうしてH&Kの中には、「G3からG36へ続く自前の作法」と「AR-15の作法を借りたHK416」という二つの流れができた。

HK433は、この二つの流れが合流した地点に立っている。作動の仕組みは両者に共通のピストン方式でまとめ、操作の作法は両方を選べるようにした。家系図で見ると、HK433は新しい枝というより、分かれていた二本の枝を一本に結び直した銃だと言える。

設計思想|なぜ「二つの魂」を混ぜたのか

HK433は、AR系とG36系の二つの操作体系に対応する。
HK433は、AR系とG36系の二つの操作体系に対応する。

HK433の出発点は、兵士の「慣れ」だ。

要点

H&Kから見ると、世界の市場には二種類の客がいた。G36を使ってきたドイツやスペインなどの軍と、M4やHK416のようなAR系を使ってきた軍だ。どちらかに寄せれば、もう片方の客は「訓練をやり直す手間」を嫌って離れていく。ならば、両方の動きをできるだけ受け入れられる銃を作ればいい。HK433は、その発想から生まれた。

これを読んで私は、旧日本陸軍の小銃の苦労を思い出した。日本陸軍は、6.5mm弾の三八式歩兵銃から7.7mm弾の九九式小銃へ切り替える途中で戦争に突入し、前線では二種類の弾と二種類の銃が混ざって、補給も訓練も混乱した。新しい銃への移行は、新しい銃そのものより、移行のやり方で失敗することが多い。HK433は、銃の側でその移行を楽にしようとした、珍しい設計だと思う。

構造|どこがG36で、どこがHK416なのか

G36を携行する警察官。HK433と操作の系譜を比較できる。
G36を携行する警察官。HK433と操作の系譜を比較できる。
写真・素材:Martin Greeson, U.S. Army/Wikimedia Commons(Public domain)

では、具体的にどの部分をどちらから受け継いだのか。部品ごとに見ていく。

部位 HK433の作り 由来
作動方式 ショートストロークピストン G36・HK416の共通の基本
機関部の上半分 アルミ合金の一体型 HK416に近い考え方
機関部の下半分 樹脂製。弾倉の着脱方式を2種類から選べる AR式とG36式の両方
槓桿 横にあり、射撃中は動かない。左右付け替え可能 G36の発想を発展
銃床 横に折れて伸縮もする。頬当ての高さも調整可能 G36の折りたたみ+ARの伸縮
操作系 左右どちらの手でも扱える 両方の利用者に対応
レール 上にNATO規格レール、側面にM-LOK 現代の標準に合わせる

作動方式|ピストンでガスを機関部に入れない

まず心臓部の作動方式は、ショートストロークピストンだ。発射ガスでピストンを短く押し、その力でボルトを動かす。ガスそのものは機関部の中に入らないので、汚れや熱がたまりにくい。これはG36とHK416が共通して持っていた考え方で、HK433もそのまま受け継いだ。ガスの量を調整する機構もついていて、消音器を付けたときに作動を合わせられる。

機関部|上はアルミ、下は樹脂

機関部は、上半分がアルミ合金の一体型、下半分が樹脂製だ。G36は機関部の多くを樹脂で作って軽くしたのが特徴だったが、HK433では銃身や照準器を支える上半分を金属にした。照準器を載せるレールまで一本の金属でつながっているので、位置がずれにくい。軽さよりも、精度の安定を優先した選択だと読める。

下半分|弾倉の外し方を二つ用意した

HK433でいちばん象徴的なのが、下半分(ロアレシーバー)を2種類用意したことだ。

ひとつは、AR-15と同じく、引き金の上あたりにあるボタンを指で押して弾倉を落とす方式。もうひとつは、G36やMP5と同じく、弾倉の後ろにある板状のレバーを押して外す方式だ。

弾倉の交換は、撃ち合いの最中にいちばん急いでやる動作のひとつだ。その手の動きが体に染みついている兵士にとって、ボタンかレバーかの違いは小さくない。HK433は、ここを客ごとに選べるようにした。上半分は共通で、下半分だけを差し替える。「二つの魂」という言葉が、いちばんはっきり形になっている部分だ。

槓桿|撃っても動かない、左右に付け替えられる

槓桿は機関部の横、ハンドガードの近くにある。射撃中に前後に動かない方式なので、撃つたびに手に当たる心配がない。しかも、工具なしで左右どちらにも付け替えられる。

G36の槓桿は上についていて、左右どちらの手でも引けるのが売りだった。HK416は、AR-15と同じく機関部の後ろにT字型の槓桿がある。HK433は、そのどちらとも違う位置に置きつつ、左右どちらからでも使えるというG36の長所は残した。

銃床|折れるし、伸びるし、畳んだまま撃てる

銃床は、横に折りたためて、さらに長さも変えられる。G36の「横に折れる」とAR系の「伸び縮みする」を一つにまとめた形だ。頬を当てる部分の高さも3段階で調整できる。

折りたたむと全長が30cm近く短くなり、車両の中やヘリコプターの中で扱いやすい。しかも、2026年のH&Kの説明では、畳んだ状態でも撃てなくならないようにしているという。

銃身|工具なしで長さと口径を替える

最後に銃身だ。HK433は銃身を交換しやすく作られていて、11インチから20インチまで6種類の長さが用意された。建物の中で戦う部隊は短い銃身を、遠くを狙う兵士は長い銃身を、同じ銃の本体のままで選べる。

さらにH&Kは、同じ設計を土台に別の弾を使う仲間も作っている。.300ブラックアウト弾のHK437がすでに使われていて、7.62×51mm弾や6.5mmクリードモア弾、7.62×39mm弾、9mm弾の型も開発中や発表済みとされている。一つの「家系」の中で弾まで替えられるようにして、部品や訓練を共通にしよう、という考え方だ。

HK437とG39|「HK433家」が最初に採用された場所

ここまで読むと気になるのが、「で、どこが使っているのか」だろう。

実は、5.56mmのHK433そのものを制式小銃として大量に採用した軍は、2026年10月時点ではまだない。ドイツ連邦軍の次の制式小銃も、同じH&KのHK416系に決まっている。設計思想は評価されても、「実績のある銃」を選びたい軍の慎重さに阻まれてきた、というのが正直なところだと思う。

その一方で、派生型のHK437が先に居場所を見つけた。

HK437は、HK433の仕組みのまま、.300ブラックアウトという弾を使う型だ。この弾は5.56mm弾と同じ弾倉に入りながら、弾頭が重く、消音器との相性がいい。短い銃身でも力を失いにくく、音を抑えて撃てるので、建物の中で戦う部隊に向いている。

2022年10月、ドイツ北部のシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州警察が、HK437を200丁あまり導入した。HK433系としては、まとまった数の初めての顧客とされる。

そして2024年2月、ドイツ連邦軍の特殊部隊向けに、9インチ銃身で消音器付きのHK437を「G39」として採用する契約が結ばれたと報じられた。最初の調達は176丁で、最終的には988丁を買う見込みとされる。これは、長年使ってきた消音型サブマシンガンMP5SDの後継にあたる。軍の世界で「HK433家」が初めて制式名を得た瞬間だった。

ウクライナの国防情報総局も、HK433系を使っているとされる。

2026年のHK433|「MARS」として出直す

要点

改良点としては、45度の角度で切り替える安全装置、工具なしで調整できるガス機構、左右に付け替えられる槓桿、AR式とG36式から選べる下半分など、最初の設計思想をそのまま磨き込んだ形になっている。砂、泥、海水、極端な温度といったNATO規格の試験も、全型式で通過しているという。

アメリカ陸軍が5.56mmから6.8mmのSIG M7へ移ろうとしているように、主力小銃の世界は口径から見直す時期に入っている。その中で、5.56mmの主力小銃としては苦戦してきたHK433が、特殊部隊や警察の短い銃から足場を固め、もう一度大きな市場を狙う。2026年の出直しは、そんな戦略に見える。

HK433が示した「小銃の作り方」の変化

HK433が面白いのは、銃そのものより、銃の作り方の考え方が変わったことを示している点だ。

昔の小銃は、一つの国が一つの銃を選び、何十年もそれを使い続けるのが普通だった。いまは、同じ部隊の中でも、建物の中で戦う者、車両に乗る者、遠くを狙う者で、求める銃の長さも弾も違う。そこでメーカーは、共通の本体に違う銃身や下半分を組み合わせて、ひとつの「家系」で何役もこなせるようにした。HK433は、その流れの中で「さらに、他社の銃に慣れた兵士まで取り込もう」とした銃だ。

ちなみに、日本の陸上自衛隊が選んだ20式小銃も、国産でありながらAR系に近い操作を多く取り入れている。世界の小銃が、操作の面ではAR-15の作法に寄っていく。その中でH&Kは、自社のG36の作法も捨てずに残そうとした。そこに、この会社のこだわりが見える。AR-15とM4そのものの違いはAR-15とM4の違い、世界の主力小銃の比べっこは世界最強アサルトライフルランキングにまとめている。

エアガンで「二つの魂」を味わう

HK433そのもののエアガンは、国内では手に入りにくい。それでも、HK433の元になった二つの銃は、どちらも東京マルイの次世代電動ガンで楽しめる。

G36の系統は、横に折れる銃床と上の槓桿が特徴のG36C。持ってみると、HK433の銃床がどこから来たのかがよく分かる。

もう一方のHK416系は、AR-15の操作そのものだ。弾倉ボタンの位置や安全装置の感触を確かめると、HK433が下半分を2種類用意した理由が実感できるはずだ。

両方を並べて、弾倉の外し方の違いを体で比べてみる。それが、HK433の設計思想をいちばん早く理解する方法かもしれない。

よくある質問

HK433とHK416の違いは?

HK416はAR-15の形と操作をそのまま持つ小銃で、HK433はそれにG36の特徴を組み合わせた小銃だ。HK433は横に折れる銃床や、G36式の弾倉着脱を選べる下半分を持つ点が大きく違う。

HK433とG36の違いは?

G36は機関部の多くが樹脂製だが、HK433は上半分がアルミの一体型になっている。また、HK433はAR式の操作も選べ、銃身の長さや口径を替えやすく作られている。

HK433はどこの軍が使っている?

5.56mmのHK433を制式小銃として大量採用した軍は、2026年10月時点ではない。派生型で.300ブラックアウト弾を使うHK437が、ドイツ連邦軍の特殊部隊に「G39」として採用されている。

HK437とは何?

HK433の仕組みのまま、.300ブラックアウト弾を使うようにした型だ。消音器との相性がよく、短い銃身でも力を保てるため、特殊部隊や警察の近接戦闘向けに使われている。

HK433はドイツ軍の次の制式小銃?

違う。ドイツ連邦軍の次の制式小銃は、同じH&KのHK416系に決まっている。HK433の派生型は、特殊部隊向けのG39として採用された。

HK433の弱点は?

ピストン方式と金属の一体型の上半分を持つぶん、同じくらいの銃身長のM4より少し重くなりやすい。また、選べる部品が多いことは、裏を返せば軍にとって「どの組み合わせで揃えるか」を決める手間が増えることでもある。さらに、新しい銃は実戦での実績が少なく、すでに世界中で使われているHK416やM4と比べると、軍が採用に慎重になりやすい。主力小銃としての大口採用がまだないのは、性能の問題というより、この「実績の壁」によるところが大きいと私は見ている。

まとめ|HK433は「移行の手間」を銃の側で引き受けようとした

HK433は、H&Kが自社の二つの家系、G36とHK416を一丁にまとめた小銃だ。作動はピストン、上半分はアルミ、下半分はAR式とG36式から選べ、銃床は折れて伸びる。すべては「どちらに慣れた兵士でも、訓練をやり直さずに使える」ためにある。

主力小銃としての大口採用はまだないが、派生型のHK437がドイツの特殊部隊と警察に居場所を見つけ、2026年には「MARS」として出直した。新しい小銃がうまくいくかどうかは、性能だけでなく、兵士の体に染みついた動きとどう付き合うかで決まる。HK433は、その難しい問題に、銃の設計で答えようとした一丁だと思う。銃の種類の全体像は銃の種類完全ガイドにまとめている。

最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。

出典・参考資料

表紙の写真素材:
写真・素材:Auge=mit/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)。背景・レイアウト・文字を編集。加工版:CC BY-SA 4.0

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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