自衛官の退職金はいくら?2000万超えも当たり前!計算方法・シミュレーション・自己都合の場合まで完全解説【2025年最新版】

「自衛官の退職金ってどれくらいもらえるの?」

この疑問を持つ現役自衛官やそのご家族、そしてこれから自衛隊への入隊を検討している人は非常に多い。結論から言おう。定年まで勤め上げた自衛官が受け取れる退職金は、退職手当と若年給付金を合わせると約2,000万円〜3,000万円に達する。これは民間の大手企業と比較しても遜色ない、いやそれ以上と言っていい水準だ。

しかし、この「2000万円超え」という数字には複雑な計算式と制度が絡んでいる。階級、勤続年数、退職理由によって金額は大きく変わってくる。特に自己都合退職の場合は支給率が割り引かれ、調整額ももらえないケースが多い。

本記事では、自衛官の退職金制度を徹底的に解説する。計算方法はもちろん、階級別・勤続年数別のシミュレーション、若年給付金の仕組み、そして2025年12月に成立した給与改正法による最新の変更点まで網羅した。この記事を読めば、あなた自身またはご家族の退職金がいくらになるのか、かなり正確に把握できるはずだ。


目次

自衛官の退職金制度の概要|なぜ民間より手厚いのか

自衛官の退職金制度を理解するには、まず自衛隊という組織の特殊性を知る必要がある。

自衛官は国家公務員だが、その職務の性質上「精強性」が求められる。災害派遣、国の防衛、国際平和協力活動といった任務を遂行するためには、肉体的にも精神的にも充実した状態でなければならない。そのため、自衛官には「若年定年制」が採用されており、一般的な公務員や民間企業の社員よりも早く定年を迎える。

現在の定年年齢は階級によって異なり、最も多い曹クラスで55歳前後。将官でも60歳だ。つまり、50代半ばで退職を余儀なくされるわけだが、年金の受給開始は原則65歳から。この「空白の約10年」をどう生きるかが、自衛官の人生設計における最大の課題となる。

この課題に対応するため、自衛官には退職手当に加えて「若年定年退職者給付金」という独自の制度が設けられている。退職手当と若年給付金、この二本柱が自衛官の退職後の生活を支えているのだ。


自衛官が退職時に受け取れるお金の種類

自衛官が退職時に受け取れるお金は、主に以下の3種類に分けられる。

(1)退職手当(退職金) 国家公務員退職手当法に基づいて計算される、いわゆる「退職金」だ。基本給(俸給月額)と勤続年数、退職理由によって金額が決まる。定年退職の場合、勤続35年で約2,000万円〜2,500万円程度になることが多い。

(2)若年定年退職者給付金 若年定年制で退職する勤続20年以上の自衛官に支給される政策的給付金だ。自衛官の定年年齢と60歳との差1年につき、退職時俸給月額の6か月分を支給することを基本としている。さらに、2023年度からは60歳以降65歳までの期間についても、1年につき俸給月額の3.45か月分が支給されるようになった。若年給付金だけで約1,000万円〜1,450万円にもなる。

(3)任期満了金(任期制自衛官の場合) 自衛官候補生などの任期制自衛官が任期満了で退職した際に支給される特例退職手当だ。1任期目で約58万円〜約137万円、2任期目以降で約144万円〜約203万円が支給される。


退職金の計算方法|基本額と調整額の二段構え

自衛官の退職手当は「国家公務員退職手当法」に基づいて計算される。基本的な計算式は以下の通りだ。

退職手当 = 基本額(退職月の俸給月額 × 支給率)+ 調整額

それぞれの要素を詳しく見ていこう。

(1)俸給月額 退職月に受けていた基本給のこと。自衛官の俸給は階級と号俸によって決まる。2025年12月に成立した給与改正法により、令和7年4月1日に遡って全号俸の俸給月額が引き上げられることになった。例えば2士(高校新卒)は224,600円から239,500円へ、約6.6%の引き上げだ。

(2)支給率 勤続年数と退職理由によって決まる係数だ。定年退職や任期満了の場合と、自己都合退職の場合では支給率が異なる。勤続年数が長いほど支給率は高くなり、35年勤続の定年退職で約49.59となる。

(3)調整額 25年以上勤続した自衛官に支給される追加の金額だ。在職期間中の階級に応じて月額単価が決まり、それを60か月分まで合算する。最高で約100万円〜300万円程度加算される。


支給率一覧|退職理由別・勤続年数別

支給率は退職金の金額を大きく左右する重要な要素だ。以下に主な勤続年数別の支給率を示す。

定年・任期満了・整理退職の場合: 勤続20年で約25.56、勤続25年で約34.58、勤続30年で約42.41、勤続35年で約49.59となる。

自己都合退職の場合: 勤続20年で約19.67、勤続25年で約28.04、勤続30年で約35.18、勤続35年で約42.12となる。

注目すべきは、自己都合退職の場合は定年退職と比べて支給率が約2〜3割も低くなることだ。勤続35年で比較すると、定年退職の49.59に対して自己都合は42.12。この差は俸給月額40万円の場合、約300万円もの差額になる。さらに自己都合退職では調整額も支給されないケースが多いため、実際の差はさらに大きくなる。


階級別・勤続年数別 退職金シミュレーション

それでは、具体的な計算例を見ていこう。以下は定年退職した場合のシミュレーションだ。

シミュレーション1:1曹(勤続32年、俸給月額40万円、定年55歳) 基本額 = 40万円 × 49.59 = 19,836,000円 調整額 = 27,100円 × 36か月 + 21,700円 × 24か月 = 975,600円 + 520,800円 = 1,496,400円 退職手当合計 = 約2,133万円

このケースでは、さらに若年給付金が約1,000万円以上支給される。退職手当と合わせると、約3,100万円を手にすることになる。

シミュレーション2:3佐(勤続35年、俸給月額50万円、定年57歳) 基本額 = 50万円 × 49.59 = 24,795,000円 調整額 = 約150万円 退職手当合計 = 約2,630万円

若年給付金を含めると、約3,500万円程度になる可能性がある。

シミュレーション3:2曹(勤続28年、俸給月額35万円、定年55歳) 基本額 = 35万円 × 41.62 = 14,567,000円 調整額 = 約80万円 退職手当合計 = 約1,530万円

若年給付金を含めると、約2,400万円〜2,700万円程度になる。


若年定年退職者給付金の詳細|退職金とは別に最大1,450万円

若年給付金は、自衛官の退職制度の中でも特筆すべき制度だ。若年定年制から生ずる金銭的不利益を補うために設けられた政策的給付であり、勤続20年以上で定年退職した自衛官に支給される。

計算式は以下の通りだ。

若年給付金 = 俸給月額 × 算定基礎期間 × 算定割合 × 政令率

算定基礎期間とは、自衛官の定年年齢と60歳との差の年数だ。例えば55歳定年なら5年、57歳定年なら3年となる。

算定割合は1年につき6か月分を基本としている。つまり、55歳定年の場合は俸給月額の30か月分(6か月×5年)を基本に計算される。

さらに、2023年度からは一般の国家公務員の定年引上げを踏まえて、60歳以降65歳までの5年間についても、1年につき俸給月額の3.45か月分が支給されるようになった。

具体例を見てみよう。55歳定年、俸給月額40万円の1曹の場合: 60歳までの分 = 40万円 × 5年 × 6か月 × 政令率 = 約650万円 61歳〜65歳の分 = 40万円 × 5年 × 3.45か月 × 政令率 = 約560万円 合計 = 約1,210万円

ただし、若年給付金には注意点がある。退職後の再就職先での収入が多い場合、給付金の一部または全部を返納する必要がある。これは若年給付金があくまで「早期退職による収入減少を補填する」ための給付だからだ。具体的には、退職翌年の所得が自衛官として勤務を続けていた場合の年収相当額を超えると、支給調整の対象になる。

若年給付金の支給時期も独特だ。第1回目は退職後最初の4月または10月に支給され、第2回目は退職の翌々年の8月に支給される。第1回目は全体の約3分の1、第2回目が約3分の2という配分になっている。


自己都合退職の場合|支給率の割引と調整額の不支給

「やむを得ない事情で定年前に退職したい」という自衛官も少なくないだろう。自己都合退職の場合、退職金はどうなるのか。

結論から言うと、自己都合退職の退職金は定年退職に比べて大幅に少なくなる。その理由は主に2つだ。

第一に、支給率が割り引かれる。先述の通り、勤続35年の場合、定年退職の支給率49.59に対して自己都合は42.12。約15%も低くなる。

第二に、調整額が支給されないケースが多い。調整額は25年以上の勤続が必要なうえ、自己都合退職の場合は支給されないことがほとんどだ。

シミュレーション4:1曹が勤続20年で自己都合退職した場合(俸給月額35万円) 基本額 = 35万円 × 19.67 = 6,884,500円 調整額 = なし 退職手当合計 = 約689万円

同じ1曹が定年まで勤め上げた場合の約2,133万円と比較すると、1,400万円以上もの差がつく。さらに自己都合退職では若年給付金も支給されないため、定年退職との総額の差は2,400万円以上にもなる。

この現実を見れば、自衛官が「あと数年で定年だから」と踏ん張る気持ちは十分に理解できる。しかし、人生は何が起こるかわからない。家庭の事情や健康上の理由で、どうしても退職せざるを得ない状況に陥ることもあるだろう。そのときのために、早いうちから退職金のシミュレーションと将来設計を立てておくことが重要だ。


任期制自衛官(自衛官候補生)の任期満了金

任期制自衛官、いわゆる自衛官候補生の退職金制度は、一般の自衛官とは異なる。任期制では、任期が満了するごとに「任期満了金」(特例退職手当)が支給される。

陸上自衛官(任期2年)の任期満了金
1任期目 = 約58万円
2任期目以降 = 約144万円

海上・航空自衛官(任期3年)の任期満了金
1任期目 = 約137万円
2任期目以降 = 約203万円

海上・航空自衛官の任期満了金が多いのは、任期が1年長い(3年 vs 2年)ためだ。

ここで重要な注意点がある。任期制の期間は、将来の退職金を計算する際の勤続年数に含まれない。つまり、任期制を2任期(4〜6年)勤めた後に非任期制(曹以上)に移行した場合、曹に昇任してからの年数だけが退職金の勤続年数としてカウントされる。

例えば、自衛官候補生として2任期4年を勤めた後、3曹に昇任して30年勤続した場合、退職金の計算に使われる勤続年数は30年であり、34年ではない。任期制で受け取った任期満了金は、いわば退職金の「前払い」のようなものだと考えることもできる。


退職金にかかる税金|退職所得控除で大幅減税

「何千万円もの退職金をもらったら、税金でかなり持っていかれるのでは」と心配する人もいるだろう。確かに退職金も所得であり、所得税と住民税の対象にはなる。

しかし、退職金には「退職所得控除」という大きな税制優遇がある。勤続年数20年以下の場合は40万円×勤続年数、20年超の場合は800万円+70万円×(勤続年数−20年)が控除される。

例えば勤続35年の場合: 退職所得控除 = 800万円 + 70万円 × 15年 = 1,850万円

さらに、退職所得控除を差し引いた後の金額を2分の1にした額が課税対象となる。

退職金2,500万円、勤続35年の場合の課税所得: (2,500万円 − 1,850万円)× 1/2 = 325万円

この325万円に対して所得税・住民税がかかるため、実際の税負担は思ったほど大きくない。多くの場合、退職金2,000万円〜3,000万円に対して、税金は100万円〜200万円程度に収まることが多い。

なお、任期満了金については受け取り時に税金が天引きされているため、原則として確定申告は不要だ。


2025年12月 給与改正法の成立|何が変わったのか

2025年12月16日、防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律が成立した。この改正法による主な変更点を解説する。

(1)俸給月額の引上げ 民間給与との較差を解消するため、全号俸の俸給月額が引き上げられた。令和7年4月1日に遡って適用される。主な引上げ額は以下の通りだ。

2士(高校新卒):224,600円 → 239,500円(+14,900円・6.6%)
自衛官候補生:179,000円 → 190,500円(+11,500円・6.4%)
防大・防医大の学生:151,300円 → 161,000円(+9,700円・6.4%)
陸自高等工科学校生徒:138,000円 → 147,700円(+9,700円・7.0%)

(2)ボーナスの引上げ 一般隊員のボーナスは年間4.60月分から4.65月分へ、学生・生徒等は年間3.45月分から3.50月分へ引き上げられた。

(3)本府省業務調整手当の拡充 支給対象職員の拡大が行われた。

これらの改正により、退職金の計算基礎となる俸給月額が上昇するため、今後退職する自衛官の退職金もその分増加することになる。


定年年齢の引上げ動向|2032年までにさらに2歳延長へ

自衛官の定年年齢は近年段階的に引き上げられている。令和5年10月に1尉から1曹の定年が1年引き上げられ、令和6年10月には1佐から3佐、2曹・3曹の定年が1年引き上げられた。

そして2025年6月、政府は自衛官の定年を2028年から2032年にかけて、各階級でさらに2歳ずつ引き上げる方針を決定した。将・将補は現行の60歳から62歳に、1佐は58歳から60歳に延長される。

定年延長は自衛官にとって以下のメリットがある。
・生涯賃金の増加(数百万円〜1,000万円以上)
・退職金の増加(勤続年数増により支給率上昇)
・若年給付金の算定基礎期間短縮(60歳との差が縮まる)
・再就職までの空白期間短縮

一方で、組織の新陳代謝が遅れる、若手の昇進ポストが詰まるといったデメリットも指摘されている。


自衛官の退職後を見据えて|今からやるべきこと

退職金の金額を把握したら、次に考えるべきは「そのお金をどう活用するか」だ。

自衛官は50代半ばで退職しても、年金受給開始の65歳まで約10年間の空白期間がある。若年給付金があるとはいえ、この期間の生活設計は重要だ。

具体的にやるべきことを挙げよう。

第一に、退職金と若年給付金の使い道を計画すること。住宅ローンの返済、子どもの教育費、老後資金の確保など、優先順位をつけて配分を決めておく。

第二に、再就職の準備を早めに始めること。防衛省は「就職援護施策」として職業訓練や再就職支援を行っているが、それだけに頼らず自分でも資格取得やスキルアップに取り組むべきだ。自衛隊での経験を活かせる警備業、運輸業、危機管理コンサルタントなどが人気の転職先だ。

第三に、資産運用の知識を身につけること。数千万円の退職金を普通預金に眠らせておくのはもったいない。つみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用した長期投資を検討すべきだ。


まとめ|日本の国防を担う者への正当な報酬

自衛官の退職金制度は、国の最前線で国防を担う者への正当な報酬として設計されている。定年まで勤め上げれば、退職手当と若年給付金を合わせて2,000万円〜3,000万円以上を受け取ることができる。これは決して「もらいすぎ」ではない。

自衛官は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務める」と服務の宣誓を行う。災害派遣、PKO、有事の際には文字通り命をかけて国民を守る。その覚悟に対する報酬として、退職後の生活保障は十分でなければならない。

2025年の給与改正法や今後の定年延長により、自衛官の処遇は着実に改善されつつある。しかし、それでも現在約2万人もの人員不足を抱える自衛隊。厳しさを増す安全保障環境の中で、人材確保は防衛省にとって至上命題だ。

本記事を読んでくださった現役自衛官、そしてこれから自衛隊を目指す若者の皆さん。ぜひ退職金制度を正しく理解し、計画的な人生設計を立てていただきたい。そして何より、国防という崇高な使命を全うされることを心から願っている。


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