掃海艇と掃海艦の違い|「艇」と「艦」を分けるのは大きさと海の深さ──木とプラスチックの船体、掃海と掃討、海自の機雷戦をまるごと整理

掃海艇と掃海艦|海の機雷を取り除く仕事

海上自衛隊には、「掃海艇」と「掃海艦」という、一字違いの船がある。どちらも海に沈められた機雷を取り除く船だが、名前が違う以上、どこかが違う。

結論から言うと、二つを分けているのは、主に船の大きさと、相手にする海の深さだ。掃海艇は港や湾の近くの比較的浅い海で働く小さめの船、掃海艦は沖合の深い海の機雷にも立ち向かえる大きめの船だ。やっていることの種類が違うわけではない。

この二つの船には、もう一つ、軍艦らしからぬ共通点がある。船体が鉄ではないのだ。長いあいだ木で造られ、今は強化プラスチックで造られている。鉄の塊である機雷に近づく船が、鉄を使えない。私はこの逆説に、機雷という兵器の厄介さが凝縮されていると思う。

この記事では、掃海艇と掃海艦の違いを、呼び方・船体の素材・装備と任務の三つから整理する。そのうえで、機雷を処分する二つのやり方「掃海」と「掃討」の違いや、日本の掃海部隊が太平洋戦争の後始末から始まった歴史にも触れる。ホルムズ海峡への派遣の可否や、原油への影響は、それぞれの記事に任せることにする。

この記事のポイント
目次

結論|「艇」と「艦」を分けるもの

まず、海上自衛隊の掃海艇と掃海艦の違いを表にまとめる。

海上自衛隊では、大きな船を「艦」、小さな船を「艇」と呼び分けている。護衛艦や潜水艦は「艦」、ミサイル艇は「艇」だ。掃海の船も同じで、大きくて外洋に出られるものが掃海艦、小さくて沿岸向けのものが掃海艇になる。

ここで注意したいのは、掃海艇も掃海艦も、機雷を処分するやり方そのものは基本的に同じだということだ。違うのは、どの深さの海の、どんな機雷まで相手にできるか、そしてどれだけ沖合に長くとどまれるかだ。

海上自衛隊の公式主要要目を、艦級ごとに整理。
艦名の「艦・艇」だけでなく、設計上の任務と艦級を確かめたい。 図を拡大する

そもそも機雷とはどんな兵器か

掃海の船の話をする前に、相手である機雷そのものを押さえておきたい。機雷は、海に仕掛けておいて、近づいた船を沈める兵器だ。陸の地雷の海版と考えると分かりやすい。

種類 仕掛け方 特徴
係維機雷 重りで海底につなぎ、鎖や索で水中に浮かせる 古くからある形。ぶつかったり、近づいたりすると爆発する
沈底機雷 海底にそのまま沈める 浅い海で使う。船の磁気や音、水圧に反応するものが多い
浮遊機雷 海面や海中を漂わせる 流れに乗って動くので、どこに行くか分からない

機雷の怖さは、安くて、見えなくて、まいた側ですら全部の場所を把握しきれないことにある。軍艦とは比べものにならないほど安い機雷が、何百億円もする軍艦や、何万トンもの石油を積んだタンカーを止めてしまう。しかも、「機雷がまかれたかもしれない」という噂だけで、船は海峡に近づけなくなる。

私は機雷を「いちばん割の合う兵器」であり、同時に「いちばん後始末の悪い兵器」だと思っている。まくのは一瞬でも、取り除くには何年も、時には何十年もかかる。日本の海がそれを身をもって知っていることは、あとで歴史の節で触れる。太平洋戦争で日本の海上輸送がどう絞め上げられたかは、日本軍の兵站はなぜ崩壊したのかでも書いている。

なぜ鉄を使わないのか|木とプラスチックの船

機雷は「船の気配」で爆発する

機雷には、船がぶつかって爆発するものだけでなく、船が近くを通るだけで爆発するものがある。船が出す磁気、エンジンやスクリューの音、船が通るときの水の圧力の変化。こうした「船の気配」を感じ取って爆発する機雷を、感応機雷と呼ぶ。

横須賀港の掃海艇「えのしま」(MSC-604)。
横須賀港の掃海艇「えのしま」(MSC-604)。
写真:Saigen Jiro/出典(CC0)

鉄でできた船は、大きな磁石のようなものだ。地球の磁気を乱しながら進むので、磁気に反応する機雷にとっては格好の目印になる。機雷を取り除きに行った船が、自分の磁気で機雷を爆発させてしまっては話にならない。

木の船から、強化プラスチックの船へ

そこで掃海の船は、船体に鉄を使わない。長いあいだ使われてきたのが木だ。日本の掃海艇は、戦後ずっと木で造られてきた。ひらしま型やすがしま型は、今でも木造の掃海艇だ。

ただ、木の船は手入れが大変で、長く使うと傷みやすい。そこで海自は、えのしま型の掃海艇から、船体を繊維強化プラスチック(FRP)で造るようになった。軽くて丈夫で、腐らない。掃海艦のあわじ型も、このFRPの船体だ。

鉄を使わないのは船体だけではない。エンジンも磁気の少ないものを選び、乗員は私物の持ち込みにまで気をつかうという。機雷と向き合う船は、船体から持ち物まで、徹底して「気配」を消している。

機雷を片付ける二つのやり方|掃海と掃討

掃海艇・掃海艦の違いとは別に、機雷の処分には二つのやり方がある。この二つを混同すると話がややこしくなるので、ここで整理しておく。

項目 掃海 掃討
考え方 広い範囲をまとめて片付ける 一つずつ見つけて壊す
係維機雷への方法 機雷を海底につなぐ鎖や索を切って浮かせ、処分する ソナーで見つけ、個別に処分する
感応機雷への方法 磁気や音を出す装置を引っ張り、機雷に「船が来た」と思わせて爆発させる ソナーで見つけ、水中無人機や水中処分員が処分する
強み 広い範囲を一度に片付けられる 確実で、取りこぼしが少ない
弱み 賢い機雷はだまされにくい 時間がかかる
掃海と掃討の違いを、働きかけ方で対比した図
掃海は掃海具などを用い、掃討は個々の機雷を探して識別・処分する。 図を拡大する

掃海は、言ってみれば「網でまとめてさらう」やり方だ。掃討は「一つずつ目で見て取り除く」やり方だ。最近の機雷は、船の気配をより細かく見分けるようになり、だましてまとめて爆発させるのが難しくなってきた。そのため、ソナーで一つずつ見つけて確実に壊す掃討の比重が大きくなっている。

掃討で機雷を探すのに使うのが、水中の音で物を見つけるソナーだ。ソナーの仕組みはソナーの解説で書いた。

装備と任務|あわじ型を例に

深い海の機雷に、無人機で挑む

掃海艦のあわじ型を例に、今の掃海の船の装備を見てみる。全長は67m。船体はFRPで、機関砲やレーダーのほか、機雷を探すためのソナー、水中を自分で動き回って機雷を探す水中無人機などを積んでいる。

海上自衛隊の掃海艦「あわじ」(MSO-304)。
海上自衛隊の掃海艦「あわじ」(MSO-304)。
写真:Yokohama1998/出典(CC BY-SA 4.0)

あわじ型に続く新しい掃海艦では、深さを変えて海中に下ろせるソナー、機雷を捜索する水中無人機、そして機雷のそばまで自分で進んでいって爆発させる処分用の弾薬などを積むとされる。人が機雷原に入っていく時代から、無人機を送り込む時代へと移りつつあるわけだ。

「掃海艦を減らす」から「増やす」へ

あわじ型は、1番艦あわじが2017年に就役し、4番艦のうみが2025年3月に就役した。2025年12月には新しい掃海艦けらまが進水し、さらにその次の艦の建造費も予算に計上されている。

一時は、機雷を処分する機能も持たせたもがみ型護衛艦の登場で、専門の掃海艦艇は減らしていく方向とも見られていた。ところが、2022年末の防衛力整備計画では、無人の装備を操る掃海艦艇を増やす方針が示された。もがみ型についてはもがみ型護衛艦の解説で書いている。

私は、ここに機雷戦の本質があると思う。もがみ型は鋼鉄の船体を持つ大きな護衛艦で、無人機を送り出すことはできても、自分が機雷原に深く入っていくのには向かない。最後の最後に、機雷のすぐそばまで行って確かめる仕事は、やはり鉄を使わない専用の船にしかできない。無人機の時代になっても、木やプラスチックの船の出番は消えていないのだ。

新しい部隊の形

2025年度の末、海上自衛隊は大きく組織を改めた。護衛艦隊と掃海隊群を一つにまとめて水上艦隊を新しく作り、掃海艦は上陸作戦と機雷戦を担う部隊に入ることになった。掃海の船は、もはや後方の地味な裏方ではなく、海の戦いの最前線の一部として位置づけられている。海自の艦艇の全体像は海上自衛隊の艦艇一覧にまとめている。

歴史で見る|日本の掃海は「戦争の後始末」から始まった

アメリカがまいた機雷

日本の掃海部隊の歴史は、太平洋戦争の終わりから始まる。戦争の末期、アメリカは日本の港や海峡に、爆撃機や潜水艦から大量の機雷をまいた。日本の海の輸送を絞め上げるためだ。

その多くは、戦争が終わっても海に残った。港の入り口や航路に機雷が残っていては、戦後の復興に必要な船が通れない。この機雷を片付けたのが、旧日本海軍の軍人たちで作られた掃海部隊だった。戦争が終わったあとの海で、多くの犠牲を出しながら、航路を一本ずつ開いていった。

この部隊は、のちの海上保安庁を経て、海上自衛隊へとつながっていく。日本の掃海の技術は、旧海軍の人々が戦後の海で積み上げた経験の上にある。私は、海自の掃海部隊を「旧海軍が残した、いちばん長く続いている仕事」だと思っている。

戦争は、まだ終わっていない

驚くことに、その後始末は今も続いている。日本の海では、今でも太平洋戦争の機雷が見つかることがあり、海自の掃海部隊がそれを処分している。80年以上前の戦争の「実戦」を、令和の今も続けている部隊がある。私はこの事実に触れるたびに、戦争というものの尾の長さを思い知らされる。

1991年、初めての海外任務

海上自衛隊として、その技術を初めて海外で発揮したのが1991年だ。湾岸戦争のあと、イラクがペルシャ湾にまいた機雷を処分するため、海上自衛隊は掃海母艦はやせ、木造の掃海艇4隻、補給艦ときわなどを派遣した。6月から9月まで掃海作業を行い、34個の機雷を処分した。500人を超える隊員に、犠牲者は一人も出なかった。

これが、海上自衛隊にとって初めての本格的な海外での実任務だった。戦後の海で積み上げた掃海の技術が、世界の海で認められた瞬間でもあった。ホルムズ海峡の機雷をめぐる今の議論は、自衛隊のホルムズ海峡派遣の解説とホルムズ海峡の機雷と日本への影響にまとめている。

掃海艦艇の仲間たち

掃海艇・掃海艦のほかにも、機雷戦に関わる船や装備がある。

種類 どんな役割か
掃海母艦 掃海部隊の旗艦。掃海艇への補給や指揮をし、自らも機雷をまくことができる
掃海ヘリコプター 空から掃海の装置を引っ張る。広い範囲を速く片付けられる
もがみ型護衛艦 無人の装備を使って、機雷の処分にも加われる多機能な護衛艦

機雷戦は、一隻の船だけで完結する仕事ではない。母艦、掃海艦艇、無人機、そして水中処分員という人の手。それぞれの持ち場を組み合わせて、ようやく一つの海が安全になる。

本と模型で海自の機雷戦を知る

掃海艇や掃海艦を含めて、海上自衛隊の艦艇を一冊で見渡すなら、この増刊号がいい。艦型ごとの写真と解説で、掃海艇と掃海艦の大きさや形の違いも確かめられる。

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模型なら、機雷の処分にも加われる新しい護衛艦、もがみ型がある。後ろの甲板から無人の装備を送り出す姿を想像しながら組むと、これからの機雷戦の形が見えてくる。

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投資家目線|掃海の船を造れる造船所は限られる

FRPの船体で、しかも磁気を徹底して抑えた掃海艦艇を造れる造船所は限られている。あわじ型やけらまを造っているのはJMUの鶴見の工場だ。特殊な技術が必要なぶん、一度担い手になれば仕事は続くが、建造の間隔が空くと工場の仕事が途切れる難しさもある。JMUの防衛事業についてはJMUの防衛事業の解説にまとめている。

※この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではない。株価や業績は変動し、元本割れの可能性もある。投資判断は自己責任で。

よくある質問

掃海艇と掃海艦の違いを一言で言うと?

大きさと、活動する海の違いだ。掃海艇は沿岸の比較的浅い海、掃海艦は沖合の深い海まで対応する。機雷を処分するやり方は基本的に同じだ。

なぜ掃海艇は木でできているの?

磁気に反応する機雷を爆発させないためだ。鉄の船は磁気を出すので、機雷に近づく掃海の船には向かない。今は、木より丈夫で腐らない強化プラスチックが使われている。

掃海と掃討は何が違う?

掃海は、広い範囲の機雷をまとめて片付けるやり方。掃討は、ソナーで機雷を一つずつ見つけて壊すやり方だ。最近は、確実な掃討の比重が大きくなっている。

日本の掃海の能力は高いの?

太平洋戦争のあとの機雷処分から始まった長い経験があり、世界でも高い水準にあるとされる。1991年のペルシャ湾派遣では、犠牲者を出さずに任務を終えた。

機雷の処分は危険ではないの?

危険と隣り合わせの仕事だ。だからこそ、船体に鉄を使わず、船から離れた場所で処分できる装置を引っ張り、最近は水中無人機や処分用の弾薬に任せて、人が機雷に直接近づく場面を減らしてきた。それでも最後に確かめるのは人の目と手で、水中処分員と呼ばれる潜水の専門家が、今も機雷のそばまで潜っていく。

掃海艦艇はこれから減るの?

一時は減らす方向とも見られたが、2022年末の防衛力整備計画で、無人の装備を操る掃海艦艇を増やす方針が示された。新しい掃海艦の建造も続いている。

まとめ|鉄を捨てた船が、鉄の機雷に挑む

掃海艇と掃海艦を分けるのは、主に船の大きさと、活動する海の深さだ。掃海艇は沿岸の比較的浅い海で、掃海艦は沖合の深い海まで、機雷に立ち向かう。どちらも、磁気に反応する機雷を避けるため、船体に鉄を使わない。木から強化プラスチックへと素材は変わったが、「気配を消して機雷に近づく」という考え方は変わらない。

そして、海上自衛隊につながる戦後の掃海部隊は、太平洋戦争の後始末を担い、ペルシャ湾で世界に認められ、今は無人機を操る新しい時代に入りつつある。それでも、戦争が残した機雷を片付ける仕事は、今も日本の海で続いている。次に港で小さな灰色の船を見かけたら、それが木やプラスチックでできた、戦争の後始末を続ける船かもしれないと思い出してみてほしい。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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