『幼女戦記Ⅱ』をきっかけに、久しぶりに作品に戻ってきた人も多いと思う。11月5日からはNetflixでも2期の配信が始まる。ところが、いざ2期を見始めると、こうなりがちだ。いま帝国はどこの国と戦っているんだっけ。共和国は負けたんじゃなかったか。連邦はいつから敵になったのか。
この記事は、そういう人のための年表だ。統一暦1923年の開戦から2期の東部戦線まで、いつ、何が変わったのかを順番に並べる。1期の話数がどの時期に当たるのか、戦線がどう移っていったのか、そのときターニャは何歳でどこにいたのかも、まとめて確かめられるようにした。
国の位置やモデルについては『幼女戦記の国とモデル一覧』で「どこに何があるか」を整理した。こちらは「いつ、何が変わったか」の記事として読んでほしい。
ネタバレ範囲:1期と劇場版の内容、2期は公式あらすじの範囲まで。2期の終盤の結末には触れない。日付は原作小説の設定にもとづく目安で、アニメでは描写の順番が前後することがある。
- 戦争は統一暦1923年、北の協商連合がノルデン地方へ越境したことから始まり、すぐに西の共和国が加わって二正面戦争になった
- 戦線は「北と西」から「南東(ダキア)」、「南方大陸」、「東(連邦)」へと移っていく。帝国は勝つたびに、新しい戦線を抱え込んだ
- 1期は時系列順に放送されていない。1話のライン戦線より、2話のノルデンのほうが時期は前だ
- 作中の4年ほどの間に、史実の1914年から1943年ごろまでの出来事が詰め込まれている
早見表|幼女戦記の戦争年表
まず全体を一枚にまとめる。

日付は、原作の設定を整理した資料をもとにした目安だ。資料によって数日から数週間ずれるものは、月や季節でぼかしてある。
第1期|1923年、北と西の二正面戦争(1期2話〜4話)
公式のイントロダクションによれば、物語は統一暦1923年6月に始まる。士官学校の最終課程にいたターニャは、北方の哨戒線で研修中だった。そこで協商連合が国境を越え、帝国と協商連合は戦争状態に入る。観測任務中に敵の魔導師部隊の奇襲を受けたターニャは、単独で時間を稼ぎ、銀翼突撃章を受ける。1期2話で描かれるのがこの場面だ。このときターニャは9歳。

帝国が北に兵を回したところで、西の共和国が帝国領へ攻め込む。ここから始まるのがライン戦線だ。帝国は、北と西の二つの戦線を同時に抱えることになった。
ここで、1期を見返す人が引っかかりやすいところを先に書いておく。1期は時系列順に放送されていない。1話「ラインの悪魔」は、ライン戦線で戦うターニャと、新兵のヴィーシャの話から始まる。しかし時期としては、2話で描かれるノルデンの戦いのほうが前だ。2話で前世からノルデンまでをさかのぼり、3話でエレニウム九五式の開発やライン戦線への配属が描かれ、そこで1話の時期に追いつく。久しぶりに見返すなら、2話から見て、1話を3話のあとに挟むと流れがつかみやすい。
ライン戦線は、塹壕と砲撃と機関銃が支配する消耗戦だった。史実でいえば、1914年から1918年まで続いた第一次大戦の西部戦線だ。その消耗戦の象徴が、1916年のヴェルダンの戦いだった。
1924年、ターニャは前線の功績を認められて軍大学へ進み、そこでゼートゥーアと出会う。そして卒業後、新しい航空魔導大隊の編成を任される。これが第二〇三航空魔導大隊だ。1期3話から4話にかけての話になる。
第1期|1924年、南東のダキアと北の決着(1期5話〜7話)
1924年9月、南東のダキア大公国が帝国に攻め込む。原作の設定では9月24日、ちょうどターニャの11歳の誕生日だ。ダキアの大軍は、魔導師も空からの攻撃への備えも持っていなかった。結成されたばかりの第二〇三大隊は、ここで初陣を飾り、ダキアは短期間で敗れる。1期5話の話だ。
史実では、1916年にルーマニアが連合国側で参戦し、その年の12月には首都ブカレストを落とされている。ダキアのモデルはこのルーマニアだと見られている。
ダキアを片付けた大隊は、すぐ北へ回される。1924年11月にはノルデンで協商連合軍と戦い、12月にはオース・フィヨルドへの上陸作戦が行われる。1期6話から7話の話で、ここで協商連合の敗北は決定的になる。入り組んだフィヨルドでの上陸戦は、第一次大戦というより、1940年にドイツがノルウェーへ攻め込んだ戦いを思わせる。
この時点で、帝国の戦線は一度、整理される。北の協商連合はほぼ片付き、南東のダキアも倒れた。残るのは、西のライン戦線だけだ。
第1期|1925年、ライン戦線の決着と南方大陸(1期8話〜12話)
1925年、第二〇三大隊はライン戦線に呼び戻される。春には、ライン戦線の後方にあるアレーヌ市で、共和国軍と呼応した住民の蜂起が起きる。1期8話の話だ。
そして5月下旬、帝国は膠着したライン戦線を一気に動かす。わざと戦線を下げて共和国軍を引き込み、第二〇三大隊が高速ロケットのV-1に乗って敵の司令部を叩き、機甲部隊と機械化歩兵で包囲する。回転ドア作戦と衝撃と畏怖作戦だ。1期9話と10話で描かれる。
1925年の夏、帝国は共和国の首都に入り、ライン戦線の戦いは決着する。しかし共和国は降伏しきらなかった。ド・ルーゴ将軍は、内海の向こうの南方大陸、つまり植民地へ逃れ、自由共和国として抗戦を続ける。1期の最終話は、第二〇三大隊がこの南方大陸へ向かうところで終わる。
ここにも史実の影が濃い。首都を失っても、植民地を拠点に戦い続けるド・ルーゴは、1940年にフランスが降伏したあと「自由フランス」を率いたド・ゴールそのものだ。1940年のフランスの崩壊については『ダンケルク撤退作戦とは』でも書いている。南方大陸の帝国軍を率いるのはロメール将軍で、こちらは北アフリカで「砂漠の狐」と呼ばれたロンメルが元ネタだ(『エルヴィン・ロンメル将軍とは何者か』)。
さらに、それまで裏で共和国や協商連合を支えていた連合王国が、原作の設定では1925年11月、ついに帝国に宣戦布告する。帝国は西の大陸の戦争に勝った。しかし勝った瞬間から、海の向こうの島国と、南の大陸の戦争を抱え込むことになった。
劇場版|1926年、東の連邦が動く
劇場版は、南方大陸での戦いから始まる。南の戦いに区切りをつけた第二〇三大隊は、休暇どころか、東の国境の偵察に回される。そこで、連邦が帝国に宣戦布告したことを知る。原作の設定では統一暦1926年3月だ。
ターニャは、連邦の首都モスコーを空から直撃する作戦を提案し、成功させる。連邦が国内の魔導師を抑留して戦力から外していたことが、この奇襲を可能にした。その後、大隊は連邦軍に囲まれた鉄道の要所ティゲンホーフの救援に向かう。合州国の義勇兵として戦場に現れたメアリー・スーとの因縁も、ここから始まる。
戦いのあと、ターニャは後方での研究に回される。しかし、その研究を試すための部隊を任されることになる。それが、さまざまな兵科を組み合わせたサラマンダー戦闘団だ。原作の設定では1926年7月に結成される。この間の6月、ターニャは12歳で中佐に上がっている。階級の上がり方は『幼女戦記の階級一覧』で整理した。
史実で重ねるなら、ここは1941年だ。ただし向きが逆になっている。史実ではドイツがバルバロッサ作戦でソ連に攻め込んだが、作中では連邦のほうから帝国に宣戦布告する。
第2期|1926年秋〜1927年、東部戦線の消耗(2期1話〜9話)
2期の公式イントロダクションは、統一暦1926年秋から始まる。帝国に追い打ちをかけたのは「早すぎる連邦の冬」だった。
2期前半の流れを、公式あらすじで追うとこうなる。
| 話数 | 公式あらすじの要点 | 戦線 |
|---|---|---|
| 1話 | サラマンダー戦闘団が東部戦線へ | 東 |
| 2話 | 冬で補給が悪化し、補給線がゲリラの襲撃を受ける | 東 |
| 3話 | 連邦と連合王国が旧協商連合領で共同作戦。イルドアも動き出す | 北 |
| 4話 | 鉄槌作戦。イルドアの仲介で講和の機運 | 東 |
| 5話 | 講和の先送り。アンドロメダ計画 | 東 |
| 6〜7話 | ソルディム528陣地での包囲戦。アンドロメダ計画は頓挫 | 東 |
| 8話 | 南方大陸からの撤退。連合王国の海軍が待つ内海を突破 | 南方大陸・海 |
| 9話 | 協力を拒んだイルドアへの「表敬訪問」 | 南 |

ここで戦争の性格がはっきり変わる。1期の帝国は、目の前の敵を一つずつ倒していけばよかった。2期の帝国は、倒しても倒しても戦線が減らない。東の連邦は広く、冬は早く、補給線は長い。北では、片付いたはずの旧協商連合領に、連邦と連合王国が手を組んで戻ってくる。南では、撤退を手伝ってくれるはずの同盟国イルドアが、厳正中立を掲げて背を向ける。
4話で一度は講和の機運が生まれるが、5話で先送りされ、帝国は資源地帯への大攻勢アンドロメダ計画に賭ける。史実でいえば、1942年のドイツ軍の南方への大攻勢、ブラウ作戦に近い。その比較は『幼女戦記2期のアンドロメダ計画とは?』で書いた。東部戦線で戦う戦闘団の姿は『幼女戦記2期のサラマンダー戦闘団とは?』にまとめている。
そして、同盟国でありながら中立を盾に距離を取るイルドアは、史実のイタリアを思わせる。イタリアは1914年、ドイツやオーストリアと三国同盟を結んでいながら中立を宣言し、翌1915年には反対側の協商国について参戦した。第二次大戦でも、1943年に連合国と休戦している。
2期の終盤、10話から12話は、戦場よりも参謀本部の話になる。戦争をどう終わらせるかをめぐって、帝国の上層部が大きく動く。ここは結末に触れずには書けないので、見終わった人は『幼女戦記2期最終回を考察』を読んでほしい(ネタバレ注意)。
戦線の移り変わりを4枚の地図で見る
ここまでを、戦線の移り変わりとして整理し直すとこうなる。
| 時期 | 動いている戦線 | 片付いた戦線 | ターニャのいる場所 |
|---|---|---|---|
| 1923〜1924年 | 北(協商連合)、西(共和国) | なし | ノルデン、ライン、帝都の軍大学 |
| 1924年後半 | 北、西、南東(ダキア) | ダキア(短期間で終結) | ダキア、ノルデン、オース・フィヨルド |
| 1925年 | 西、南方大陸、海(連合王国) | 北(協商連合)、西(共和国本土) | ライン、アレーヌ、南方大陸 |
| 1926〜1927年 | 東(連邦)、北(旧協商連合領)、南方大陸、海 | なし(南方大陸は撤退) | モスコー、ティゲンホーフ、東部戦線 |

こうして並べると、帝国の戦争の形が見えてくる。帝国はいつも勝っている。北の協商連合を倒し、南東のダキアを倒し、西の共和国の首都を落とした。それなのに、戦線の数は減らない。一つ片付くたびに、別の場所に新しい戦線が開く。
これが、幼女戦記の戦争のいちばん怖いところだと私は思う。勝利は戦争を終わらせず、次の敵を呼び込む。なぜそうなるのかは『幼女戦記の帝国はなぜ勝っても苦しいのか』で詳しく書いた。
作中の4年は、史実の30年
最後に、作中の年表を史実と重ねてみる。
| 作中(統一暦) | 出来事 | 近い史実 |
|---|---|---|
| 1923年 | 北と西の二正面戦争が始まる | 1914年、第一次大戦の開戦 |
| 1923〜1925年 | ライン戦線の塹壕戦 | 1914〜1918年、西部戦線 |
| 1924年 | ダキアの参戦と敗北 | 1916年、ルーマニアの参戦と首都陥落 |
| 1924年 | オース・フィヨルド上陸作戦 | 1940年、ドイツのノルウェー侵攻 |
| 1925年 | 共和国の首都陥落と自由共和国 | 1940年、フランスの降伏と自由フランス |
| 1925〜1927年 | 南方大陸の戦い | 1941〜1943年、北アフリカ戦線 |
| 1926年 | 連邦の参戦と東部戦線 | 1941年、独ソ戦の開始 |
| 1927年 | アンドロメダ計画 | 1942年、ブラウ作戦 |
| 1927年 | 同盟国イルドアの中立と距離 | 1914年のイタリアの中立宣言、1943年の休戦 |
作中の時間は、統一暦1923年から1927年までの4年ほどしかない。その中に、史実の1914年から1943年まで、およそ30年分の出来事が詰め込まれている。第一次大戦の塹壕戦から始まって、気づけば第二次大戦の電撃戦と独ソ戦になっている。幼女戦記の戦争が息つく暇もなく感じられるのは、このためでもある。
年表を片手に見返すなら
2期はABEMAとdアニメストアが最速の配信先で、11月5日からはNetflixでの配信も始まる。配信の状況は時期によって変わるので、見る前に各サービスで確かめてほしい。1期を見返すなら、2話から始めて、3話のあとに1話を挟む順番がおすすめだ。
東條チカの漫画版は、劇場版の時期まで進んでいる。アニメでは駆け足になった、1期と劇場版のあいだの南方大陸の戦いも、漫画ならじっくり追える。
史実の側から年表を補うなら、二冊を挙げておく。ライン戦線の塹壕戦の空気を知るなら、第一次大戦の西部戦線を兵士の目で描いた『西部戦線異状なし』がいちばんだ。
2期の東部戦線のモデルになった独ソ戦の全体像をつかむなら、『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』が新書一冊でまとまっている。
よくある質問
幼女戦記の戦争はいつ始まった?
統一暦1923年だ。北の協商連合がノルデン地方へ越境したことがきっかけで、その直後に西の共和国も帝国へ攻め込み、二正面戦争になった。
1期の話数は時系列順?
違う。1話はライン戦線の話だが、時期としては2話のノルデンの戦いのほうが前だ。2話、3話、1話、4話の順に見ると流れがつかみやすい。
連邦はいつ参戦した?
原作の設定では統一暦1926年3月で、劇場版で描かれる。連邦のほうから帝国に宣戦布告し、ターニャたちは連邦の首都モスコーを空から襲撃する。
2期はいつの話?
公式のイントロダクションでは、統一暦1926年秋から始まる。東部戦線の冬から始まり、原作の設定では1927年の出来事まで進む。
ターニャは2期で何歳?
原作の設定では1913年9月24日生まれなので、2期が始まる1926年秋に13歳を迎える。中佐に上がったのは12歳のときだ。
まとめ|勝つたびに、戦線が増えていく
幼女戦記の戦争は、統一暦1923年の北の小さな越境から始まった。そこに西の共和国、南東のダキア、海の向こうの連合王国、東の連邦が次々に加わり、帝国は四方を敵に囲まれていく。
戦線の動きをまとめると、1期は「北と西」、劇場版から「東」、2期は「東を中心に、北と南と海にも広がった戦争」だ。帝国は戦場ではほとんど負けていない。それでも、一つの戦線を片付けるたびに、別の戦線が開く。年表を眺めると、その苦しさが一目で分かる。
2期を見返す前に、この年表で「いま帝国はどこと戦っているのか」を確かめておくと、戦闘の一つ一つの意味がずっと分かりやすくなるはずだ。
これで、幼女戦記特集の記事はひとまずそろった。最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。







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