ひゅうが型護衛艦とは|「空母ではない」と言われ続けた全通甲板艦が、2026年の大改編で2隻別々の旗艦になった──性能・3.11・F-35Bが載らない理由【2026年版】

ひゅうが型護衛艦とは
要点

1番艦ひゅうがは舞鶴で第3水上戦群の旗艦になった。護衛艦を十数隻束ねる、昔で言う護衛隊群の親玉だ。2番艦いせは佐世保で、新しくできた「水陸両用戦機雷戦群」の旗艦になった。輸送艦と掃海艦を率いて、陸自の水陸機動団と一緒に島を取り返す部隊だ。同じ図面から生まれた姉妹艦が、17年目にして「艦隊の顔」と「上陸部隊の顔」に分かれた。

ひゅうが型は2009年に就役したとき、「日本が空母を作った」と国内外で騒がれた艦だ。海自は「ヘリコプター搭載護衛艦です」と言い続けた。その後、もっと大きないずも型ができて本当にF-35Bが載るようになり、ひゅうが型は少し影が薄くなった。だが2026年、この2隻はまた海自の真ん中に戻ってきた。この記事では、その理由を性能と歴史から書いていく。

目次

一言でいうと、日本が初めて作った「平らな甲板の護衛艦」

ひゅうがを手前に見る全通甲板の護衛艦
ひゅうがを手前に見る全通甲板の護衛艦。
出典:海上自衛隊ホームページ
一言でいうと、日本が初めて作った「平らな甲板の護衛艦」

仕事は3つある。ひとつは対潜ヘリコプターを一度に何機も飛ばして、潜水艦を広い海域で狩ること。ふたつめは護衛隊群の旗艦として、艦隊全体の指揮通信を担うこと。みっつめは、災害や上陸作戦でヘリの基地になることだ。前の世代のはるな型は「ヘリを3機積んだ駆逐艦」だったが、ひゅうが型は「駆逐艦の武装を持ったヘリ空母」になった。ここが根本的に違う。

項目ひゅうが型
就役ひゅうが2009年3月、いせ2011年3月
基準排水量13,950トン(満載約19,000トン)
全長/全幅197m/33m
推進ガスタービン4基、2軸、30ノット
乗員約380名
搭載機通常SH-60K×3〜4、MCH-101×1(最大11機)
レーダーFCS-3(国産AESA)
兵装Mk41 VLS 16セル(ESSM、アスロック)、3連装短魚雷×2、CIWS×2
建造IHIマリンユナイテッド横浜(現JMU)
所属ひゅうが:舞鶴・第3水上戦群旗艦/いせ:佐世保・水陸両用戦機雷戦群旗艦

なぜこの形になったのか:3つの案から「全通甲板」を選んだ日

上空から見たひゅうが。甲板と艦橋の配置
上空から見たひゅうが。甲板と艦橋の配置。
出典:海上自衛隊ホームページ

ひゅうが型の設計には、日本の海軍が「空母」という言葉とどう付き合ってきたかが全部詰まっている。

2000年の中期防で、はるな型の後継として「指揮通信機能とヘリコプター運用能力を充実させた艦」が盛り込まれた。このとき防衛庁は3つの案を並べた。ひとつは従来通り、前に艦橋と砲、後ろにヘリ甲板を置く案。ふたつめは艦橋を真ん中に置いて、その前後にヘリ甲板を持たせる案。みっつめが、艦の端から端まで障害物のない全通甲板にする案だ。

選ばれたのは3つめだった。理由は単純で、ヘリを同時に何機も上げ下ろしするには平らな甲板が一番いいからだ。ただし、この案を選ぶということは「見た目が空母になる」ということでもあった。実際、進水したときの写真は世界中で「日本の空母」と報じられた。海自はそのたびに「固定翼機の運用はまったく考えていない」と説明した。エレベーターの大きさも、甲板の強度も、ヘリ用にしか作っていない。この「作れるのに作らない」線引きが、後のいずも型でようやく踏み越えられることになる。いずも型の話はいずも型の記事で書いた。

1番艦ひゅうがは2007年、当時の小池百合子防衛大臣によって命名された。旧海軍の戦艦日向以来の名前で、これも「戦艦の名前を護衛艦に付けるのか」と話題になった。ここは後で書く。

性能の見どころ:FCS-3と、艦首の大きなソナー

ひゅうがの艦橋と飛行甲板
ひゅうがの艦橋と飛行甲板。
出典:海上自衛隊ホームページ

ひゅうが型はヘリを運ぶだけの艦ではない。単艦でもかなり戦える。

まずレーダー。FCS-3は日本が初めて実用化した艦載のアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーで、艦橋の四面に固定された。捜索用と射撃用の2種類のアンテナを組み合わせ、ESSM対空ミサイルを誘導する。イージス艦のSPY-1と同じ思想を国産でやった、日本の防空レーダーの原点だ。この後、あきづき型のFCS-3A、もがみ型のOPY-2へと血が続いていく。レーダーを作ったのは三菱電機で、同社の防衛事業は三菱電機の防衛事業の記事にまとめた。

次にソナー。艦首に海自最大級の大型ソナーを積んでいて、ヘリの吊下ソナーと組み合わせて潜水艦を追い詰める。海自は対潜戦の艦隊で、その中心にいるDDHが自分でも聞き耳を立てているのは理にかなっている。あさひ型SH-60K・SH-60Lと組んで潜水艦を狩るのが本来の仕事だ。

そしてMk41垂直発射装置が16セル。ESSMを4発ずつ詰めた対空セルと、アスロック対潜ロケットのセルに分かれている。空母は自衛用の短距離ミサイルしか持たないのが普通で、ひゅうが型はその点で「護衛艦」の名前に嘘がない。艦の中には旗艦用の司令部区画と、集中治療室まである医務室、それに大きな入浴設備がある。この風呂が後で役に立つ。

3.11とオスプレイ:この艦が「役に立つ」と証明された日

2011年3月11日、ひゅうがは横須賀で年次検査中だった。検査を打ち切って、16日には三陸沖に出た。SH-60Kを4機使って孤立した集落に物資を運び、艦内の風呂を被災者に開放した。全通甲板から何機ものヘリが同時に飛び立つ姿は、この艦がなぜ平らな甲板を選んだのかを、言葉より先に国民に見せた。

2013年6月、アメリカ西海岸の演習ドーン・ブリッツで、米海兵隊のMV-22オスプレイがひゅうがの甲板に降りた。日本の艦にオスプレイが着艦した最初の例だ。同じ年の11月、いせはフィリピン台風の救援で輸送艦おおすみ、補給艦とわだと一緒にレイテ湾へ向かい、ヘリで物資を運んだ。2023年9月には陸自のオスプレイがいせで発着艦訓練をやっている。オスプレイを運用できる海自の艦は、いずも型、ひゅうが型、おおすみ型の三つだけだ。

その後のいせの履歴を見ると面白い。2019年のタリスマン・セイバーではオーストラリアで水陸機動団と一緒に着上陸訓練をやり、2021年には英空母クイーン・エリザベス、米空母ロナルド・レーガン、カール・ヴィンソンと並んで太平洋を走った。2026年2月から3月のアイアン・フィストでは、またおおすみと組んで上陸訓練をやった。いせは10年前から、少しずつ「上陸部隊の艦」になっていた。

2026年3月の大改編:2隻が別々の旗艦になった意味

ひゅうが型2番艦いせの側面
ひゅうが型2番艦いせの側面。
出典:海上自衛隊ホームページ

冒頭に戻る。

海自は4つあった護衛隊群を3つの水上戦群に集約した。護衛隊群は8隻編成だったが、水上戦群は12から13隻になる。1つの群に艦を多く持たせて、整備と訓練と展開を回しながら、常に動ける艦を確保するためだ。その3つの水上戦群の旗艦は、横須賀がいずも、呉がかが、舞鶴がひゅうが。いずも型2隻がF-35Bの空母に変わっていく中で、ひゅうがだけがヘリ空母のまま艦隊の旗艦を続ける。

そして佐世保に新しくできた水陸両用戦機雷戦群。掃海隊群と輸送艦部隊を一つにまとめ、陸自の水陸機動団と同じ佐世保に司令部を置いた。旗艦はいせだ。輸送艦おおすみ型が隊員と車両を運び、掃海艦が上陸海岸の機雷を除け、いせがその全体を指揮しながらヘリで先遣隊を送り込む。日本版の上陸部隊が、ようやく海自の中に正式な部隊として形になった。旗艦にひゅうが型が選ばれたのは、おおすみ型では指揮通信の設備と自衛の火力が足りないからだ。

つまり2026年のひゅうが型は、1番艦が「艦隊の中心」、2番艦が「上陸作戦の中心」という、二つの顔を持つ艦になった。水陸機動団の話は自衛隊の精鋭部隊の記事、輸送艦の話はおおすみ型の記事、上陸作戦の艦の話は強襲揚陸艦の記事を読んでほしい。

F-35Bはなぜ載らないのか

ひゅうが型の記事を書くと、必ずこの質問が来る

答えは「載らない」だ。理由は三つある。第一に甲板の長さ。F-35Bの短距離離陸には200メートル近い滑走が欲しいが、ひゅうが型の甲板は197メートルで、艦首に構造物もある。第二に甲板の耐熱。F-35Bの垂直着陸はジェットの熱を真下に吹き付けるので、いずも型では甲板を耐熱塗装に張り替えた。ひゅうが型でも同じ工事はできるが、そもそも滑走距離がない。第三にエレベーター。ひゅうが型のエレベーターは2基ともF-35Bを載せるには小さく、格納庫の高さも足りない。

だから海自はいずも型2隻を空母化して、ひゅうが型は最後までヘリ空母として使う。私はこれで正解だと思っている。空母が2隻あっても、それを守る対潜ヘリの母艦がなければ意味がない。空母保有国の並びは空母保有国ランキングで書いたが、空母と対潜ヘリ母艦を4隻持っている国は、アメリカを除けばほとんどない。

ひゅうが型の模型は流通が少ないので、いずも型と並べて甲板の大きさの違いを見比べるなら、この1/700が手に入りやすい。

帝国海軍ファンとして書いておきたい、戦艦伊勢・日向との縁

ここは私の趣味の話だ。

ひゅうがといせの名前は、旧海軍の伊勢型戦艦から来ている。伊勢と日向は1917年と1918年に完成した戦艦で、ミッドウェーで空母を4隻失った後、後部の砲塔を撤去して飛行甲板を載せた「航空戦艦」に改造された。前半分が戦艦、後ろ半分が空母という、世界に例のない艦だ。結局、載せる飛行機も乗せる搭乗員もなく、レイテ沖では囮の艦隊に組み込まれ、最後は呉の港で空襲を受けて着底した。詳しくは戦艦伊勢・日向の記事で書いた。

その伊勢と日向が、90年後に「後ろ半分どころか全部が飛行甲板」の艦として帰ってきた。しかも空母を持てない国が、空母に見える艦を「護衛艦」と呼んで作った。航空戦艦は「空母が足りないから戦艦を半分空母にした」艦で、ひゅうが型は「空母と呼べないからヘリ空母を護衛艦と呼んだ」艦だ。どちらも日本の海軍が制約の中で知恵を絞った結果で、私はこの二代目の名前の付け方を、旧海軍への一番上手い返歌だと思っている。

もうひとつ。いせの艦名板は伊勢神宮の大宮司が書き、木は宇治橋の欅を使っている。艦の名前に土地の魂を入れるという発想は、旧海軍から海自にそのまま受け継がれている。

韓国の独島級、フランスのミストラル級と比べると

隣の韓国は独島級を2隻持っている。1万4千トン級でひゅうが型とほぼ同じ大きさだが、あちらは強襲揚陸艦で、ウェルドックから上陸用舟艇を出し、隊員700名を運ぶ。ひゅうが型はウェルドックがなく、隊員を運ぶ設備もない。そのかわり対潜ソナーと防空ミサイルを持ち、艦隊の中で戦える。同じ大きさの艦を「運ぶ艦」にした韓国と、「戦う艦」にした日本。韓国海軍の艦艇一覧と並べると、日韓の海軍が何を怖がっているかの違いが見える。

フランスのミストラル級は2万1千トンで、ヘリ16機と病院と司令部を積んで世界中に出ていく。いせが水陸両用戦機雷戦群の旗艦になった今、海自が本当に欲しいのはこの形だろう。ひゅうが型は「ヘリ空母でありながら旗艦」という点でミストラル級に近づいたが、隊員を運べない。おおすみ型の後継艦がその穴を埋めることになる。

投資家目線:ひゅうが型を作った会社は今どこにいるか

私は防衛株を持っているので、ここも短く書く。

ひゅうが型はIHIマリンユナイテッドの横浜工場で作られた。この会社は2013年にジャパンマリンユナイテッドになり、いずも型2隻もここで作った。JMUは非上場で、株主はJFEとIHIだ。IHIの防衛事業の記事で書いたように、IHIは航空エンジンの会社として知られているが、艦艇の血も持っている。

FCS-3は三菱電機、対潜ヘリSH-60Kは三菱重工、ソナーは日立とNECの系譜だ。ひゅうが型は「国産の電子機器で固めた最初の大型艦」で、この艦で育った技術がもがみ型の輸出につながっている。防衛関連銘柄の全体像は防衛関連銘柄の投資ガイドにまとめた。

投資家目線:ひゅうが型を作った会社は今どこにいるか

見に行くなら舞鶴と佐世保

航行中のひゅうが型護衛艦
航行中のひゅうが型護衛艦。
出典:海上自衛隊ホームページ

ひゅうがは舞鶴にいる。赤れんが倉庫群の裏手にある北吸桟橋は、道路からそのまま護衛艦を見下ろせる全国でも珍しい場所で、土日には桟橋の見学もできる。ひゅうがが在泊していれば、あの平らな甲板を目の前で見られる。舞鶴は旧海軍の鎮守府があった街で、東郷平八郎の官舎も残っている。

いせは佐世保だ。こちらは米海軍と同居している港で、遊覧船から日米の艦が並んで見える。いせと一緒に、おおすみ型や掃海艦が並んでいれば、それが水陸両用戦機雷戦群の全員だ。海自の基地は海自の基地一覧にまとめてある。

よくある質問

ひゅうが型護衛艦は何隻あるか

2隻だ。ひゅうが(2009年就役)といせ(2011年就役)。2026年3月の改編で、ひゅうがは舞鶴の第3水上戦群、いせは佐世保の水陸両用戦機雷戦群の旗艦になった。

ひゅうが型は空母なのか

海自の分類はヘリコプター搭載護衛艦で、固定翼機は運用できない。全通甲板を持つので見た目は軽空母に近いが、甲板の長さ・耐熱・エレベーターの大きさの点でF-35Bは載せられない。対潜ヘリの母艦であり、艦隊の旗艦だ。

ひゅうが型といずも型の違いは何か

いずも型は基準排水量19,500トン、全長248メートルで一回り大きく、F-35Bを運用する改修が進んでいる。ひゅうが型は13,950トン、197メートルで、対空ミサイルとアスロックを積む分、単艦の戦闘力ではいずも型より上だ。いずも型は「空母」へ、ひゅうが型は「戦える旗艦」へ進んでいる。

ひゅうが型にオスプレイは降りられるか

降りられる。2013年に米海兵隊のオスプレイがひゅうがに着艦し、2023年には陸自のオスプレイがいせで発着艦訓練を行った。

ひゅうが型の後継艦はあるか

2026年時点で決まっていない。艦齢は15〜17年でまだ若く、2030年代も現役で使われる見込みだ。いずも型の空母化とおおすみ型の後継艦の議論が先に進んでいる。

あわせて読みたい

ここまで読んでくれた人へ。護衛艦隊が消えた日の資料を読み込んでいたら、いつの間にか朝になっていた。深夜の作業のお供はいつもこれだ。

出典・参考

  • 海上自衛隊 公式サイト「護衛艦『ひゅうが』型」
  • 乗りものニュース「おおすみ型輸送艦じゃダメ!? 海自の大改編で新編の『水陸両用部隊』旗艦はどの艦?」(2026年3月18日)、同「自衛隊から『護衛艦隊』が消える!?」(2026年2月15日)
  • Yahoo!ニュース 高橋浩祐「海自『水上艦隊』発足 護衛艦隊を廃止、創設以来最大規模の組織改編」(2026年3月24日)、同「護衛艦隊が消える――齋藤聡海幕長に聞いた」(2026年2月18日)
  • しんぶん赤旗「海自、水上艦隊を新編/佐世保に水陸両用部隊も」(2026年3月24日)
  • Wikipedia「ひゅうが型護衛艦」「ひゅうが(護衛艦)」「いせ(護衛艦)」「水陸両用戦機雷戦群」(2026年8月時点)
  • イカロス出版『海上自衛隊「ひゅうが」型護衛艦 増補改訂版』

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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