初めての艦船プラモは何を買えばいい?|1/700で挫折しない5選と、最低限そろえる道具

初めての艦船プラモは何を買えばいい?|1/700で挫折しない5隻と、最低限そろえる道具

戦艦や空母の記事を書いていると、ときどき「プラモデルを作ってみたいけど、何から買えばいいのかわからない」という声をもらう。

わかる。模型店の艦船の棚の前に立つと、同じ大和でも何種類もあるし、1/700だの1/350だの、ウォーターラインだのフルハルだの、知らない言葉が並んでいる。値段も数千円から数万円まで幅がある。間違ったものを買って、箱を開けた瞬間に心が折れる、というのはよくある話だ。

私自身、最初に買った艦船プラモは、細かすぎるパーツの山を前にして、半年ほど押し入れで眠らせてしまった。だからこの記事では、初めての人が挫折しないことだけを考えて、最初の1隻の選び方と、最低限そろえる道具をまとめた。

結論を先に言うと、最初の1隻は「1/700」の「接着剤のいらない色分け済みキット」か「塗装済みキット」を選ぶのが一番いい。理由は順に書いていく。

目次

まず知っておきたい3つの言葉

戦艦大和プラモデル制作イメージ
大和は、主砲・艦橋・対空兵装・木甲板の密度を追うだけでも模型として非常に面白い。

艦船プラモの箱には、だいたい次の3つの言葉が書いてある。これだけわかれば、棚の前で迷わなくなる。

スケール:1/700と1/350

スケールは、実物の何分の1の大きさか、という意味だ。艦船プラモでよく見かけるのは、1/700と1/350の2つになる。

要点

1/350はその倍の大きさで、大和なら約75センチ。迫力は段違いだが、パーツが多く、価格も1万円を超えるものが多い。置き場所にも困る。

初めての1隻なら、迷わず1/700をすすめる。大きさ、値段、作る手間のバランスが一番いい。

ウォーターラインとフルハル

ウォーターラインは、船体の水に浸かっている部分(喫水線より下)を省いて、海に浮かんでいる姿を再現したキットだ。底が平らなので、机に置いてもぐらつかない。

フルハルは、船底まで全部再現したキットで、艦の本当の形がわかる。そのかわり、台座に載せて飾ることになる。

どちらがいいかは好みだが、初心者にはウォーターラインのほうが扱いやすいと思う。船底のパーツの合わせ目を気にしなくていいぶん、作業が少し楽になる。

ちなみに、日本のウォーターラインシリーズは、1971年に静岡の模型メーカー4社が共同で始めたものだ。メーカーごとに分担して、日本海軍の艦艇を同じ1/700で揃えていこうという、世界でも珍しい試みだった。今もタミヤ、ハセガワ、アオシマの3社がシリーズを続けている。静岡は「模型の世界首都」とも呼ばれていて、毎年5月には静岡ホビーショーという大きな展示会も開かれている。

色分け済み・塗装済み・接着剤不要

最近の艦船プラモには、パーツが最初から色分けされていたり、塗装まで済んでいたりするキットがある。さらに、パーツをはめ込むだけで組み立てられて、接着剤がいらない「スナップフィット」のキットもある。

初心者が挫折する一番の原因は、塗装と接着だ。塗料の準備、筆の扱い、はみ出した接着剤の跡。ここでつまずく人が本当に多い。だから最初の1隻は、塗装や接着をしなくても形になるキットを選ぶのが近道だ。

1/700で挫折しない5選

ここからは、私が初心者にすすめたい1/700のキットを、作りやすい順に5つ紹介する。全長は、実物の長さを1/700にして私が計算したおおよその数字だ。

順位 艦名 メーカー・シリーズ 1/700での全長 おすすめの理由
1 戦艦 武蔵 フジミ 艦NEXT 約37cm 色分け済み・接着剤不要。最初の1隻の大本命
2 戦艦 長門・榛名 フジミ 艦NEXT 約32cm/約31cm 同じく色分け済み。大和型と違う戦艦を作りたい人に
3 護衛艦 いずも ピットロード 約35cm 塗装済み。現代の自衛隊の艦を作るならこれ
4 空母 瑞鶴 タミヤ ウォーターライン 約37cm 塗装に挑戦したい人の最初の一歩
5 イージス艦 こんごう ハセガワ ウォーターライン 約23cm 小さめで、現用艦の塗装の練習に

1位:フジミ 艦NEXT 戦艦武蔵

最初の1隻なら、私は迷わずこれをすすめる。

武蔵は、大和の姉妹艦として建造された大和型の2番艦。46センチ砲を9門積んだ世界最大級の戦艦だ。完成させて机に置くと、37センチの船体が思った以上の存在感を放つ。武蔵という艦そのものについては戦艦武蔵の解説で書いた。

2位:フジミ 艦NEXT 戦艦長門・榛名

武蔵を作って楽しかったら、次は同じ艦NEXTシリーズで別の戦艦に行くのがいい。作り方の流れが同じなので、2隻目はもっと楽しく作れる。

榛名は、イギリス生まれの金剛を手本に日本で造られた金剛型の戦艦だ。細長い船体に高い艦橋という、高速戦艦らしいシルエットが魅力。金剛型については戦艦金剛の解説で書いている。

3位:ピットロード 護衛艦いずも

旧日本海軍より、今の自衛隊の艦が好きだという人には、こちら。

4位:タミヤ ウォーターライン 空母瑞鶴

ここから、少しだけ難しくなる。

瑞鶴は、真珠湾攻撃から戦争の後半まで戦い続けた空母で、「幸運艦」とも呼ばれた。飛行甲板に並べる小さな艦載機を作るのも、空母の楽しみの一つだ。最初は数機だけ並べても、十分それっぽく見える。瑞鶴の戦歴は空母瑞鶴の解説へ。

5位:ハセガワ ウォーターライン イージス艦こんごう

最後は、小さめの現用艦だ。

ただ、キットの設計はやや古いので、パーツの合わせ目を整える作業が少し必要になる。最初の1隻よりは、2〜3隻目に向いていると思う。こんごう型については海自のイージス艦の解説で書いた。

番外編:フルハルに挑戦するなら、フジミ 空母飛龍

ウォーターラインに慣れてきたら、船底まで再現したフルハルのキットにも挑戦してみてほしい。フジミの飛龍は、1/700のフルハルで、空母の船体の形がよくわかる。台座に載せて飾ると、ウォーターラインとはまた違った「模型らしい」美しさがある。飛龍については空母飛龍の解説へ。

最低限そろえる道具

模型用ニッパーとピンセット、紙やすりから道具をそろえる。
模型用ニッパーとピンセット、紙やすりから道具をそろえる。

色分け済みの艦NEXTや塗装済みのいずもなら、極端な話、ニッパー1本あれば作れる。でも、少しだけ道具をそろえると、仕上がりも作業の楽しさもぐっと変わる。私が初心者にすすめるのは、次の4つだ。

道具 何に使うか 優先度
ニッパー ランナー(枠)からパーツを切り離す 必須
デザインナイフ 切り離した跡(ゲート)をきれいに削る ほぼ必須
紙やすり・ヤスリ 削り跡や合わせ目をならす あると便利
ピンセット 1/700の小さなパーツをつまむ あると便利

ニッパー:ここだけはケチらない

道具の中で、ニッパーだけはお金をかけてほしい。

100円ショップのニッパーでもパーツは切れるが、刃が厚いので、切り口が白く潰れたり、細いパーツを折ってしまったりしやすい。1/700の艦船プラモは、マストや砲身など、とても細いパーツが多い。刃の薄いプラモデル用のニッパーを使うと、それだけで失敗がぐっと減る。

私が使っているのは、タミヤの先細薄刃ニッパーだ。刃先が細く薄いので、狭いところにあるパーツもきれいに切り離せる。

デザインナイフ:切り跡をきれいに

ニッパーで切り離したパーツには、どうしても少し出っ張り(ゲート跡)が残る。これをデザインナイフで薄く削り取ると、完成したときの見た目がぐっと良くなる。刃がとても鋭いので、指を切らないよう、刃を自分に向けないことだけは気をつけてほしい。

接着剤と塗料は、2隻目からでいい

普通のキットを作るなら、プラモデル用の接着剤が要る。初心者には、パーツを合わせてから筆で流し込むタイプの接着剤が使いやすい。はみ出しにくく、跡も目立ちにくいからだ。

塗料は、最初はキットの説明書に書いてある色の中から、船体と甲板の2〜3色だけそろえれば十分だ。全部の色を最初からそろえようとすると、それだけで数千円かかってしまう。艦NEXTで1隻作ってから、2隻目で接着と塗装に挑戦する、くらいのペースがちょうどいいと思う。

模型の道具や塗料をまとめてそろえるなら、メーカーの公式通販も便利だ。キットと道具を一度に選べるので、何を買えばいいか迷いにくい。

魅力あふれる新製品が続々登場!
タミヤ新製品ラインナップ

作ってみると見えてくるもの:帝国海軍の「改装の歴史」

戦艦金剛のプラモデル制作イメージ
金剛型は、船体の長さとパゴダマストの密度が模型映えする戦艦である。
要点

たとえば長門を作ると、艦橋がまるで積み木を重ねたような複雑な形をしていることに気づく。これは、もともと大正時代に完成した艦が、昭和になってから何度も改装され、そのたびに観測所や指揮所が上へ上へと継ぎ足されていったからだ。この独特の艦橋は、その形から「パゴダ(仏塔)マスト」とも呼ばれる。設計図を一枚の紙で見るより、パーツを一段ずつ積み上げていくほうが、その歴史がずっとよくわかる。

武蔵と大和を並べて作ると、同じ大和型でも細かいところが違うことがわかる。艦の姿は、完成した時期や、どの作戦に向かったときの姿を再現しているかによっても変わる。艦NEXTの武蔵の箱に「捷一号作戦」と書いてあるのは、レイテ沖海戦に向かったときの姿を再現している、という意味だ。

こういう「時期による違い」を調べ始めると、もう沼の入口に立っている。

1/700の次は:1/350という世界

戦艦長門のプラモデル制作イメージ
長門のプラモデルは、主砲配置とパゴダマストの密度を観察する教材としても楽しい。

1/700で何隻か作って、もっと大きく、もっと細かく作りたくなったら、1/350の世界が待っている。

1/350は1/700の倍の大きさなので、艦橋の窓や、甲板の細かい装備まで、ぐっと精密に再現されている。完成すると、机の上に置くというより、部屋に「飾る」ものになる。値段も作る時間も一気に増えるが、そのぶん完成したときの達成感は格別だ。

最初の1/350なら、定番中の定番であるタミヤの大和がいいと思う。長く作られ続けている人気キットで、作り方の情報もネットにたくさんある。大和という艦については戦艦大和の解説で詳しく書いた。

最初にかかるお金の目安

最後に、最初の1隻でどれくらいお金がかかるのか、ざっくりした目安を書いておく。値段は店や時期によって変わるので、あくまで参考程度に見てほしい。

艦NEXTや塗装済みキットで始めるなら、キット代が数千円、それにニッパーとデザインナイフで数千円。合わせて1万円以内に収まることが多いと思う。普通のキットで塗装までするなら、ここに接着剤と塗料、筆が加わって、もう数千円かかる。

キットは、模型店や家電量販店のホビー売り場、ネット通販で買える。実物の箱の大きさや中のパーツを見て選びたいなら、一度は模型店に足を運んでみるのがおすすめだ。店員さんに「初めての艦船プラモ」と相談すると、親切に教えてくれることも多い。道具は一度そろえれば何年も使えるので、2隻目からはキット代だけで楽しめる。

挫折しないための3つのコツ

最後に、私が押し入れに半年キットを眠らせた経験から学んだことを書いておく。

一つ目は、完璧を目指さないこと。1/700の艦船は、どれだけ丁寧に作っても、上手な人の作品にはすぐには届かない。最初の1隻は「最後まで組み上げた」だけで大成功だ。合わせ目が少しずれていても、遠くから見ればちゃんと戦艦に見える。

二つ目は、一度に全部やろうとしないこと。今日は船体だけ、明日は艦橋だけ、と小さく区切って進めると、毎日少しずつ形になっていくのが楽しくなる。1日15分でもいい。

三つ目は、その艦のことを知ってから作ること。どんな戦いをくぐり抜けたのか、どんな人が乗っていたのか。それを知ってから作ると、ただのプラスチックの塊が、一隻の「艦」に見えてくる。私がこのブログで艦艇の記事を書き続けているのは、半分はそのためでもある。日本の戦艦と空母の全体像は日本の戦艦と空母の一覧、今の自衛隊の艦は海上自衛隊の艦艇一覧で見渡せる。

完成した艦を机の上に並べて眺めるのは、本当にいいものだ。1隻目ができたら、2隻目、3隻目と、自分だけの艦隊を増やしていく楽しみが待っている。

出典・参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

コメント

コメントする

目次