CH-47チヌークとは|前後2枚のローターで60年飛び続ける輸送ヘリ──タンデムの仕組み、J型とJA型、原発への放水から17機の新型発注まで

CH-47 チヌーク|2基のローターで運ぶ大型輸送ヘリ

ヘリコプターと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、頭の上に大きなローターが一つ、しっぽに小さなローターが一つという形だと思う。ところが、自衛隊の大型輸送ヘリCH-47チヌークには、しっぽのローターがない。そのかわり、胴体の前と後ろに、同じ大きさのローターが一つずつついている。

この「前後2枚」という形のまま、CH-47は1961年の初飛行から60年以上飛び続けている。しかも2025年には、自衛隊が最新型を17機まとめて発注した。半世紀以上前の設計の延長線上にある機体を、今もまとめて買う。そこには、この形でなければ出せない強みがある。

私は、CH-47のことを「空飛ぶトラック」というより「空飛ぶクレーン付きトラック」だと思っている。中に積めて、下に吊れて、山の上にも降りられる。この記事では、前後2枚のローターの仕組みから、型式の系譜、自衛隊でのJ型とJA型の違い、そして日本での任務までをまとめる。価格や国産装備の値段の話は別の記事に任せ、ここではCH-47という機体そのものに集中する。

この記事のポイント
目次

CH-47とはどんなヘリか

前後2枚のローターで飛ぶ

CH-47は、アメリカのボーイング(開発当時はバートル社)が作った大型の輸送ヘリコプターだ。最大の特徴は、胴体の前後にある2枚の大きなローターで、これを「タンデムローター」と呼ぶ。

CH-47Fの飛行姿。前後に一つずつ主ローターを備える。
CH-47Fの飛行姿。前後に一つずつ主ローターを備える。
写真:Acroterion/出典(CC BY-SA 4.0)

ふつうのヘリコプターは、頭上のローター一つで浮き、しっぽの小さなローターで機体の回転を止めている。ローターを回すと、その反動で機体が逆向きに回ろうとするからだ。しっぽのローターは、その回転を打ち消すためだけにエンジンの力の一部を使っている。

CH-47は、前後の2枚のローターを互いに逆向きに回す。すると、二つの反動が打ち消し合い、しっぽのローターがいらなくなる。エンジンの力を、すべて浮く力と進む力に回せるわけだ。

長い胴体と、後ろの大きな扉

ローターを前後に分けたおかげで、胴体は長く、中は広い。胴体の後ろには、地面まで下りる大きな扉があり、車両や物資をそのまま積み込める。兵士なら数十人を乗せられる。

胴体の下には、荷物を吊るすフックもある。中に積みきれない大きな物や重い物は、ワイヤーで吊って運ぶ。冒頭で「クレーン付きトラック」と書いたのは、このためだ。

CH-47の前後に置かれた二つの主ローターが逆向きに回る配置図
CH-47は前後の主ローターを逆向きに回すタンデム方式。 図を拡大する

なぜタンデムローターなのか

強み1|重心のずれに強い

タンデムローターの強みは、エンジンの力を無駄にしないことだけではない。

荷物を積むと、機体の重心は前や後ろにずれる。一つのローターのヘリは、この重心のずれに弱い。ところがCH-47は、前後のローターが生む浮く力の配分を変えることで、重心がずれてもバランスを取れる。荷物をたくさん、しかも大ざっぱに積んでも飛べる。輸送ヘリにとって、これは大きな強みだ。

ホバリング中に、吊った荷物を降ろしたり、人を乗り降りさせたりして重さが急に変わっても、機体が安定しやすいのも、同じ理由による。

強み2|片方のエンジンが止まっても

CH-47はエンジンを2基積み、その力を前後のローターに配っている。片方のエンジンが止まっても、もう片方の力で両方のローターを回し続けられる。

強み3|高い山でも力が出る

アフガニスタンのような標高の高い山岳地帯では、空気が薄く、ヘリの浮く力は落ちる。そんな場所でも、CH-47は大きな力を出せる。山岳地帯での強襲では、CH-47が1機あれば、UH-60を何機も使う代わりになったとさえ言われた。

山の尾根に後輪だけを接地させ、機首を空中に浮かせたまま兵士を乗り降りさせる、という離れ業も知られている。前後に長い機体とタンデムローターだからこそできる芸当だ。

弱み|複雑で、下に吹きつける風が強い

もちろん弱みもある。2枚のローターがぶつからないように、前後のローターを一本の軸でつないで回転をそろえる必要があり、仕組みが複雑になる。整備にも手間がかかる。

もう一つは、下に吹きつける風の強さだ。大きなローターが2枚あるので、真下にはとても強い風が吹きつける。地上の人や物が飛ばされないよう、降りる場所には注意が要る。

型式の系譜|A型から最新のブロックIIまで

CH-47は、60年以上のあいだに何度も改良されてきた。

型 登場 主な特徴
A型 1960年代 最初の量産型。ベトナム戦争で活躍
B型・C型 1960年代後半 エンジンやローターを強化
D型 1980年代 古い機体を作り直して大幅に近代化
F型 2000年代 操縦席をデジタル化し、機体も新しく作った
MH-47 1990年代〜 特殊作戦用。空中給油を受ける長いプローブを持つ
F型ブロックII 2020年代 機体構造や動力伝達系を強化し、より重い荷物を運べるように
同じCH-47系列でも、装備や仕様の前提が違う。
J・JA型とF型の数値を混ぜず、どの型の話かを分けて読む。 図を拡大する

最新のF型は、最大離陸重量が約24.5トン。兵士なら30〜50人ほどを運べる。1960年代のヘリとしては速く、今もアメリカ軍の中では速いヘリの一つだ。

2012年の時点で、作られたCH-47は1,200機を超えていた。同じ名前のまま、中身を何度も入れ替えて現役を続けている点は、輸送機のC-130とよく似ている。C-130についてはC-130ハーキュリーズの解説で書いた。

日本のCH-47|川崎重工のJ型とJA型

タンデムは川崎の「お家芸」

日本のCH-47を語るなら、その前の世代の話から始めたい。陸海空の自衛隊がCH-47の前に使っていたのが、同じタンデムローターのKV-107だ。アメリカのバートル社が作った機体を川崎重工がライセンス生産し、のちには製造の権利を得て、日本で作り続けた。海外にも輸出されている。

陸上自衛隊のCH-47JA。胴体側面の大型燃料タンクが特徴。
陸上自衛隊のCH-47JA。胴体側面の大型燃料タンクが特徴。
写真:Los688/出典(CC0)

つまり、川崎重工はCH-47より前から、タンデムローターのヘリを作り続けてきた会社なのだ。私は、タンデムローターは川崎重工のお家芸と言っていいと思っている。ちなみに旧日本陸軍の回転翼機といえば、プロペラで進みながら回転翼で浮くカ号観測機で、陸軍の空母あきつ丸から対潜哨戒に飛んだこともある。日本の回転翼の歴史は、意外なほど長い。

1986年のJ型と、1995年からのJA型

自衛隊がCH-47を導入し始めたのは1986年だ。最初の機体は、川崎重工がライセンス生産したCH-47Jだった。

1995年からは、改良型のCH-47JAが作られている。胴体の左右の燃料タンクを大きくして航続距離を伸ばし、機首にレーダーや赤外線の暗視装置を加えて、夜や悪天候でも飛びやすくした。陸自の主力は、このJA型だ。

空自も、CH-47Jを航空救難団のヘリコプター空輸隊で使っている。三沢、入間、春日、那覇の4か所に置かれ、レーダーサイトなど、山の上や離島にある基地への物資の輸送を担う。2022年3月の時点で、陸自が47機、空自が15機を使っていた。

17機の最新型を発注

そして2025年2月、ボーイングは、日本から最新のブロックII仕様のCH-47を17機受注したと発表した。古いJA型の一部を置き換えるとともに、機数を増やす。今回も川崎重工が共同で生産する。操縦をデジタルで制御する新しい仕組みで、安定性や安全性が上がるとされる。

半世紀以上前の設計の延長線上にあるヘリを、今も17機まとめて買う。それだけ、日本の輸送の現場で、CH-47の代わりになる機体がないということだ。

日本の現場でのCH-47

2011年3月17日、原発の上空へ

日本人にとって、CH-47がいちばん記憶に残っている場面は、2011年3月17日だと思う。東日本大震災で事故を起こした福島第一原発の3号機に、陸上自衛隊のCH-47が上空から水を投下した。

前の日には放射線の量が高すぎて引き返しており、この日は防衛大臣が「今日が限度」と判断したうえでの出動だった。午前9時48分から、計4回の投下が行われた。高い放射線の中、吊り下げたバケットの水を3号機の使用済燃料プールに向けて落とすために、隊員たちは機体の床に鉛の板を敷いて飛んだと伝えられている。

実際に使用済燃料プールを冷やす効果がどれほどあったかは、正直に言えば限られていた。それでも、空からでも水をかける、という姿は、事故対応が大きく動き出す節目として、多くの人の目に焼きついた。重い水を吊って、決まった一点に落とす。CH-47の力と、乗員の腕の両方がなければできない任務だった。

災害派遣と離島への輸送

CH-47は、災害派遣の常連でもある。2014年の御嶽山の噴火では、10月1日から救助活動に投入された。地震や豪雨で道路が寸断されれば、重機や物資を吊って運び込む。島の多い日本では、離島の急患輸送や、島の基地への物資の輸送も欠かせない仕事だ。

山林火災の空中消火も、CH-47の大事な仕事だ。胴体の下に大きなバケットを吊るし、川や湖、海で水をすくい上げては、炎の上に落としていく。一度に運べる水の量が多いので、ほかのヘリよりも消火の力が大きい。近年も、各地の大規模な山林火災で、CH-47が何度も出動している。原発の上空への放水と同じく、重い水を吊って決まった場所に落とす技術が、ここでも生きている。

自衛隊のCH-47が運ぶものを並べると、その幅の広さがよく分かる。

運ぶもの 運び方 主な場面
隊員 胴体の中に乗せる 部隊の移動、空挺作戦、離島への展開
小型の車両 後ろの扉から胴体の中に積む 部隊の移動
重機や大きな資材 下に吊る 災害派遣、道路の復旧
水 バケットで吊る 山林火災の消火、原発への放水
急患 担架で胴体の中に乗せる 離島や山間部からの搬送

一機でこれだけの仕事をこなせるヘリは多くない。CH-47が災害の多い日本で頼られ続けるのは、何でも運べるこの守備範囲の広さがあるからだと私は思う。

そして、もちろん戦うための輸送もある。陸自の空挺隊員や部隊を運び、火砲や車両を吊って運ぶ。陸自の精鋭部隊については第1空挺団の解説で書いた。

V-22オスプレイとの違い

同じく大きな輸送力を持つ回転翼機に、陸自も使うV-22オスプレイがある。オスプレイは、プロペラの向きを変えて飛行機のように速く遠くまで飛べる。一方のCH-47は、速さや航続距離ではかなわないが、吊って運べる重さや、狭い場所でのホバリングの扱いやすさに強みがある。速さのオスプレイ、力持ちのCH-47。役割が違うので、どちらか一方で足りるという話ではない。オスプレイについてはV-22オスプレイの解説が詳しい。

戦場でのCH-47

CH-47の戦歴は、ベトナム戦争から始まる。ジャングルの中の陣地に、大砲や弾薬を吊って運び込んだ。

機体の外に貨物を吊り下げるCH-47。後方のランプから運ぶ機内貨物とは別の搭載方式。
機体の外に貨物を吊り下げるCH-47。後方のランプから運ぶ機内貨物とは別の搭載方式。
写真:Chief Petty Officer Bill Mesta/出典(Public domain)

1982年のフォークランド紛争では、イギリス軍のCH-47を運んでいた輸送船が対艦ミサイルで撃沈され、4機のうち3機を失った。生き残ったたった1機、「ブラボー・ノベンバー」は、その後の戦いで、一度に81人もの兵士を運んだと伝えられる。定員をはるかに超える数だ。たった1機のCH-47が、戦線を支えた。紛争の全体像はフォークランド紛争の解説で書いている。

アフガニスタンでは、標高の高い山岳地帯で、CH-47が部隊の輸送を支えた。空気の薄い山の上で大きな力を出せるタンデムローターの強みが、最も生きた戦場だったと言っていい。

CH-47を見に行くなら

CH-47を間近で見たいなら、陸自の駐屯地の記念行事や、空自の航空祭がいい。前後2枚のローターが回り始めると、地面が震えるような音と、強い風が吹きつけてくる。千葉県の木更津駐屯地には、CH-47を多く持つ陸自の第1ヘリコプター団がいる。各地の航空祭の日程は2026秋冬の航空祭ガイドにまとめている。遠征するなら宿は早めに。

離れた場所から飛んでいる姿を追うなら、双眼鏡があると、前後のローターの回り方まで見える。

ローターの音はかなり大きいので、子ども連れなら耳栓もあると安心だ。

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投資家目線|「作り続けられる機体」の強さ

CH-47は、ボーイングにとって60年以上売れ続けている商品であり、川崎重工にとっても、1980年代から作り続けている看板の一つだ。一度採用されれば、何十年も部品と整備の仕事が続き、そのうえ最新型への置き換えの需要も生まれる。2025年の17機の発注は、まさにその形だ。

川崎重工の防衛事業の全体像は川崎重工の防衛事業の解説に、ボーイングの防衛事業はボーイング株の解説にまとめている。

※この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではない。株価や業績は変動し、元本割れの可能性もある。投資判断は自己責任で。

よくある質問

チヌークという名前の由来は?

アメリカ北西部の先住民族の名前から取られている。アメリカ陸軍のヘリコプターには、アパッチやブラックホークのように、先住民族やその指導者にちなんだ名前がつけられることが多い。

CH-47は何人乗れる?

型や座席の配置で変わるが、最新のF型で兵士30〜50人ほどだ。担架なら20人以上を運べる。

なぜしっぽのローターがないの?

前後の2枚のローターを逆向きに回して、ローターの反動を打ち消し合っているからだ。ふつうのヘリのしっぽのローターは、この反動を打ち消すためについている。

CH-47はいずも型やひゅうが型に降りられる?

降りられる。全通甲板を持つ海自の護衛艦では、陸自のCH-47が発着する訓練も行われている。艦についてはひゅうが型護衛艦の解説で書いた。

世界で一番強い輸送ヘリはCH-47?

吊り下げる力だけなら、もっと大きなヘリもある。ただ、運べる量、速さ、扱いやすさ、世界中での使われ方の広さを合わせると、CH-47は今も輸送ヘリの代表格だ。ほかのヘリとの比較は世界最強ヘリコプター15選で整理している。

まとめ|前後2枚の素直な形が、60年の現役を支えた

CH-47チヌークは、前後に2枚のローターを持つタンデムローターの輸送ヘリだ。しっぽのローターがないぶん、エンジンの力をすべて浮く力と進む力に回せ、重心のずれにも強い。長い胴体と後ろの扉、吊り下げ用のフックで、中にも下にも荷物を運べる。

日本では、川崎重工がKV-107の時代からタンデムローターのヘリを作り続け、1986年からはCH-47をライセンス生産してきた。原発の上空への放水、災害派遣、離島への輸送と、日本の現場でCH-47が頼られる場面は数えきれない。そして2025年、最新型17機の発注で、その現役はさらに続くことになった。

次に空を見上げて、前後に2枚のローターを回すヘリを見かけたら、それがCH-47だ。重い荷物を吊って、どこかの現場に向かっているのかもしれない。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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