サプレッサーは本当に無音になる?|映画の「プシュッ」が現実にはまず聞こえない理由──銃声を作る3つの音と、消せる音・消せない音

サプレッサーの仕組み|消せる音・消せない音

映画やゲームで、銃の先に筒をつけた殺し屋が引き金を引くと、「プシュッ」と小さな音がして、隣の部屋の人は何も気づかない。あの場面を見て、サプレッサーをつければ銃は静かになると思っている人は多いと思う。

結論から言うと、現実のサプレッサーは銃を無音にはしない。サプレッサーをつけても、多くの銃声は、すぐ近くで鳴るサイレンや、飛び立つ戦闘機くらいの大きさが残る。サプレッサーは「消音器」と訳されることが多いが、実際の仕事は「音を消す」ではなく「耳を壊すほどの音を、少しましにする」ことに近い。

なぜ消えないのか。それは、私たちが「銃声」とひとまとめにしているものが、実は三つの別々の音でできていて、サプレッサーが小さくできるのはそのうちの一つだけだからだ。この記事では、銃声を三つの音に分けて、サプレッサーが何を小さくし、何を小さくできないのかを整理していく。個別の銃の開発史は、それぞれの記事に任せることにする。

なお、この記事は音の仕組みを理解するためのもので、サプレッサーの作り方や改造には一切触れない。

この記事のポイント
目次

結論|消せる音と、消せない音

まず、銃声を三つの音に分けて表にする。

ひとことで言えば、サプレッサーが静かにできるのは「銃口から出る音」だけだ。弾が飛んでいく音と、銃そのものが動く音は、そのまま残る。だから無音にはならない。

銃声を発射ガス、弾丸の衝撃波、機構の作動音の三つに分けた図
銃口の音を抑えても、弾丸の衝撃波や機構の作動音までは消えない。 図を拡大する

銃声を作る3つの音

1. 銃口の爆風音|いちばん大きな音

銃の中で発射薬が燃えると、高温・高圧のガスが一瞬で生まれ、弾丸を押し出す。弾丸が銃口を離れた瞬間、そのガスが一気に外へ噴き出す。このときの急激な圧力の変化が、いちばん大きな「パァン」という音になる。シャンパンの栓を抜く音を、何百倍も激しくしたようなものだ。

銃声の大きさの大部分は、この爆風音が占めている。そして、サプレッサーが相手にするのも、この音だ。

2. 弾の衝撃波の音|弾は飛びながら鳴っている

二つ目は、弾丸そのものが出す音だ。空気中の音の速さは、およそ秒速340m。多くの小銃の弾は、その2倍以上の速さで飛ぶ。音速を超えて飛ぶ物体の周りには、円すい形の衝撃波ができる。戦闘機が音速を超えたときのソニックブームと、仕組みは同じだ。

この衝撃波は、弾丸が飛んでいる間ずっとついて回る。弾丸の通り道の近くにいる人には、「ピシッ」「パチン」という鋭い音として聞こえる。銃口で何をしても、飛んでいる弾丸の周りの衝撃波は消せない。

3. 機械の音|銃そのものが動く音

三つ目は、銃の部品が動く音だ。自動拳銃なら、撃つたびにスライドが後ろに下がり、また前に戻る。小銃なら、ボルトが前後に動き、空の薬莢が弾き出される。金属どうしがぶつかる「カシャン」という音は、思っている以上に大きい。

銃口の爆風音を小さくすればするほど、ふだんは爆風音にかき消されていたこの機械の音が目立つようになる。静かな銃ほど、部品の音が気になってくるわけだ。

サプレッサーは何をしているのか

ガスを「ゆっくり」外に出す

サプレッサーの考え方は、自動車のマフラーとよく似ている。銃口から一気に噴き出そうとするガスを、筒の中の広い空間でいったん受け止め、勢いと温度を下げてから、ゆっくり外に出す。一瞬の大きな圧力の変化を、時間をかけた小さな変化に変える。それで爆風音が小さくなる。

Mk13 Mod 7狙撃銃を説明する米海兵隊員。銃口側にサプレッサーを備える。
Mk13 Mod 7狙撃銃を説明する米海兵隊員。銃口側にサプレッサーを備える。
写真:米海兵隊/Kristen Murphy/出典(パブリックドメイン)

炭酸飲料のペットボトルを、一気に開けると「プシュッ」と大きな音がするが、キャップを少しずつゆるめると、音はほとんどしない。サプレッサーがやっているのは、その「少しずつゆるめる」に近いことだ。

実は、サプレッサーと自動車のマフラーには、もっと直接のつながりがある。サプレッサーを最初に商品として売り出したのは、アメリカの発明家ハイラム・パーシー・マキシムで、1909年に特許を取り、「マキシム・サイレンサー」の名前で売った。彼はこの仕組みを、自動車のマフラーにも応用したことでも知られる。そして彼の父は、機関銃の生みの親として知られるハイラム・スティーブンス・マキシムだった。世界で最も大きな音を出す武器の一つを作った父と、その音を小さくする道具を作った息子。私は、この親子の話が妙に好きだ。

「サイレンサー」と「サプレッサー」

マキシムが「サイレンサー」と名付けたので、この呼び方は今も広く使われている。ただ、実際には音を消せないことから、業界や軍では「サプレッサー(抑えるもの)」と呼ぶことが多い。イギリスでは「サウンド・モデレーター(音をやわらげるもの)」という呼び方もある。名前の変化そのものが、「消せない」という現実を表している。

数字で見る|サプレッサーでどれくらい小さくなるか

減るのは20〜30dB前後

音の大きさは、デシベル(dB)で表す。アメリカのサプレッサー販売業者がまとめた数字では、撃つ人の位置で測った銃声は、9mm拳銃でおよそ162dB、5.56mmの小銃で165dB前後とされる。サプレッサーをつけると、9mm拳銃で120〜128dB、5.56mm小銃で131〜140dBほどになる。研究によって幅はあるが、減るのはおおむね20〜30dB前後と考えておくといい。

銃と条件 音の大きさの目安 身近な音にたとえると
9mm拳銃(サプレッサーなし) 約162dB すぐ近くの雷に近い
5.56mm小銃(サプレッサーなし) 約165dB すぐ近くの雷に近い
5.56mm小銃(サプレッサーあり) 約131〜140dB 飛び立つ戦闘機くらい
9mm拳銃(サプレッサーあり) 約120〜128dB すぐ近くのサイレンくらい
22口径の小さな弾・音速以下(サプレッサーあり) 約108〜118dB 近くの釘打ち機くらい
異なる条件で測ったdB値は、そのまま優劣の順位にはできない。
dBの数字は、測定位置と指標を合わせて読む必要がある。 図を拡大する

耳を傷める目安とされるのが140dBだ。サプレッサーをつけた小銃は、ちょうどこの境目あたりにいる。耳当てなしで撃っていい音ではない。

30dB減っても「8分の1の静けさ」ではない

ここで一つ、数字の読み方に注意したい。デシベルは、10dB増えるごとに音のエネルギーが10倍になる物差しだ。30dB減れば、エネルギーは1,000分の1になる。

ただし、人の耳の感じ方はそこまで素直ではない。10dB下がると、だいたい「半分くらいの大きさ」に聞こえると言われる。30dB下がれば、半分の半分の半分、つまり8分の1くらいの大きさに感じる計算だ。もとが160dBを超える爆音なので、8分の1になっても、まだ十分すぎるほどうるさい。「無音」には、とても届かない。

映画の「プシュッ」に近づける条件

では、映画のような小さな音は、現実にはまったくありえないのか。いくつかの条件がそろえば、かなり近づくことはできる。

条件1|弾を音速より遅くする

衝撃波の音を消すには、弾丸を音速より遅く飛ばすしかない。こうした弾を「亜音速弾」と呼ぶ。もともと遅い弾もあって、たとえば.45 ACPは、ふつうの弾でも音速より遅い。サプレッサー付きの拳銃に.45 ACPが好まれてきたのは、このためだ。.45 ACPを使う代表的な拳銃についてはM1911の解説で書いた。

小銃の弾は速いので、静かにしたいなら、わざわざ遅く重い専用の弾を作る。ソ連が特殊部隊のために作ったVSSヴィントレスは、重く遅い9×39mm弾と、一体型のサプレッサーを組み合わせた代表例だ。ただし、遅い弾は届く距離が短く、威力も落ちる。静けさと引き換えに、別のものを手放すことになる。弾の名前の読み方は銃弾の名前の読み方で整理している。

条件2|部品を動かさない

機械の音を消すには、撃つたびに部品が動かない銃を使うのがいちばんだ。第二次世界大戦中、イギリスが特殊作戦のために作ったデ・リーズル・カービンやウェルロッドは、一発ごとに手で操作する方式で、自動で部品が動かない。デ・リーズルは、公式の射撃試験で85.5dBという記録が残っている。ふつうの銃声の何百分の一というエネルギーで、これなら「プシュッ」に近い。

条件3|小さな弾を使う

そもそも発射薬の量が少ない小さな弾なら、爆風音も小さい。22口径の小さな弾を、音速より遅く飛ばし、サプレッサーをつければ、110dB前後まで下がる。

三つそろえても、まだ「静か」ではない

ただ、三つの条件をそろえても、多くの場合はまだ、人がはっきり気づく大きさの音が残る。映画で、隣の部屋の人がまったく気づかない、というのは、やはり演出の部分が大きい。私は、映画のサプレッサーの音は「現実の音」ではなく「観客に、今ここで静かに撃ったと伝えるための記号」だと考えている。そう割り切って見ると、あの「プシュッ」も、演出としてよくできていると思える。

では、なぜ軍はサプレッサーを使うのか

無音にならないなら、軍はなぜサプレッサーをつけるのか。理由は「静かにする」以外にもある。

理由 どういうことか
位置を知られにくくする 爆風音と銃口の炎が小さくなり、どこから撃っているのか分かりにくくなる
仲間の声が聞こえる 銃声が小さくなれば、撃ち合いの最中でも分隊の中で声が通りやすい
耳を守る 兵士の難聴は深刻な問題で、少しでも音を下げることに意味がある
夜に目をくらませない 銃口の炎が小さくなり、暗視装置や自分の目への影響が減る
射撃訓練前に耳栓を装着する米海兵隊員。聴覚保護具は、消音装置とは別に考える必要がある。
射撃訓練前に耳栓を装着する米海兵隊員。聴覚保護具は、消音装置とは別に考える必要がある。
写真:U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Nathaniel Hamilton/出典(パブリックドメイン)

サプレッサーをつけた銃を撃っても、相手には「撃たれた」ことは伝わる。ただ、「どこから撃たれたのか」が分かりにくくなる。戦場では、それだけで大きな意味がある。特殊部隊がサプレッサーを好む理由も、静かに忍び寄るためだけでなく、この「位置を隠す」効果にある。特殊部隊の定番だった短機関銃についてはMP5の解説で、サプレッサー付きで知られる銃の一つはMAC-10の解説で書いている。

もちろん、弱みもある。銃の先が長く重くなり、取り回しが悪くなる。撃つと筒そのものが熱くなる。銃によっては、弾の当たる位置が少し変わる。良いことばかりの道具ではない。

世界では「耳を守る道具」

意外に思うかもしれないが、ヨーロッパの一部の国では、サプレッサーは狩猟で耳を守るための道具として扱われている。たとえばノルウェーでは購入に許可がいらず、フィンランドやイギリスでも、銃を持つ許可の範囲で手に入れられる。狩りをする人の耳と、近所の静けさを守るためだ。

アメリカでは、サプレッサーは1934年の法律で厳しく規制されてきた。登録と、1台につき200ドルの税が必要だった。この税は2026年1月1日から0ドルになり、10月9日からATFはサプレッサーのNFA登録などの義務を執行しない方針に変わった。ただし、販売店での身元確認や、州・地方の規制は残っている。

日本では、実銃そのものを持つことが厳しく制限されていて、サプレッサー付きの銃を目にする機会はまずない。私たちがサプレッサーの姿を見るのは、ほとんどが映画とゲーム、そしてエアガンの世界だ。

エアガンの「サイレンサー」は何を消しているのか

サバゲーやエアガンが好きな人なら、銃の先につける「サイレンサー」のパーツを見たことがあると思う。見た目は実銃のサプレッサーそっくりだが、中身の仕事はまったく違う。

エアガンは火薬を使わず、空気やガスの力で6mmのBB弾を飛ばす。銃口から出るのは高温の燃焼ガスではないし、BB弾は音速よりずっと遅い。エアガンの音の多くは、銃の中で空気を押し出す部品の動く音や、ガスの音だ。だから、エアガンの「サイレンサー」で音がどこまで変わるかは、銃の方式によって大きく違う。ほとんど見た目のためのパーツ、という場合も多い。

それでも、銃の先に筒をつけるだけで、映画の特殊部隊の気分になれるのがエアガンの楽しいところだ。サプレッサーとの組み合わせが似合う銃の代表といえば、やはりMP5だ。

拳銃なら、特殊部隊向けのMk23と同じH&Kが作ったUSPがある。Mk23についてはH&K Mk23の解説で書いた。

エアガンは18歳以上用のものが多く、使える場所も決まっている。ルールを守って楽しんでほしい。電動ガン選びは電動ガンおすすめランキングに、拳銃はサバゲー用ハンドガンおすすめにまとめている。

よくある質問

サプレッサーをつければ銃声は無音になる?

ならない。サプレッサーが小さくできるのは、銃口から噴き出すガスの音だけだ。音速を超えた弾の衝撃波の音と、銃の部品が動く音は残る。多くの場合、サプレッサーをつけても、耳を傷めかねない大きさの音が残る。

サイレンサーとサプレッサーは同じもの?

同じものだ。最初に売り出した人が「サイレンサー」と名付けたが、実際には音を消せないので、今は「サプレッサー」と呼ぶことが多い。

どれくらい静かになる?

一般的には20〜30dB前後小さくなる。耳の感じ方では、だいたい4分の1から8分の1くらいの大きさになる計算だ。それでも、もとの銃声が非常に大きいので、静かとは言えない。

映画のような「プシュッ」は現実にありえる?

かなり近づける条件はある。音速より遅い弾を使い、部品が自動で動かない銃で、小さな弾を撃てば、ずっと小さな音にはなる。ただ、まったく気づかれないほど静かにするのは難しい。

ゲームでサプレッサーをつけると見つかりにくくなるのは本当?

現実でも、撃っている位置を分かりにくくする効果はある。爆風音と銃口の炎が小さくなるからだ。ただし、撃たれたこと自体は相手に伝わる。ゲームの表現は、その効果を分かりやすく強調したものと考えるといい。

まとめ|サプレッサーは「消す道具」ではなく「和らげる道具」

銃声は、銃口から噴き出すガスの爆風音、音速を超えた弾の衝撃波の音、銃の部品が動く機械の音、の三つでできている。サプレッサーが小さくできるのは、そのうちの爆風音だけだ。だから、多くの場合、サプレッサーをつけても銃は無音にはならない。減るのは20〜30dB前後で、それでも耳を傷めかねない大きさが残る。

映画の「プシュッ」に近づけるには、音速より遅い弾、部品が動かない銃、小さな弾、という条件をそろえる必要がある。それでも、現実の銃が完全に静かになることはない。

軍がサプレッサーを使うのは、静かにするためというより、撃っている位置を隠し、仲間の声を通し、兵士の耳を守るためだ。次に映画で「プシュッ」という音を聞いたら、それが観客への合図だということを思い出してみてほしい。そして、その筒の中で、銃口のガスが少しずつ外に逃がされているところを想像してみてほしい。威力の比較は弾丸威力ランキングで整理している。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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