ロシア海軍の艦艇一覧【2026年版】|空母を失い、黒海で削られ、それでも原潜だけは増える海軍の現役艦をすべて整理

ロシア海軍の艦艇一覧【2026年版】 記事表紙

ロシア海軍は、世界で最も評価の難しい海軍だ。

隻数だけ見れば約450隻で世界3位。核弾頭を積んだ弾道ミサイル原潜は米国に次ぐ規模で、巡航ミサイル原潜ヤーセンMは西側の海軍が最も警戒する潜水艦の一つだ。ところが同じ海軍が、唯一の空母の修理を2025年に断念し、黒海では巡洋艦モスクワを筆頭に20隻以上を失うか大破させ、2026年8月と9月には避難先のノヴォロシースクでフリゲートを繰り返しミサイルとドローンに叩かれている。原潜だけが増え、水上艦はソ連時代の老朽艦と小型ミサイル艦で持ちこたえている。

本記事は、その全体像を2026年9月時点で艦種別に整理する。艦名と就役年、状態は公開データベースと防衛省・欧米メディアの報道で照合し、ロシア側の発表と西側の推計が食い違う箇所は幅で書いた。とくに潜水艦は「保有」と「運用可能」の差が大きい海軍なので、そこは分けて示す。

なお、中国海軍は中国海軍の艦艇一覧、米海軍はアメリカ海軍の艦艇一覧、海自は海上自衛隊の艦艇一覧に、世界の海軍力の序列は世界海軍力ランキングにまとめてある。

目次

結論——ロシア海軍の全体像を1枚で

結論——ロシア海軍の全体像を1枚で

組織——4つの艦隊と1つの小艦隊

艦隊拠点性格
北方艦隊セヴェロモルスク(ムルマンスク近郊)弾道ミサイル原潜と主力水上艦。ロシア海軍の本丸
太平洋艦隊ウラジオストク、カムチャツカ弾道ミサイル原潜、ウダロイ級、キロ級。日本の隣
黒海艦隊セヴァストポリ→ノヴォロシースクへ退避ウクライナ戦争で最も損耗した艦隊
バルト艦隊カリーニングラード、クロンシュタットコルベット中心。NATOに囲まれた内海
カスピ小艦隊アストラハン、マハチカラブーヤンM級からのカリブル発射で知られる

北方艦隊と太平洋艦隊が核抑止を担う「原潜の艦隊」で、黒海とバルトは沿岸の小型艦が主力だ。艦隊間の艦艇の移動は地理的に困難で、黒海艦隊はトルコがボスポラス海峡を閉じた2022年以降、外からの補充を受けられていない。

空母——クズネツォフの終わり

艦名状態
アドミラル・クズネツォフ2017年から修理・改修。2018年に浮きドック沈没で損傷、2019年と2022年に火災。2025年7月に修理中断。2026年時点でムルマンスクに係留、除籍か売却の見込み
空母——クズネツォフの終わり

私はこの結末を、ロシアの造船業の現状を最も正直に映す出来事だと思っている。冷戦末期にウクライナのニコラエフで造られた艦を、ロシア国内で直せなかった。姉妹艦の未完成船体はソ連崩壊後に中国へ売られ、空母遼寧として就役し、いま日本近海に現れている。同じ設計の2隻が、片方は係留され、片方は3隻体制の中核になった。30年でここまで差がつく。

巡洋艦——27年ぶりに戻るナヒモフ

巡洋艦モスクワ。2009年撮影。
巡洋艦モスクワ。2009年撮影。
写真:George Chernilevsky/出典(Public domain)。掲載用に縮小・圧縮。
艦級艦名状態
キーロフ級(原子力)アドミラル・ナヒモフ1999年から改修。2025年7月に浮上、8月に28年ぶりに自力航行。2026年6月にセヴェロモルスク到着、就役手続き中
キーロフ級(原子力)ピョートル・ヴェリキー予備役。ナヒモフ復帰後に改修か退役の見込み
スラヴァ級マルシャル・ウスチノフ北方艦隊。現役
スラヴァ級ヴァリャーグ太平洋艦隊旗艦。現役
スラヴァ級モスクワ2022年4月、黒海でウクライナの対艦ミサイルにより沈没

アドミラル・ナヒモフは、世界で最も長く修理されていた軍艦だ。1988年に就役し、1999年に改修入り。当初の完成予定は2010年代前半だったが、費用は4倍に膨らみ、27年かかった。2025年7月に浮上し、8月には自力で白海の公試に出た。2026年6月25日、北方艦隊の母港セヴェロモルスクに到着したが、9月時点でまだ正式には就役していない。ロシア海軍は2026年中の受領を示唆し、西側の追跡者は2026年末から2027年と見ている。

改修後のナヒモフは80セルの汎用VLSを持ち、カリブル巡航ミサイル、オーニクス超音速対艦ミサイル、ジルコン極超音速ミサイルを撃てる。満載2万8,000トンの原子力巡洋艦としては世界で唯一の現役艦で、復帰すれば「水上艦で最も重武装の艦」になる。ただし、27年かけて完成したのは、米海軍が1980年代に手に入れた「巡洋艦から長距離対地攻撃をする」能力であり、その間に無人機と対艦ミサイルの時代が来た。私はこの艦を、ロシアの技術力の証明ではなく、ロシアの造船業が一隻の大型艦にどれだけ時間を要するかの証明として見ている。

姉妹艦ピョートル・ヴェリキーは1998年就役で、ナヒモフの復帰後に改修に入るか退役するかが決まる。予算と造船所の余力から見て、私は退役の可能性が高いと思う。

駆逐艦——1980年代の艦だけで、新造は35年ない

ウダロイ級アドミラル・パンテレーエフ。
ウダロイ級アドミラル・パンテレーエフ。
写真:日本防衛省・統合幕僚監部/出典CC BY 4.0)。掲載用に縮小・圧縮。
艦級艦名艦隊
ウダロイ級ヴィツェアドミラル・クラコフ、セヴェロモルスク、アドミラル・レフチェンコ北方艦隊
ウダロイ級マルシャル・シャポシニコフ、アドミラル・トリブツ、アドミラル・パンテレーエフ太平洋艦隊
ウダロイ級アドミラル・ヴィノグラードフ太平洋艦隊。改修中
ウダロイII級アドミラル・チャバネンコ北方艦隊。長期改修中
駆逐艦——1980年代の艦だけで、新造は35年ない

2026年9月、ロシアは満載9,500トン級の新型駆逐艦の建造計画を発表した。ただし、ゴルシコフ級フリゲートすら8年遅れで揃えている造船業の現状を見れば、この発表は実際の建造計画というより、「ロシアはまだ大型艦を造る」という国内外への信号だと私は読んでいる。太平洋艦隊のウダロイ級は日本海と対馬海峡をよく通航し、海自の護衛艦が監視する相手として最も見慣れたロシア艦でもある。

フリゲート——ゴルシコフ級だけが未来を担う

フリゲート、アドミラル・ゴルシコフ。2022年、ムルマンスク。
フリゲート、アドミラル・ゴルシコフ。2022年、ムルマンスク。
写真:Svetlov Artem/出典CC0)。掲載用に縮小・圧縮。
艦級艦名艦隊状態
ゴルシコフ級アドミラル・ゴルシコフ、アドミラル・カサトノフ、アドミラル・ゴロフコ北方艦隊現役。ジルコンを運用
ゴルシコフ級アドミラル・イサコフ、アドミラル・アメリコ艤装中2027〜28年就役予定
ゴルシコフ級チチャゴフ、ユマシェフ、スピリドノフ、グロモフ、ヴィソツキー建造中・計画9番艦グロモフは2026年5月起工
グリゴロヴィチ級アドミラル・グリゴロヴィチ、アドミラル・エッセン、アドミラル・マカロフ黒海艦隊ノヴォロシースクで繰り返し被弾
ネウストラシムイ級ネウストラシムイ、ヤロスラフ・ムードルイバルト艦隊現役
クリヴァク級ラードヌイ、ピトリヴイ黒海艦隊1980年代の艦
ゲパルト級タタールスタン、ダゲスタンカスピ小艦隊
フリゲート——ゴルシコフ級だけが未来を担う

グリゴロヴィチ級3隻は黒海艦隊の主力で、2022年以降はセヴァストポリからノヴォロシースクへ退避している。しかし2026年になるとウクライナの長距離攻撃はノヴォロシースクにも届き、8月12日にはエッセンとマカロフがミサイルとドローンの複合攻撃で損傷、9月9日にはエッセンがネプチューン対艦ミサイルの直撃を受けて上部構造物が炎上した。エッセンとマカロフは2026年だけで3回被弾している。艦隊が逃げた先まで攻撃が追いかけてくる。これが2026年の黒海の現実だ。

コルベット・小型ミサイル艦——「カリブルの運び屋」たち

艦級隻数満載排水量特徴
ステレグシチー級9隻+建造中3隻約2,200トン多用途コルベット。ウラン対艦ミサイル、レドゥート対空ミサイル
グレミャシチー級1隻+建造中5隻約2,500トンステレグシチー級の発展型。カリブル運用可能
カラクルト級7隻+建造中6隻約800トンカリブル8発。2026年5月にブーリャが就役、7月にシトルムが進水
ブーヤンM級12隻約950トンカリブル8発。2015年にカスピ海からシリアを攻撃
ナヌチカ級7隻約670トンソ連時代の小型ミサイル艦
タランタル級16隻約500トンソ連時代のミサイル艇
グリシャ級17隻約980トンソ連時代の小型対潜艦
パルヒム級6隻約950トン東ドイツ製の小型対潜艦
ボーラ級2隻約1,050トン55ノットのホバー型ミサイル艦
コルベット・小型ミサイル艦——「カリブルの運び屋」たち

私は、この小型艦への集中を「大型艦を造れないから仕方なく」と見るべきではないと思っている。カリブル、オーニクス、ジルコンを積む小型艦と潜水艦と沿岸ミサイル部隊で海を拒否する。それはロシアの造船業とロシアの地理に合った、合理的な選択だ。ただしその代償として、外洋に長期展開できる艦隊は失われた。黒海で沈んだ艦の多くも、この小型艦とロプーチャ級揚陸艦だった。

潜水艦——ロシア海軍の本体

ヤーセンM級原子力潜水艦カザン。
ヤーセンM級原子力潜水艦カザン。
写真:Ministry of Defense of Russia/出典CC BY 4.0)。掲載用に縮小・圧縮。

ロシア海軍を評価するなら、ここを見るべきだ。水上艦の衰退と対照的に、潜水艦、とくに原潜の建造は戦争中も優先され続けている。

弾道ミサイル原潜(SSBN)

艦級隻数主な艦名備考
ボレイ級・ボレイA級8隻ユーリー・ドルゴルーキー、アレクサンドル・ネフスキー、ウラジーミル・モノマフ、クニャージ・ウラジーミル、クニャージ・オレグ、ゲネラリシムス・スヴォーロフ、インペラートル・アレクサンドル3世、クニャージ・ポジャルスキー2025年に最新艦が就役。ブラヴァ16発。さらに複数建造中
デルタIV級5隻前後ヴェルホトゥリエ、エカテリンブルク、トゥーラ、ブリャンスク、カレリア1980〜90年代の艦。ボレイ級に順次交代

ボレイ級は北方艦隊と太平洋艦隊に分かれて配備され、ロシアの核抑止の海上部分を担う。太平洋艦隊のボレイ級はカムチャツカのヴィリュチンスクを母港とし、オホーツク海を「聖域」として哨戒する。この海はロシアにとって核戦力の裏庭であり、日本にとっては北海道の目の前だ。

巡航ミサイル原潜(SSGN)

艦級隻数主な艦名備考
ヤーセン級・ヤーセンM級6隻セヴェロドヴィンスク、カザン、ノヴォシビルスク、クラスノヤルスク、アルハンゲリスク、ペルミペルミはジルコン運用艦として設計。9番艦ムルマンスクを2026年6月に起工
オスカーII級6隻前後オリョール、オムスク、トヴェリ、ヴォロネジ、スモレンスクほか改修艦はカリブル運用。運用可能数は少ない

ヤーセンM級は、米海軍が最も警戒するロシア潜水艦だ。静粛性は西側の原潜に近づいたと評価され、カリブルとオーニクス、そしてジルコンを積む。2025年に進水したペルミはジルコンを主兵装とする初の艦で、6隻目として運用に入ったとされる。ロシアは2030年代半ばまでに、ソ連時代の第三世代原潜をすべてこの級で置き換える計画で、2026年6月には9隻目が起工された。戦争で造船所が圧迫されるなか、この計画だけは遅れながらも止まっていない。原潜の仕組みは原子力潜水艦とはで扱った。

攻撃型原潜(SSN)と特殊任務艦

艦級隻数備考
アクラ級9隻前後(運用可能は数隻)1980〜90年代の艦。改修が追いつかない
シエラ級2隻チタン船殻
ヴィクターIII級2隻前後退役間近
ベルゴロド1隻核魚雷ポセイドンの母艦。2022年就役
ハバロフスク1隻ポセイドン搭載の特殊原潜。2025年進水
潜水艦——ロシア海軍の本体

通常動力潜水艦(SSK)

艦級隻数配備備考
改キロ級(636.3型)12隻黒海艦隊6、太平洋艦隊6カリブル運用。黒海の1隻はドックで損傷
キロ級(877型)10隻前後各艦隊1980〜90年代の艦
ラーダ級2〜3隻バルト艦隊開発難航。AIPは搭載せず

改キロ級は太平洋艦隊に6隻が配備され、日本海での活動が最も頻繁なロシア潜水艦だ。カリブルを積むため、ウラジオストクから日本全域を射程に収める。通常動力潜水艦としての静粛性は海自のたいげい型に及ばないとされるが、隻数と巡航ミサイルの存在は無視できない。世界の通常動力潜水艦の序列は通常動力潜水艦ランキング世界の潜水艦ランキングで扱っている。

ロシア海軍のミサイル——艦より重要な3つの名前

ロシア海軍のミサイル——艦より重要な3つの名前
ミサイル種類射程主な搭載艦
カリブル亜音速巡航ミサイル(対地・対艦)対地型で約1,500〜2,500kmブーヤンM級、カラクルト級、改キロ級、ヤーセン級、ゴルシコフ級
オーニクス超音速対艦・対地ミサイル約300〜800kmヤーセン級、ゴルシコフ級、ナヒモフ、沿岸部隊
ジルコン極超音速対艦・対地ミサイル約1,000km(公称)ゴルシコフ級、ヤーセンM級ペルミ、ナヒモフ

ウクライナ戦争でロシアは黒海とカスピ海の艦艇と潜水艦からカリブルを大量に発射し、内陸の都市とインフラを攻撃した。艦隊が港に追い込まれた後も、潜水艦からの発射は続いている。ジルコンは2024年以降、ゴルシコフ級から実戦で使用されたと報じられ、艦艇の数が減っても一発あたりの脅威は増している。ロシア海軍の「衰退」を語るときに見落とされがちなのは、この点だ。

揚陸艦——黒海で最も削られた艦種

艦級隻数備考
イワン・グレン級2隻+艤装中3隻満載約6,600トン。ソ連崩壊後唯一の新型揚陸艦
ロプーチャ級12隻1970〜90年代の艦。黒海で複数を喪失
タピール級3隻1960〜70年代の艦
イワン・ロゴフ級(23900型)艤装中2隻4万トン級の強襲揚陸艦。クリミアのザリフ造船所で建造
ズーブル級2隻大型ホバークラフト

黒海艦隊の揚陸艦は、開戦以来ウクライナの主要な標的になった。2022年3月のベルジャンスクでサラトフが失われ、ミンスク、ノヴォチェルカッスク、ツェーザリ・クニコフが2023年から2024年にかけて沈没または大破した。ウクライナへの海上補給を担う艦が、真っ先に狙われた。4万トン級の強襲揚陸艦イワン・ロゴフ級2隻は、ウクライナから奪ったクリミアの造船所で建造中で、完成の見通しは立っていない。

機雷戦艦艇と支援艦

機雷戦艦艇と支援艦

海軍航空——空母を失った艦載機

固定翼哨戒機はTu-142とIl-38が主力で、いずれも冷戦期の機体。艦載ヘリはKa-27系が中心だ。艦載戦闘機のSu-33とMiG-29Kは、母艦であるクズネツォフの退役で運用の場を失い、陸上基地からの運用に転じている。長距離対艦攻撃はむしろ海軍航空隊ではなく、Tu-160やTu-22M3といった空軍の爆撃機と、地上発射のミサイルが担う。ロシアの戦闘機全体はロシアの戦闘機一覧に整理してある。

黒海の損失——4年間で何を失ったか

時期艦名艦種経緯
2022年3月サラトフ揚陸艦ベルジャンスク港でミサイル攻撃を受け炎上
2022年4月モスクワ巡洋艦ネプチューン対艦ミサイル2発が命中し沈没。黒海艦隊旗艦
2023年9月ミンスク、ロストフ・ナ・ドヌ揚陸艦、潜水艦セヴァストポリのドックで巡航ミサイルの直撃
2023年11月アスコルドカラクルト級ケルチの造船所で艤装中に撃破
2023年12月ノヴォチェルカッスク揚陸艦フェオドシヤ港で撃破
2024年2〜3月イワノヴェツ、ツェーザリ・クニコフ、セルゲイ・コトフミサイル艇、揚陸艦、哨戒艦いずれも無人水上艇の攻撃で沈没
2026年8〜9月アドミラル・エッセン、アドミラル・マカロフほかフリゲートノヴォロシースクでミサイルとドローンの複合攻撃
黒海の損失——4年間で何を失ったか

2026年の注目点

出来事時期意味
ナヒモフの母港到着6月27年の改修を経て就役目前。ロシア水上艦の新たな象徴
クズネツォフの実質的な終焉2025年7月〜2026年固定翼空母を持たない海軍へ
9隻目のヤーセンM起工6月原潜計画は戦争中も継続
9番艦ゴルシコフ級起工5月唯一の新型大型水上艦の建造継続
カラクルト級ブーリャ就役、シトルム進水5〜7月小型ミサイル艦の量産は順調
新型9,500トン級駆逐艦の計画発表9月実現性は低く、信号としての意味が大きい
ノヴォロシースクへの反復攻撃8〜9月退避先でもフリゲートが被弾

日本にとって——太平洋艦隊は隣にいる

ユーリー・ドルゴルーキーと、当時のメドヴェージェフ大統領。写真の時期と現在の隻数は区別して読む。
ユーリー・ドルゴルーキーと、当時のメドヴェージェフ大統領。写真の時期と現在の隻数は区別して読む。
写真:Photo of press-service of Russian President/出典CC BY 4.0)。掲載用に縮小・圧縮。
日本にとって——太平洋艦隊は隣にいる

一方で、太平洋艦隊の水上艦は黒海と同じく老朽化が進み、新造は小型艦に限られる。日本にとっての脅威の中心は、水上艦ではなく、オホーツク海の弾道ミサイル原潜と、日本海のカリブル搭載潜水艦だ。海自が対潜哨戒機と潜水艦に投資し続ける理由の一つは、この隣人にある。北方領土周辺でのロシア軍の動きと合わせて、太平洋艦隊の動向は海自にとって中国と並ぶ「二正面」の一方であり続ける。

投資家の視点——ロシア海軍の衰退は、誰の需要になるか

ロシア企業は本記事の投資対象として扱わない。ただ、ロシア海軍の動向は北欧とバルト三国の海軍増強、NATOの対潜・機雷戦への投資を通じて、欧米の防衛企業の需要になっている。日本にとっては、太平洋艦隊の潜水艦への対処が海自の哨戒機・護衛艦・潜水艦の継続的な需要を支える構図だ。防衛産業全体の見取り図は防衛関連銘柄 完全投資ガイドアメリカ軍事企業ランキングに整理してある。念のため書いておくと、この段落は特定銘柄の購入を勧めるものではなく、投資判断は各自の責任で行う必要がある。

まとめ——沈む水上艦と、増える原潜

ロシア海軍の2026年は、二つの正反対の光景でできている。修理を断念した空母、27年かけて戻る原子力巡洋艦、黒海で退避先まで追われるフリゲート。そして戦争中も起工が続くボレイ級とヤーセンM級。水上艦の海軍としては衰退し、潜水艦の海軍としては強化されている。

私はこの海軍を「もう脅威ではない」と語る論調にも、「依然として世界2位」と語る論調にも与しない。外洋に艦隊を出す力は失われた。海を拒否し、原潜で核と巡航ミサイルを運ぶ力は残っている。日本にとって重要なのは後者で、オホーツク海と日本海の水面下は、黒海の水上で起きたことを知ったうえで、なお警戒すべき海のままだ。

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よくある質問

ロシア海軍に空母はあるのか?

事実上ない。唯一の空母クズネツォフは2017年から改修中だったが、2025年7月に工事が中断され、2026年時点でムルマンスクに係留されたまま除籍か売却の見込み。

アドミラル・ナヒモフはいつ復帰するのか?

2025年7月に浮上して公試を開始し、2026年6月にセヴェロモルスクに到着した。2026年9月時点で正式就役はしておらず、ロシア側は2026年中、西側の追跡者は2026年末から2027年と見ている。

ロシア海軍の潜水艦は何隻あるのか?

約60隻。ボレイ級8隻、ヤーセン級6隻、オスカーII級とアクラ級が各6〜9隻、改キロ級12隻、キロ級約10隻など。ただし改修待ちの艦が多く、運用可能な隻数はその半分程度とされる。

黒海艦隊はどのくらい損害を受けたのか?

巡洋艦モスクワ、揚陸艦4隻以上、潜水艦1隻、哨戒艦とミサイル艇などを喪失し、ウクライナ側は艦隊の3分の1前後を撃沈・損傷させたと発表している。主力はセヴァストポリからノヴォロシースクへ退避したが、2026年にはそこでもフリゲートが繰り返し被弾している。

ロシア海軍で最も警戒すべき艦は?

ヤーセンM級巡航ミサイル原潜。静粛性が西側に近づき、カリブル・オーニクス・ジルコンを運用する。9隻目が2026年6月に起工され、戦争中も建造が続いている。

日本の近くにいるロシア艦は?

太平洋艦隊の巡洋艦ヴァリャーグ、ウダロイ級駆逐艦、改キロ級潜水艦6隻、カムチャツカのボレイ級とヤーセンM級。中国海軍との合同航行も繰り返されている。

出典・参考

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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