
世界最大の潜水艦は何か。水中排水量で比べれば、旧ソ連が建造したタイフーン級が現在も史上最大である。一方、全長だけならロシアの特殊任務原子力潜水艦ベルゴロドが約184メートルに達し、タイフーン級を上回る。
ただし、潜水艦の大きさは強さの順位ではない。弾道ミサイル、無人潜航機、特殊部隊、長期航海設備など、海中へ持ち込む任務が増えるほど船体は膨らむ。巨大潜水艦とは、国家が海の下へ運び込もうとした戦略そのものなのである。
- 水中排水量1位は旧ソ連のタイフーン級
- 全長ではロシアの特殊任務原潜ベルゴロドが最大
- 巨大化の主因は核抑止・長期哨戒・大型兵器・特殊任務
- 排水量や全長だけで戦闘力の優劣は決められない
本記事では、世界最大の潜水艦を水中排水量を中心にTOP15へ整理し、全長、用途、現役・退役・建造中の別を比較する。数値が公表されていない艦については推定値であることを明記し、2026年7月時点で確認できる情報を基準とした。
世界最大の潜水艦ランキングの基準
- 原則として水中排水量を比較
- 同規模なら全長を補助基準に使用
- 完成艦と建造中を対象にし構想段階は除外
- 機密値は概数・推定であることを明示
ランキングを読む前に、三つの基準を押さえておきたい。
第一に、順位は原則として水中排水量で決めた。潜水艦には水上排水量、基準排水量、水中排水量など複数の数字がある。潜航時の船体規模を比べるなら、バラストタンクへ注水した状態を含む水中排水量が最も分かりやすい。排水量が同程度の場合は全長を補助基準とした。
第二に、同じ設計系列の派生型は、最大の代表型へまとめた。たとえばボレイ級と改良型ボレイA級、ヤーセン級とヤーセンM級は同じ項目で扱う。反対に、シーウルフ級3番艦ジミー・カーターのように、船体を約30メートル延長して任務そのものが変わった艦は独立して掲載した。
第三に、完成艦と建造中の艦を対象とし、構想段階は除外した。退役艦は史上最大を判断するために含める。ロシアや中国の要目は機密が多く、表の数字は比較用の概数である。

世界最大の潜水艦ランキングTOP15一覧
- 戦略原潜が上位の多くを占める
- ロシア・旧ソ連艦は二重船殻が多い
- 特殊任務艦は追加区画で全長が伸びる
- 現役・退役・建造中を分けて読む
| 順位 | 艦級・艦名 | 国 | 種別 | 水中排水量 | 全長 | 2026年時点の扱い |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | タイフーン級(941型) | 旧ソ連/ロシア | 戦略原潜 | 約48,000トン | 約175m | 退役 |
| 2 | ベルゴロド(09852型) | ロシア | 特殊任務原潜 | 推定24,000〜30,000トン | 約184m | 現役 |
| 3 | ボレイ/ボレイA級(955/955A型) | ロシア | 戦略原潜 | 約24,000トン | 約170m | 現役 |
| 4 | オスカーII級(949A型) | ロシア | 巡航ミサイル原潜 | 約24,000トン | 約155m | 現役・改修中を含む |
| 5 | コロンビア級 | アメリカ | 戦略原潜 | 約21,100トン | 約171m | 建造中 |
| 6 | オハイオ級 | アメリカ | 戦略/巡航ミサイル原潜 | 約19,000トン | 約171m | 現役 |
| 7 | デルタIV級(667BDRM型) | 旧ソ連/ロシア | 戦略原潜 | 約18,200トン | 約167m | 現役から更新途上 |
| 8 | ドレッドノート級 | イギリス | 戦略原潜 | 約17,200トン | 約154m | 建造中 |
| 9 | ヴァンガード級 | イギリス | 戦略原潜 | 約15,900トン | 約150m | 現役 |
| 10 | ル・トリオンファン級 | フランス | 戦略原潜 | 約14,200トン | 約138m | 現役 |
| 11 | ヤーセン/ヤーセンM級(885/885M型) | ロシア | 巡航ミサイル原潜 | 最大約13,800トン | 最大約139m | 現役・建造中 |
| 12 | アクラ級(971型) | 旧ソ連/ロシア | 攻撃原潜 | 約12,800トン | 約110m | 現役・改修中を含む |
| 13 | USSジミー・カーター | アメリカ | 特殊任務攻撃原潜 | 約12,350トン | 約138m | 現役 |
| 14 | 晋級・094型 | 中国 | 戦略原潜 | 約11,000トン | 約135m | 現役 |
| 15 | バージニア級Block V・VPM搭載型 | アメリカ | 攻撃原潜 | 約10,360トン | 約141m | 建造中 |
2位から4位は、ベルゴロドの排水量が推定値であり、ボレイ級とオスカーII級も資料差がある。この三者の厳密な順番は確定できない。本記事では、ベルゴロドを公表・推定される上限値、同規模の2級を全長順で並べた。
15位 バージニア級Block V・VPM搭載型|約10,360トン
アメリカ海軍のバージニア級Block Vは、標準型へVirginia Payload Module、略してVPMを追加した大型仕様である。VPM搭載艦の全長は約140.5メートル、水中排水量は約1万360トンとなり、標準型の約114.8メートル、約7,925トンから大きく伸びた。アメリカ海軍は、VPMに4本の大径ペイロードチューブを設け、巡航ミサイルや将来装備を搭載する余地を確保している。[^1]
私がこの艦を入れた理由は、単なる「長いバージニア級」ではなく、攻撃原潜が再び大容量兵器庫へ近づく転換点だからだ。無人機や特殊部隊、長射程兵器のため、必要な区画だけを増やしている。
14位 晋級・094型|約11,000トン
中国海軍の094型、NATO名「晋級」は、中国の海上核抑止を担う戦略原潜である。2025年に中国側の公開展示を基に報じられた主要値では、水中排水量約1万1,000トン、全長約135メートルとされた。従来は推定値しかなかったため、数字にはなお慎重さが必要だが、少なくとも1万トン級の大型原潜であることは間違いない。[^2]
船体上部にミサイル区画が張り出すが、重要なのは外形ではない。中国が陸上核戦力だけでなく、捕捉されにくい海中の第二撃能力を実用化した点にある。
13位 USSジミー・カーター|約12,350トン
USSジミー・カーターは、シーウルフ級攻撃原潜の3番艦だが、姉妹艦とは船体規模が大きく異なる。アメリカ海軍の公表値では、全長約138.1メートル、水中排水量約1万2,353トンである。標準的なシーウルフ級に対し、船体中央へ約100フィート、約30.5メートルのマルチミッション・プラットフォームを追加した。[^3]
延長区画の任務は多くが機密だが、海底作業、情報収集、特殊部隊や無人装備の運用を想定したものとみられる。弾道ミサイルを持たない攻撃原潜としては異例の大きさだ。
12位 アクラ級|約12,800トン
旧ソ連が開発した971型、NATO名アクラ級は、攻撃原潜として約1万2,800トンに達する。全長は約110メートルと、同程度の排水量を持つジミー・カーターより短い。これは二重船殻構造や船体の太さ、予備浮力の取り方が違うためである。[^4]
アクラ級は、ソ連原潜が「大きいが騒がしい」と一括りにできない時代へ入った象徴でもある。静粛化を進めながら魚雷、対潜ミサイル、巡航ミサイルを運用し、西側の攻撃原潜へ接近した。私は、巨大戦略原潜よりも、任務の似た西側SSNと比較したときにこそ、この艦の技術的な意味が見えやすいと考える。
11位 ヤーセン/ヤーセンM級|最大約13,800トン
ロシアの885型ヤーセン級は、攻撃原潜と巡航ミサイル原潜の境界を曖昧にした多目的艦である。初期型については水中排水量約1万3,800トン、全長約139メートルとされる。改良型ヤーセンM級は船体を短縮したため、系列最大値として初期型の数字を採用した。[^5]
ヤーセン級の特徴は、対潜・対艦戦だけでなく、垂直発射装置から巡航ミサイルを運用できる点にある。オスカーII級より小さな船体へ、多用途性と長距離打撃力を圧縮したとも言える。巨大化を続けるのではなく、センサー、兵器、静粛性を一隻へ統合する方向へロシア潜水艦が移ったことを示す。
10位 ル・トリオンファン級|約14,200トン
フランス海軍のル・トリオンファン級は、水中排水量約1万4,200トン、全長138メートルの戦略原潜である。フランス国防省によれば4隻体制で運用され、16基のM51潜水艦発射弾道ミサイルを搭載する。[^6]
米露の戦略原潜と比べれば小ぶりだが、独自の核抑止力を常時維持するための能力は船体へ凝縮されている。核戦力を他国の仕組みに委ねず、原潜、ミサイル、弾頭、指揮系統を自国でそろえるフランスの政策が、この1万4,000トン級の大きさを決めた。
9位 ヴァンガード級|約15,900トン
イギリス海軍のヴァンガード級は、水中排水量約1万5,900トン、全長約149.9メートルである。イギリスの核抑止任務を担う現役戦略原潜で、トライデントII D5弾道ミサイルを運用する。[^7]
ヴァンガード級は、攻撃原潜よりはるかに大きい一方、タイフーン級の3分の1程度の排水量に収まる。これは搭載ミサイルの寸法、単殻・複殻の設計思想、必要とする北極海性能が異なるためだ。核抑止という同じ仕事でも、国家ごとに「必要な巨大さ」はまったく違う。
8位 ドレッドノート級|約17,200トン
ドレッドノート級はヴァンガード級の後継として建造中のイギリス戦略原潜である。イギリス海軍の公表値は水中排水量約1万7,200トン、全長153.6メートルで、完成すれば同国史上最大の潜水艦となる。[^8]
船体が大型化した理由は、単純なミサイル増載ではない。新しい原子炉、静粛化設備、居住区、安全設備、アメリカと共同開発した共通ミサイル区画などを統合するためである。2025年には一番艦の竜骨据え付けが公表され、2030年代初頭の就役が目指されている。現役艦ではないため、ランキング表では建造中と明記した。
7位 デルタIV級|約18,200トン
667BDRM型、NATO名デルタIV級は、旧ソ連末期に完成した戦略原潜である。水中排水量約1万8,200トン、全長約167メートルで、背中に大きく張り出した弾道ミサイル区画が外観上の特徴となる。[^9]
ボレイ級への更新が進んだ現在、この艦は新世代ではない。しかし、ソ連が巨大な液体燃料式SLBMを海中へ持ち込み、長期間の戦略哨戒を成立させた設計として重要だ。スマートな船体とは言いにくいが、兵器の寸法を船体側で受け止めた結果が、あの高い「背中」に表れている。
6位 オハイオ級|約19,000トン
- 大量の戦略兵器を搭載できる
- 長期哨戒の居住性を確保できる
- 特殊部隊や無人装備へ転用しやすい
- 将来改修のための容積を持てる
アメリカ海軍のオハイオ級は、全長約170.7メートル、水中排水量約1万9,000トンである。戦略原潜型はトライデントII D5を運用し、一部は巡航ミサイル原潜へ改装された。アメリカ海軍は、水中排水量を1万8,750米トン、約1万9,000メートルトンと公表している。[^10]
オハイオ級は、長い就役期間と改装余地の価値も証明した。巡航ミサイル原潜への転用では、大量のトマホークと特殊部隊運用能力を得た。余剰容積が時代の変化へ対応する余地になったのである。
5位 コロンビア級|約21,100トン
コロンビア級はオハイオ級を置き換えるアメリカの次世代戦略原潜である。全長はオハイオ級とほぼ同じ約170.7メートルだが、排水量は2万800ロングトン、メートルトン換算で約2万1,100トンへ増える。アメリカ海軍は建造中の将来艦として、2030年10月までに戦略哨戒へ投入できる状態を求めている。[^11]
ミサイル発射管はオハイオ級より少ない16基だが、艦全体は重くなる。ここに現代潜水艦の大型化の本質がある。搭載弾数だけでなく、静粛性、寿命中の原子炉交換を不要にする炉心、電気推進、保守性、乗員環境へ重量を使うからだ。外から見えない性能へ排水量を配分する時代になったのである。
4位 オスカーII級|約24,000トン
949A型、NATO名オスカーII級は、水中排水量約2万4,000トン、全長約155メートルの巡航ミサイル原潜である。船体側面に大型対艦ミサイルP-700の発射筒を24基並べ、アメリカ空母打撃群を遠距離から攻撃する目的で設計された。[^12]
この艦が太いのは、二重船殻の外側へ巨大なミサイル区画を抱えたためである。一般的な魚雷主体の攻撃原潜とは発想が違い、「海中を移動する対空母ミサイル連隊」に近い。私は、タイフーン級以上にソ連海軍らしい艦だと思う。戦術上の課題を船体規模と搭載弾数で解決しようとした思想が、外形から読み取れるからだ。
3位 ボレイ/ボレイA級|約24,000トン
ロシアの955型ボレイ級と955A型ボレイA級は、水中排水量約2万4,000トン、全長約170メートルの戦略原潜である。建造元セヴマシュは全長170メートル、幅13.5メートルを示しており、公開資料では水中排水量約2万4,000トンとされる。[^13]
タイフーン級の半分ほどの排水量でありながら、固体燃料式のブラヴァーSLBMを16基搭載する。これはロシアが戦略原潜を小さくしたというより、ミサイルと船体の組み合わせを現実的な規模へ戻した結果だ。巨大さの記録を捨て、量産性、静粛性、維持費、基地運用を優先した点に、ソ連からロシアへの設計思想の変化が表れている。
2位 ベルゴロド|推定24,000〜30,000トン
09852型ベルゴロドは、全長約184メートルで世界最長とされる現役潜水艦である。セヴマシュは2022年7月、深海救難艇、自律型無人潜航機、研究装備などを搭載できる特殊任務原潜としてロシア海軍へ引き渡した。正確な性能は機密で、排水量は約2万4,000〜3万トンと幅のある推定しかない。[^14]
原型はオスカーII級として建造されていた船体だが、長期間の中断後に特殊任務艦へ改設計された。全長はタイフーン級より約9メートル長い一方、太さと内部構造が違うため、排水量ではタイフーン級へ届かないとみられる。
ベルゴロドの巨大さは、ミサイル発射筒だけでは説明できない。海底設備への作業、深海用小型艇の母艦、長距離無人兵器の運用など、通常のSSBNやSSNにはない任務を一隻へ集めた結果である。何を積んでいるかが見えない船ほど、長さの意味も読みにくい。

1位 タイフーン級|約48,000トン
- 巨大なR-39弾道ミサイル20基
- 左右に大型耐圧殻を置く多殻構造
- 北極海の氷下・氷上運用
- 大きな予備浮力と長期哨戒設備
世界最大の潜水艦第1位は、旧ソ連の941型、NATO名タイフーン級である。水中排水量は資料によって約3万3,800〜4万8,000トンと幅があるが、最大値では約4万8,000トン、全長約175メートル、最大幅約23メートルに達する。ロシアのルビン設計局と建造所セヴマシュも、941型を潜水艦建造史上最大の艦として位置付けている。[^15]
船体内部は、左右に大型の耐圧殻を並べる双胴に近い多殻構造だった。中央や上部にも耐圧区画を持ち、巨大なR-39弾道ミサイル20基をセイル前方へ配置した。厚い氷を割って浮上する北極海運用、大きな予備浮力、長期哨戒の居住性まで求めたため、通常の潜水艦とは別物の幅になった。
タイフーン級は6隻建造されたが、維持費、ミサイル体系の消滅、ロシア海軍の縮小によって退役した。最後まで残ったドミトリー・ドンスコイも試験任務を終え、現在は作戦用戦略原潜ではない。
この艦を「無駄に大きかった」と片付けるのは簡単だ。しかし私は、タイフーン級をソ連の虚栄ではなく、北極海、巨大SLBM、第二撃能力、乗員生存性という要求を全部足した答えだと見る。潜水艦の巨体は設計者の趣味ではなく、国家戦略が押し込んだ荷物の総重量なのである。
排水量ではタイフーン級、全長ではベルゴロドが世界最大
- タイフーン級は太くて重い
- ベルゴロドは特殊任務区画を持つ最長艦
- 船体直径や耐圧殻の数も容積を左右
- 単一の数値だけで巨大さは決まらない
ランキングの結論を整理すると、史上最大の潜水艦は水中排水量約4万8,000トンのタイフーン級である。現在確認できる最長の潜水艦は全長約184メートルのベルゴロドだ。
この違いは、排水量と全長が同じ尺度ではないことを示す。タイフーン級は幅広い多殻構造で、短いわけではないが、特に「太くて重い」。ベルゴロドは既存船体を延長した特殊任務艦で、「細長い」。ジミー・カーターも同様に、任務区画を挿入したため全長の割に排水量順位は下がる。
潜水艦を比較するときは、長さだけで巨大さを判断してはいけない。船体直径、耐圧殻の数、予備浮力、搭載物、二重船殻か単殻かまで見なければ、実際の容積は分からない。

なぜロシア・旧ソ連の潜水艦は巨大なのか
- 大型ミサイルを収める区画
- 二重船殻と大きな予備浮力
- 北極海での作戦要求
- 一隻への兵器集中搭載
TOP15の上位はロシア・旧ソ連艦が多い。主な理由は四つある。
一つ目はソ連製ミサイルの大きさだ。R-29系列やR-39を載せるには、巨大なミサイル区画が必要だった。
二つ目は二重船殻である。予備浮力、耐損傷性、北極海運用に利点がある反面、排水量と幅が増えやすい。
三つ目は北極海運用だ。氷下で待機し、必要なら氷を割って浮上するため、強度、浮力、長期航海設備が要る。
四つ目は兵器の集中搭載だ。オスカーII級は大型対艦ミサイル24発、タイフーン級はSLBM20発を抱え、一隻の投射力を増やした。
潜水艦は大きいほど強いのか
- 搭載量と航続性には有利
- 建造費・維持費・ドック制約は増える
- 潜水艦戦では静粛性と探知能力が重要
- ランキングは任務要求の大きさとして読む
結論から言えば、大きいほど強いとは限らない。大型化には搭載量、航続性、居住性、発電能力、将来改修余地という利点がある。一方で、建造費、維持費、ドックの制約、浅海域での運動性、巨大な表面積に伴う騒音管理などの負担も増える。
潜水艦戦では、先に探知し、自艦の位置を悟らせないことが重要だ。4万トンの艦が8,000トンの艦より自動的に優位になるわけではない。戦略原潜は生存して報復能力を残すこと、攻撃原潜は静粛性、センサー、兵器管制、練度が重要になる。
巨大潜水艦ランキングは、戦闘力ランキングではなく、各国が何を海中へ運ぼうとしたかのランキングとして読むべきだ。ここを取り違えると、タイフーン級の記録だけを見て現代ロシアの潜水艦戦力が世界一だと誤解してしまう。

日本のたいげい型は世界最大級と比べてどれほど小さいか
- 日本近海の対潜・対水上戦が中心
- 大陸間弾道ミサイルも原子炉も不要
- 静粛性と蓄電池へ容積を配分
- 小ささも任務から逆算した合理性
たいげい型は基準排水量約3,000トン、全長84メートルである。水中排水量は公表されず同条件で順位付けできないが、タイフーン級との規模差は明らかだ。[^16]
ただし、たいげい型が小さいから劣るという話ではない。日本が必要とするのは、沿岸から周辺海域で静かに行動し、対潜・対水上戦を行う通常動力潜水艦である。大陸間弾道ミサイルも原子炉も積まない以上、2万トン級の船体は必要ない。任務に合わない巨大さは、能力ではなく負債になる。
世界最大級の原潜と日本の潜水艦を比べると、設計の優劣より国家戦略の差が見える。たいげい型は海中へ核抑止を持ち込まず、充電池、静粛性、近海での運用効率へ限られた容積を使う。小ささもまた、任務から逆算した合理性である。
よくある質問
現役で世界最大の潜水艦は何か
排水量の公表値が不明確なため断定には注意が要るが、現役艦ではベルゴロドが最大級であり、全長約184メートルでは世界最長とされる。通常の戦略原潜に限れば、ロシアのボレイ級が約2万4,000トンで最大級に位置する。
史上最大の通常動力潜水艦は何か
原子力を使わない潜水艦では、第二次世界大戦中の日本海軍伊400型が特に巨大だった。全長は約122メートルで、攻撃機を格納して発進させる「潜水空母」として建造された。原潜が登場するまで、世界最大級の潜水艦だった。現代の通常動力潜水艦ランキングとは目的も時代も異なるため、本記事のTOP15には含めていない。
潜水艦の排水量はなぜ資料によって違うのか
水上・水中・基準・満載など、どの状態を測るかが違うためである。さらに英米のロングトンとメートルトンの換算差、設計値と実測値、改修後の重量増加、軍事機密による推定も重なる。本記事は可能な限り水中排水量をメートルトン相当にそろえたが、ロシア・中国艦は概数として扱った。
建造中の潜水艦をランキングへ入れる理由は何か
コロンビア級とドレッドノート級は構想ではなく実艦の建造中である。近い将来の最大級を把握するため掲載したが、実運用能力は未確定なので現役艦とは区別した。
まとめ
世界最大の潜水艦を水中排水量で比べると、第1位は旧ソ連のタイフーン級で約4万8,000トン、第2位は推定値ながらロシアのベルゴロド、第3位と第4位には約2万4,000トン級のボレイ級とオスカーII級が続く。全長では約184メートルのベルゴロドが首位である。
ランキング上位を占めるのは、弾道ミサイルを運ぶ戦略原潜と、大型巡航ミサイルや特殊装備を運ぶ原潜だ。巨大化の理由は、速力や魚雷戦の強さではなく、核抑止、長期哨戒、北極海運用、大量の兵器、海底作業といった任務にある。
潜水艦の大きさは、強さの単純な物差しではない。何を海中へ隠し、どこで、どれだけ長く行動させたいのか。その国家的な要求を積み上げた結果が排水量となる。巨大潜水艦とは、鋼鉄でできた怪物というより、海中へ沈められた国家戦略の容器なのである。
主要参考資料
[^1]: U.S. Navy, “Attack Submarines – SSN”; Naval Sea Systems Command, Virginia Payload Module関連資料。 [^2]: 中国海軍創設76周年行事で公開された094型要目に関する2025年報道、および公開資料を整理した各種データベース。中国艦の数値は公開範囲が限られるため概数とした。 [^3]: U.S. Navy, “Attack Submarines – SSN”; NAVSEA, USS Jimmy CarterのMulti-Mission Platformに関する資料。 [^4]: Naval Technology, Akula Class Nuclear-Powered Submarinesに関する艦級資料。 [^5]: Naval Technology, Yasen Class Submarineに関する艦級資料。885型と885M型で寸法が異なるため系列最大値を採用。 [^6]: フランス国防省、Sous-marins nucléaires lanceurs d’engins, Le Triomphant級主要要目。 [^7]: Royal Navy, “Vanguard Class”公式艦級紹介。 [^8]: Royal Navy, “Dreadnought Class”公式艦級紹介; BAE Systems, Dreadnought建造進捗資料。 [^9]: Naval Technology, Delta IV Class Submarineに関する艦級資料。 [^10]: U.S. Navy, “Fleet Ballistic Missile Submarines – SSBN”公式ファクトファイル。 [^11]: U.S. Navy, “Fleet Ballistic Missile Submarines – SSBN”; Columbia Class計画資料。 [^12]: Naval Technology, Oscar II Class Submarineに関する艦級資料。 [^13]: Sevmash, Project 955 Borei級主要寸法および建造・就役資料; 公開艦級資料。 [^14]: Sevmash, Project 09852 Belgorod引き渡し発表(2022年7月8日); TASS, Belgorodの全長・機密要目に関する報道。 [^15]: Rubin Central Design Bureau for Marine Engineering, Project 941紹介; Sevmash, Dmitry Donskoy建造50周年資料; 公開艦級資料。 [^16]: 海上自衛隊、潜水艦「たいげい」型および試験潜水艦「たいげい」型の公式装備紹介。
参考資料・主な出典
U.S. Navy|Attack Submarines – SSN|資料を確認
U.S. Navy|Fleet Ballistic Missile Submarines – SSBN|資料を確認
Royal Navy|Vanguard Class|資料を確認
Royal Navy|Dreadnought Class|資料を確認
海上自衛隊|潜水艦たいげい型|資料を確認
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