韓国海軍は、日本の隣で最も急速に姿を変えている海軍だ。
イージス艦は6隻体制へ向かい、3,000トン級の国産潜水艦は弾道ミサイルを積み、2025年10月には米大統領が韓国の原子力潜水艦建造を「承認」した。造船所ではハンファオーシャンとHD現代重工業が次期駆逐艦KDDXの主導権を争い、その同じ造船所が海自のもがみ型と海外市場で受注を競っている。2026年6月には、2018年のレーダー照射問題以来止まっていた海自と韓国海軍の捜索救難共同訓練が9年ぶりに再開された。
つまり韓国海軍は、日本にとってライバルであり、パートナーであり、造船業の競争相手でもある。それなのに日本語で読める韓国海軍の全艦リストは驚くほど少ない。本記事は、駆逐艦から哨戒艇、掃海艦、補給艦まで、2026年9月時点の現役艦を艦種別に艦名つきで整理し、建造中・計画中の艦と、海上自衛隊との関係まで押さえる。数値は韓国海軍・防衛事業庁の公表資料と公開データベースに基づき、資料間で差がある箇所は幅で書いた。
結論——韓国海軍の全体像を1枚で

| 艦種 | 隻数(2026年9月時点) | 主な艦級 |
|---|---|---|
| イージス駆逐艦 | 4隻(+2隻建造中) | 世宗大王級3、正祖大王級1 |
| 駆逐艦(非イージス) | 9隻 | 忠武公李舜臣級6、広開土大王級3 |
| フリゲート | 17隻前後 | 忠南級1、大邱級8、仁川級6、蔚山級2 |
| コルベット | 3隻前後 | 浦項級(退役進行中) |
| 潜水艦 | 約20隻 | 島山安昌浩級3、孫元一級9、張保皐級(建造9・退役進行中) |
| 揚陸艦 | 10隻 | 独島級2、天王峰級4、高峻峰級4 |
| ミサイル艇・高速艇 | 約70隻 | 尹永夏級18、チャムスリ211級16以上、旧チャムスリ級 |
| 機雷戦艦艇 | 14隻 | 敷設艦2、掃海艦6、掃海艇6 |
| 補給・支援艦 | 10隻前後 | 昭陽、天池級3、統営級2、江華島ほか |
合計はおよそ160隻、総排水量は約23万トン。私が最初にこの表を作ったとき、隻数の多さと排水量の小ささのギャップに目が留まった。海自の護衛艦約50隻・潜水艦22隻体制と比べると、大型艦の数では海自が上、小型艇と揚陸艦の数では韓国が上、という構図になる。理由は簡単で、韓国海軍の第一の敵は今も北朝鮮であり、黄海と日本海の沿岸で高速艇と戦い、有事には海兵隊を上陸させる海軍として設計されているからだ。その海軍が2010年代から「大洋海軍」を掲げてイージス艦と大型潜水艦を増やし、いま外洋型へ脱皮しようとしている。以下、艦種ごとに見ていく。
韓国海軍の歩み——もらった駆逐艦から、輸出する駆逐艦へ
韓国海軍は1945年11月の海防兵団に始まり、1949年に募金で買った旧米艦の白頭山が最初の戦闘艦だった。朝鮮戦争から1970年代までは米海軍の退役駆逐艦を譲り受けて艦隊を組み、1980年代に蔚山級と浦項級で国産化を始め、1990年代のKDX計画で初めて自国設計の駆逐艦を持った。2000年代に「大洋海軍」を掲げてイージス艦と独島級を建造し、2010年代からは自国で設計した艦を海外に売る側に回っている。
私はこの80年の速さに、正直なところ驚いている。海自が帝国海軍の遺産と米国の支援の上に出発したのに対し、韓国海軍はほぼゼロから、しかも常に北朝鮮と対峙しながら、輸出できる艦隊を作った。艦名に歴史上の人物と戦死者の名が並ぶのは、その過程で払った代償の記録でもある。
組織——3つの艦隊と1つの機動艦隊
韓国海軍は釜山の海軍作戦司令部の下に、3つの海域艦隊と機動部隊を置いている。
| 部隊 | 拠点 | 担当と主力 |
|---|---|---|
| 第1艦隊 | 東海(日本海側) | 北朝鮮潜水艦への対処。駆逐艦・フリゲート |
| 第2艦隊 | 平沢(黄海側) | 北方限界線(NLL)の警備。高速艇・フリゲートの主戦場 |
| 第3艦隊 | 木浦(南岸) | 南西海域と済州周辺の防衛 |
| 機動艦隊司令部(旧第7機動戦団) | 済州 | イージス艦とKDX-IIを集めた外洋部隊。「大洋海軍」の中核 |
| 潜水艦司令部 | 鎮海 | 全潜水艦を一元指揮 |
兵力は海兵隊を含めて約7万人。海兵隊は約2万9,000人で、海軍の指揮下にありながら独自の司令部を持つ。日本で言えば海自と水陸機動団を足した規模だが、海兵隊の比率がはるかに高い。この人員構成も、韓国海軍が「上陸する海軍」として作られてきたことを示している。
イージス駆逐艦——世宗大王級と正祖大王級

写真:U.S. Navy / N. Brett Morton/出典(パブリックドメイン)
世宗大王級(KDX-III Batch-I)3隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 | 建造 |
|---|---|---|---|
| DDG-991 | 世宗大王(セジョンデワン) | 2008年12月 | 現代重工業 |
| DDG-992 | 栗谷李珥(ユルゴク・イイ) | 2010年9月 | 大宇造船海洋 |
| DDG-993 | 西厓柳成龍(ソエ・リュソンリョン) | 2012年9月 | 現代重工業 |
満載排水量約10,600トン、VLSは米国製Mk41と韓国製K-VLSを合わせて128セル。これはアーレイ・バーク級の96セル、海自まや型の96セルを上回り、就役当時は世界最多だった。SPY-1D(V)レーダーとイージス・システムを積み、対空にはSM-2、K-VLSには国産の巡航ミサイル玄武-3と対潜ロケット紅鮫を収める。ただし弾道ミサイル迎撃用のSM-3は運用しておらず、北朝鮮の弾道ミサイルに対しては探知・追尾が主任務だった。この点が次のバッチで変わる。海自のイージス艦との比較は日本のイージス艦を徹底解説と世界最強イージス艦ランキングを参照してほしい。
正祖大王級(KDX-III Batch-II)1隻+2隻建造中
| 艦番号 | 艦名 | 状況 |
|---|---|---|
| DDG-995 | 正祖大王(チョンジョデワン) | 2024年11月27日引渡し |
| DDG-996 | 茶山丁若鏞(タサン・チョンヤギョン) | 2025年9月進水、2026年末引き渡し予定 |
| 3番艦 | 大湖金宗瑞(テホ・キムジョンソ) | 2026年2月命名、建造中 |
満載排水量約12,000トンと世宗大王級よりさらに大きく、イージスはベースライン9系で弾道ミサイル対処能力を持ち、SM-3とSM-6の運用が可能になった。VLSはMk41に加えて大型化したK-VLS-IIを併用し、韓国製の長射程ミサイルを積む。1番艦の正祖大王は2025年の海軍創設80周年観艦式で一般公開され、韓国海軍の新しい顔として扱われている。3隻が揃えば韓国のイージス艦は6隻となり、海自の8隻に迫る。イージス艦保有国の全体像はイージス艦保有国ランキングにまとめてある。
駆逐艦(非イージス)——忠武公李舜臣級と広開土大王級
忠武公李舜臣級(KDX-II)6隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| DDH-975 | 忠武公李舜臣(チュンムゴン・イスンシン) | 2003年12月 |
| DDH-976 | 文武大王(ムンムデワン) | 2004年10月 |
| DDH-977 | 大祚栄(テジョヨン) | 2005年7月 |
| DDH-978 | 王建(ワンゴン) | 2006年11月 |
| DDH-979 | 姜邯賛(カンガムチャン) | 2007年10月 |
| DDH-981 | 崔瑩(チェヨン) | 2008年9月 |
満載約5,500トン。SM-2を撃てるMk41 VLSと国産K-VLSを持ち、ステルス形状を取り入れた韓国初の本格的な外洋駆逐艦だ。ソマリア沖の海賊対処に派遣される清海部隊の主力を長く務め、2011年にはアデン湾で乗っ取られた韓国船を奪還する「アデン湾の黎明作戦」を崔瑩が支援した。韓国海軍の「外洋に出る顔」は、イージス艦より先にこのクラスが作った。
広開土大王級(KDX-I)3隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| DDH-971 | 広開土大王(クァンゲトデワン) | 1998年7月 |
| DDH-972 | 乙支文徳(ウルチムンドク) | 1999年9月 |
| DDH-973 | 楊万春(ヤンマンチュン) | 2000年7月 |
満載約3,900トン。韓国が初めて自国で設計した駆逐艦で、海自の基準では護衛艦DDに近い。2018年12月、能登半島沖で海自のP-1哨戒機に火器管制レーダーを照射したとされる艦が、この級の広開土大王だった。2016年からは戦闘システムの換装と曳航ソナーの追加を受け、2020年代も第一線に残っている。
KDDX——次期駆逐艦をめぐる造船2社の争い
KDX-IIの後継として計画されているのが、韓国型次期駆逐艦KDDXだ。軽荷排水量約7,100トン、統合マストにSバンドとXバンドの二重レーダーを収め、統合電気推進を採用する。イージスではなく国産戦闘システムを載せる点が最大の特徴で、韓国が「レーダーもミサイルも戦闘システムも自前」の駆逐艦を持てるかどうかの試金石になっている。
2026年2月、防衛事業推進委員会が詳細設計と先導艦建造の計画を議決し、5月の第1次入札にはHD現代重工業が参加せず、ハンファオーシャンが主導する形が濃厚となった。基本設計をHD現代が担当してきた経緯があるため、設計と建造が別会社に分かれるかどうかが韓国造船業界の最大の関心事になっている。6隻の建造が計画されている。
フリゲート——大邱級・仁川級・忠南級
韓国海軍の主力は隻数で言えばフリゲートだ。旧式の蔚山級と浦項級を、FFXと呼ばれる新型フリゲート計画で段階的に置き換えている。
忠南級(FFX Batch-III)2隻引渡し済み・計6隻
| 艦番号 | 艦名 | 状況 |
|---|---|---|
| FFG-828 | 忠南(チュンナム) | 2024年12月18日引渡し |
| FFG-829 | 慶北(キョンブク) | 2025年6月進水、2026年6月19日引渡し。約6か月の戦力化訓練後に作戦配備予定 |
満載約4,300トン。艦橋周りに4面固定式のAESAレーダーを備え、フリゲートでありながら小型イージス艦のような外観を持つ。K-VLSに国産の艦対空ミサイルを積み、5インチ砲、海星対艦ミサイル、対潜ロケットを搭載する。6隻が計画され、以後のBatch-IVも構想中で、2030年代の韓国海軍の数の主力になる。
大邱級(FFX Batch-II)8隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| FFG-818 | 大邱(テグ) | 2018年3月 |
| FFG-819 | 慶南(キョンナム) | 2021年1月 |
| FFG-821 | ソウル | 2021年7月 |
| FFG-822 | 東海(トンヘ) | 2021年11月 |
| FFG-823 | 大田(テジョン) | 2023年2月 |
| FFG-825 | 浦項(ポハン) | 2023年3月 |
| FFG-826 | 天安(チョナン) | 2023年5月 |
| FFG-827 | 春川(チュンチョン) | 2023年10月 |
満載約3,650トン。ロールス・ロイスMT30ガスタービンと電動機を組み合わせたハイブリッド電気推進で、対潜戦での静粛性を重視した設計だ。K-VLS 16セルに海弓艦対空ミサイルと紅鮫対潜ロケットを積む。艦名の天安は、2010年に北朝鮮の魚雷攻撃で沈没した哨戒艦天安の名を継いだもので、韓国海軍にとって特別な意味を持つ艦だ。2026年には大田がカナダへ遠洋航海し、潜水艦とともに輸出商談の顔を務めた。
仁川級(FFX Batch-I)6隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| FFG-811 | 仁川(インチョン) | 2013年1月 |
| FFG-812 | 京畿(キョンギ) | 2014年11月 |
| FFG-813 | 全北(チョンブク) | 2015年1月 |
| FFG-815 | 江原(カンウォン) | 2016年1月 |
| FFG-816 | 忠北(チュンブク) | 2016年1月 |
| FFG-817 | 光州(クァンジュ) | 2016年11月 |
満載約3,250トン。VLSを持たず、艦対艦・対潜中心の沿岸フリゲートで、退役する蔚山級と浦項級の穴を埋めるために急いで建造された。海自の基準なら「小さな汎用護衛艦」に当たる。
蔚山級・浦項級——退役へ向かう第一世代
1980年代に建造された国産第一世代の蔚山級フリゲートと浦項級コルベットは、大邱級と忠南級に置き換えられて退役が進み、2026年時点で残るのは蔚山級2隻、浦項級3隻前後とされる。浦項級は一時は20隻以上を数え、黄海のNLLで北朝鮮艇と睨み合ってきた韓国海軍の「働き者」だった。退役艦の一部はフィリピン、ベトナム、エジプト、ペルーなどへ譲渡され、韓国の防衛外交の道具にもなっている。
潜水艦——3,000トン級で弾道ミサイルを撃つ

写真:U.S. Navy / Analice Baker/出典(パブリックドメイン)
韓国海軍の潜水艦部隊は、日本の海自潜水艦部隊と並ぶアジア有数の通常動力潜水艦戦力だ。しかも設計思想が海自とまったく違う。海自の潜水艦が対潜と対艦に特化した「隠れる艦」であるのに対し、韓国の最新潜水艦は弾道ミサイルを積んだ「撃つ艦」として作られている。
島山安昌浩級(KSS-III)3隻+Batch-II 3隻建造中
| 艦番号 | 艦名 | 状況 |
|---|---|---|
| SS-083 | 島山安昌浩(トサン・アンチャンホ) | 2021年8月就役 |
| SS-085 | 安武(アンム) | 2023年4月就役 |
| SS-086 | 申采浩(シンチェホ) | 2024年4月就役 |
| SS-087 | 張英実(チャン・ヨンシル) | Batch-II 1番艦。2025年10月進水、2027年末引き渡し予定 |
| Batch-II 2番艦 | 建造中 | 2026年進水予定 |
| Batch-II 3番艦 | 建造中 | 2031年引き渡し予定 |
水中排水量約3,750トン。韓国が初めて自国で設計・建造した3,000トン級潜水艦で、艦内に6セルの垂直発射管を持ち、潜水艦発射弾道ミサイル玄武-4-4を運用する。核を持たない国で弾道ミサイル潜水艦を持つのは、世界でも韓国だけだ。2026年3月には1番艦がカナダの次期潜水艦計画の売り込みのため鎮海を出港し、グアムとハワイを経て2か月かけてカナダへ渡った。
Batch-IIの張英実は水中排水量約4,000トンに大型化し、垂直発射管を10セルに増やし、鉛蓄電池をリチウムイオン電池に置き換えた。リチウムイオン電池潜水艦は海自のそうりゅう型後期艦とたいげい型が世界に先駆けて実用化した技術で、韓国はそれを追う形になる。通常動力潜水艦の世界的な序列は通常動力潜水艦ランキングで扱っている。
孫元一級(KSS-II)9隻
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| SS-072 | 孫元一(ソンウォニル) | 2007年12月 |
| SS-073 | 鄭地(チョンジ) | 2008年12月 |
| SS-075 | 安重根(アンジュングン) | 2009年12月 |
| SS-076 | 金佐鎮(キムジャジン) | 2014年12月 |
| SS-077 | 尹奉吉(ユンボンギル) | 2016年6月 |
| SS-078 | 柳寛順(ユグァンスン) | 2017年7月 |
| SS-079 | 洪範図(ホンボムド) | 2018年1月 |
| SS-081 | 李範奭(イボムソク) | 2019年5月 |
| SS-082 | 申乭石(シンドルソク) | 2020年1月 |
ドイツの214型をライセンス建造した燃料電池AIP潜水艦で、水中排水量約1,860トン。安重根や尹奉吉など、抗日運動家の名を冠した艦が多く、艦名の由来を知ると日本人としては複雑な気持ちになる。ただしそれは韓国海軍が独立運動家を「海軍の英雄」として扱っているという事実であり、艦名一覧を眺めるだけでこの海軍の自己認識が見えてくる。
張保皐級(KSS-I)建造9隻・退役進行中
| 艦番号 | 艦名 | 就役 |
|---|---|---|
| SS-061 | 張保皐(チャンボゴ) | 1993年6月 |
| SS-062 | 李阡(イチョン) | 1994年6月 |
| SS-063 | 崔茂宣(チェムソン) | 1995年2月 |
| SS-065 | 朴葳(パグィ) | 1995年8月 |
| SS-066 | 李従茂(イジョンム) | 1996年8月 |
| SS-067 | 鄭運(チョンウン) | 1997年8月 |
| SS-068 | 李純信(イスンシン) | 2000年2月 |
| SS-069 | 羅大用(ナデヨン) | 2000年12月 |
| SS-071 | 李億祺(イオクキ) | 2001年12月 |
ドイツの209型をもとにした水中排水量約1,290トンの小型潜水艦。初期艦は30年を超え、順次退役と改修が進んでいる。1990年代、このクラスが米韓演習で米空母を「撃沈」判定に持ち込んだ逸話は、韓国海軍が潜水艦にこだわる原点としてよく語られる。
原子力潜水艦——2025年10月の「承認」とその後
2025年10月29日の米韓首脳会談で、李在明大統領は原潜用核燃料の供給承認を求め、トランプ大統領は翌日「韓国の原子力潜水艦建造を承認した」と表明した。ただし米側は建造場所としてハンファが買収したフィラデルフィアのフィリー造船所を挙げ、韓国側は「承認を受けたのは燃料であり、建造は国内」と説明するなど、両国の言い分にはずれがある。11月の合意文書でも建造場所は特定されていない。
フィリー造船所は商船用の設備しかなく、原子炉搭載に必要な密閉ドックや放射線遮蔽設備を一から作る必要がある。韓国側は約10年以内の保有を見込むが、専門家の多くは技術と燃料の両面で時間がかかると見ている。それでも、日本が原潜保有の是非を議論している段階で、韓国が米国の承認を先に取りつけた事実は重い。日韓の潜水艦戦力の差は、2030年代に「動力」の差として現れる可能性がある。
揚陸艦——独島級と天王峰級

写真:U.S. Navy / Michael Achterling/出典(パブリックドメイン)
| 艦級 | 艦名 | 満載排水量 | 就役 |
|---|---|---|---|
| 独島級(LPH) | 独島(トクト) | 約19,000トン | 2007年7月 |
| 独島級(LPH) | 馬羅島(マラド) | 約19,000トン | 2021年6月 |
| 天王峰級(LST-II) | 天王峰、天子峰、日出峰、露積峰 | 約6,900トン | 2014〜2018年 |
| 高峻峰級(LST) | 高峻峰、毘盧峰、香炉峰、聖人峰 | 約4,400トン | 1993〜1999年 |
独島級は全通甲板を持つヘリコプター揚陸艦で、ヘリ10機前後とエアクッション揚陸艇2隻、海兵約700人を運ぶ。日本から見ればいずも型に近い艦種だが、いずも型が対潜ヘリ空母から発展したのに対し、独島級は最初から上陸作戦の指揮艦として作られている。1番艦の艦名が竹島の韓国側呼称であることは、日本側からは無視できない政治的メッセージでもある。
韓国海軍はこの独島級の次に、F-35Bを運用する軽空母CVXを計画していたが、2026年時点で本格的な建造には着手しておらず、無人機運用艦への再設計を含めて計画の見直しが続いている。強襲揚陸艦と空母の違いは強襲揚陸艦とはで整理してある。
ミサイル艇・高速艇——黄海の最前線
| 艦級 | 隻数 | 満載排水量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 尹永夏級(PKG) | 18隻 | 約570トン | 海星対艦ミサイル4発、76mm砲。ウォータージェット推進 |
| チャムスリ211級(PKMR) | 16隻以上 | 約250トン | 130mm誘導ロケット、76mm砲。旧チャムスリ級の後継 |
| チャムスリ級(PKM) | 約35隻 | 約170トン | 1978〜93年建造。順次退役中 |
韓国海軍の実戦経験は、この小型艇の世界に集中している。1999年と2002年の延坪海戦は、いずれも黄海のNLLで北朝鮮の警備艇とチャムスリ級が撃ち合った戦闘で、2002年の第二次延坪海戦ではチャムスリ357号艇の艇長・尹永夏大尉ら6人が戦死した。尹永夏級ミサイル艇の艦名は、この海戦の戦死者から取られている。韓国海軍の艦名一覧に「英雄」の名が多い理由は、北朝鮮と撃ち合った歴史そのものにある。
機雷戦艦艇——朝鮮戦争の記憶

| 艦級 | 艦名 | 役割 |
|---|---|---|
| 南浦級(MLS-II) | 南浦 | 機雷敷設艦、約4,200トン |
| 元山級(MLS) | 元山 | 機雷敷設艦、約3,400トン |
| 襄陽級(MSH) | 襄陽、甕津、海南、南海、洪城、高城 | 掃海艦6隻 |
| 江景級(MHC) | 江景、江津、高霊、金浦、高敞、金化 | 掃海艇6隻 |
敷設艦の艦名が南浦と元山なのは、朝鮮戦争で元山港の機雷封鎖に苦しんだ記憶からだ。韓国海軍の掃海戦力は海自の掃海隊群より小規模だが、有事に北朝鮮が黄海と日本海の港湾に機雷を撒く想定を持つ点では、日本以上に切実な任務を負っている。
補給・支援艦——外洋海軍を支える裏方

写真:海上自衛隊/出典(CC BY 4.0・縮小圧縮)
| 艦級 | 艦名 | 役割 |
|---|---|---|
| 昭陽級(AOE-II) | 昭陽 | 高速戦闘支援艦、満載約22,000トン |
| 天池級(AOE) | 天池、大清、華川 | 補給艦、満載約9,200トン |
| 統営級(ATS-II) | 統営、光陽 | 救難艦 |
| 江華島級(ASR-II) | 江華島 | 潜水艦救難艦、2024年11月就役 |
| 清海鎮級(ASR) | 清海鎮 | 潜水艦救難艦 |
| 閑山島級(ATH) | 閑山島 | 練習艦、2020年就役 |
昭陽は韓国海軍最大の補給艦で、外洋に出た機動部隊を支える。天池級3隻は1990年代の艦で、後継の昭陽級2番艦以降が計画されている。海自が補給艦5隻を持つのに対し、韓国は4隻。外洋海軍を名乗るには補給艦の数がまだ足りない、というのが韓国海軍自身の認識でもある。
航空部隊——P-8Aとワイルドキャット
| 機種 | 機数 | 役割 |
|---|---|---|
| P-8Aポセイドン | 6機 | 2024年導入の最新固定翼哨戒機 |
| P-3C/P-3CK | 16機前後 | 従来の固定翼哨戒機 |
| AW159ワイルドキャット | 8機 | 艦載対潜ヘリ |
| スーパーリンクス | 20機前後 | 艦載対潜ヘリ、更新対象 |
| MH-60Rシーホーク | 12機導入中 | 米国製の新型艦載ヘリ |
固定翼哨戒機は海自のP-1・P-3C部隊に比べて機数で大きく劣る。ただし2024年に導入したP-8Aは海自が持たない機種で、日米韓の共同訓練では米海軍と同じ機体で対潜戦を組める強みがある。
2026年の注目点——韓国海軍はどこへ向かうか
輸出する海軍
2025年、日本のもがみ型はオーストラリアの次期フリゲートに選定された。韓国案はその前の候補絞り込みで外れ、最終候補は日本案とドイツ案だった。詳細はもがみ型護衛艦の豪州輸出に書いたが、韓国側にとっては痛い敗北だった。その一方で韓国はカナダの潜水艦計画にKSS-IIIを提案し、2026年には実艦を太平洋を横断させて売り込んでいる。フィリピンにも艦艇輸出の実績があり、韓国海軍の艦は「自国で使う艦」であると同時に「輸出のショールーム」でもある。海自の艦が輸出を始めたのは2025年になってからで、この点では韓国が10年以上先を行っている。
造船業という武器
韓国海軍の艦を造るハンファオーシャンとHD現代重工業は、商船の建造量で世界トップ級の造船所を持つ。有事に艦を修理し、新造し、量産する能力は、艦の隻数と同じくらい海軍力を左右する。日本の造船業と韓国の造船業を投資家として見比べる視点は造船重工株ランキングで扱った。2025年に韓国が米国造船業へ1,500億ドルを投資するMASGA構想を打ち出し、その中核のフィリー造船所が原潜建造地に名指しされた流れは、造船と安全保障が一体化した典型例だ。
投資判断としては、韓国造船株は韓国市場の銘柄であり、日本の証券口座から扱える範囲と為替リスクを各自で確認する必要がある。本記事は特定銘柄を勧めるものではない。日本の防衛関連銘柄との比較は防衛関連銘柄 完全投資ガイドを参照してほしい。
海自との関係——9年ぶりの共同訓練
2018年12月のレーダー照射問題で凍結された海自と韓国海軍の交流は、2024年6月の日韓防衛相会談で再発防止策に合意し、2026年6月7日には五島列島西方で9年ぶりの捜索救難共同訓練が実施された。海自からはイージス艦こんごうと哨戒ヘリが、韓国からは揚陸艦が参加し、海自のヘリが韓国艦に着艦する訓練まで行われた。日米韓3か国の多領域訓練フリーダム・エッジも2024年から定例化し、4回目は2026年9月7〜11日の実施日程が発表されている。
私は正直に言って、レーダー照射問題を棚上げしたままの交流再開には割り切れない気持ちが残る。しかし中国が空母戦力を増強し、北朝鮮が原潜建造を公言するいま、隣の海軍の艦名と能力を知らないまま「敵か味方か」を論じるのは危険だと思っている。この一覧が、その判断の材料になれば嬉しい。
まとめ——「上陸する海軍」から「撃つ海軍」へ
韓国海軍の艦艇一覧を眺めると、二つの海軍が同居していることが分かる。黄海で北朝鮮艇と撃ち合い、海兵隊を上陸させる沿岸海軍と、イージス艦と弾道ミサイル潜水艦で外洋に出る大洋海軍だ。前者は1953年から変わらない任務であり、後者は2010年代に始まったばかりの野心だ。KDDX、正祖大王級、KSS-III Batch-II、そして原潜計画は、すべて後者の野心を形にする事業で、2030年代の韓国海軍は今とは別の姿になっている可能性が高い。
世界の主要艦艇を写真と図で押さえたい人には、次の一冊が入口として使いやすい。
海軍や防衛産業の解説書を耳で聞きたい人は、Audibleに軍事・地政学の書籍が揃っている。
よくある質問
韓国海軍のイージス艦は何隻あるのか?
2026年9月時点で世宗大王級3隻と正祖大王級1隻の計4隻。正祖大王級の2番艦・3番艦が建造中で、揃えば6隻体制になる。
韓国海軍の潜水艦は何隻あるのか?
島山安昌浩級3隻、孫元一級9隻と張保皐級を合わせて約20隻。建造9隻の張保皐級の初期艦は退役が進んでおり、資料により隻数に幅がある。
韓国は原子力潜水艦を持てるのか?
2025年10月に米大統領が建造を承認したが、建造場所と核燃料の扱いで米韓の説明に食い違いがあり、実現には10年前後かかると見られている。
韓国海軍は空母を持っているのか?
空母はない。全通甲板を持つ独島級揚陸艦2隻を運用しており、F-35Bを載せる軽空母CVX計画は見直し中。
韓国海軍と海上自衛隊は共同訓練をしているのか?
2018年のレーダー照射問題で凍結されていたが、2024年6月の合意を経て2026年6月に9年ぶりの捜索救難訓練を再開した。日米韓のフリーダム・エッジには2024年から参加している。
艦名の由来は?
駆逐艦と潜水艦は歴史上の人物、フリゲートは道と大都市、揚陸艦は島と山、掃海艦は郡や町の名を使う。潜水艦には抗日運動家、ミサイル艇には延坪海戦の戦死者の名が多い。
出典・参考
- 大韓民国海軍 公式サイト https://www.navy.mil.kr/
- List of active Republic of Korea Navy ships(Wikipedia英語版、艦番号・就役日の照合に使用) https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_active_Republic_of_Korea_Navy_ships
- Naval News「Hanwha Ocean Launches First KSS-III Batch-II Submarine」2025年10月22日 https://www.navalnews.com/naval-news/2025/10/hanwha-ocean-launches-first-kss-iii-batch-ii-submarine/
- Hanwha「Republic of Korea Navy KSS-III submarine arrives in Canada」2026年 https://www.hanwha.com/newsroom/news/press-releases/republic-of-korea-navy-kss-iii-submarine-built-by-hanwha-ocean-arrives-in-canada-after-over-14000-km-voyage.do
- 笹川平和財団IINA「韓国の原子力潜水艦導入は実現できるのか」 https://www.spf.org/iina/articles/sanghoe_lee_05.html
- CNN「トランプ氏、韓国の原子力潜水艦建造を『承認』」2025年10月30日 https://www.cnn.co.jp/world/35239856.html
- 中央日報日本語版「『燃料承認』求めたら『米国で建造を』」2025年11月3日 https://s.japanese.joins.com/JArticle/340560?sectcode=A20&servcode=A00
- 読売新聞「海自と韓国海軍の共同訓練、9年ぶり再開」2026年6月8日 https://news.infoseek.co.jp/article/yomiuri_20260608_gyt1t00303/
- Jディフェンスニュース「フリーダム・エッジ26を9月7日〜11日に実施予定」2026年8月28日 https://j-defense.ikaros.jp/docs/mod/005832.html
- 聯合ニュース「韓国の26年度国防予算案 過去最大規模に」2025年8月29日 https://jp.yna.co.kr/view/AJP20250829003100882
- 正祖大王級駆逐艦・KDDX・広開土大王級(ナムウィキ日本語版、韓国側の公開情報の確認に使用) https://ja.namu.wiki/w/KDDX







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