まや型 vs 世宗大王級|日韓イージス艦の防空・BMD・火力を比較――同じSPY-1Dを載せて、片方は迎撃し、片方は撃つ

まや型 vs 世宗大王級 記事表紙

まや型と世宗大王級は、どちらが強いのか。

この二隻は、世界のイージス艦の中で最も似ていて、最も違う組み合わせだ。どちらもアーレイ・バーク級を原型にした船体に、同じSPY-1D(V)レーダーとイージス・システムを載せ、排水量も1万トン前後でほぼ同じ。ところが中身は正反対で、まや型はSM-3で弾道ミサイルを大気圏外で迎撃する「盾」として、世宗大王級は128セルのVLSに巡航ミサイルを積んで北朝鮮の内陸を撃つ「矛」として設計された。同じ部品箱から、日本と韓国はまったく違う艦を組み立てた。

私はこの比較で、スペック表の数字を並べるだけで終わりたくない。VLSのセル数は世宗大王級が32多いが、その世宗大王級は弾道ミサイルを撃ち落とせない。まや型は共同交戦能力で他艦や早期警戒機の目で撃てるが、対地攻撃はいま導入の途中だ。どちらが強いかは「何のために使うか」で反転する。7項目で採点したうえで、その反転の理由と、両国が次に造る正祖大王級とイージス・システム搭載艦の対決まで書く。日韓の海軍全体の比較は海上自衛隊 vs 韓国海軍に、まや型そのものはまや型護衛艦とはに譲る。

目次

結論——7項目の採点表

結論——7項目の採点表

基本スペック——双子のような船体

海上自衛隊の護衛艦「まや」。
海上自衛隊の護衛艦「まや」。
写真:海上自衛隊/出典CC BY 4.0)。掲載用に縮小・圧縮。
項目まや型世宗大王級
就役まや2020年、はぐろ2021年2008年、2010年、2012年
満載排水量約10,250トン約10,600トン
全長170m166m
レーダーSPY-1D(V) 4面SPY-1D(V) 4面
戦闘システムイージス ベースラインJ7イージス ベースライン7.1系
VLSMk41 96セルMk41 80セル+K-VLS 48セル、計128セル
主砲5インチ Mk455インチ Mk45
近接防御20mm CIWS 2基、ESSM30mmゴールキーパー1基、RAM 21発
推進ガスタービン+電動機のハイブリッド(COGLAG)ガスタービン4基(COGAG)
乗員約300人約300人
建造ジャパンマリンユナイテッド現代重工業、大宇造船海洋

レーダーも主砲も船体の系譜も同じで、遠目には見分けがつかない。違いは後部から出てくる。世宗大王級は後部甲板に韓国製のK-VLS 48セルを追加し、ここに巡航ミサイルと対潜ロケットを収めた。まや型はその空間を使わず、代わりに推進系をハイブリッド化して燃費と静粛性を取った。同じ船体で「何を諦めて何を取るか」の判断が、最初から違っていた。

1. 艦隊防空——搭載量の世宗、連接のまや

韓国海軍の「世宗大王」。
韓国海軍の「世宗大王」。
写真:U.S. Navy/出典(パブリックドメイン)
1. 艦隊防空——搭載量の世宗、連接のまや
1. 艦隊防空——搭載量の世宗、連接のまや

決定的な差は共同交戦能力、CECだ。まや型は空自のE-2D早期警戒機や他のイージス艦が捉えた目標データを受け取り、自艦のレーダーで見えていない目標にSM-6を撃てる。水平線の向こうから低空で来る対艦ミサイルに対して、艦単独の視界に縛られない。世宗大王級にはこの能力がなく、自艦のレーダーで見た目標にしか対処できない。搭載量で世宗、連接でまや。この差は、単艦の戦いより艦隊の戦いで効いてくる。

まや型の艦橋周りを模型で組むと、SPY-1Dの4面と、後部にK-VLSを持たない代わりに広く取られた飛行甲板の配置が分かる。世宗大王級との違いは、この後部の使い方に集約されている。

2. 弾道ミサイル防衛——この項目だけは比較にならない

項目まや型世宗大王級
探知・追尾可能可能
大気圏外迎撃SM-3 Block IIA、Block IBなし
終末迎撃SM-6なし
実射実績2022年11月、まやがSM-3 Block IIAで標的を迎撃なし
弾道ミサイル対処の指揮日米で情報共有、日本のBMDの中核探知情報を提供。迎撃は地上のパトリオットが担う

まや型は日本の弾道ミサイル防衛の中核だ。SM-3で大気圏外の中間段階を迎撃し、SM-6で大気圏内に再突入した弾道ミサイルの終末段階を迎撃する。2022年11月、まやはハワイ沖でSM-3 Block IIAを実射し、模擬弾道ミサイルの迎撃に成功した。日本のミサイル防衛全体の中でイージス艦がどこを担うかは日本のミサイル防衛システムに、SM-3とSM-6の役割分担はSM-3とSM-6の違いに書いた。

世宗大王級は、北朝鮮の弾道ミサイルを探知し追尾することはできるが、撃ち落とせない。搭載するSM-2は航空機と巡航ミサイルが対象で、弾道ミサイルの迎撃能力を持たない。韓国のミサイル防衛は地上のパトリオットとL-SAMが担い、イージス艦は「目」の役割にとどまってきた。

私はこれを世宗大王級の欠陥とは思わない。韓国にとって北朝鮮のミサイルは数分で到達する至近距離の脅威で、艦から大気圏外で迎撃する時間的余裕は日本より少ない。それより北朝鮮の発射拠点を撃つ能力を艦に持たせる方が合理的だ、という判断が128セルとK-VLSに現れている。ただし、この判断は北朝鮮のミサイルが高度化するにつれて見直され、次の正祖大王級で韓国は初めて「迎撃する艦」を持つことになる。

3. 対艦・対地打撃——16発の海星と、8発の17式

艦上の垂直発射装置。セル数と搭載するミサイルの種類は分けて考える。
艦上の垂直発射装置。セル数と搭載するミサイルの種類は分けて考える。
項目まや型世宗大王級
対艦ミサイル17式SSM 8発(4連装2基)海星 16発(4連装4基)
対艦の長射程手段SM-6の対艦運用玄武-3の転用
対地攻撃トマホークを導入中玄武-3巡航ミサイル(射程1,000km級以上)を搭載済み
対地攻撃の運用開始2020年代後半2000年代後半から
3. 対艦・対地打撃——16発の海星と、8発の17式
3. 対艦・対地打撃——16発の海星と、8発の17式

4. 対潜——ヘリ2機の世宗、ハイブリッド推進のまや

項目まや型世宗大王級
対潜兵装07式VLA(VLS発射)、短魚雷紅鮫(K-VLS発射)、短魚雷
哨戒ヘリSH-60K/L 1機スーパーリンクス/ワイルドキャット 2機
推進の静粛性ハイブリッド推進で低速時に電動機を使用ガスタービンのみ

装備の数では世宗大王級がやや上で、特に哨戒ヘリ2機の格納庫は対潜戦で効く。一方まや型は海自のイージス艦で初めてハイブリッド推進を採用し、低速で哨戒する際に電動機で静かに動ける。対潜は艦単独より、哨戒機と潜水艦と艦載ヘリの協同で決まる分野で、海自全体の対潜戦力が韓国を大きく上回ることは別記事で書いた。艦単体の対潜装備なら世宗、艦隊としての対潜なら海自、と分けて見るべき項目だ。

5. 隻数と役割——2隻の最新艦と、3隻の主力

5. 隻数と役割——2隻の最新艦と、3隻の主力

運用の現場——同じ北朝鮮のミサイルを、違う位置から見ている

両艦の役割の違いは、日本海の上で最もよく分かる。北朝鮮が弾道ミサイルを発射するたび、海自のイージス艦は日本海に展開して探知・追尾し、必要ならSM-3で迎撃する態勢を取る。まや型はその最前列に立つ艦で、CECを通じて陸上の指揮所や他艦と目標を共有する。一方、世宗大王級も同じ発射を探知し追尾するが、その情報は地上のパトリオットとL-SAMに渡され、艦自身は撃たない。

2023年12月から、日米韓は北朝鮮のミサイル発射情報をリアルタイムで共有する仕組みを動かしている。まや型と世宗大王級は、この仕組みの中では競争相手ではなく、同じ発射を東西から挟んで見る二つの目だ。2024年から定例化した日米韓の多領域訓練フリーダム・エッジには両国のイージス艦が参加し、2026年9月には4回目が済州島周辺で行われる。私はこの光景を、両艦の比較記事の結論として最もふさわしいと思っている。矛と盾は、並べれば一つの防御になる。

設計が分かれた理由は地理にある

なぜ日本は盾を、韓国は矛を選んだのか。答えは地図にある。北朝鮮から日本までは1,000km前後で、弾道ミサイルは大気圏外を飛ぶ中間段階を経て落ちてくる。この段階を狙えるのがSM-3で、日本海に出たイージス艦はちょうどその真下にいる。韓国の首都圏から北朝鮮までは数十kmで、ミサイルは大気圏外にほとんど出ず、数分で落ちる。艦から中間段階を迎撃する余地は小さく、地上の終末迎撃と、発射前に拠点を叩く打撃力の方が現実的だ。

まや型のSM-3と、世宗大王級の玄武-3は、どちらも北朝鮮のミサイルへの答えだ。答えが違うのは、問題が置かれた距離が違うからで、どちらかの海軍が間違えたからではない。私がこの二隻を「同じ部品で組んだ正反対の艦」と呼ぶのは、その意味だ。

6. コスト——1,700億円と1兆2,000億ウォン

6. コスト——1,700億円と1兆2,000億ウォン

7. 次の対決——正祖大王級とイージス・システム搭載艦

この比較は、すでに次の世代に移りつつある。

項目イージス・システム搭載艦(海自)正祖大王級(韓国)
就役2027年度末と2028年度末の予定1番艦2024年12月、2番艦2026年末、3番艦建造中
排水量(区分を併記)約12,000トン(基準)約12,000トン(満載)
レーダーSPY-7SPY-1D(V)、イージス ベースライン9系
VLS128セル88セル(Mk41 48+K-VLS-I 16+K-VLS-II 24)
弾道ミサイル迎撃SM-3 Block IIA、SM-6SM-6を導入決定。SM-3は未決定
主な役割陸上イージスの代替として弾道ミサイル防衛に専念世宗大王級に迎撃能力を加えた「撃って迎撃する艦」

韓国の正祖大王級は、ベースライン9系のイージスで初めて弾道ミサイル迎撃に対応し、SM-6の導入が2022年に決まった。ただしSM-3の導入は決まっておらず、国産の艦載型長距離ミサイルで代替する案が検討されている。VLSは88セルと世宗大王級より減ったが、K-VLS-IIは大型で、韓国製の艦対地弾道ミサイルを積める。「撃つ艦」の性格を保ちながら「迎撃する艦」の機能を足した設計だ。

海自のイージス・システム搭載艦は逆で、陸上イージスの代わりに弾道ミサイル防衛に専念する。SPY-7レーダーと128セルのVLSを持ち、まや型よりさらに「盾」に寄った艦になる。2030年頃、日韓のイージス艦は片方が矛に迎撃を足し、片方が盾をさらに厚くする方向に進む。二つの艦は、正反対の出発点から、互いの領分に少しずつ踏み込んでいる。

投資家の視点:同じイージスを、誰が造っているか

艦の建造・整備を支える造船所の設備。
艦の建造・整備を支える造船所の設備。

まや型と世宗大王級のイージス・システムはどちらもロッキード・マーチン製で、SPY-1Dも同社の系列だ。両艦の違いは船体と搭載兵装にあり、まや型はジャパンマリンユナイテッドと三菱重工系の兵装、世宗大王級は現代重工業・大宇造船海洋とLIGネクスワン・ハンファの国産装備が支えている。日韓のイージス艦比較は、そのまま両国の造船・兵装産業の比較でもある。米国側はロッキード・マーチン株に、日韓の造船は造船重工株ランキングにまとめてある。念のため書いておくと、この段落は特定銘柄の購入を勧めるものではなく、投資判断は各自の責任で行う必要がある。

まとめ——同じレーダーで、違うものを見ていた

まや型と世宗大王級は、同じSPY-1D(V)と同じイージスを載せながら、まや型は空の弾道ミサイルを、世宗大王級は陸の発射拠点を見ていた。前者はSM-3と共同交戦能力で「迎撃する艦」になり、後者は128セルと巡航ミサイルで「撃つ艦」になった。どちらが強いかは、北朝鮮のミサイルを落としたいか、北朝鮮の内陸を撃ちたいかで反転する。

私の見立てはこうだ。2026年時点で、弾道ミサイル防衛という一点ではまや型が圧倒し、打撃力では世宗大王級が先行し、艦隊防空の連接ではまや型が上回る。そして2030年に向けて、韓国は正祖大王級で迎撃を足し、日本はトマホークで打撃を足す。同じ部品で正反対の艦を造った二つの海軍は、いま互いの答えを取り込み始めている。

まとめ——同じレーダーで、違うものを見ていた

よくある質問

まや型と世宗大王級はどちらが強いのか?

弾道ミサイル防衛と艦隊防空の連接ではまや型、対艦・対地の打撃力では世宗大王級が上回る。同じレーダーとイージスを持ちながら、まや型は「迎撃する艦」、世宗大王級は「撃つ艦」として設計されている。

VLSのセル数は?

まや型がMk41 96セル、世宗大王級がMk41 80セル+K-VLS 48セルの計128セル。ただしまや型はESSMを1セル4発収容でき、対空弾数の差はセル数ほど大きくない。

世宗大王級は弾道ミサイルを迎撃できるのか?

できない。探知・追尾は可能だが、搭載するSM-2に弾道ミサイル迎撃能力はない。次の正祖大王級でSM-6の導入が決まり、初めて迎撃能力を持つ。

まや型はSM-3を実際に撃ったことがあるか?

ある。2022年11月にハワイ沖でSM-3 Block IIAを実射し、模擬弾道ミサイルの迎撃に成功した。

まや型は対地攻撃ができるのか?

就役時は不可だったが、安保三文書に基づきイージス艦へのトマホーク搭載改修が進んでおり、2020年代後半に対地攻撃能力を持つ見込み。

次の日韓イージス艦は?

海自は2027年度末からSPY-7搭載のイージス・システム搭載艦2隻、韓国は正祖大王級3隻。前者は弾道ミサイル防衛に専念、後者は打撃力に迎撃能力を加える設計で、両者は互いの領分に近づいている。

出典・参考

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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