イギリス海軍は、世界で最も「上と下の差」が大きい海軍だ。
上を見れば、7万トンの空母2隻、核抑止を担う弾道ミサイル原潜4隻、静粛性で米海軍と並ぶ攻撃型原潜6隻を持つ。下を見れば、2026年7月に23型フリゲート2隻が退役し、フリゲートは5隻、うち1隻は改修中で、実働は4隻になった。1991年に52隻あった駆逐艦とフリゲートは、2026年に11隻しかない。空母を2隻持つ海軍が、その空母を護衛するフリゲートを数えるのに片手で足りる。
本記事は、その全体像を2026年9月時点で艦種別に整理する。艦名と就役年、状態は英海軍の公式発表と公開データベースで照合した。同時に、なぜこの海軍が空母と原潜に賭けてフリゲートを削ることになったのか、2027年以降に26型と31型で数がどう戻るのか、そして2025年に日本へ寄港した空母打撃群が日本にとって何を意味するのかまで書く。中国・米国・ロシアの艦隊は中国海軍の艦艇一覧、アメリカ海軍の艦艇一覧、ロシア海軍の艦艇一覧に、世界の序列は世界海軍力ランキングにまとめてある。
結論——イギリス海軍の全体像を1枚で
合計は現役約60隻、英海軍が「主要水上戦闘艦」と呼ぶ空母・駆逐艦・フリゲートは13隻。一言でまとめると、イギリス海軍は「核抑止と空母打撃群という二つの看板を維持するために、その他すべてを削った海軍」だ。私はこの選択を愚かだとは思わない。ただ、看板を守る艦が足りなくなった2026年は、その選択の代償が最もはっきり見える年になった。以下、艦種ごとに見ていく。
組織と基地——3つの母港と海兵隊
| 拠点 | 場所 | 主な配備 |
|---|---|---|
| ポーツマス | イングランド南岸 | 空母2隻、45型駆逐艦、リバー級、機雷戦部隊 |
| デヴォンポート(プリマス) | イングランド南西岸 | 23型フリゲート、補助揚陸艦、原潜の整備 |
| クライド(ファスレーン) | スコットランド | 全潜水艦。弾道ミサイル原潜の母港 |
| 海外拠点 | バーレーン、ジブラルタル、シンガポール、フォークランド | 哨戒艦と機雷戦部隊の前方配備 |
人員は海軍と海兵隊を合わせて約3万2,000人で、海自の約4万5,000人より少ない。海兵隊コマンドーは約6,000人で、海軍の指揮下にある上陸部隊だが、揚陸艦の係留で「乗る艦」を失い、小型艇と補助艦からの展開へ役割を変えつつある。人員不足は艦の不足と同じくらい深刻で、2020年代の英海軍は募集より退職が多い年が続いた。空母と原潜の乗員を確保するために他の艦を減らした、というのが2026年の英海軍の実態だ。
縮小の年表——52隻から11隻へ
| 年 | 駆逐艦・フリゲート | 出来事 |
|---|---|---|
| 1991年 | 52隻 | 冷戦終結。北大西洋の対潜艦隊が最大規模 |
| 1998年 | 35隻 | 戦略防衛見直しで大幅削減 |
| 2010年 | 23隻 | 財政危機後の見直し。空母インヴィンシブルとハリアーを退役 |
| 2017年 | 19隻 | クイーン・エリザベス就役。26型1番艦を起工 |
| 2021年 | 18隻 | クイーン・エリザベスがインド太平洋へ初展開 |
| 2024年 | 14隻 | 揚陸艦アルビオン級を運用停止 |
| 2026年 | 11隻 | 23型2隻退役。フリゲート5隻に |
| 2030年代半ば | 19隻(計画) | 26型8隻と31型5隻が揃う |
35年で駆逐艦とフリゲートは5分の1になった。理由は財政だけではない。冷戦後の英国は、艦の数より「空母打撃群と核抑止を持つ数少ない海軍」であることを選び、その二つに予算を集中させた。空母2隻に約70億ポンド、原潜計画に数百億ポンド。その間、フリゲートは1999年から2017年まで一隻も起工されなかった。2026年の11隻は、選択の結果であって事故ではない。
空母——クイーン・エリザベス級2隻

写真:U.S. Navy photo by Capt. Jim McCall/出典(Public domain)。掲載用に縮小・圧縮。
| 艦名 | 就役 | 満載排水量 | 状態 |
|---|---|---|---|
| クイーン・エリザベス | 2017年12月 | 約65,000トン | 2026年初頭は整備で在港 |
| プリンス・オブ・ウェールズ | 2019年12月 | 約65,000トン | 2025年に空母打撃群CSG25でインド太平洋へ。8月に東京寄港 |
イギリス海軍の看板は、この2隻だ。スキージャンプ甲板でF-35Bを運用し、艦載機は英空軍と海軍が共同で持つ。2025年4月から12月、プリンス・オブ・ウェールズを中核とする空母打撃群が地中海、インド洋、太平洋を巡り、8月には東京に寄港して海自のかがと共同訓練を行った。英空母の日本寄港は2021年のクイーン・エリザベス以来で、日英が「準同盟」と呼ぶ関係の海上での表現だった。
世界の空母を写真と図で一冊にまとめた図鑑には、クイーン・エリザベス級のスキージャンプと双艦橋の構造も収録されている。
駆逐艦——45型6隻、10年かけて動けるようになった艦

写真:LA(Phot) Keith Morgan/出典(OGL v1.0)。掲載用に縮小・圧縮。
| 艦名 | 艦番号 | 就役 |
|---|---|---|
| デアリング | D32 | 2009年 |
| ドーントレス | D33 | 2010年 |
| ダイヤモンド | D34 | 2011年 |
| ドラゴン | D35 | 2012年 |
| ディフェンダー | D36 | 2013年 |
| ダンカン | D37 | 2013年 |
45型は満載約8,500トンの防空駆逐艦で、サンプソン・レーダーとシーバイパー(アスター)ミサイルを持ち、防空能力では欧州最高水準とされる。ただしこの級は長年、推進系の欠陥で有名だった。統合電気推進のガスタービンが暖かい海で出力を失い、艦が停止する事故が相次いだ。2020年代に全艦がディーゼル発電機を増設する改修を受け、2026年にはデアリングを含む6隻すべてが実働可能な状態に戻った。
2023年12月から2024年にかけて、ダイヤモンドは紅海でフーシ派のドローンと対艦ミサイルを迎撃し、英海軍にとって数十年ぶりの本格的な対空戦闘を経験した。この実戦で、45型の防空能力は実証された。同時に弾薬の補充と乗員の疲労が課題として表面化し、6隻という数の少なさが露わになった。後継の83型駆逐艦は2030年代後半の計画だ。
フリゲート——史上最少の5隻と、13隻の建造計画

写真:mattbuck/出典(CC BY-SA 3.0)。掲載用に縮小・圧縮。
23型(デューク級)5隻
| 艦名 | 艦番号 | 就役 | 状態 |
|---|---|---|---|
| サマセット | F82 | 1996年 | 現役 |
| サザーランド | F81 | 1997年 | 現役 |
| ケント | F78 | 2000年 | 改修中 |
| ポートランド | F79 | 2001年 | 現役 |
| セント・オールバンズ | F83 | 2002年 | 現役 |
2026年7月13日、英海軍は23型のリッチモンドとアイアン・デュークの退役を発表した。アイアン・デュークは1億ポンド以上をかけた改修を終えてから1年半で退役し、リッチモンドはインド太平洋の空母打撃群から戻った直後だった。2025年12月にはランカスターがバーレーンで退役し、2026年初頭に7隻だった23型は5隻になった。
23型は設計寿命18年の艦で、すべてがそれを超え、30年を超えた艦もある。1999年から2017年まで、英国は18年間フリゲートを一隻も起工しなかった。その空白が、いま数字になって返ってきている。老朽化した23型を維持する費用と危険が新型の建造費を圧迫し、退役を早めて新型に投資する判断は合理的だが、その結果として2026年の英海軍は、NATOの任務と空母護衛と紅海の哨戒を4隻のフリゲートで回している。
26型(シティ級)8隻建造中
| 艦名 | 艦番号 | 状態 |
|---|---|---|
| グラスゴー | F88 | 公試中。2027年引き渡し、2028年就役予定 |
| カーディフ | F89 | 艤装中。2028年予定 |
| ベルファスト | F90 | 建造中 |
| バーミンガム、シェフィールド、ニューカッスル、ロンドン、エディンバラ | F91〜F95 | 建造中・発注済み |
26型は満載約8,000トンの対潜フリゲートで、北大西洋でロシアの潜水艦を追う任務を主に設計された。静粛性を重視した推進系、大型の格納庫、多目的の任務区画を持ち、オーストラリア、カナダ、ノルウェーが採用して30隻以上が計画される、英国の艦艇輸出で最も成功した設計だ。1番艦グラスゴーは2017年に鋼材切断、2025年に命名、2026年に公試に入った。着工から就役まで10年以上かかる計算になる。26型の詳細と海自もがみ型との違いは26型フリゲートとはで扱った。
31型(インスピレーション級)5隻建造中
| 艦名 | 艦番号 | 状態 |
|---|---|---|
| ベンチャラー | F12 | 進水済み、艤装中。2027年引き渡し予定 |
| アクティブ | F08 | 艤装中 |
| フォーミダブル、ブルドッグ、キャンベルタウン | F11、F09、F10 | 建造中・計画 |
31型はデンマークのイーヴァ・ヒュイトフェルト級を原型にした汎用フリゲートで、26型より安く速く造ることを目的に、バブコックのロサイス造船所で建造されている。対潜より哨戒と海外展開を担う艦で、インドネシアとポーランドが同型を採用した。1番艦ベンチャラーは2027年引き渡しの予定で、26型より先に戦列に加わる見込みだ。
26型8隻と31型5隻が揃えばフリゲートは13隻に戻る。しかし最も楽観的な見積もりでも初期の作戦能力は2028年末で、全艦が揃うのは2030年代半ばになる。それまでの数年間、英海軍のフリゲートは一桁のまま推移する。
潜水艦——この海軍の本当の中核

写真:LA(Phot) Paul Halliwell/出典(OGL v1.0)。掲載用に縮小・圧縮。
アステュート級攻撃型原潜 6隻+1隻
| 艦名 | 艦番号 | 就役 |
|---|---|---|
| アステュート | S119 | 2010年 |
| アンブッシュ | S120 | 2013年 |
| アートフル | S121 | 2016年 |
| オーデイシャス | S122 | 2021年 |
| アンソン | S123 | 2022年 |
| アガメムノン | S124 | 2025年9月 |
| アキリーズ | S125 | 建造中。2028〜29年就役予定 |
アステュート級は水中排水量約7,400トンの攻撃型原潜で、静粛性と探知能力は米海軍のバージニア級と並ぶと評価される。トマホーク巡航ミサイルとスピアフィッシュ魚雷を運用し、北大西洋でロシアの原潜を追い、空母打撃群を先導する。2025年9月にアガメムノンが国王臨席で就役し、最終艦アキリーズが2028〜29年に加わって7隻体制が完成する。
ただし、この級も稼働率に苦しんできた。2023年から2024年にかけて、整備の遅れで複数の艦が同時にドック入りし、一時は実働艦が1〜2隻という報道もあった。原潜は数より稼働率で戦力が決まる。7隻のうち常に海に出ているのは2〜3隻というのが現実的な見積もりだ。
ヴァンガード級弾道ミサイル原潜 4隻

写真:CPOA(Phot) Tam McDonald/出典(OGL v1.0)。掲載用に縮小・圧縮。
| 艦名 | 艦番号 | 就役 |
|---|---|---|
| ヴァンガード | S28 | 1993年 |
| ヴィクトリアス | S29 | 1995年 |
| ヴィジラント | S30 | 1996年 |
| ヴェンジャンス | S31 | 1999年 |
英国の核抑止は、この4隻だけが担う。1969年以来、常に1隻が海中で哨戒を続ける「継続的海上抑止」を途切れさせたことがなく、トライデントII弾道ミサイルを搭載する。ただし4隻は就役から30年前後を経て、整備期間が延び、哨戒期間は6か月を超えることが常態化した。2025年には1隻が200日を超える哨戒を行ったと報じられている。乗員の負担は限界に近い。
ドレッドノート級とSSN-AUKUS
| 計画 | 隻数 | 予定 |
|---|---|---|
| ドレッドノート級(弾道ミサイル原潜) | 4隻 | 1番艦は2030年代初頭。ドレッドノート、ヴァリアント、ウォースパイト、キング・ジョージ6世 |
| SSN-AUKUS(攻撃型原潜) | 最大12隻 | 2030年代後半からアステュート級を置き換え。豪州と共同 |
英海軍の予算の大きな部分は、この二つの原潜計画に向かう。ドレッドノート級はバロー・イン・ファーネスで建造中で、ヴァンガード級の交代は2030年代初頭。SSN-AUKUSは米英豪の枠組みで設計され、2025年の戦略防衛見直しで英国が最大12隻を保有する方針が示された。両計画は同じ造船所と同じ技術者を奪い合い、フリゲートの建造費を圧迫している。空母と原潜に賭けた海軍の構造は、ここに集約される。原潜そのものの仕組みは原子力潜水艦とはで扱っている。
揚陸艦——アルビオン級の係留とブラジルへの売却
| 艦名 | 艦種 | 状態 |
|---|---|---|
| アルビオン、ブルワーク | ドック型揚陸艦 | 2024年に運用停止、係留。ブラジルへの売却を協議 |
| ライム・ベイ、マウンツ・ベイ | 補助揚陸艦(RFA) | 現役 |
| カーディガン・ベイ | 補助揚陸艦(RFA) | 予備 |
英海軍は2024年、ドック型揚陸艦アルビオンとブルワークの運用を停止した。2隻は2000年代に就役した比較的新しい艦で、海兵隊コマンドーの上陸作戦の中核だったが、乗員不足と予算不足で維持を断念し、ブラジルへの売却が協議されている。これにより、英海軍は当面、正規の揚陸艦を持たない。海兵隊の輸送は補助艦隊のベイ級に頼り、後継として多目的支援艦MRSSの計画があるが、建造は2030年代になる。
私はこの決定を、英海軍の2020年代を最も象徴する出来事だと思っている。艦はある。乗員がいない。空母と原潜の乗員を確保するために、揚陸艦の乗員を削った。海軍が艦を捨てる理由が、老朽化ではなく人手不足になった。
哨戒艦——インド太平洋に常駐するリバー級
| 艦名 | 艦番号 | 就役 | 配備 |
|---|---|---|---|
| タイン、セヴァーン、マージー | P281〜P283 | 2003年 | 英国周辺 |
| フォース | P222 | 2018年 | フォークランド諸島 |
| メドウェイ | P223 | 2019年 | カリブ海 |
| トレント | P224 | 2020年 | 地中海・西アフリカ |
| タマー、スペイ | P233、P234 | 2020〜21年 | インド太平洋に常駐 |
リバー級は約2,000トンの哨戒艦で、武装は30mm砲程度だが、英海軍の「世界に旗を見せる」役割を最も安く担っている。タマーとスペイは2021年からインド太平洋に常駐し、日本にも繰り返し寄港し、北朝鮮の瀬取り監視や海自との訓練を行っている。空母が来られない年に、英海軍の姿を日本近海で見せているのはこの2隻だ。
機雷戦——有人艦から無人艇へ
| 艦名 | 艦級 | 状態 |
|---|---|---|
| レドバリー、カティストック、ブロックルズビー、ミドルトン、ハーワース | ハント級 | 現役。1980年代の艦 |
| バンゴー | サンダウン級 | 現役 |
| スターリング・キャッスル | 機雷戦母船 | 2025年就役。無人艇の母艦 |
| ハザード、ハーリアー、ヘルキャットほか | 無人機雷探知艇 | 非就役扱いで運用中 |
英海軍は機雷戦を、有人の掃海艦から無人艇へ切り替えている最初の海軍の一つだ。2025年に民間船を改装した母船スターリング・キャッスルが就役し、そこから無人艇を出して機雷を探す方式に移行した。ハント級は1980年代の艦で、退役予定だった数隻が数合わせのために延命されている。日本の海自が掃海艦艇20隻前後を維持しているのと比べると規模は小さいが、無人化の先行例として海自も注視している分野だ。
海軍航空——F-35Bとマーリン
| 機種 | 機数 | 役割 |
|---|---|---|
| F-35B | 約40機(英空軍と共同運用、最終的に74機を計画) | 空母艦載戦闘機 |
| マーリンHM2 | 約30機 | 対潜ヘリ。早期警戒型クロウズネストも兼ねる |
| ワイルドキャットHMA2 | 約28機 | 艦載多用途ヘリ。対艦ミサイル運用 |
| 固定翼哨戒機 | なし(英空軍のP-8A 9機が担当) |
英海軍は固定翼の哨戒機を持たず、海自のP-1のような対潜哨戒は英空軍のP-8A 9機が担う。空母の艦載機F-35Bも空軍と共同で持ち、2025年の空母打撃群では約20機が搭載された。空母の早期警戒はマーリンにレーダーを吊るしたクロウズネストが担い、固定翼の早期警戒機を持たない点が米空母との最大の違いだ。艦載機の数は空母2隻を同時に満載するには足りず、これも「看板を守るために薄くなった」分野の一つになっている。
補助艦隊(RFA)——空母を動かす裏方の不足
| 艦名 | 艦種 | 状態 |
|---|---|---|
| タイドスプリング、タイドレース、タイドサージ、タイドフォース | 高速給油艦 | 現役 |
| フォート・ヴィクトリア | 補給艦 | 予備。事実上退役 |
| プロテウス | 海底監視艦 | 2023年就役。海底ケーブル防護 |
補助艦隊は民間船員が運航する艦隊で、空母打撃群の燃料と物資を運ぶ。給油艦タイド級4隻は新しいが、弾薬と食料を運ぶ補給艦はフォート・ヴィクトリアが事実上退役し、後継の艦隊補給艦は建造開始が遅れている。補給艦がなければ空母打撃群は長期展開できない。CSG25がインド太平洋まで往復できたのは、同盟国の補給艦に頼った面が大きい。RFAは長年の賃金問題でストライキが起き、船員不足はさらに深刻だ。
無人艦艇——次の10年の主役
英海軍は2025年の戦略防衛見直しで、有人艦の隻数を追わず、無人艇と自律システムで数を補う方針を明確にした。大型無人潜水艇エクスカリバー、無人水上艇の各種、機雷戦の無人化、そして空母から無人機を運用する「ハイブリッド空母」構想。2026年時点で無人艇は非就役扱いで数十隻が運用され、公式の艦艇数には含まれない。この海軍の「隻数」を語るとき、有人艦だけを数えると実態を見誤る時代が始まっている。
任務と実戦——紅海、北大西洋、海底ケーブル
| 任務 | 海域 | 主な艦 |
|---|---|---|
| フーシ派への対処 | 紅海 | 45型ダイヤモンド、23型リッチモンドが2023〜24年にドローンとミサイルを迎撃 |
| ロシア潜水艦の監視 | 北大西洋・GIUKギャップ | アステュート級、23型、英空軍P-8A |
| 海底インフラの防護 | 英国周辺・北海 | 海底監視艦プロテウス。ロシアの調査船ヤンタルを2025年に追尾 |
| NATOバルト海任務 | バルト海 | 2025年からのバルティック・セントリーに参加 |
| 核抑止哨戒 | 北大西洋 | ヴァンガード級が常時1隻 |
| フォークランド警備 | 南大西洋 | リバー級フォース |
隻数が減っても任務は減らない。2023年12月、45型ダイヤモンドは紅海でフーシ派の攻撃ドローンをシーバイパーで撃墜し、英海軍にとって1982年のフォークランド紛争以来となる本格的な対空戦闘を経験した。2025年には北海と英国周辺でロシアの海底ケーブル調査船の活動が活発化し、プロテウスとアステュート級が追尾した。核抑止の哨戒は一度も途切れていない。
私がこの海軍を見るときに注目するのは、任務の一覧と艦の一覧を並べたときの差だ。世界6か所に前方展開し、NATOの3つの任務群を率い、空母を太平洋まで出し、核抑止を続ける。それを主要水上戦闘艦13隻でやっている。艦が減っても任務が減らないとき、しわ寄せは乗員に来る。2026年の英海軍の最大の問題は艦の数ではなく、その艦を動かす人の疲労だと私は見ている。
2026年の注目点
| 出来事 | 時期 | 意味 |
|---|---|---|
| 23型2隻の退役 | 7月13日 | フリゲートが史上最少の5隻に |
| 26型グラスゴーの公試 | 2026年 | 2027年引き渡し、2028年就役へ |
| 31型ベンチャラーの艤装 | 2026年 | 2027年引き渡し。新型で最初に戦列へ |
| 空母2隻の同時在港 | 年初 | 空母打撃群の脆弱さが表面化 |
| アルビオン級の売却協議 | 継続 | 揚陸艦ゼロの時代へ |
| 防衛投資計画の公表 | 2026年 | 原潜と造船基盤に予算を集中 |
日本にとって——準同盟の海軍
イギリス海軍は、日本にとって米国に次ぐ海上の協力相手になった。2023年の日英円滑化協定で互いの部隊の往来が容易になり、2025年の空母打撃群の東京寄港では海自のかがと共同訓練を行い、リバー級2隻は日本周辺に常駐している。次期戦闘機GCAPの共同開発は空の話だが、海でも26型ともがみ型がオーストラリアの海軍で並ぶことになり、装備と運用の接点は増え続けている。
ただし、この記事で書いた通り、英海軍が日本近海に大きな艦隊を常駐させる余力はない。空母打撃群は数年に一度、護衛艦は数隻、常駐は哨戒艦2隻。日本が英海軍に期待できるのは隻数ではなく、原潜の技術、空母運用の経験、そしてNATOとの接続だ。私はそれで十分だと思っている。同盟国の海軍に求めるべきは、同じ海にいることではなく、必要なときに同じ側にいることだからだ。
投資家の視点——空母と原潜を造る企業

英海軍の艦艇は、空母と26型と原潜をBAEシステムズが、原潜の原子炉と推進系をロールス・ロイスが、31型をバブコックが手がける。26型の輸出成功、ドレッドノート級とSSN-AUKUSへの予算集中、GCAPの三国共同開発は、いずれもこれらの企業の受注残に直結している。念のため書いておくと、この段落は特定銘柄の購入を勧めるものではなく、投資判断は各自の責任で行う必要がある。
まとめ——看板は守り、その他を削った海軍
イギリス海軍の2026年は、空母2隻と原潜10隻という看板を守るために、フリゲートを5隻まで減らし、揚陸艦を係留し、補給艦を退役させた年だった。1991年に52隻あった駆逐艦とフリゲートは11隻になり、2028年から新型13隻で戻り始める。その間の数年間が、この海軍の最も苦しい時期になる。
私はこの海軍を、衰退の例としてより、選択の例として読んでいる。核抑止と空母打撃群を持つ海軍であり続けるために何を捨てるか。英国はその問いに、揚陸艦とフリゲートの隻数を捨てるという答えを出した。日本の海自が同じ問いに直面したとき、この例は参考になる。看板を守った代償がどこに出るかを、英海軍は2026年に見せてくれている。
海軍と防衛産業の解説書を通勤中に耳で読みたい人には、Audibleに軍事・地政学の書籍が揃っている。
よくある質問
イギリス海軍の空母は何隻あるのか?
クイーン・エリザベス級2隻。2025年にプリンス・オブ・ウェールズがインド太平洋へ展開し、8月に東京へ寄港した。2026年初頭は2隻とも整備で在港した。
イギリス海軍のフリゲートはなぜ5隻しかないのか?
1999年から2017年まで18年間フリゲートを起工せず、老朽化した23型を維持する費用と危険が増したため、新型への投資を優先して退役を早めている。2026年7月に2隻が退役し5隻になった。26型8隻と31型5隻が2027年以降に順次就役する。
イギリス海軍の潜水艦は何隻あるのか?
攻撃型原潜アステュート級6隻と弾道ミサイル原潜ヴァンガード級4隻の計10隻。アステュート級7番艦アキリーズが2028〜29年に加わり、ドレッドノート級4隻とSSN-AUKUS最大12隻が建造・計画中。
イギリス海軍に揚陸艦はあるのか?
ドック型揚陸艦アルビオンとブルワークは2024年に運用停止され、ブラジルへの売却が協議されている。当面は補助艦隊のベイ級2隻が海兵隊の輸送を担う。
イギリス海軍と海上自衛隊の関係は?
2023年の日英円滑化協定で部隊の往来が容易になり、2025年に空母打撃群が東京へ寄港して共同訓練を行った。リバー級哨戒艦2隻がインド太平洋に常駐し、日本にも繰り返し寄港している。
イギリス海軍は世界で何位か?
隻数では60隻前後で中規模だが、空母と原潜を持つ数少ない海軍として、総合評価では世界5〜6位前後に位置づけられることが多い。
出典・参考
- Royal Navy「Honouring Service, Preparing for the Future: Three Ships to be Retired」2026年7月13日 https://www.royalnavy.mod.uk/news/2026/july/13/20260713-honouring-service-preparing-for-the-future
- GlobalMilitary.net「Royal Navy Fleet 2026」(艦名・艦番号・状態の照合、2026年8月29日更新) https://www.globalmilitary.net/navies/gbr/
- UK Defence Journal「Royal Navy starts 2026 with seven frigates」2026年1月5日 https://ukdefencejournal.org.uk/royal-navy-starts-2026-with-seven-frigates/
- Warsight「Royal Navy’s frigate fleet shrinks further still」2026年7月17日 https://warsight.com/2026/07/17/uks-frigate-fleet-shrinks-further-still/
- The Maritime Executive「Op-Ed: Royal Navy Operational Readiness Has Been Lost」2026年6月10日 https://maritime-executive.com/editorials/royal-navy-operational-readiness-has-been-lost
- UK DE&S「HMS Glasgow named by The Princess of Wales」2025年5月22日 https://des.mod.uk/?p=47673
- UK Government「Strategic Defence Review 2025」
- 防衛省 令和7年版防衛白書(日英防衛協力、円滑化協定) https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2025/







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