クイーン・エリザベス級空母とは|F-35B運用・性能・2隻の役割を解説

北大西洋を航行するクイーン・エリザベス級空母
北大西洋を航行するクイーン・エリザベス級空母
ツイン・アイランドとスキージャンプを備えるクイーン・エリザベス級

クイーン・エリザベス級空母とは、イギリス海軍が運用する通常動力の大型航空母艦である。1番艦HMSクイーン・エリザベスと2番艦HMSプリンス・オブ・ウェールズの2隻が建造され、短距離離陸・垂直着陸が可能なF-35Bを主力艦載機とする。

この艦級の本質は、アメリカ海軍の原子力空母を小型化したものではない。カタパルトと着艦拘束装置を省き、F-35B、ヘリコプター、同盟国部隊を組み合わせて、必要な場所へ第5世代航空戦力を送り込むための「海上航空基地」である。

この記事の要点

私は、クイーン・エリザベス級を評価するとき、最大搭載機数だけを見るべきではないと考える。重要なのは、2隻を交代で整備・訓練・展開させ、イギリスが空母航空戦力を途切れさせない仕組みを作った点にある。

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目次

クイーン・エリザベス級空母の基本性能

項目内容
艦種通常動力航空母艦
建造数2隻
1番艦HMS Queen Elizabeth(R08)
2番艦HMS Prince of Wales(R09)
満載排水量約65,000トン
全長約284メートル
飛行甲板約280メートル×70メートル
最大速力25ノット超
航続距離約10,000海里
基幹乗員約679〜700人
航空要員込み最大約1,600人
主力艦載機F-35BライトニングII
艦載ヘリマーリンMk2/Mk4、ワイルドキャットなど
最大F-35B搭載数公称最大36機
近接防御ファランクスCIWS 3基、30mm機関砲など
母港ポーツマス海軍基地

イギリス海軍は、クイーン・エリザベス級を排水量65,000トン、速力25ノット以上、航続距離10,000海里の艦として公表している。飛行甲板は約280メートル×70メートルで、前端にはF-35Bの短距離発艦を助けるスキージャンプが設けられた。

基幹乗員は約700人に抑えられている。航空団、海兵隊、司令部要員を乗せると最大約1,600人になるが、同規模の旧世代空母より少人数で運用できるよう、兵器搬送や艦内監視が機械化・自動化されている。

クイーン・エリザベス級はなぜ建造されたのか

イギリス海軍は冷戦後、インヴィンシブル級軽空母とシーハリアーを中心に空母航空戦力を維持してきた。しかしインヴィンシブル級は満載排水量2万トン級で、搭載機数、航空燃料、弾薬、整備空間の余裕が小さい。大規模な航空作戦を長期間続けるには限界があった。

そこで計画されたのがCVF、後のクイーン・エリザベス級である。要求されたのは、単なるシーハリアー母艦の大型化ではなかった。F-35を中核とし、航空優勢、精密攻撃、偵察、電子戦、対潜哨戒、海兵隊輸送、災害救援、統合任務部隊の指揮を一つの船体で支えることだった。

建造費は2隻で約62億ポンド規模に達した。巨額ではあるが、イギリスは1隻だけでなく2隻を完成させた。空母は定期整備や改修で長期間動けなくなるため、1隻体制では「空母を保有しているが、必要な日に使えない」状態が生じる。2隻は同時に二つの空母打撃群を常時出すためというより、少なくとも1隻を作戦に使える可能性を高めるための構成である。

二隻は双子の剣ではない。一本の空母打撃力を交代で研ぎ、必要なときに抜くための二つの鞘に近い。

最大の特徴はF-35Bに最適化したSTOVL空母であること

英国がSTOVL方式を選んだ理由

クイーン・エリザベス級には、アメリカ海軍の空母が使う蒸気カタパルトや電磁カタパルト、着艦拘束ワイヤーがない。艦載機は自力で短距離滑走して離陸し、帰艦時は垂直着陸または艦上滑走垂直着陸を行う。

この方式をSTOVL、短距離離陸・垂直着陸方式という。F-35Bは機体中央のリフトファンと推力偏向ノズルを使い、短い滑走距離で発艦できる。艦首のスキージャンプを駆け上がると、前進速度を上向きの運動へ変換でき、完全な垂直離陸より多くの燃料と兵装を搭載できる。

スキージャンプ方式の利点

カタパルトを持たないため、発艦装置、蒸気配管、電力設備、着艦拘束装置の保守負担が小さくなる。艦の設計も比較的単純になり、F-35Bであれば発艦レーンと着艦区域を柔軟に使える。

また、F-35Bは陸上の短い滑走路や前進基地でも運用できる。空母と陸上基地の間で機体を融通しやすく、海軍と空軍が共同運用するイギリスのライトニング部隊に適している。

STOVL方式の弱点

一方で、垂直着陸能力を持つF-35Bは、F-35AやF-35Cに比べて機内燃料と兵装搭載量に制約がある。リフトファンが機体内部の大きな空間を占めるためだ。

カタパルトがないため、E-2D早期警戒機、固定翼輸送機、通常型の空中給油機も運用できない。クイーン・エリザベス級は、遠距離監視と早期警戒をマーリンMk2ヘリコプターに搭載するクロウズネスト・レーダーへ依存する。ヘリコプター式早期警戒は柔軟だが、固定翼のE-2Dと比べれば速度、高度、滞空時間、捜索範囲で不利になりやすい。

私は、この差こそクイーン・エリザベス級とアメリカ空母を分ける最大の線だと見る。飛行甲板の面積ではなく、どの支援機を空へ上げられるかが、空母航空団の戦い方を決めるからである。

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スキージャンプから短距離発艦するF-35B級戦闘機
艦首ランプを使って燃料と兵装を搭載したまま発艦するF-35B

F-35Bはどのように発艦・着艦するのか

発艦は短距離滑走とスキージャンプ

F-35Bは飛行甲板後方から加速し、艦首のスキージャンプを使って離艦する。カタパルトのシャトルへ前脚を接続する作業がないため、発艦準備は単純である。風向、艦速、搭載重量を調整しながら、複数機を順番に送り出す。

イギリス海軍は、同級が設計上1日72回の高速ジェット出撃を実施でき、短時間ならさらに増やせるとしている。ただし、これは艦そのものの処理能力を示す数値であり、実際の出撃回数は搭載機数、整備員、兵器、天候、任務内容で変わる。

2基の大型航空機用エレベーターは、格納庫から飛行甲板へF-35Bを移動させる。公称では合計4機を約60秒で甲板へ上げられる。自動化された兵器搬送システムも、少人数で弾薬を航空機へ届けるための重要な設備である。

帰艦は垂直着陸とSRVL

通常の帰艦では、F-35Bは艦の左舷後方から接近し、飛行甲板上でホバリングに近い状態となって垂直に降りる。着艦拘束ワイヤーを使わないため、失敗時にワイヤーを取り逃すという概念はないが、エンジン排気は極めて高温である。飛行甲板には耐熱処理が施され、甲板員も熱流と騒音を前提に行動する。

さらにイギリスは、SRVLと呼ばれる艦上滑走垂直着陸を開発した。F-35Bが前進速度を残したまま甲板へ接地し、翼の揚力、垂直推力、車輪ブレーキを組み合わせて停止する方式である。垂直着陸より重い状態で帰艦できるため、未使用の兵器や燃料を投棄せずに済む可能性が高まる。

SRVLはクイーン・エリザベス級の広い飛行甲板を生かす工夫であり、STOVL機の「帰艦重量が小さい」という弱点を完全ではないにせよ緩和する。

実際の搭載機数は「最大36機」と「通常運用」を分けて考えるべき

イギリス海軍は、クイーン・エリザベス級が最大36機F-35Bを搭載できるとしている。公式資料には、ヘリコプターを含め最大40機程度とする説明と、甲板上の駐機まで含む大規模な混成運用で最大72機とする説明が併存する。

ただし、戦時の最大収容数と、平時から継続して整備・発艦・着艦させられる航空団規模は同じではない。格納庫面積だけでなく、整備員、予備部品、兵器、航空燃料、パイロット、護衛艦、補給艦まで揃わなければ航空戦力にならない。

2021年の初の本格展開では、HMSクイーン・エリザベスに英米合計18機のF-35Bが搭載された。2025年のHMSプリンス・オブ・ウェールズでは、英国機24機が集結し、同級で運用された英国F-35として過去最大となった。

したがって、現実的な見方は次の通りである。

平時の訓練や限定任務では数機から十数機

本格的な空母打撃群展開では18〜24機級

高強度戦闘へ備える増勢時はさらに増加

艦の公称上限はF-35B最大36機

「36機積めるのに、なぜ24機なのか」という疑問は、空母を駐車場として見たときに生じる。空母航空団は機数ではなく、整備と補給を含む回転する生産ラインである。私は24機を少ないと断じるより、何機を何日間、高い可動率で回せるかを見るべきだと考える。

F-35B以外の艦載機とクロウズネスト

クイーン・エリザベス級の航空団はF-35Bだけで構成されない。任務に応じて、マーリン、ワイルドキャット、チヌーク、アパッチ、無人機などを組み合わせられる。

マーリンMk2

マーリンMk2は主に対潜戦を担う。ソナー、ソノブイ、魚雷を使い、空母へ接近する潜水艦を捜索する。空母打撃群にとって潜水艦は最も危険な脅威の一つであり、マーリンは単なる補助ヘリではなく、防御の中核である。

一部のマーリンMk2はクロウズネスト早期警戒システムを搭載する。機体側面のレドームを展開し、艦のレーダーでは地平線の陰に隠れる低空目標や遠方の航空機を捜索する。探知情報は空母、護衛艦、F-35Bへ共有され、迎撃判断に使われる。

マーリンMk4とチヌーク

マーリンMk4は海兵隊員、物資、装備の輸送に使われる。大型のチヌークも発着でき、上陸作戦、特殊作戦、災害救援で輸送力を発揮する。クイーン・エリザベス級はウェルドックを持つ強襲揚陸艦ではないが、航空機を使った兵力投射には対応できる。

ワイルドキャットと無人機

ワイルドキャットは偵察、対水上戦、連絡、警戒を担う。2026年にはHMSプリンス・オブ・ウェールズがマーリン、ワイルドキャットに加えてマロイ無人輸送機を搭載し、北大西洋・高緯度地域での任務準備を進めた。大型無人機モハーヴェの発着試験も行われており、将来は無人偵察、補給、通信中継が航空団へ加わる可能性がある。

2つの艦橋を持つ空母飛行甲板で整備される艦載機
操船と航空管制を分担する2つのアイランドと広い飛行甲板

二つの艦橋を持つツイン・アイランド設計

クイーン・エリザベス級の外見で最も目立つのが、右舷側に二つの島型構造物を置いたツイン・アイランドである。

前方の島は航海艦橋を中心とし、艦の操船を担当する。後方の島は飛行管制所として、発艦、着艦、甲板上の航空機移動を指揮する。船の運航と航空作戦を分離することで、双方の視界と作業空間を確保した。

二つの島は完全に独立しているわけではなく、非常時には一方が他方の機能を一部引き継げるよう設計された。発電機器と排気系統を分散する都合もあり、被害を受けた場合の冗長性向上にもつながる。

この設計は奇抜な外観を狙ったものではない。巨大な空母を一隻の船として動かす仕事と、空港として動かす仕事を、構造上も分けた結果である。

推進方式は原子力ではなく統合電気推進

クイーン・エリザベス級は原子力空母ではない。2基のロールス・ロイスMT30ガスタービンと4基のディーゼル発電機で電力を作り、推進用電動機を通じて2本の推進軸を回す統合電気推進を採用する。総発電能力は約109メガワットである。

巡航時は燃費の良いディーゼル発電機を中心に使い、高速航行や大きな電力需要がある場面ではガスタービンを加える。発電した電力は推進だけでなく、レーダー、通信、兵器、航空支援設備、艦内生活にも配分される。

通常動力には、原子炉の建造・維持・人員養成を必要としない利点がある。イギリスは原子力潜水艦を建造できる国だが、空母まで原子力化すれば費用と専門人員がさらに膨らむ。

その代わり、艦は燃料補給を必要とする。F-35Bの航空燃料、護衛艦の燃料、弾薬、食料も補給しなければならないため、結局はタイド級補給艦などを含む兵站網が空母打撃群の行動期間を決める。

レーダー・自衛火器・護衛艦の役割

クイーン・エリザベス級はS1850M長距離捜索レーダー、Artisan 3D中距離レーダー、航海レーダー、統合任務システムを備える。艦自体が広域の状況を把握し、航空機と護衛艦を指揮する司令部機能を持つ。

近接防御には3基のファランクスCIWS、30mm機関砲、機関銃類が使われる。ただし、クイーン・エリザベス級は単艦で敵のミサイルや潜水艦をすべて排除する船ではない。

空母打撃群では、45型駆逐艦が広域防空、23型または26型フリゲートが対潜戦、攻撃型原子力潜水艦が水中・対水上戦、補給艦が燃料と物資の供給を担う。F-35Bとマーリンも外周防御へ参加する。

空母そのものが拳なら、護衛艦、潜水艦、早期警戒機、補給艦は腕と神経と血管である。拳だけを見て空母の強さを語ると、実際の戦力を見誤る。

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1番艦HMSクイーン・エリザベスの役割

HMSクイーン・エリザベスは2017年にイギリス海軍へ引き渡され、F-35B飛行試験を経て空母打撃能力の立ち上げを担った。

最大の実績は2021年の空母打撃群展開CSG21である。英米のF-35B計18機を搭載し、地中海からインド太平洋へ進出した。展開途中には対IS作戦の実任務へ参加し、F-35Bが同艦から初の戦闘出撃を行った。イギリス空母航空戦力がフォークランド紛争後の長い縮小と空白を越え、実戦運用へ戻った瞬間だった。

2021年の展開は、米海兵隊F-35Bを組み込んだことにも意味がある。イギリス機だけで航空団を満たせない弱点を補う側面はあったが、同盟国の機体と人員を一つの飛行甲板で運用できる相互運用性を証明した。

2026年7月時点では、HMSクイーン・エリザベスはロサイスでの改修を終え、NATO連合即応部隊の海上部門を支える浮動司令部としての任務準備を進めている。1番艦は「F-35Bを発進させる空母」であると同時に、大規模な多国籍艦隊を指揮する旗艦でもある。

2番艦HMSプリンス・オブ・ウェールズの役割

HMSプリンス・オブ・ウェールズは2番艦であり、現在のイギリス海軍旗艦として前面に立つ機会が増えている。

2022年には推進軸の結合部故障で長期修理を経験した。しかし復帰後はF-35B運用試験、SRVL試験、無人機試験を進め、2024年にはHMSクイーン・エリザベスの不具合を受けてNATO演習へ代替出動した。二隻体制が保険として機能した代表例である。

2025年にはオペレーション・ハイマストとして空母打撃群を率い、地中海、インド洋、インド太平洋を巡る約8か月の展開を実施した。日本にも寄港し、日英防衛協力とインド太平洋への関与を示した。帰路の演習では英国F-35Bを24機搭載し、空母打撃群の完全作戦能力到達を示した。

2026年には北大西洋と高緯度地域へ展開し、NATO任務に参加している。7月にはノルウェー海で、同艦から発進したF-35BがロシアのTu-142哨戒機を要撃した。HMSプリンス・オブ・ウェールズは、遠征外交の象徴だけでなく、北大西洋と北極圏でNATO航空戦力を供給する実働艦となった。

2隻はどのように役割分担しているのか

2隻に永久固定された役割があるわけではない。どちらもF-35B空母、ヘリコプター母艦、統合任務部隊旗艦、災害救援拠点として使える。同型艦なので、航空団、乗員、整備資材、運用手順を共通化しやすい。

実際の役割分担は、整備周期と任務予定で決まる。

状態主な活動
高即応艦空母打撃群展開、NATO任務、実戦待機
訓練艦F-35B着艦訓練、航空団資格維持、同盟国演習
改修・整備艦ドック入り、推進系整備、システム更新
代替艦姉妹艦の故障や予定変更時に任務を引き継ぐ

2026年の動きを見ると、HMSプリンス・オブ・ウェールズが高緯度地域でF-35Bを運用する一方、HMSクイーン・エリザベスは改修後の司令部任務へ準備している。二隻が別々の工程にいることで、片方の故障や整備がイギリスの空母能力全体の消滅へ直結しにくい。

クイーン・エリザベス級の強み

F-35Bによる第5世代航空戦力

最大の強みは、ステルス、センサー融合、電子戦能力を持つF-35Bを海上から運用できることだ。F-35Bは単に爆弾を運ぶ艦上戦闘機ではない。敵レーダー、航空機、艦艇から得た情報を統合し、他のF-35、護衛艦、地上部隊へ共有する情報ノードでもある。

大型船体による余裕

65,000トンの船体は、航空燃料、弾薬、整備区画、居住区、医療設備、司令部区画に余裕を与える。平時は少数機で運用し、危機時には航空団を増勢できる。無人機や新型兵器を導入する改修余地も大きい。

少人数運用と自動化

基幹乗員約700人は、同規模の空母として少ない。兵器搬送の機械化、統合監視、電気推進は人員負担を抑える。人手不足に悩む現代海軍にとって、船体の大きさだけでなく、何人で動かせるかは重要な性能である。

同盟国との相互運用性

2021年には米海兵隊、2025年にはイタリアを含むNATO諸国のF-35と連携した。F-35採用国が増えるほど、航空機、整備、情報共有の共通基盤を使いやすくなる。これは独力の機数不足を補う手段であると同時に、同盟国を束ねる政治的な力でもある。

弱点と課題

クイーン・エリザベス級の主な制約

艦ではなくF-35B部隊の規模が制約になる

イギリスは2026年3月までに最初の契約分48機のF-35Bを受領したが、2021年の事故で1機を喪失している。しかも全機を同時に空母へ載せられるわけではない。訓練、試験、整備、地上待機へ振り分ける必要がある。

英国会計検査院は2025年、F-35部隊が整備員不足、予備部品不足、海洋環境での腐食、飛行時間不足を抱えていると指摘した。2025年の24機展開では優先的に人員と部品を集めて可動率を高めたが、その状態を平時から持続できるとは限らない。

空母の飛行甲板に余裕があっても、飛ばせる機体と整備員が足りなければ戦力は増えない。クイーン・エリザベス級の最大のボトルネックは、船体より航空団側にある。

固定翼早期警戒機を使えない

クロウズネストは重要だが、E-2Dの代わりを完全に務めるものではない。ヘリコプターは固定翼機より低速で、飛行高度と滞空時間にも限界がある。高強度戦闘では、早期警戒範囲と同時運用機数が防空戦の余裕を左右する。

空中給油能力が限られる

カタパルト式空母なら専用給油機や艦載機によるバディ給油を使える。F-35B中心の英国空母では、長距離作戦で陸上基地のボイジャー空中給油機や同盟国支援への依存が強くなる。海上だけで完結する打撃距離はアメリカ空母より小さい。

自衛火力は限定的

3基のファランクスは最終防御手段であり、長距離艦対空ミサイルを自艦に大量搭載しているわけではない。護衛の45型駆逐艦やフリゲートが欠ければ、空母の生存性は急速に低下する。

巨大艦ゆえの整備リスク

推進軸結合部の不具合により、HMSプリンス・オブ・ウェールズは2022年、HMSクイーン・エリザベスは2024年に予定変更を余儀なくされた。複雑な大型艦では、一つの機械的不具合が大規模任務全体へ波及する。だからこそ二隻体制が必要だが、二隻を維持する整備費と人員も必要になる。

ニミッツ級・フォード級・いずも型との違い

項目クイーン・エリザベス級ニミッツ級/フォード級いずも型
排水量約65,000トン約10万トン級約2万トン台後半
動力通常動力・電気推進原子力通常動力
発艦方式スキージャンプ・STOVLカタパルト短距離発艦・STOVL
主力戦闘機F-35BF/A-18E/F、F-35CF-35B運用へ改修中
固定翼早期警戒機運用不可E-2Dを運用運用不可
公称最大戦闘機数F-35B最大36機航空団全体で多数クイーン・エリザベス級より小規模
主な性格同盟型の大型STOVL空母世界展開型CATOBAR空母護衛艦から発展する小型STOVL母艦

ニミッツ級フォード級は、航空団の規模、固定翼早期警戒、空中給油、出撃回数、長期展開能力で上回る。クイーン・エリザベス級は、原子力空母の代用品ではなく、費用と人員を抑えながらF-35Bをまとまった数で運用する別解である。

いずも型は日本にとって重要なF-35B運用艦になるが、船体規模、航空燃料、弾薬、格納庫、司令部能力ではクイーン・エリザベス級が大きい。両者は同じSTOVL方式でも、クイーン・エリザベス級が最初から空母航空作戦を主目的に設計されたのに対し、いずも型はヘリコプター搭載護衛艦を段階的に改修している点が異なる。

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日本にとってクイーン・エリザベス級が重要な理由

2021年のHMSクイーン・エリザベス、2025年のHMSプリンス・オブ・ウェールズは、ともにインド太平洋へ展開した。これは単なる親善航海ではない。イギリスがNATO正面だけでなく、日米豪印を含むインド太平洋の安全保障へ関与する意思を示したものだ。

日本はF-35Bを導入し、いずも型を改修している。イギリス海軍はF-35Bの艦上運用、甲板管理、耐熱処理、整備、兵器搭載、SRVL、米軍との共同運用で先行しているため、日本が学べる実務経験は多い。

また、GCAPで日英は次期戦闘機を共同開発する。空母そのものとGCAPは別計画だが、センサー情報の共有、無人機連携、長距離兵器、共同作戦という面では接続していく。クイーン・エリザベス級の寄港は、艦艇外交だけでなく、航空戦力と防衛産業を結ぶ場でもある。

よくある質問

クイーン・エリザベス級は何隻あるのか

2隻である。1番艦がHMSクイーン・エリザベス、2番艦がHMSプリンス・オブ・ウェールズで、いずれもポーツマスを母港とする。

クイーン・エリザベス級は原子力空母なのか

原子力空母ではない。ガスタービンとディーゼル発電機を組み合わせた統合電気推進を採用する通常動力空母である。

F-35Bは何機搭載できるのか

公称最大は36機である。ただし通常の展開ではヘリコプターも搭載し、整備員や補給能力との均衡を取るため、実際のF-35B数はこれより少ない。2025年には英国F-35Bを24機搭載した実績がある。

なぜカタパルトを搭載しなかったのか

F-35Bの短距離離陸・垂直着陸能力を使えば、カタパルトと着艦拘束装置を省略できるからである。建造・整備負担を抑えられる一方、E-2Dのような通常型固定翼機は運用できない。

クイーン・エリザベス級は単独で戦えるのか

単独行動は可能だが、高脅威環境で空母能力を発揮するには護衛艦、潜水艦、補給艦、F-35B、マーリンが必要である。空母打撃群全体で一つの戦闘システムを構成する。

2隻を同時に作戦投入できるのか

技術的には両艦が同時にF-35Bを運用した実績がある。ただし、航空機、整備員、護衛艦、補給艦の数には限りがあり、2個の完全な空母打撃群を常時維持するのは難しい。通常は一方を高即応、他方を訓練・整備へ回す。

アメリカの原子力空母より弱いのか

航空団の規模、固定翼早期警戒機、空中給油、航続力、出撃回数ではアメリカ空母が上である。一方、クイーン・エリザベス級は少人数・通常動力・STOVL方式で第5世代機を運用するよう最適化されており、目的と予算が異なる。

どちらの艦が旗艦なのか

任務と時期で変わる。HMSプリンス・オブ・ウェールズはイギリス海軍旗艦として2025年と2026年の主要展開を率いた。一方、HMSクイーン・エリザベスも大規模司令部を搭載でき、2026年後半のNATO連合即応部隊で浮動司令部を担う準備を進めている。

まとめ

クイーン・エリザベス級空母は、排水量約65,000トンの大型通常動力空母であり、HMSクイーン・エリザベスとHMSプリンス・オブ・ウェールズの2隻からなる。スキージャンプと広い飛行甲板を使い、F-35B最大36機搭載できる。

強みは、F-35Bのステルス・センサー能力、大型船体の拡張性、少人数運用、同盟国との相互運用性にある。弱点は、固定翼早期警戒機と艦載給油機を使えないこと、F-35B部隊の可動率と人員が制約になること、護衛艦と補給艦への依存が大きいことである。

2隻の役割は固定されていない。HMSクイーン・エリザベスが改修や司令部任務へ回る間、HMSプリンス・オブ・ウェールズが空母打撃群を率いるように、互いが作戦、訓練、整備、代替を受け持つ。

冒頭で述べた通り、この艦級はアメリカ空母の縮小版ではない。イギリスが保有できる人員と予算の範囲で、F-35Bを世界へ送り、同盟国を束ね、必要なときに海上航空基地を出現させるための設計である。クイーン・エリザベス級の価値は、巨大な船体そのものより、2隻と航空団と同盟網を一つの仕組みにした点にある。

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参考資料

  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/equipment/ships/queen-elizabeth-class">Royal Navy「Queen Elizabeth Class」</a>
  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/equipment/aircraft/f-35">Royal Navy「F-35 Lightning」</a>
  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/carrier-strike-group">Royal Navy「Carrier Strike Group」</a>
  • <a href="https://www.gov.uk/government/collections/the-capabilities-of-the-new-uk-aircraft-carriers/">gov.uk</a>
  • <a href="https://www.gov.uk/government/news/qec-ship-air-certification">gov.uk</a>
  • <a href="https://www.gov.uk/government/news/hms-queen-elizabeth-sets-off-for-f-35b-fighter-jet-trials">gov.uk</a>
  • <a href="https://www.baesystems.com/en/product/aircraft-carriers">BAE Systems「Aircraft Carriers」</a>
  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/news/2026/april/24/20260424-hms-pwls-sails">royalnavy.mod.uk</a>
  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/news/2026/july/07/20260707-air-policing">royalnavy.mod.uk</a>
  • <a href="https://www.gov.uk/government/news/uk-forces-protect-nato-with-aircraft-carrier-operations-in-high-north">gov.uk</a>
  • <a href="https://www.royalnavy.mod.uk/news/2026/june/19/20260619-ramstein-flag">royalnavy.mod.uk</a>

参考資料・主な出典

Royal Navy「Queen Elizabeth Class」|資料を確認

Royal Navy「F-35 Lightning」|資料を確認

Royal Navy「Carrier Strike Group」|資料を確認

gov.uk|資料を確認

gov.uk|資料を確認

gov.uk|資料を確認

BAE Systems「Aircraft Carriers」|資料を確認

royalnavy.mod.uk|資料を確認

royalnavy.mod.uk|資料を確認

gov.uk|資料を確認

royalnavy.mod.uk|資料を確認

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