
26型フリゲートとは、イギリス海軍が23型フリゲートの対潜型を更新するために開発した次世代水上戦闘艦である。英海軍では都市名を冠するシティ級と呼ばれ、静粛性を重視した船体、低周波曳航ソナー、対潜ヘリコプター、無人機や任務装備を収容できる大型ミッションベイを組み合わせる。単にソナーを積んだフリゲートではなく、艦そのものを潜水艦捜索のために静かに作り込んだ点が最大の特徴だ。
一方、日本のもがみ型護衛艦もVDS・TASS、哨戒ヘリコプター、UUVを備えるが、設計の出発点は異なる。26型が空母打撃群や戦略原潜を守る高性能対潜護衛艦であるのに対し、もがみ型は約90人という少人数で、対潜、対水上、警戒監視、機雷戦まで幅広く担当する汎用FFMである。
- 26型は静粛船体・CODLOG推進・低周波曳航ソナーを統合した大型対潜フリゲート
- Mk41 VLS、Sea Ceptor、大型ミッションベイにより対空・対水上・無人機運用にも対応する
- 英国・豪州・カナダ・ノルウェーが採用し、共通船体に各国固有の戦闘システムを組み込む
- もがみ型は省人化・機雷戦・多任務性、26型は高強度の外洋対潜戦を重視する
私は、この2艦を単純な「どちらが強いか」で並べると、本質を見失うと考える。26型は海の静寂を兵器化した艦であり、もがみ型は人手不足そのものを設計条件へ変えた艦である。本記事では26型フリゲートの性能と対潜戦の仕組み、採用国、武装、弱点を整理し、最後にもがみ型との違いを具体的に比較する。
もがみ型自体の装備、建造状況、省人化システムは別記事へ送る。
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26型フリゲートはイギリスの次世代対潜艦
26型フリゲートは、BAEシステムズが設計したグローバル・コンバット・シップの英国仕様である。イギリス海軍ではシティ級として8隻を整備し、23型フリゲートのうち対潜戦を主任務とする艦を更新する。1番艦グラスゴー、2番艦カーディフ、3番艦ベルファストは2030年より前の艦隊加入が予定され、残る5隻は2030年以降に続く計画だ。2026年7月時点では、1番艦グラスゴーは建造終盤の試験・コミッショニング段階にあり、26型はまだ英海軍の実戦配備艦ではない。したがって能力の評価は、公表された設計、搭載装備、試験・建造状況に基づくことになる。
「フリゲート」という名称から、4,000~5,000トン級の中型艦を想像すると規模を見誤る。英海軍公表値では排水量6,900トン、全長149メートル、速力26ノット、航続距離7,000海里である。BAEシステムズの資料では全長149.9メートル、最大幅20.8メートル、最大速力26ノット超、電動推進時の航続距離7,000海里超とされる。居住区は208人分を用意し、基幹乗員は157人とされている。
| 項目 | 英国26型・シティ級 |
|---|---|
| 建造予定 | 8隻 |
| 排水量 | 6,900トン |
| 全長 | 149~149.9メートル |
| 最大幅 | 20.8メートル |
| 速力 | 26ノット以上 |
| 航続距離 | 7,000海里以上 |
| 基幹乗員 | 157人 |
| 最大収容 | 208人 |
| 主な任務 | 対潜戦、艦隊護衛、対空・対水上戦、海上安全保障 |
数字だけを見ても、26型は小型・廉価な警備艦ではない。大型船体に長い航続力、対潜ヘリ、ミッションベイ、複数系統のVLSを組み込み、空母や重要艦艇の近くで長期間行動するための護衛艦である。英海軍が本級を「三つの中核任務」、すなわち戦闘、海上安全保障、国際関与へ投入すると説明しているのは、対潜専用艦でありながら外洋艦隊の基幹戦力として使うためだ。
世界各国の海軍力や水上戦闘艦の位置づけは、次の記事へつなげられる。
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26型フリゲートの対潜性能は何が優れているのか
- 静粛船体とCODLOG推進で自艦雑音を抑える
- 船体ソナーと低周波曳航ソナーで接触を得る
- 艦載ヘリコプターと無人機が遠方で位置を絞り込む
- 艦・航空機・僚艦の情報を統合して追尾を維持する
26型の対潜性能を理解するには、ソナーの型番だけを見るのでは足りない。対潜戦は、静かな艦、遠距離を捜索するセンサー、接触を維持するヘリコプター、攻撃手段、他艦や航空機との情報共有を一つの連鎖として機能させる戦いである。26型の強みは、この連鎖を最初から艦全体で成立させている点にある。
船体そのものを静かにした音響ステルス設計
潜水艦を探す水上艦にとって、自艦が出す騒音は大敵である。プロペラ、減速機、ディーゼル機関、ポンプ、補機の振動は海中へ伝わり、曳航ソナーの感度を下げる。さらに、相手潜水艦に自艦の存在を知らせる手掛かりにもなる。
26型は音響的に静かな船体を共通設計の核とし、低速・巡航時にはディーゼル発電機で作った電力を電動モーターへ送り、必要な高速時にはMT30ガスタービンを機械的に直結して推進する。英海軍は2基の電動モーター、4基の高速ディーゼル発電機、ガスタービン直結駆動を公表している。カナダ型の公式資料では、この方式をCODLOG、すなわちディーゼル・エレクトリックまたはガスタービン複合推進と明記している。
電動推進は、主機を減速機と軸へ直接つなぐ方式よりも、対潜捜索時の振動源を管理しやすい。もちろん電動推進を採用しただけで自動的に静かな艦になるわけではなく、機器の防振支持、配管、軸系、プロペラ、船型まで含めた設計が必要だ。BAEシステムズが各国型に共通する特徴として「音響的に静かな船体」を掲げていることからも、26型では静粛性が付加装備ではなく基本構造に組み込まれていると分かる。
私が26型の対潜能力で最も重要だと見るのは、ソナー2087そのものより、この静粛な土台である。高性能ソナーは耳に相当するが、自艦騒音を抑える設計は、耳を塞ぐ雑音を最初から消す作業だからだ。
ロールス・ロイスのMT30と艦艇用エンジンの産業面は、次の記事へつなげられる。
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ソナー2087で遠距離の潜水艦を探す
英国型26型の主力対潜センサーはソナー2087である。これは低周波のアクティブ・パッシブ曳航ソナーで、艦尾からセンサーを海中へ展開し、船体から距離を取って潜水艦を探知する。英海軍は曳航ソナーがアクティブ探知、パッシブ探知、魚雷警戒に対応すると説明している。BAEシステムズも英国型の主要センサーとしてソナー2087を挙げている。
アクティブ方式は音波を発して反射音を測り、パッシブ方式は潜水艦が発する機械音やプロペラ音を聞く。低周波は遠くまで届きやすい一方、海底地形、水温、塩分、海況による音の曲がり方を読み解かなければならない。したがって、カタログ上の最大探知距離だけで能力を断定することはできない。潜水艦の静粛性、深度、速度、海域、味方側の解析能力によって結果は大きく変わる。
カナダのリバー級では、S2087に加えてS2150船体装備ソナー、S2170曳航魚雷対抗装置、ソノブイ処理システムまで公表されている。同じ26型の船体を使いながら、各国が自国の戦闘システムと水中戦装備を組み合わせられることが分かる。
世界の潜水艦や通常動力潜水艦の静粛性を広く読む場合は、次の記事へつなげられる。
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ヘリコプターとミッションベイが捜索範囲を広げる
水上艦だけで潜水艦を追い続けるのは難しい。艦が接触らしき反応を得た後、対潜ヘリコプターが離れた海面へ急行し、吊下式ソナーやソノブイを使って位置を絞り込む。ヘリは艦から遠く離れた場所へ短時間でセンサーと魚雷を運べるため、艦載航空機は対潜フリゲートの攻撃半径を大きく伸ばす。
26型は統合ミッションベイと格納庫を備え、複数のヘリコプター、UUV、ボート、コンテナ化された任務装備、災害救援物資を搭載できる。飛行甲板は大型のチヌーク輸送ヘリが着艦できる規模を持つ。ここで重要なのは、ミッションベイが単なる空き倉庫ではない点だ。無人潜水機や無人水上艇、曳航装置、特殊部隊用舟艇、追加センサーを任務に応じて入れ替える余地を持つ。
将来の対潜戦では、有人艦がすべての海域へ自ら進むのではなく、UUVやUSVを危険海域へ先行させ、得られた音響情報を艦上で統合する形が増えると予想される。私は、26型の大型ミッションベイは就役時の装備以上に、2040年代以降の無人対潜システムを受け入れる余白として価値を持つと見る。

26型フリゲートの武装とレーダー
26型は対潜戦を主眼とするが、自衛だけの艦ではない。英国型は127ミリのMk45 Mod 4A主砲、Sea Ceptor艦対空ミサイル、Mk41汎用VLSなどを組み合わせる。英海軍の公表では、Sea Ceptor用VLSは12セルで、1セルに4発を収容するため合計48発を搭載できる。これとは別に24セルのMk41 VLSを備える。Mk45主砲は5インチ、62口径で、BAEシステムズは1番艦グラスゴーへの統合作業を公表している。
| 分野 | 英国26型の主な装備 |
|---|---|
| 主砲 | Mk45 Mod 4A 127ミリ艦砲 |
| 個艦・近距離防空 | Sea Ceptor 最大48発 |
| 汎用VLS | Mk41 24セル |
| レーダー | Artisan 3D |
| 主力対潜センサー | Sonar 2087 |
| 航空運用 | 対潜ヘリ、各種無人機・任務装備 |
Artisan 3Dレーダーは多数の目標を同時追尾でき、Sea Ceptorと組み合わせて航空機や対艦ミサイルに対処する。ただし英国型26型は、長距離防空を主任務とする45型駆逐艦の代替ではない。防空艦の傘の下で艦隊を守りつつ、自らにも相応の防空力を持つ構成である。Mk41には複数種類のミサイルを統合できる設計上の余地があるが、将来搭載弾を未公表段階で断定すべきではない。
この点は、カナダ型を見ると設計の拡張性が分かりやすい。リバー級はSPY-7 AESAレーダー、イージス戦闘システム、共同交戦能力、SM-2、ESSM、トマホーク、NSM、24セルのMk41、127ミリ砲を公表している。英国ではフリゲート、カナダでは駆逐艦と呼ばれるのは、艦名の翻訳差ではなく、搭載する戦闘システムと任務要求が異なるためである。
イージス艦や艦隊防空との違いは、次の記事へつなげられる。
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26型フリゲートの採用国は4か国
26型の原設計であるグローバル・コンバット・シップは、2026年7月時点で英国、オーストラリア、カナダ、ノルウェーの4か国に採用または選定されている。英国8隻、オーストラリア6隻、カナダ15隻、ノルウェー少なくとも5隻であり、計画数は合計34隻以上となる。ただし、すべてが英国型と同じ装備ではない。共通する静粛船体と基本設計を土台に、各国がレーダー、戦闘システム、兵装、航空機、通信装備を変更している。
| 国 | 艦級・呼称 | 計画数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| イギリス | 26型・シティ級 | 8隻 | 英海軍の対潜型23型を更新。Sonar 2087、Sea Ceptor、Mk41を搭載 |
| オーストラリア | ハンター級 | 6隻 | 対潜戦重視。豪州製CEAFAR2レーダー、イージス系戦闘システム、MH-60Rに適合 |
| カナダ | リバー級駆逐艦 | 15隻 | SPY-7、イージス、SM-2、ESSM、トマホーク、NSMを統合する大型水上戦闘艦 |
| ノルウェー | 英国との共同26型 | 少なくとも5隻 | 英国艦と可能な限り共通化し、北大西洋・高緯度海域の対潜戦を重視 |
イギリスは8隻のシティ級を建造
英国は8隻すべてに都市名を付ける。グラスゴー、カーディフ、ベルファストに続き、バーミンガム、シェフィールド、ニューカッスル、エディンバラ、ロンドンが計画されている。最初の3隻は2030年より前、残りは2030年以降に艦隊へ加わる予定である。
英国にとって26型は、単なる旧式艦の置き換えではない。英国防装備・支援機関は、継続的海上核抑止と空母打撃群を守る高度な対潜艦として位置づけている。高速だけを追わず、長距離航行と静かな捜索を優先した26ノット級の設計は、この護衛任務に対応したものだ。
オーストラリアは6隻のハンター級を建造
オーストラリアのハンター級は、26型を基礎に6隻を建造する対潜フリゲートである。英国型の船体をそのまま複製するのではなく、イージス戦闘システム、豪州向けインターフェース、CEAFAR2レーダー、豪州の兵装・通信装備、MH-60R対潜ヘリコプターを組み込む。1番艦は2024年6月に鋼材切断が始まり、豪国防省の工程では2031年に海上試験、2032年に引き渡しが予定されている。
そして豪州は、ハンター級を採用しながら、別枠で改良もがみ型11隻も一般目的フリゲートとして選定した。豪海軍が公表した将来艦隊は、6隻のハンター級と11隻の改良もがみ型を併用する構成である。これは26型ともがみ型が、一方を選べば他方が不要になる同一カテゴリーではないことを示している。
もがみ型の豪州選定と日本の艦艇輸出は、別記事へ送る。
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カナダは15隻のリバー級駆逐艦を整備
カナダは26型設計をリバー級駆逐艦として15隻整備する。公式要目は全長151.4メートル、排水量7,800トン、速力27ノット、航続距離7,000海里で、英国型より重武装化している。SPY-7、イージス戦闘システム、共同交戦能力、24セルのMk41、SM-2、ESSM、トマホーク、NSMを搭載し、対潜戦だけでなく防空、対艦、長距離打撃を担う。水中戦装備もS2087、S2150、S2170、ソノブイ処理装置を組み合わせる。
26型の設計が輸出に成功した理由は、このカナダ型に表れている。静粛船体と推進系、ミッションベイ、基本配置を維持しながら、英国のArtisanとSea Ceptorに縛られず、米国系の大型レーダーとミサイル体系を受け入れられる。共通船体を持つ艦艇ファミリーでありながら、各国の戦闘システム主権を残す設計なのである。
ノルウェーは英国型に近い艦を少なくとも5隻導入
ノルウェー政府は2025年8月、次期フリゲートの戦略的パートナーとして英国を選定した。引き渡し開始は2030年を予定し、英国艦とノルウェー艦を可能な限り同一仕様にする方針を示している。ノルウェー政府は26型を、潜水艦を探知、追尾、攻撃するために特別設計された艦と説明し、対潜ヘリコプターを搭載する方針も公表した。BAEシステムズは計画数を少なくとも5隻としている。
北大西洋と北極圏周辺は、ロシア北方艦隊の潜水艦が大西洋へ進出する海域につながる。英国とノルウェーが同型艦を使えば、訓練、整備、部品、乗員教育、戦術開発を共通化しやすい。ノルウェーの採用は一隻単位の輸出というより、北大西洋の対潜戦を共同運用する艦隊パートナーシップとして見るべきだ。
なぜ26型は国際的に採用されたのか
26型が4か国へ広がった理由は、単に英国製ソナーの性能が高いからではない。私は、採用の核心を「共通の静かな船体」と「各国が変更できる上部システム」の分離に見る。
第一に、静粛性の高い船体とCODLOG推進は、後から容易に追加できない。レーダーやミサイルは近代化改修で交換できるが、機関配置、軸系、防振、船体音響設計を就役後に根本から作り直すのは難しい。26型は最も変更しにくい部分へ初期投資している。
第二に、オープン・アーキテクチャとモジュール設計により、英国、豪州、カナダ、ノルウェーが異なる戦闘システムを統合できる。英国型はArtisanとSea Ceptor、豪州型はCEAFAR2とイージス系システム、カナダ型はSPY-7とイージスを使う。それでも共通の音響静粛船体、推進思想、ミッションベイを維持する。
第三に、現地建造と産業協力を組み込みやすい。豪州はオズボーン造船所、カナダはアーヴィング造船所で建造を進める。艦艇輸出は完成艦を売るだけでは成立しにくく、長期整備、設計変更、技術移転、雇用、国内サプライチェーンまで含む国家事業になる。26型はライセンス建造と国別仕様の設計支援を商品化した点でも成功している。
BAEシステムズや造船関連企業の投資面は、次の記事へつなげられる。
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26型フリゲートともがみ型護衛艦の違い
- 26型は高強度の外洋対潜戦と重要艦護衛を優先する
- もがみ型は省人化・高速性・機雷戦・多数配備を重視する
- 国別仕様や建造バッチでレーダーと武装は異なる
- カタログ値だけで実戦の探知順や勝敗は断定できない
26型フリゲートともがみ型護衛艦は、どちらもステルス性、対潜センサー、艦載ヘリ、ガスタービンを備える新世代フリゲートである。しかし、公表要目を並べると、設計目的の違いが鮮明になる。
海上自衛隊の公式要目では、もがみ型は基準排水量3,900トン、全長133メートル、幅16.3メートル、CODAG方式2軸、出力7万馬力、速力約30ノット、乗員約90人である。VDS・TASS、対機雷戦用ソナー、UUV、USV、簡易型機雷敷設装置、哨戒ヘリ、VLSを搭載する。
| 比較項目 | 26型フリゲート・英国型 | もがみ型護衛艦 |
|---|---|---|
| 主眼 | 高強度の対潜戦、空母・重要艦護衛 | 多任務、警戒監視、対潜、対水上、機雷戦 |
| 公表排水量 | 6,900トン | 基準3,900トン |
| 全長 | 149~149.9メートル | 133メートル |
| 最大幅 | 20.8メートル | 16.3メートル |
| 速力 | 26ノット以上 | 約30ノット |
| 推進 | CODLOG型。電動推進またはガスタービン直結 | CODAG。ディーゼルとガスタービンを機械推進に使用 |
| 基幹乗員 | 157人 | 約90人 |
| 対潜センサー | Sonar 2087低周波曳航ソナーを中核 | VDS・TASSを搭載 |
| 航空・任務区画 | 大型統合ミッションベイ、格納庫、大型飛行甲板 | 哨戒ヘリ1機、UUV・USVを搭載 |
| 機雷戦 | 無人機搭載余地はあるが英国型の中心任務ではない | 対機雷ソナー、UUV、USV、簡易機雷敷設を標準化 |
| 防空・VLS | Sea Ceptor最大48発、Mk41 24セル | SeaRAM、VLS装置1式。海自公式要目はセル数を記載していない |
| 建造思想 | 高性能艦を少数精鋭で長期運用 | 省人化し、複数海域へ展開する艦数を確保 |
対潜戦だけなら26型が有利
純粋な外洋対潜戦で比較すれば、26型が有利と考えられる。理由は、大型船体、音響静粛設計、電動低速推進、Sonar 2087、大型対潜ヘリ運用、広いミッションベイを一体化しているためだ。特に北大西洋のような広大な海域で、空母打撃群や重要航路の前方を長期間捜索する任務では、航続力と音響設計の余裕が効く。
ただし「26型のソナーがあるから、もがみ型より必ず先に探知する」とは言い切れない。対潜戦の結果は海況、乗員練度、航空支援、他艦との情報共有、相手潜水艦の行動で変わる。比較できるのは設計上の重点であり、実戦の勝敗をカタログだけで決めることはできない。
省人化と多任務性ではもがみ型が優れる
もがみ型の乗員は約90人で、26型の基幹乗員157人より大幅に少ない。自動化された統合マスト、戦闘指揮所、機関監視、艦内業務を前提に、限られた隊員数で多数の艦を維持する思想がある。速力も約30ノットと26型より高い。
さらに、もがみ型は機雷戦能力を標準装備する。対機雷戦用ソナー、UUV、USV、簡易型機雷敷設装置を一艦にまとめ、従来の掃海艦艇と護衛艦の任務領域を接続した。南西諸島周辺、海峡、港湾、沿岸航路で、警戒監視と対機雷戦を同じ船体で回す日本の事情に合う。
一方、乗員を減らすほど、一人が負担する任務は増える。損傷時の応急作業、長期航海、警戒配置、整備を少人数で回す難しさは残る。省人化は人を不要にする魔法ではなく、人員不足による制約を自動化と陸上支援へ移す設計である。
同じMT30でも推進思想が異なる
26型ともがみ型は、どちらもロールス・ロイスMT30ガスタービンを採用する。しかし、機関の使い方は異なる。ロールス・ロイスはMT30が26型と日本の30FFM、すなわちもがみ型計画に採用されたと公表している。
26型は静かな対潜捜索で電動モーターを使い、高速時にガスタービン直結へ切り替える。もがみ型はCODAG方式で、ディーゼル機関とガスタービンの出力を機械的に推進へ使う。前者は静粛な巡航、後者はコンパクトな船体と高速性能を重視した選択と整理できる。同じエンジンを積んでも、艦の性格は推進システム全体で決まる。
武装の数字だけでは比較できない
英国26型はSea Ceptor最大48発とMk41 24セルを持ち、英国仕様だけを見ればVLSの余裕が大きい。一方、海上自衛隊のもがみ型公式ページはVLS装置1式と記し、セル数を主要要目に掲載していない。本記事では、公開元と艦の時期によって異なる数字を混ぜず、公式に確認できる範囲に限定する。
また、カナダ型26型はSM-2やトマホークまで搭載し、英国型より防空・打撃能力が強い。改良もがみ型も豪州向けに32セルVLSや長い航続距離が公表されている。したがって、「26型対もがみ型」は、どの国の型、どの建造バッチ、どの搭載弾を比べるかを決めなければ成立しない。
豪州の選択が両艦の役割を証明した
私には、豪州の将来艦隊が最も正直な比較結果に見える。豪州は26型系のハンター級を6隻整備し、同時に改良もがみ型を11隻導入する。ハンター級には高性能対潜戦と艦隊護衛を担わせ、より小型で早期取得できるもがみ型には一般目的フリゲートとして艦数と展開力を担わせる。
つまり、26型ともがみ型は「高級車と廉価版」の関係ではない。重い対潜護衛任務へ最適化した大型艦と、少人数で海軍の日常任務を広く引き受ける汎用艦の関係である。豪州は両方を買うことで、質と数を別の艦級に分担させた。
もがみ型の建造企業と日本の防衛産業は、次の記事へつなげられる。
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26型フリゲートの弱点と課題
26型は有力な設計だが、万能艦ではない。第一の課題は大型化と費用である。6,900トン級の船体、静粛化設備、電動推進、曳航ソナー、大型ミッションベイを持つため、小型フリゲートのように安価な数をそろえる艦ではない。乗員も基幹157人であり、もがみ型の約90人と比べると人的負担が大きい。
第二に、2026年7月時点では英国型がまだ艦隊へ加入していない。英海軍は最初の3隻を2030年より前に加入させる計画だが、実際の静粛性、稼働率、整備負担、ソフトウェア統合、乗員訓練は就役後に検証される。1番艦は2025年12月に最初のディーゼル発電機を始動し、試験・コミッショニング段階へ移ったところである。設計の期待値と運用実績は分けて評価しなければならない。
第三に、国別仕様の自由度は利点であると同時に、設計管理を複雑にする。英国、豪州、カナダ、ノルウェーでレーダー、戦闘システム、兵装、通信装備が異なれば、同じ船体でも重量、電力、冷却、ソフトウェア、試験工程が変わる。共通設計による規模の利益を維持しながら、各国固有装備を増やし過ぎない管理が必要だ。
第四に、最大速力26ノット級は現代フリゲートとして遅過ぎる数字ではないが、約30ノットのもがみ型より低い。26型は高速追跡より、静かな捜索と航続力を優先した。任務に合った選択ではあるものの、高速艦との機動や緊急展開では運用側の計画が必要になる。
26型フリゲートは世界の対潜艦を変えるのか
26型の影響は、一国の新型フリゲートにとどまらない。英国、豪州、カナダ、ノルウェーで34隻以上が計画されれば、北大西洋、北極圏、インド太平洋に同じ設計思想の対潜艦が展開する。訓練や部品を完全に共通化できなくても、船体、推進、音響設計、ミッションベイの経験を共有できる意味は大きい。
さらに重要なのは、対潜艦の価値が「魚雷を何本積むか」から、「無人センサーを何種類受け入れ、データをどう統合するか」へ移っている点だ。26型の広い任務区画は、将来のUUV、USV、固定翼無人機、コンテナ式指揮所、追加通信装置を受け入れる。兵器を船体へ永久固定するのではなく、余白を残して変化へ対応する発想である。
ただし、もがみ型も別の方向から同じ未来へ向かっている。もがみ型はすでにUUVとUSVを主要装備に含め、機雷戦を無人化する。26型が大型ミッションベイで将来装備を抱え込むのに対し、もがみ型は小人数艦隊へ無人アセットを組み込み、艦数を維持する。両艦は異なる海軍事情から出発しながら、有人艦と無人機を一つのシステムにする方向では重なる。
日本の潜水艦隊や対潜戦の歴史的背景は、次の記事へつなげられる。
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よくある質問
26型フリゲートは何隻建造されるのか
2026年7月時点の公表計画は、英国8隻、豪州6隻、カナダ15隻、ノルウェー少なくとも5隻で、26型系の合計は34隻以上である。ただし豪州型はハンター級、カナダ型はリバー級駆逐艦として大幅な仕様変更を受ける。
26型フリゲートはすでに就役しているのか
英海軍公式ページは、最初の3隻が2030年より前に艦隊へ加わる予定としている。1番艦グラスゴーは2025年12月に機関始動を迎え、試験・コミッショニング段階へ移行した。したがって2026年7月時点では、26型はまだ実戦配備による運用実績を持つ艦級ではない。
26型はなぜ駆逐艦ではなくフリゲートなのか
英国は対潜戦を主任務とする護衛艦としてフリゲートに分類する。一方、カナダは同じ基本設計へSPY-7、イージス、SM-2、トマホークなどを統合し、リバー級駆逐艦と呼ぶ。駆逐艦とフリゲートの境界は排水量だけで決まらず、各国の編制、任務、命名慣行で変わる。
26型ともがみ型はどちらが強いのか
高強度の外洋対潜戦、静粛性、長距離捜索、大型ヘリ・任務区画では26型が有利である。省人化、速力、機雷戦、多数配備による展開力ではもがみ型が優れる。豪州がハンター級6隻ともがみ型11隻を並行整備する計画は、両艦が補完関係にあることを示す。
日本が26型フリゲートを導入する可能性はあるのか
日本はもがみ型を国内で整備し、乗員事情、機雷戦、国内造船基盤に合わせた艦隊更新を進めている。本記事で確認した2026年7月までの公表資料には、海上自衛隊が26型を導入する計画は見当たらない。日本にとって26型は現状、導入予定艦というより、対潜艦の静粛設計、ミッションベイ、国際共同建造を考える比較対象である。
まとめ
26型フリゲートは、イギリスが23型対潜フリゲートの後継として開発した6,900トン級の大型対潜艦である。音響的に静かな船体、電動推進を使うCODLOG型機関、低周波曳航ソナー2087、対潜ヘリ、大型ミッションベイを組み合わせ、空母打撃群や重要航路を潜水艦から守る。
英国はシティ級8隻、豪州はハンター級6隻、カナダはリバー級15隻、ノルウェーは少なくとも5隻を計画し、26型系は34隻以上へ広がった。成功の理由は、後から変更しにくい静粛船体を共通化しながら、レーダー、戦闘システム、ミサイルを各国仕様へ変えられる設計にある。
もがみ型との違いは、性能の上下ではなく任務の置き方である。26型は大型で静かな対潜護衛艦、もがみ型は少人数で対潜、対水上、警戒監視、機雷戦を回す汎用FFMだ。純粋な外洋対潜戦では26型、省人化、機雷戦、艦数確保ではもがみ型が強い。
冒頭で述べた通り、26型は海の静寂を兵器化した艦であり、もがみ型は人手不足を設計条件へ変えた艦である。豪州が両者を同時に導入する計画こそ、現代海軍に必要なのが一隻の万能艦ではなく、異なる強みを組み合わせる艦隊設計であることを示している。
主な参照資料
イギリス海軍 City Class公式要目・建造計画・対潜装備
BAE Systems Global Combat Ship公式資料
オーストラリア国防省 Hunter Class Frigate計画
オーストラリア国防省 Global Combat Ship利用国会合
参考資料・主な出典
イギリス海軍 City Class公式要目・建造計画・対潜装備|資料を確認
イギリス海軍 HMS Glasgow公式ページ|資料を確認
BAE Systems Global Combat Ship公式資料|資料を確認
イギリス海軍 Type 26第2バッチ建造契約|資料を確認
イギリス海軍 Type 26建造施設|資料を確認
オーストラリア国防省 Hunter Class Frigate計画|資料を確認
オーストラリア国防省 Global Combat Ship利用国会合|資料を確認
カナダ政府 River-class destroyer計画|資料を確認
カナダ海軍 River-class destroyer要目|資料を確認
ノルウェー政府 Type 26選定発表|資料を確認
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