空母シャルル・ド・ゴールとは|アメリカ以外で唯一の原子力空母が「1隻」で背負うもの──性能・戦歴・稼働率65%の現実と2038年の後継まで【2026年版】

空母シャルル・ド・ゴールとは
要点

シャルル・ド・ゴールという艦は、こういう「フランスがそこにいる」と示すために存在している。アメリカ以外で世界に1隻しかない原子力空母。カタパルトで飛行機を撃ち出せる空母を持つのは、アメリカとフランスと、最近ようやく追いついた中国だけだ。ただしフランスには1隻しかない。半年海に出れば、残りの半年は空母がいない国になる。この記事では、その1隻が何者で、何をしてきて、これからどうなるかを書く。

目次

一言でいうと、フランスがひとりで作った「小さな本物の空母」

航行するシャルル・ド・ゴール。飛行甲板と右舷の艦橋
航行するシャルル・ド・ゴール。飛行甲板と右舷の艦橋。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
一言でいうと、フランスがひとりで作った「小さな本物の空母

母港は地中海側のトゥーロン。原子炉は潜水艦用のK15型を2基積んでいて、これはル・トリオンファン級弾道ミサイル原潜と同じ系統だ。燃料交換まで7年ほど動ける。

項目シャルル・ド・ゴール
就役2001年5月
満載排水量約42,000トン
全長/全幅261.5m/64.4m
推進原子炉K15型×2、約27ノット
カタパルト蒸気式C13-3型×2
搭載機ラファールM約30機、E-2C×2〜3、ヘリコプター
対空兵装アスター15×32発、ミストラル短SAM
乗員約1,900名(航空団等を含む)
母港トゥーロン

なぜ1隻なのか:構想から就役まで、フランスらしい紆余曲折

この艦の話は、名前から始めるのがいい。

1986年に起工したとき、艦名は「リシュリュー」だった。フランス最後の戦艦の名前だ。ところが翌年、時の首相シラクが「シャルル・ド・ゴール」に変えた。ド・ゴールという人物への評価は今も割れていて、命名に反対した政治家もいた。それでもこの名前が付いたのは、フランスの核抑止と独立外交を作ったのがド・ゴールだからだ。原子力空母に彼の名前を付けるというのは、フランスが自分で自分を定義したようなものだった。

本来は2隻作るはずだった。1961年就役の通常動力空母クレマンソーとフォッシュの2隻を、原子力空母2隻で置き換える計画だった。ところが冷戦が終わって予算が削られ、1番艦の建造すら何度も止まった。起工から就役まで15年。その間にクレマンソーは退役し、フォッシュはブラジルに売られた。2隻目は今日まで作られていない。

就役直後の話も書いておく。試験航海でプロペラが折れた。急場しのぎに退役したクレマンソーの予備プロペラを付けたので、しばらく速力が25ノットに制限された。飛行甲板が短くてE-2Cホークアイの着艦に余裕がないとわかり、就役前に甲板を4メートル延ばした。原子炉の遮蔽が足りないと指摘されて工事をやり直した。就役してから何年も「あの艦は大丈夫か」と言われ続けた。

正直、いま振り返ると、フランスは無理をしてこの艦を作った。それでも作ったから、2020年代にカタパルト空母を持つ国がアメリカと中国以外にひとつ残った。無理をしなかったイギリスは、いまクイーン・エリザベス級でカタパルトなしの道を歩いている。

技術の見どころ:原子炉、カタパルト、そして揺れない甲板

シャルル・ド・ゴールから発艦する米海軍のC-2A
シャルル・ド・ゴールから発艦する米海軍のC-2A。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)
技術の見どころ:原子炉、カタパルト、そして揺れない甲板

原子炉は潜水艦用のK15型を2基。空母のために新しい原子炉を作らず、ル・トリオンファン級と同じ炉を流用した。おかげで開発費は抑えられたが、出力は控えめで、最大速力は27ノットにとどまる。ニミッツ級が30ノットを超えるのと比べると遅い。カタパルトから飛行機を撃ち出すには向かい風が要るので、速力が足りないぶんを風に頼る場面が出てくる。

カタパルトはアメリカ製の蒸気式C13-3型で、ニミッツ級と同じものだ。だから米海軍のホークアイがそのまま使えるし、逆にラファールMはアメリカの空母からも発艦できる。2018年には実際にラファールMがアメリカの空母ジョージ・H・W・ブッシュで発着艦訓練をしていて、この互換性はフランスが自国の空母を整備に入れている間の保険にもなっている。

私が一番好きなのはSATRAPという装置だ。船体の中に重りを乗せたレールを走らせ、コンピュータ制御で艦の傾きを打ち消す。荒れた海でも飛行甲板を水平に保つための仕組みで、小さな艦で発着艦の安全を確保するために作られた。大きな空母は排水量の重さで揺れを抑えられるが、4万トンの艦にはそれができない。だから頭を使った。

飛行甲板は斜め8.5度のアングルドデッキで、エレベーターは右舷に2基。格納庫は4,600平方メートルほどしかなく、ここに20機以上を詰め込む。残りは甲板に並べる。艦内にはトゥーロンの街並みを模した通路名が付いていて、乗員はそれで場所を覚えるという話を読んだことがある。

空母打撃群:この艦は1隻で動かない

航空機の編隊と航行するシャルル・ド・ゴール
航空機の編隊と航行するシャルル・ド・ゴール。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

シャルル・ド・ゴールが海に出るときは、必ず群れで出る。フランス海軍は「GAN」と呼ぶ空母打撃群で、標準的な構成は防空フリゲートのオリゾン級が1隻、多用途フリゲートのアキテーヌ級が2隻、補給艦が1隻、そして水中に攻撃原潜が1隻だ。2025年の太平洋展開ではこの編成で3,000人が動いた。哨戒機アトランティック2が陸上から先回りして支援に付くこともある。

この群れの中身はフランス海軍の艦艇一覧で全部書いたが、要するにフランス海軍の第一線艦の3分の1が空母のお供に取られる。空母を1隻出すということは、海軍の3分の1を1か所に集めるということでもある。

艦載機:ラファールMとホークアイ

米空母でタッチ・アンド・ゴーを行うフランス海軍のラファールM
米空母でタッチ・アンド・ゴーを行うフランス海軍のラファールM。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

この艦の価値の半分は艦載機だ。

戦闘機はラファールMがおよそ30機。空軍型と同じ機体を艦載用に強化したもので、フランスは戦闘機と空母と原子炉とミサイルを全部自前で作れる、世界でも数少ない国になった。詳しくはラファール戦闘機の記事で書いた。そしてインドが2025年にこのラファールMを26機買ったので、2028年からはインドの空母でもこの機体が飛ぶ。

早期警戒機はアメリカ製のE-2Cホークアイが2〜3機。フランスは後継のE-2Dを発注済みで、E-2Dの記事で書いたように、カタパルトがあるからこそ固定翼の早期警戒機を飛ばせる。スキージャンプ式の空母はここができない。イギリスも中国の遼寧も、早期警戒はヘリで妥協している。

ラファールを机に置きたい人には、この1/48が入手しやすい。空軍型のキットだが、艦載型との違いを見比べるのも楽しい。

戦歴:アフガニスタン、リビア、シリア、そして太平洋

シャルル・ド・ゴールは、就役してから実戦を経験し続けた空母だ

2001年末、就役から半年でアフガニスタンへ向かい、艦載機がタリバンを空襲した。2011年のリビア空爆では、地中海に張り付いて何百回もの出撃を支えた。2015年から2016年にかけては「イスラム国」に対するシャマール作戦で、パリ同時テロの直後にペルシャ湾へ急行し、シリアとイラクを空襲した。このとき一時的にアメリカ第5艦隊の指揮下で空母打撃群を率いたのは、フランスの空母としては異例のことだった。

そして2025年の「クレマンソー25」だ。2024年11月末にトゥーロンを出て、紅海、インド洋、南シナ海を抜けて太平洋へ。5か月、150日。冒頭に書いたパシフィック・ステラーで「かが」と「あきづき」と一緒に動き、インド洋に戻ってインド海軍の空母ヴィクラントと訓練した。補給艦ジャック・シュヴァリエは沖縄に寄港している。フランスの空母打撃群が太平洋の真ん中まで来たのは初めてで、これは「フランスはインド太平洋の当事者だ」という宣言だった。ニューカレドニアとタヒチを持つ国としては当然の話だが、実際に空母を持ってくるのは別の話だ。

2026年は「ラ・ファイエット26」。今度は逆方向で、冬の大西洋で演習をこなし、北海とバルト海に入り、2月25日にはスウェーデンのマルメに寄港した。原子力艦がスウェーデンに寄港するのは1964年以来だ。その後、東地中海からインド洋北部まで回って7月11日にトゥーロンに帰った。5か月半で4万海里以上。1年の半分を海で過ごした計算になる。

「稼働率65%」問題:1隻運用の限界

イオニア海を航行するシャルル・ド・ゴール(2022年)
イオニア海を航行するシャルル・ド・ゴール(2022年)。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

ここからは正直な話をする。

この艦は就役以来、良くても稼働率65%と言われている。つまり3分の1の期間は整備で動けない。原子力空母は燃料交換のたびに1年半ほど乾ドックに入るので、これは構造的な問題だ。2017年から2018年にかけての中期改修でも18か月止まった。次は2027年から2028年にかけて最後の大規模整備が予定されていて、また1年半、フランスには空母がなくなる。

海自の護衛艦は複数あるから、1隻が整備中でも他が動く。アメリカは11隻あるから常に数隻が海にいる。フランスは1隻しかないので、この艦が整備に入った瞬間、フランスは空母国家ではなくなる。それでも2隻目を作らなかったのは、金の問題もあるが、「1隻を徹底的に使い倒す」という割り切りでもあった。半年出て半年休む。出るときは太平洋まで行く。私はこの割り切りが嫌いではないが、有事にドックに入っていたらどうするのか、という問いに答えはない。

イギリスがクイーン・エリザベス級を2隻作ったのは、まさにこの問題を避けるためだ。空母保有国の並びは空母保有国ランキングで書いたが、「1隻だけ持つ国」はどこも同じ悩みを抱えている。

帝国海軍ファンとして書いておきたい、フランスの空母と日本の空母

ここは私の趣味の話だ。

第二次世界大戦でフランスが持っていた空母は「ベアルン」1隻だった。戦艦の船体を改造した2万トン級で、遅くて飛行機もろくに積めず、結局一度も実戦で艦載機を発進させないまま終わった。同じころ日本は赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の6隻で真珠湾を叩いていた。空母の運用で、当時のフランスは日本の足元にも及ばなかった。

戦後、フランスはアメリカとイギリスから空母を借り、1961年にようやく国産のクレマンソー級を2隻作った。そして2001年、原子力空母を1隻作った。日本はというと、憲法と国内政治で空母を持てないまま、いずも型を「護衛艦」と呼んで少しずつ近づけている。80年前に空母で世界一だった国と、戦前の空母戦力が限られていた国が、2025年にフィリピン海で並んだ。私はあの写真を見て、日本の空母の歴史がどこで止まってどこで再開したのかを考えてしまった。日本の空母の系譜は日本の戦艦と空母一覧で、いずも型についてはいずも型の記事で書いている。

後継艦「フランス・リーブル」:2038年の綱渡り

後継艦「フランス・リーブル」:2038年の綱渡り

計画では満載7万5千トン級、全長300メートル超、原子炉2基、そしてカタパルトはアメリカ製の電磁式EMALSを積む。ヨーロッパで建造される軍艦としては史上最大になる。フォード級と中国の福建に続いて、電磁カタパルト空母を持つ3番目の国になる。原子炉の部品は2025年からシェルブールで作り始め、船体はサン・ナゼールで2030年代初めに着工する。

後継艦「フランス・リーブル」:2038年の綱渡り

見に行くなら

横から見たシャルル・ド・ゴールの艦影
横から見たシャルル・ド・ゴールの艦影。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

トゥーロンは今も昔もフランス海軍の街だ。港のすぐ横に国立海洋博物館の分館があり、シャルル・ド・ゴールが在泊していれば湾内の遊覧船から巨体を眺められる。年に一度の艦艇公開の日に当たれば、飛行甲板まで上がれることもある。地中海のトゥーロンとパリを組み合わせれば一週間で回れる。

世界の空母と艦載機を一冊で押さえておきたい人には、この図鑑が手っ取り早い。シャルル・ド・ゴールとラファールMの見開きもある。

よくある質問

シャルル・ド・ゴールはどのくらいの大きさか

満載約4万2千トン、全長261メートル。アメリカのニミッツ級の半分以下、海自のいずも型の1.6倍ほどだ。ただしカタパルトと着艦拘束装置を持つので、固定翼の早期警戒機を運用できる点で、いずも型やクイーン・エリザベス級とは別の種類の艦になる。

なぜフランスは空母を1隻しか持っていないのか

本来は2隻の計画だったが、冷戦終結後の予算削減で1隻に減った。以来、整備中は空母がいない状態が続いていて、稼働率は良くても65%程度と言われている。後継艦フランス・リーブルも今のところ1隻だけの計画だ。

シャルル・ド・ゴールは日本に来たことがあるか

2025年2月、クレマンソー25の展開でフィリピン海まで来て、海自の「かが」および米空母カール・ヴィンソンと三か国の共同訓練を行った。空母本体の日本寄港はまだないが、随伴の補給艦は沖縄に寄港している。

艦載機は何機か

ラファールMが最大で30機ほど、E-2Cホークアイが2〜3機、あとはヘリコプターで、合計40機近くになる。2028年からはE-2Dへの更新が始まる。

いつ退役するのか

2038年前後の予定だ。その前に2027年から2028年にかけて最後の大規模整備が行われ、燃料交換と延命工事で18か月ほど止まる。後継の次期空母フランス・リーブルは2038年就役を目指している。

あわせて読みたい

ここまで読んでくれた人へ。フランス海軍の資料は当然フランス語で、辞書を引きながら読むのに時間がかかった。深夜の作業のお供はいつもこれだ。

出典・参考

  • フランス軍事省「Clemenceau 25 – Le groupe aéronaval français participe à l’exercice trilatéral Pacific Steller」(2025年2月12日)、同「Fin de la mission Clemenceau 25」(2025年4月30日)
  • Naval News「French CSG ends its Clemenceau 25 deployment in the Indo-Pacific」(2025年4月28日)
  • Mer et Marine「Le porte-avions Charles de Gaulle est rentré à Toulon, fin de la mission La Fayette 2026」(2026年7月11日)、同「France Libre : tout savoir sur le PANG」(2026年5月20日)
  • Le Monde diplomatique(ブログ)「Le Charles-de-Gaulle à la conquête de l’Indo-pacifique」(2024年11月18日)
  • フランス国民議会 質問書(PANG計画と空母の空白リスク)、Marine nationale 公式サイト

基本情報の確認資料

記述確認の参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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