F-35B vs J-35|日米のSTOVL艦載機と中国空母艦載機を比較

F-35B vs J-35|日米のSTOVL艦載機と中国空母艦載機を比較

2025年は、東シナ海の両岸で、艦載ステルス戦闘機の年だった。

8月7日、宮崎県の新田原基地に、航空自衛隊で初めてのF-35Bが降り立った。短い距離で飛び立ち、垂直に降りられるステルス戦闘機で、いずれ護衛艦「いずも」と「かが」の甲板から飛ぶことになる。

その1か月半後の9月22日、中国は、3隻目の空母「福建」の甲板からステルス戦闘機J-35が電磁カタパルトで撃ち出される映像を公開した。福建は11月に就役している。

同じ年に、同じ海をはさんで、どちらも「空母から飛ぶステルス機」を手に入れた。となれば、どっちが強いのか気になるのが人情だ。

先に私の結論を言っておく。この2機は、同じ土俵で戦う相手ではない。F-35Bは「どこからでも飛べる」ことにすべてを賭けた機体で、J-35は「大きな空母からしか飛べない代わりに、遠くまで重いものを運べる」機体だ。設計の思想が正反対なのである。だから、単純な強い弱いではなく、何が違うのかを7つの項目で見ていく。

なお、J-35の性能は中国政府がほとんど公表していない。この記事の数字は、各国の報道や研究機関の推定にもとづくもので、幅があることを先に断っておく。

目次

早見表|F-35BとJ-35

1. 発着艦方式|「どこでも飛べる」か「空母が飛ばしてくれる」か

強襲揚陸艦ワスプで垂直着艦試験を行うF-35B(2013年)。
強襲揚陸艦ワスプで垂直着艦試験を行うF-35B(2013年)。
写真:U.S. Marine Corps / Sgt. Tyler L. Main/出典(Public Domain・縮小圧縮)

いちばん大きな違いがここだ。

F-35Bは、コックピットのすぐ後ろに、下向きの巨大なファン(リフトファン)を積んでいる。エンジンの排気口も真下に向けられる。この2つで機体を持ち上げ、ヘリコプターのように垂直に降りる。発艦のときは、短い距離を走って飛び立つ。

この仕組みのおかげで、F-35Bはカタパルトも着艦用のワイヤーもいらない。平らな甲板さえあればいい。だから全長248メートルのいずも型でも、米海軍の強襲揚陸艦でも、英国の空母でも、イタリアの軽空母でも、さらには離島の短い滑走路や高速道路でも使える。

J-35は逆だ。機首の脚にカタパルトにつなぐための金具があり、機体の後ろには着艦フックがある。空母のカタパルトが、30トン近い機体をわずか100メートルほどで時速250キロ以上まで加速してくれる。降りるときは、甲板に張られたワイヤーにフックを引っかけて止まる。

つまり、J-35は飛ぶための仕掛けを空母の側に持たせている。機体は余計なものを積まなくて済むが、その代わり、8万トン級の福建のような大きな空母がなければ、海の上では使えない。

発着艦の方式の違いは強襲揚陸艦の解説でも触れている。

2. 航続距離と搭載量|リフトファンの代償

空母近海を飛行するJ-35級双発ステルス艦載戦闘機
双発エンジンを備えたJ-35の飛行姿。

F-35Bの「どこでも飛べる」には、高い代償がある。

リフトファンは、垂直に降りるときと短距離で飛び立つときにしか使わない。それ以外の時間は、ただの重りだ。しかも、この装置が機体のど真ん中のいちばんいい場所を占領している。通常型のF-35Aなら燃料タンクになっている場所である。

その結果、F-35Bの機内燃料はA型より2トン以上少なく、戦闘行動半径は約830km。A型の約1,090kmと比べて4分の3ほどになる。爆弾倉も小さく、A型が積める2,000ポンド級の爆弾は入らず、1,000ポンド級までになる。

J-35にはこの足かせがない。双発で機体もひとまわり大きく、戦闘行動半径は1,200km前後と推定されている。推定が正しければ、F-35Bの1.4倍ほど遠くまで行ける計算だ。

2. 航続距離と搭載量

3. ステルス性とセンサー|見えないのはどちらか

形を見ると、2機はよく似ている。J-35の原型FC-31が2012年に姿を現したとき、世界中で「F-35のコピーではないか」と騒がれた。米国の防衛企業がサイバー攻撃で設計情報を盗まれた、という報道も当時は多かった。

真相は分からない。ただ、ステルス機の形は、レーダーの電波を特定の方向にそらすという物理の要請から決まるので、まじめに設計すれば似てくる、というのも事実だ。

ステルス性能そのものは、どちらも公表されていない。一般には、機体の継ぎ目や表面の仕上げ、電波を吸収する塗料といった製造の精度では、20年近く量産を続けている米国に一日の長があると見られている。J-35は双発なので、後ろから見たときの赤外線やレーダーの反射では不利になりやすい。

私がもっと差があると思うのは、機体の外ではなく中だ。F-35は、レーダー、赤外線センサー、電波の受信機が集めた情報を1つの画面にまとめ、さらに味方の機体や艦艇と共有する。パイロットは「どこに何がいるか」を考える手間から解放される。この仕組みは1,200機以上が飛び、各国で使い込まれる中で磨かれてきた。中国も同じ方向を目指しているが、どこまで追いついたかは外からは見えない。F-35の強みはF-22とF-35の比較でも書いた。

4. 兵装|ミサイルの数と射程

4. 兵装

数より気になるのは射程だ。中国の主力ミサイルPL-15は、射程が200km級と言われる。さらに長いPL-17も存在する。米国のAIM-120の最新型はこれに見劣りするとされ、米軍は後継のAIM-260の配備を急いでいる。日本が国産ミサイルと米国製を併用している事情は別の記事に書いた。

ステルス機同士の戦いでは、先に見つけたほうが先に撃てる。だからミサイルの射程だけで勝負は決まらない。それでも、腕の長さで相手が上回っている可能性がある、という事実は頭に入れておいたほうがいい。

5. 母艦|いずも型と福建では、土俵が違いすぎる

上空から見た護衛艦いずもの全通甲板
護衛艦「いずも」(2019年撮影)。F-35B運用に向けた改修前の姿。
写真:海上自衛隊/出典(CC BY 4.0・縮小圧縮)

戦闘機は1機では戦わない。艦載機の強さは、母艦の強さとほぼ同じ意味になる。そして、ここに最大の差がある。

いずも型福建
満載排水量約2万6,000トン8万トン以上
全長248m約316m
発艦方式自力で短距離離陸電磁カタパルト3基
戦闘機の搭載数10機前後と見られる40機以上と見られる
早期警戒機固定翼機は運用できないKJ-600を運用

いずも型は、もともとヘリコプターを積むための護衛艦だ。改修しても、F-35Bを積めるのは10機前後と見られている。これは空母というより、戦闘機の「前進基地」である。

福建は違う。戦闘機を40機以上積み、早期警戒機KJ-600を飛ばせる。この早期警戒機が大きい。空飛ぶレーダーサイトが空母の上空数百キロを見張ってくれるので、戦闘機は自分のレーダーを切ったまま、静かに敵に近づける。F-35Bを積むいずも型には、これがない。早期警戒は陸上基地のE-2Dやイージス艦に頼ることになる。

面白い話を1つ。報道によれば、電磁カタパルトを世界で最初に積んだ米海軍のフォード級空母は、まだステルス艦載機F-35Cを運用するための改修と認証が済んでいないという。つまり、「電磁カタパルトからステルス戦闘機を飛ばした空母」は、福建が世界で初めてということになる。中国が最初の空母「遼寧」を就役させたのは2012年。そこからわずか13年である。この速さは、素直に恐ろしい。

福建については空母福建の解説と中国空母3隻体制の記事、いずも型はいずも型護衛艦の解説に詳しく書いた。

6. 配備数と生産力

6. 配備数と生産力

J-35は、空軍向けのJ-35Aと合わせて、2025年秋の時点で50機以上が確認されたとする集計がある。数ではまだ比較にならない。しかし中国は、J-20を年に100機規模で造っているとされる国だ。J-35の生産が軌道に乗れば、数年で3桁に届いてもおかしくない。中国の戦闘機の全体像は中国空軍の戦闘機一覧を見てほしい。

7. 実戦経験と運用の蓄積

F-35Bは2018年、米海兵隊がアフガニスタンで初めて実戦に投入した。以来、各国で何年も使われ、不具合を出し尽くし、直してきた。米海兵隊のF-35Bは岩国基地にいて、いずも型での発着艦試験にも協力している。英国のクイーン・エリザベス級空母やイタリアの空母でも運用されており、同じ機体を使う仲間が太平洋にも大西洋にもいる。

J-35には実戦経験がない。それどころか、中国海軍そのものが、空母から戦闘機を実戦で飛ばしたことが一度もない。カタパルトでの発艦も、夜間や荒天での着艦も、何十機もの機体を狭い甲板でさばく手順も、すべてこれから積み上げていく段階だ。

7. 実戦経験と運用の蓄積

結局、どちらが強いのか

結局、どちらが強いのか

だが、現実の戦いはそうはならない。福建とJ-35の組み合わせに、いずも型とF-35Bだけで正面からぶつかれば、数でも、航続距離でも、早期警戒でも不利になる。そんな戦い方を、自衛隊は最初から考えていない。

日本のF-35Bの使い道は、空母決戦ではない。南西諸島には、戦闘機が使える長い滑走路がほとんどない。短い滑走路しかない離島や、太平洋上のいずも型から飛べるF-35Bは、その穴を埋めるための機体だ。1か所の基地をミサイルで潰されても、別の場所から飛び続けられる。いずも型は、海の上を動く予備の滑走路なのである。

そして日本には、中国の空母を叩く手段が別にある。潜水艦、長射程の対艦ミサイル、陸上基地から飛ぶF-35AとF-2、そして米海軍の空母。F-35Bは、その大きな網の結び目の1つにすぎない。日中の海軍力の全体像は海上自衛隊と中国海軍の比較で書いた。

80年ぶりの艦上戦闘機

最後に、歴史好きとして一言。

日本は、世界で初めて最初から空母として設計された艦を完成させた国だ。1922年の「鳳翔」である。そして1941年、6隻の空母を1つに束ねて使うという、誰もやったことのない戦い方を世界に見せた。その甲板にいたのが零戦だった。

零戦は、軽く、遠くまで飛べた。防弾を削り、機体を極限まで軽くして、当時の常識を超える航続距離を手に入れた。遠くまで飛べる艦上戦闘機を持つ側が、海の戦いの主導権を握る。その理屈を、日本は身をもって証明し、やがて同じ理屈で追い詰められた。零戦と連合軍機の戦いは別の記事に書いている。

80年たって、日本はふたたび、艦から飛ぶ戦闘機を持つ。ただし今度の機体は、航続距離を犠牲にして、どこからでも飛べることを選んだ機体だ。そして、遠くまで飛べる艦上戦闘機を大きな空母に並べているのは、海の向こうの国のほうである。

皮肉な巡り合わせだと思う。だが、かつての日本が空母と艦上戦闘機だけで戦おうとして負けたのに対し、いまの日本は、それを網の一部として使おうとしている。私は、そちらのほうがずっと賢いやり方だと考えている。

リフトファンの仕組みは、文章で読むより、模型で組んでみると一発で分かる。

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投資家目線のメモ

F-35を造っているのはロッキード・マーチン。F-35は同社の売上の柱で、機体の販売だけでなく、30年以上続く整備と改修の仕事が収益を支えている。価格の比較は戦闘機の価格ランキング、各国の導入状況はF-35保有国ランキングにまとめた。

J-35を造る瀋陽飛機工業集団は、中国の国有企業グループの傘下にある。日本の個人投資家が手を出すには情報が少なすぎるし、私はすすめない。

米国株で防衛関連を買ってみたい人は、まず口座の準備から。

(免責事項)本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や金融商品の売買を勧めるものではない。投資の判断は自分自身の責任で行ってほしい。

よくある質問

F-35BとJ-35はどちらが強い?

同じ条件での比較は難しい。ステルス性とセンサー、実戦での蓄積ではF-35Bが、航続距離と搭載量ではJ-35が有利と見られる。ただしJ-35の性能は公表されておらず、多くが推定である。

J-35はF-35のコピーなのか?

外見は似ているが、J-35は双発でリフトファンを持たず、構造は大きく異なる。設計情報の流出を指摘する報道はあったが、確かなことは分かっていない。

F-35Bの航続距離が短いのはなぜ?

機体の中央にリフトファンを積んでいるため、通常型のF-35Aより機内燃料が2トン以上少ない。垂直着陸の能力と引き換えに、燃料と爆弾倉の大きさを手放している。

いずも型にF-35Bは何機積める?

公式の数字は示されていない。艦の大きさから、10機前後と見られている。

J-35はどの空母で使われる?

電磁カタパルトを持つ福建が主な母艦になる。スキージャンプ式の遼寧・山東での運用については情報が限られている。

日本のF-35Bは誰が飛ばすのか?

航空自衛隊が運用する。機体は宮崎県の新田原基地に配備され、海上自衛隊のいずも型護衛艦に展開する形になる。

まとめ

F-35BとJ-35は、どちらも艦から飛ぶステルス戦闘機だが、考え方は正反対だ。F-35Bは、航続距離と搭載量を犠牲にして、カタパルトのない艦や短い滑走路からでも飛べることを選んだ。J-35は、大きな空母とカタパルトを前提に、遠くまで重いものを運べることを選んだ。

母艦まで含めて比べれば、福建とJ-35の組み合わせは、いずも型とF-35Bを大きく上回る。だが日本は、そこで張り合おうとはしていない。F-35Bは、基地を潰されても飛び続けるための、動く滑走路の機体だ。

この2機が実際に空で向き合う日が来ないことを、私は心から願っている。そのためにこそ、相手が何を持っていて、自分が何を持っているのかを、冷静に知っておく必要がある。

機体それぞれの詳しい解説は、J-35の記事とF-35A/Bの記事を読んでほしい。

あわせて読みたい

出典・参考資料

  • 防衛研究所「NIDSコメンタリー第400号 中国空母『福建』と新艦載機の発着艦――発展経緯と残された課題とは何か?」(2025年10月3日)
  • 新華社、CNN、Business Insider Japan、乗りものニュース(2025年9月、福建での電磁カタパルト発着艦に関する報道)
  • Aviation Wire(2023年12月、2026年2月)、乗りものニュース(2025年5月)、時事通信(2021年10月、2025年1月)ほか、F-35Bの導入と新田原基地配備に関する報道
  • ロッキード・マーチン、米海兵隊の公表資料(F-35Bの諸元)

※J-35の諸元は中国政府が公表しておらず、本記事の数値は各国の報道・研究機関による推定にもとづく。

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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