北朝鮮のミサイルは何分で日本に届くのか|Jアラートが鳴ったら最初の10秒でやること、家に置いておくべきもの

北朝鮮のミサイルは何分で日本に届くのか|Jアラートが鳴ったら最初の10秒でやること、家に置いておくべきもの

2026年10月3日の朝6時半すぎ、北朝鮮がまた弾道ミサイルを撃った。防衛省の発表では、最高高度は約90キロ、飛んだ距離は約680キロ。落ちたのは日本のEEZ(排他的経済水域)の外とみられている。

このときJアラートは鳴らなかった。9月にも何度か発射があったが、やはり鳴っていない。「北朝鮮がミサイル発射」というニュースはもう見慣れてしまって、正直、多くの人は「またか」で流していると思う。私もそうだ。

でも、もし本当に鳴ったら。スマホから聞き慣れない警報音が鳴って、「ミサイル発射。ミサイル発射。」と流れたら。そのとき何をすればいいのか、すぐに言える人はどれくらいいるだろう。

この記事は、ミリタリーブログを書いている人間として、北朝鮮のミサイルが日本に届くまでの時間と、Jアラートが鳴ったときにやるべきこと、そして家に置いておくべきものを、内閣官房の国民保護ポータルの情報をもとに整理したものだ。煽るつもりはない。知っておけば慌てずに済む、という話をしたい。

なお、ミサイルを迎え撃つ側の仕組み(PAC-3やSM-3、イージス艦)については日本のミサイル防衛の解説で書いている。この記事は、迎撃ではなく「私たち市民がどう動くか」に絞る。

目次

結論:10分未満で日本に届くこともある

先に答えを書く。

北朝鮮から撃たれた弾道ミサイルは、発射場所や飛び方によっては、10分未満で日本に届くこともある。

要点

ただし、ここで大事なのは、10分すべてが私たちの持ち時間ではない、ということだ。

ミサイルが発射されてから、レーダーや衛星で探知し、日本に飛んでくるかどうかを判断して、Jアラートを流すまでには、どうしても数分かかる。2022年10月に北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過したときには、Jアラートが出たタイミングが遅いという指摘もあった。

つまり、私たちのスマホが鳴った時点で、ミサイルが落ちてくるまでに残っているのは、数分しかない可能性が高い。だから「どこに逃げようか」と考えている時間はない。鳴ったら、考える前に体を動かす。それがこの記事のテーマだ。

なぜこれほど速く届くのか:弾道ミサイルという乗り物

技術好きとして、少しだけ仕組みの話をしておく。

弾道ミサイルは、ロケットのエンジンで一気に高く打ち上げられ、エンジンが燃え尽きたあとは、投げたボールのように放物線を描いて落ちてくる。この放物線の頂点は、宇宙と呼べる高さ、数百キロから1,000キロ以上にもなる。空気の薄いところでは抵抗が小さく、高速で飛び続ける。落ちてくるときの速さは、音速の何倍にもなる。

だから、数百キロ、千数百キロという距離を、10分前後で飛んでしまう。旅客機なら2時間近くかかる距離だ。

最近の北朝鮮は、普通より高く打ち上げて近くに落とす「ロフテッド軌道」や、途中で軌道を変える「変則軌道」の発射も繰り返している。2026年1月の発射でも、変則軌道で飛んだ可能性があると防衛省は発表している。軌道が読みにくいと、落ちる場所の予測も、迎え撃つのも難しくなる。北朝鮮のミサイルの種類や性能は世界最強ミサイルランキングやミサイルの種類一覧で書いた。

Jアラートは、めったに鳴らない

ここで一つ、意外と知られていないことを書いておく。

北朝鮮は毎年のようにミサイルを撃っているが、Jアラートが鳴ることはめったにない。国民保護ポータルによると、Jアラートで弾道ミサイルの情報が流されたのは、2012年から2024年5月までの間で11回だけだ。

なぜかというと、Jアラートが使われるのは、ミサイルが日本の領土や領海に落ちるか、その上空を通過する可能性がある場合に限られているからだ。日本のEEZに落ちる可能性があるだけなら、Jアラートは使われず、近くの船や航空機に向けて警報が出される。2026年10月3日の発射で鳴らなかったのも、このためだ。

裏を返せば、Jアラートが鳴ったら、それは「本当に自分の住む地域の上を飛ぶか、落ちてくる可能性がある」ということだ。「どうせまた海に落ちるだろう」と思って無視していい警報ではない。

逆に、ニュースで「北朝鮮がミサイルを発射」と流れても、自分のスマホにJアラートが届いていなければ、その場で避難する必要はない。慌てて外に飛び出したり、学校に子どもを迎えに走ったりする必要もない。鳴ったら動く、鳴らなければ普段どおり。この線引きをはっきりさせておくだけで、ずいぶん落ち着いていられるはずだ。

Jアラートが鳴った11回

参考までに、国民保護ポータルに載っている11回を並べておく。それぞれの中身は、当時の報道をもとに私が簡単に補った。

日付 主な対象地域・中身(概要)
2012年12月12日 「人工衛星」名目の発射。沖縄県の上空を通過
2016年2月7日 「人工衛星」名目の発射。沖縄県の先島諸島上空を通過
2017年8月29日 北海道の上空を通過し、太平洋へ
2017年9月15日 再び北海道の上空を通過し、太平洋へ
2022年10月4日 青森県付近の上空を通過し、太平洋へ。約4,600キロ飛んだとされる
2022年11月3日 宮城・山形・新潟の各県に発令。のちに日本の上空は通過しなかったと訂正
2023年4月13日 北海道に発令。のちに落下の可能性はなかったと訂正
2023年5月31日 「衛星」名目の発射で沖縄県に発令
2023年8月24日 「衛星」名目の発射で沖縄県に発令
2023年11月21日 「衛星」名目の発射で沖縄県に発令。日本の上空を通過
2024年5月27日 深夜の「衛星」名目の発射で沖縄県に発令。のちに解除

こうして並べると、北海道・東北と沖縄に偏っているのがわかる。北海道・東北は、北朝鮮から太平洋へ撃つときの通り道になりやすい。沖縄は、「衛星」名目のロケットが南に向けて打ち上げられるときの通り道になる。この地域に住んでいる人は、とくに一度、鳴ったときの動きを家族で確認しておいてほしい。

Jアラートが鳴ったら:最初の10秒でやること

窓から離れた場所で身を低くし、頭を守る。
窓から離れた場所で身を低くし、頭を守る。

では、実際に鳴ったらどうするか。国民保護ポータルの内容をもとに、場所ごとに整理する。

要点

屋外にいるとき

近くの建物の中か、地下街や地下鉄の駅などの地下に入る。

ここで大事なのは、「頑丈な建物でなければならない」と思い込まないことだ。政府も、コンクリート造りのような頑丈な建物が望ましいが、なければそれ以外の建物でも構わない、と書いている。避難施設として指定されている建物かどうかも関係ない。とにかく一番近い建物に入る。探している時間がもったいない。

近くに建物がない場合は、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭を守る。

屋内にいるとき

できるだけ窓から離れ、できれば窓のない部屋に移る。トイレや浴室、廊下などがそれにあたることが多い。

なぜ窓なのか。ミサイルが近くに落ちたとき、一番怖いのは爆風で割れた窓ガラスだからだ。すぐ近くにもっと頑丈な建物や地下があるなら、そちらに移るのもいいが、移動中に外にいる時間が長くなるなら、家の中で窓から離れるほうが安全なこともある。

車に乗っているとき

これは知らない人が多いと思う。車の中は、実は安全ではない。ガソリンに火がつくおそれがあるからだ。

一般道なら、車を止めて近くの建物か地下に避難する。近くに建物がなければ、車から離れて地面に伏せ、頭を守る。ただし、高速道路を走っているときのように、車の外に出るほうが危ない場合は、車を安全な場所に止めて、車内で姿勢を低くして待つ。

電車やバスの中にいるとき

乗務員の指示に従うのが基本になる。駅にいるなら、地下のホームや駅舎の中に移る。

最初の10秒のまとめ

いる場所 やること
屋外 一番近い建物か地下へ。なければ物陰に隠れるか伏せて頭を守る
屋内 窓から離れる。できれば窓のない部屋へ
車(一般道) 車を止めて建物か地下へ。なければ車から離れて伏せる
車(高速道路など) 安全な場所に止めて、車内で姿勢を低く

ミサイルが通過・落下したあと

地下通路など、近くの頑丈な建物を事前に確認しておく。
地下通路など、近くの頑丈な建物を事前に確認しておく。

警報のあとには、続報が流れる。

「ミサイル通過」や、日本には飛んでこない見込みだという解除の情報が出たら、屋内にとどまる必要はなくなる。ただ、空からミサイルの部品などが落ちてくることもあるので、見慣れない物を見つけたら絶対に近寄らず、警察や消防、海上保安庁に連絡する。

もし「ミサイル落下」の情報が出たら、続報が来るまで屋内にとどまる。そして、近くに落ちた場合は、弾頭の種類によって被害の広がり方が変わる。政府は、屋外にいる場合は口と鼻をハンカチで覆いながら現場からすぐに離れ、密閉性の高い部屋か風上に逃げるよう呼びかけている。屋内にいる場合は、換気扇を止め、窓を閉めて、すき間に目張りをして部屋を密閉する。

ここで、防災リュックの記事で紹介した「手ぬぐい」の話を思い出してほしい。口と鼻を覆う布が一枚カバンに入っているだけで、こういうときにすぐ動ける。

家に置いておくべきもの

在宅避難に備え、水と食品を日常の収納で管理する。
在宅避難に備え、水と食品を日常の収納で管理する。

ミサイルへの備えというと何か特別なものが要りそうに思えるが、実は普段の防災の備えとほとんど同じだ。違うのは、情報を取るための道具と、部屋を密閉するための道具が、少し重要になることくらいだ。

情報を取るための道具

ミサイルが落ちたあとは、テレビやラジオ、インターネットで続報を追うことになる。停電していればテレビは見られないし、スマホの電池も減っていく。モバイルバッテリーは必ず充電しておきたい。

窓のない部屋に移ったあと、停電していれば真っ暗になる。両手が空くヘッドライトがあると、家族の様子を見たり、目張りをしたりするときに助かる。

部屋を密閉するための道具

政府の呼びかけにある「目張り」は、窓やドア、換気口のすき間をテープでふさぐことだ。ガムテープや養生テープと、ビニールシートかゴミ袋があればできる。どれも家にあるもので構わないが、どこにしまってあるかは家族全員が知っておきたい。

しばらく家にこもるための備蓄

万が一、落下や被害があった場合は、しばらく外に出られないことも考えられる。水と食料の備蓄は、地震への備えと同じく最低3日分、できれば1週間分あると安心だ。

けがをしたときのための救急用品も、手の届くところにまとめておく。

一つずつそろえるのが面倒なら、防災のセット品で土台をつくって、足りないものを足していくのが現実的だ。

何をどうそろえるかは、自衛隊式の防災リュックの記事で、「常に持ち歩くもの」「持って逃げるもの」「家に置くもの」の3段に分けて詳しく書いている。ミサイルへの備えも、基本はこの3段の考え方で十分だ。

スマホの受信設定を確認しておく

Jアラートの情報は、携帯電話の緊急速報メール(エリアメール)で届く。ほとんどのスマホは最初から受け取れる設定になっているが、古い機種や一部の格安スマホ、設定を変えている場合は届かないことがある。消防庁は、受け取れる機種かどうかの確かめ方と、届かない場合の対策をまとめて公表している。

一度、スマホの設定画面で「緊急速報」や「緊急警報」の項目がオンになっているか見ておくといい。夜中に鳴るのが嫌でオフにしている人もいると思うが、ミサイルや津波の情報は、本当に命に関わる。おやすみモードでも鳴る設定にしておくことを私はすすめる。

近くの避難施設を調べておく

持ち出し袋は、必要な道具を取り出しやすくまとめる。
持ち出し袋は、必要な道具を取り出しやすくまとめる。

もう一つ、やっておいて損はないのが、家や職場、学校の近くにどんな建物や地下があるかを確かめておくことだ。

内閣官房の国民保護ポータルには、都道府県が指定した避難施設を地図で探せるページがある。ただ、さっき書いたように、Jアラートが鳴ったときは、指定されているかどうかに関係なく、一番近い建物に入るのが正解だ。だから地図を眺めるよりも、普段歩いている道の途中で「ここで鳴ったら、あのビルに入ろう」とイメージしておくほうが、実際には役に立つと私は思っている。

子どもがいる家庭なら、学校で鳴ったらどうするか、登下校の途中で鳴ったらどうするかを、一度話し合っておくといい。

大日本帝国の「防空」と、いまの国民保護の違い

ここで少し、昔の話をさせてほしい。

太平洋戦争中の日本にも、空からの攻撃に備える仕組みはあった。空襲警報が鳴ると、人々は防空壕に入った。でも当時の日本の「防空」には、今とはまるで違う考え方があった。

戦争中に強められた防空法のもとでは、空襲のときに住民が勝手に逃げ出すことは許されず、焼夷弾が落ちたら火を消すことが義務とされた。隣組で繰り返されたバケツリレーの訓練は、その象徴だ。逃げるより、とどまって消せ。それが国の方針だった。

この方針が、本土空襲で多くの市民の命を奪う一因になったことは、よく知られている。焼夷弾が雨のように降る中で、バケツの水で消せる火ではなかった。

今の国民保護の呼びかけは、その正反対だ。ミサイルが飛んできたら、何よりもまず自分の身を守れ。建物に入り、窓から離れ、頭を守れ。私は、ここに戦後の日本が戦争から学んだことの一つが表れていると思う。国が守るべきは、建物や体面ではなく、一人ひとりの命だ、という考え方だ。

Jアラートの「誤報」とどう付き合うか

最後に、Jアラートへの不信感の話もしておきたい。

2023年4月には、北海道周辺に落下するおそれがあるとしてJアラートで避難が呼びかけられたが、その後、落下の可能性はなかったと訂正されたことがあった。2022年10月の日本上空通過のときは、Jアラートが出るタイミングの遅さや、対象地域の伝え方が問題になった。

こういうことがあると、「どうせ外れる」「鳴っても意味がない」と思いたくなる気持ちはわかる。でも私は、Jアラートは「外れてもいいから、早めに鳴らす」仕組みだと理解しておくのがいいと思っている。ミサイルの軌道を数分で正確に予測するのは、今の技術でも難しい。予測が確定するのを待っていたら、間に合わないのだ。

外れたら「よかった」と思えばいい。鳴るたびに体を動かす練習ができた、と考えればいい。避難してから何も起きなかった、というのは、失敗ではなく、うまくいったということだ。

北朝鮮のミサイルの性能は、年々上がっている。迎え撃つ側の仕組みも強化されているが、完璧ではない。だからこそ、最後に自分の身を守るのは、自分の体の動きだ。Jアラートが鳴ったら、考える前に、一番近い建物へ。窓から離れて、頭を守る。それだけ覚えておいてほしい。

迎え撃つ側の主役であるイージス艦については海上自衛隊のイージス艦の解説もどうぞ。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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