コンビニの明かりが消える。
10月23日に発売された『Call of Duty: Modern Warfare 4』(以下MW4)のキャンペーンは、派手な特殊部隊の突入ではなく、夜の地方都市の停電から始まるらしい。レビューを読んでいて、私はこの出だしにかなり唸った。ミリタリーオタクとして言わせてもらうと、朝鮮半島の戦争を描くなら「戦車が国境を越える絵」より「街の電気が落ちる絵」のほうがずっと本物に近い。
本作の舞台は現代の朝鮮半島だ。北朝鮮が休戦を破って韓国へ全面侵攻し、兵役の満了を待つだけだった韓国海兵隊のパク二等兵が、地方都市ハジンで最前線に放り込まれる。シリーズ初の朝鮮半島キャンペーンで、ゲームとしての評判も上々だ。
で、ミリタリーブログを書いている人間としては、どうしても気になる。
これ、現実に起こりうるのか。
この記事では、MW4が描く「北朝鮮の全面侵攻」を、防衛省の最新の防衛白書や公開情報をもとに検証してみる。結論を先に言うと、全面侵攻そのものは起こりにくい。ただし、起きてしまったときの描写には、意外なほど正確な部分がある。そして日本はゲームにはほとんど出てこないが、現実の朝鮮半島有事では間違いなく当事者になる。そのあたりまで踏み込んでいく。
なお、ネタバレは公式発表と発売前後のレビューで明かされている設定までにとどめる。物語の後半の展開と結末には触れない。
MW4のキャンペーンは何を描いているのか(ネタバレなし)
まず前提を整理しておく。
MW4はInfinity Wardが開発した、リブート版モダン・ウォーフェアの4作目だ。対応機種はPS5、Xbox Series X|S、PC、そしてシリーズで初めてNintendo Switch 2にも来た。PS4とXbox Oneは切り捨てられている。
キャンペーンは2本の物語が並行して進む構成になっている。
1本目は、朝鮮半島の戦争そのもの。北朝鮮の全面侵攻で韓国の地方都市が一夜にして戦場になり、パク二等兵の分隊「シエラ1」が、塹壕戦や市街戦、原子力発電所を守る戦いをくぐり抜けていく。後半には海岸からの大規模な反攻作戦もあるという。北朝鮮兵の視点で進むミッションもあり、若い最高指導者という架空の人物も登場する。
2本目は、前作MW3の結末を受けたプライス大尉の物語だ。タスクフォース141を離れて追われる身となったプライスが、マカロフの影を追ってニューヨーク、パリ、ムンバイを転々とする。こちらはいつものCoDらしい世界を股にかけた陰謀劇だ。
ミッション数は16。ゲーム系メディアのレビューでは「キャンペーン目当てで買っていいCoD」という評価まで出ている。
私が面白いと思ったのは、主人公の立ち位置だ。CoDの主人公といえば、どんな修羅場でも眉ひとつ動かさない特殊部隊員が定番だった。今作のパクは違う。徴兵されて軍にいるだけの若者で、戦争を選んだわけでもない。韓国という国の本質をよく分かっている設定だと思う。韓国では成人男性に兵役の義務があって、陸軍なら18か月、海軍は20か月、空軍は21か月を軍で過ごす。韓国の戦争を描くなら、主役は「選ばれた精鋭」ではなく「たまたまそこにいた兵役中の若者」になる。開発陣がそこを外さなかったのは素直に評価したい。
結論から言うと:全面侵攻は割に合わない、でも「起きたら」の絵はかなり正しい
細かい話に入る前に、私なりの結論を置いておく。
北朝鮮が韓国を全面侵攻して勝ち切る、というシナリオは現実にはかなり考えにくい。理由は大きく3つある。韓国軍と在韓米軍を相手に通常戦力で勝つ見込みが薄いこと、戦争を長く続ける燃料と経済力がないこと、そして全面戦争を始めた瞬間に体制そのものが終わるリスクを背負うことだ。
一方で、MW4が描く「開戦の瞬間」の絵、つまり夜の停電、突然の空襲、地方都市が一晩で前線になる、原発のような重要インフラが狙われる、という部分は、現実の北朝鮮が持つ能力とよく噛み合っている。
つまり、MW4は「戦争の始まり方」はかなりリアルで、「戦争がそこまで大きくなる理由」の部分でフィクションの力を借りている。私はそう読んでいる。以下、順番に見ていく。
北朝鮮軍128万人の中身を分解する
まずは相手の戦力だ。数字を全部並べるとうるさいので、肝になるところだけ拾う。

防衛省の令和8年版防衛白書によると、北朝鮮の総兵力は約128万人、そのうち陸上兵力が約110万人。しかも陸上兵力のおよそ3分の2を、南北を隔てる非武装地帯(DMZ)の近くに置いているとみられている。戦車は3,500両以上ある。
数字だけ見ると、韓国軍(総兵力約45万人、陸上兵力約32万人)の3倍近い。ゲームの「人海戦術で押し寄せてくる北朝鮮軍」というイメージは、ここから来ている。
ただし、中身を見ると話が変わる。
空軍の作戦機は約550機あるが、大部分は中国や旧ソ連製の古い機体だ。MiG-29やSu-25といった第4世代機はごく少数しかない。海軍は約790隻と数だけは多いが、小型艇が中心で、潜水艦も旧式のロメオ級が約20隻、あとは小型潜水艇という構成になっている。2025年には新型の駆逐艦「崔賢」級を2隻進水させて話題になったが、これで海の戦いがひっくり返るような規模ではない。
技術ファンとして一言で言うと、北朝鮮の通常戦力は「量はあるが、ネットワークで戦える軍隊ではない」。空と海で韓国軍と米軍に勝てる見込みはまずない。地上戦も、燃料と弾薬の補給が続かない。
それでも北朝鮮軍を軽く見てはいけない理由が、二つある。
理由1:ソウルは最初から射程に入っている
一つ目は砲兵だ。北朝鮮はDMZ沿いに240ミリ多連装ロケットや170ミリ自走砲といった長射程の火砲を並べていて、ソウルを含む韓国北部の都市はその射程に入っている。
ソウルはDMZから数十キロしか離れていない。東京で言えば、都心から横浜や大宮くらいの距離に敵の砲兵陣地がずらっと並んでいるイメージだ。韓国の首都圏には人口の半分近くが集中している。北朝鮮が「勝てなくても、ソウルを火の海にはできる」と言い続けてきたのは、この地理があるからだ。
MW4の冒頭で地方都市が突然の空襲に襲われ、停電で真っ暗になるという描写は、この現実と重なる。開戦の初撃で狙われるのは、軍の陣地だけではなく、電力、通信、交通といった都市の神経系だ。
理由2:特殊部隊とロシア仕込みの実戦経験
二つ目は特殊部隊だ。北朝鮮の特殊部隊の規模ははっきりしないが、韓国の国防白書(2022年版)は約20万人と見積もっている。この数字が正しいかどうかは別として、トンネルや小型潜水艇、エアクッション揚陸艇(約140隻)を使って韓国の後方に人を送り込む能力を、北朝鮮はずっと磨いてきた。
ゲームのハジン市で原子力発電所が破壊工作の標的になる展開があるが、あれは荒唐無稽な話ではない。韓国の原発は古里(釜山)、月城(慶州)、ハヌル(蔚珍)、ハンビッ(霊光)と海沿いに集中している。海から特殊部隊を送り込む作戦を想定すれば、原発は真っ先に守らなければならない場所になる。
そしてここ2年で、北朝鮮軍にはまったく新しい要素が加わった。ロシアでの実戦経験だ。
北朝鮮とロシアは2024年6月に「包括的戦略的パートナーシップ条約」に署名し、同年12月に発効させた。武力侵攻を受けた場合の軍事援助を定めた、事実上の同盟条約だ。そして北朝鮮は2024年後半からロシアに兵士を送っている。多国間制裁監視チームによると、2024年の終わりまでに1万1,000人を超え、2025年1〜3月にさらに3,000人を超えたとされる。
これがなぜ怖いか。朝鮮戦争の休戦から70年以上、北朝鮮軍は本格的な戦争をしていなかった。机上の訓練しか知らない軍隊だったわけだ。それが、ドローンが飛び交う現代の戦場を実際に経験した兵士を抱えるようになった。逆にロシアからは、短距離防空システムや電子戦システムが提供されたとも指摘されている。
MW4のマルチプレイではドローンなど現実の戦場に合わせた新技術が取り入れられているが、現実の北朝鮮軍のほうも、ゲームに負けないスピードで「現代化」していると見たほうがいい。
北朝鮮が全面侵攻に踏み切らない3つの理由
ここまで読むと「やっぱり危ないじゃないか」と思うかもしれない。実際、危ないのは間違いない。ただ、危ないことと全面侵攻が起こることは別の話だ。

1. 勝てる見込みがない
韓国軍は総兵力こそ北朝鮮の3分の1ほどだが、装備の質は比べものにならない。K2戦車、K9自走砲、イージス艦の世宗大王級や正祖大王級、F-35A。いまや韓国の兵器は世界中に輸出される側だ。そこに在韓米軍がいる。
在韓米軍の兵力は約2万8,500人。トランプ政権が同盟国に負担を求める中で削減論がたびたび浮上しているが、2026年4月の時点で韓国政府は「削減は協議していない」と説明している。米議会も、在韓米軍の一方的な削減に歯止めをかける動きを見せてきた。
数万人という数字は小さく見えるが、在韓米軍の意味は人数ではない。在韓米軍が攻撃されれば、アメリカが自動的に戦争の当事者になる。この「仕掛け線」としての役割こそが、70年以上にわたって半島の平和をかろうじて保ってきた。
韓国海軍の戦力をもっと知りたい人は、韓国海軍の艦艇一覧と海上自衛隊と韓国海軍の比較記事を読んでみてほしい。K2戦車の立ち位置は世界最強戦車ランキングでも扱っている。
2. 戦争を続ける燃料がない
戦車3,500両と聞くと強そうだが、戦車は燃料がなければ鉄の置物だ。北朝鮮は燃料の大部分を外からの供給に頼っていて、制裁下で備蓄は限られている。開戦初日に砲弾をばらまくことはできても、何か月も機甲部隊を前に進め続ける国力はない。
これは大日本帝国ファンとして、どうしても重ねて見てしまう部分だ。燃料の当てがないまま大戦争に踏み込むことの怖さを、日本は身をもって知っている。北朝鮮の指導部も、そこは分かっているはずだ。
3. 全面戦争は「体制の終わり」を意味する
最後が一番大きい。全面侵攻を始めれば、米韓の反撃で平壌の指導部そのものが標的になる。北朝鮮にとって最優先なのは体制の存続で、それを賭け金にする全面戦争は、どう計算しても割に合わない。
だからこそ北朝鮮は核を手放さない。防衛白書によれば、北朝鮮は約50発の核弾頭を持つとの指摘があり、最大90発分の核分裂性物質を貯めているとされる。ICBMも固体燃料の「火星18」「火星19」まで来ていて、弾頭の重さ次第では射程1万5,000キロを超えうる。2026年2月の党第9回大会では、核を実戦で使える戦力に高めていく方針まで示された。
ここが逆説的なところで、核があるから北朝鮮は全面侵攻をしなくてもいい。核で体制を守れる以上、韓国を武力で併合する必要がない。一方で、核があるから「小さな衝突が一気に破滅まで行く」リスクは跳ね上がった。
MW4が全面侵攻を描くために、北朝鮮の内部の混乱や、指導者の一族を巻き込む政変のような要素を持ち込んでいるのは、ここに理由があると私は見ている。冷静な指導部なら全面侵攻はしない。だから物語では「冷静でいられなくなった北朝鮮」を用意する必要がある。フィクションとして、とても筋の通った作りだ。
「統一」を捨てた北朝鮮と、ゲームの北朝鮮兵
ゲームの話に絡めて、もう一つ現実の大きな変化に触れておきたい。
北朝鮮は2023年末から2024年にかけて、韓国との関係を「敵対的な二つの国家」の関係だと位置づけ直した。祖国統一を掲げてきた看板をおろし、南北をつなぐ道路を爆破するところまでやっている。いまの北朝鮮にとって韓国は「同じ民族」ではなく「敵国」で、核攻撃の対象から外さないとも繰り返している。
これは南北関係の歴史の中でもかなり大きな転換だ。統一を目指していた頃の北朝鮮は、少なくとも建前の上では「南の同胞を解放する」という物語を持っていた。その物語を自ら捨てたということは、全面侵攻の大義名分も自ら手放したということでもある。侵攻より「別の国として核で睨み合う」方向に舵を切った、と私は読む。
MW4には北朝鮮兵の視点で民家を回り、住民を尋問するミッションがあるという。ゲームの中の北朝鮮兵が何を信じて銃を持っているのか、プレイするときに意識してみると、また違う面白さがあると思う。
日本はどうなる:ゲームに出てこない「本当の当事者」
さて、ここからが軍研ノートとして一番書きたかった部分だ。
公開されている情報やレビューを読む限り、MW4の物語に日本や自衛隊はほとんど関わってこない。舞台は韓国と、ニューヨーク、パリ、ムンバイだ。
でも、現実の朝鮮半島有事で日本が蚊帳の外になることはありえない。
在日米軍基地は「朝鮮戦争の続き」を背負っている
あまり知られていないが、朝鮮戦争はいまも法的には終わっていない。1953年に結ばれたのは休戦協定で、平和条約ではないからだ。そして、朝鮮戦争のときに作られた国連軍は今も存在していて、その後方司令部は東京の横田基地にある。

さらに、日本国内には国連軍が使える基地として、横田、座間、横須賀、佐世保、嘉手納、普天間、ホワイトビーチの7か所が指定されている。もし半島で戦争が再開すれば、これらの基地は米軍と国連軍の兵站と出撃の拠点になる。言い換えれば、北朝鮮から見れば攻撃目標になりうる。
在日米軍基地の全体像は在日米軍基地一覧に、基地をめぐる日米のルールは日米地位協定の解説にまとめてある。
自衛隊は何をするのか
日本の安全保障法制では、朝鮮半島有事の進み方によって自衛隊の役割が変わる。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態と認定されれば、米軍への後方支援ができる。日本と密接な関係にある国への攻撃で日本の存立が脅かされる事態と認定されれば、集団的自衛権の行使も視野に入る。日本自身が攻撃されれば、もちろん防衛出動だ。
実務の面で真っ先に問題になるのは、韓国にいる日本人をどう連れ帰るかと、北朝鮮の弾道ミサイルをどう迎え撃つかだろう。前者は韓国政府の協力が前提になる。後者はイージス艦とPAC-3の出番で、日本の迎撃体制は日本のミサイル全種類の解説で詳しく書いた。
そして一般市民の私たちにとって一番身近なのは、Jアラートだ。北朝鮮のミサイルが日本に届くまでの時間や、鳴ったときに最初にやることはこちらの記事にまとめてある。ゲームの中で停電した街を走り回ったあとに、自分の家の備えを見直してみるのも悪くない。懐中電灯の電池が切れていないか、水が何日分あるか。MW4の冒頭が教えてくれるのは、戦争は最初に「当たり前の電気」を奪いに来るということだ。
自衛隊の装備思想から防災リュックを組み立てる考え方は、自衛隊式防災リュックの記事で紹介している。
台湾有事とつながっているという視点
もう一つ付け加えておくと、朝鮮半島と台湾はまったく別の問題に見えて、米軍の戦力という意味ではつながっている。在韓米軍の司令官も、在韓米軍が中国への抑止を含む広い役割を担っていることを議会で説明している。台湾で何かが起きれば半島の米軍が動くかもしれないし、その逆もある。北朝鮮がその隙を突く、という最悪のシナリオを専門家が議論するのはこのためだ。台湾有事の日本への影響は台湾有事の解説記事で書いている。
投資家目線:朝鮮半島リスクと防衛株
防衛株を追っている読者向けに、少しだけ投資の話もしておく。
北朝鮮がミサイルを撃つたびに、日本の防衛関連株がニュースに反応する場面はこれまでも何度もあった。ただ、私の見方では、こうした短期の値動きを追いかけるのはあまり筋がよくない。防衛産業の売上は、ミサイル1発のニュースではなく、何年も先まで決まっている防衛予算と契約で動いているからだ。
むしろ注目したいのは、朝鮮半島の緊張が韓国の防衛産業を世界的な輸出産業に押し上げた、という構造の話だ。ハンファ・エアロスペース、現代ロテム、LIG ネクスワン、韓国航空宇宙産業(KAI)といった企業は、K2戦車やK9自走砲、ミサイル、戦闘機を世界に売る立場になった。「休戦状態の国が、戦争に備え続けた結果として兵器輸出大国になった」というのは、なかなか皮肉で面白い話だと思う。
ただし、韓国株は日本の個人投資家が直接買える証券会社が限られていて、為替の影響も受ける。まずは日本の防衛関連銘柄や、米国の防衛大手から構造を学んでいくほうが現実的だ。日本の防衛株の全体像は防衛関連銘柄の完全投資ガイドにまとめてある。
※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではない。投資は元本割れのリスクがあり、最終的な判断はご自身の責任で行ってほしい。地政学リスクによる株価の動きは予測が難しく、短期で大きく上下することがある。
MW4がもっと面白くなる「元ネタ」:1950年の朝鮮戦争
最後に、ゲームをもっと楽しむための歴史の話をしておきたい。ここは私の趣味全開で書く。

奇襲は日曜の明け方に来た
1950年6月25日の明け方、北朝鮮軍は38度線を越えて一斉に南へなだれ込んだ。日曜日だった。韓国軍は兵士の多くが休暇中で、まともな戦車も対戦車兵器もなかった。ソウルはわずか3日で陥落する。
MW4の「夜の地方都市が一夜にして前線になる」という始まり方は、まさにこの記憶の上に立っている。韓国の人にとって、北からの奇襲は空想ではなく、祖父母の世代が実際に体験した出来事なのだ。
38度線を引いたのは、大日本帝国の降伏だった
大日本帝国ファンとしては、ここは外せない。
そもそも朝鮮半島はなぜ38度線で分かれたのか。1945年、日本の降伏を受け入れるにあたって、38度線より北の日本軍はソ連軍に、南の日本軍は米軍に降伏する、という線引きがされた。その線がそのまま冷戦の国境になってしまった。朝鮮半島の分断は、大日本帝国の敗戦処理から生まれたものなのだ。
もう一つ、ソウルの真ん中にある龍山(ヨンサン)は、かつて日本陸軍の朝鮮軍司令部が置かれた場所だった。戦後はそのまま在韓米軍の本拠地になり、2018年に司令部が平沢のキャンプ・ハンフリーズに移るまで、70年以上も外国の軍隊がソウルの中心に陣取り続けた。帝国陸軍の基地が米軍の基地になり、それが韓国に返されていく。半島の100年がこの一か所に詰まっている。
上陸反攻と仁川
MW4の後半には、海岸からの大規模な反攻作戦があるという。レビューではノルマンディーにたとえられていたが、朝鮮半島で上陸反攻と聞けば、私はどうしても1950年9月15日の仁川上陸作戦を思い浮かべる。マッカーサーが潮の干満差が極端に大きい港をあえて選び、北朝鮮軍の背後を突いて戦局を一気にひっくり返した作戦だ。ゲームでどこまで意識しているかは分からないが、そう思って遊ぶと胸が熱くなる。
自衛隊は朝鮮戦争から生まれた
自衛隊ファンとして最後に一つ。
朝鮮戦争が始まると、日本にいた米軍の大半が半島へ出ていった。空白になった日本の治安を埋めるために、1950年8月に作られたのが警察予備隊だ。これが保安隊を経て、いまの陸上自衛隊になる。
さらに同じ年、海上保安庁の掃海部隊が朝鮮半島の機雷を取り除く作業に密かに加わっている。戦後の日本が「戦争」に関わった最初の一歩で、この掃海の伝統は今の海上自衛隊に受け継がれている。
そして朝鮮戦争の特需が、焼け野原だった日本の工業を立ち直らせた。投資家の目で見れば、戦後日本経済の再出発は朝鮮半島の戦争と切り離せない。
MW4は韓国の物語だが、ほんの少し歴史をたどると、日本も帝国も自衛隊も、全部この半島につながっている。
朝鮮戦争をきちんと知りたい人には、入門書から一冊読んでおくのをすすめたい。
現代戦の考え方を基礎から押さえたいなら、こちらも読みやすい。
北朝鮮の核をめぐる話をもう少し深く知りたい人には、核抑止の入門書もおすすめだ。
通勤中に戦史本を聴くならAudibleも便利だ。
まとめ:MW4は「起きてほしくない戦争」を、かなり誠実に描いている
最後に、この記事のポイントをまとめておく。
- MW4は北朝鮮の全面侵攻で始まる朝鮮半島の戦争と、プライス大尉の追跡劇を並行して描く
- 北朝鮮軍は約128万人と数は多いが、空と海は旧式中心で、全面戦争を勝ち切る力はない
- ただし、ソウルを射程に収める砲兵、特殊部隊、ロシアでの実戦経験は本物の脅威だ
- 北朝鮮が全面侵攻しない理由は、勝てない、続かない、体制が終わる、の3つ
- 日本は国連軍後方司令部と7つの基地を抱え、現実の有事では確実に当事者になる
- 38度線、龍山、警察予備隊、朝鮮特需と、半島の戦争は日本の歴史とも深くつながっている
私の正直な感想を言うと、MW4は「ありえない戦争」を描いたゲームではない。「起きてほしくないし、起きる可能性は低いが、起きたらこうなる」という戦争を、意外なほど誠実に描いている。徴兵された若者が主人公で、最初に消えるのがコンビニの明かりだという一点だけでも、それは伝わってくる。
ゲームとしてキャンペーンを楽しんだあとに、ほんの少しだけ現実の半島に目を向けてみてほしい。ニュースで北朝鮮のミサイル発射を見たときの解像度が、ちょっとだけ上がるはずだ。
よくある質問
MW4の舞台はどこ?
主な舞台は朝鮮半島、特に韓国の地方都市ハジンだ。ハジンは架空の都市である。ほかにプライス大尉の物語でニューヨーク、パリ、ムンバイが登場する。
MW4の北朝鮮侵攻は実際に起こりうる?
可能性はゼロではないが、全面侵攻はかなり考えにくい。北朝鮮は韓国軍と在韓米軍に通常戦力で勝つ見込みが薄く、燃料と経済力も足りない。核で体制を守れるため、韓国を武力で併合する必要性も下がっている。一方で、砲撃やミサイル、特殊部隊による限定的な攻撃のリスクは現実に存在する。
MW4に日本や自衛隊は出てくる?
公開情報やレビューを見る限り、物語の中心にはほぼ出てこない。ただし現実の朝鮮半島有事では、横田の国連軍後方司令部や国内7か所の国連軍指定基地を抱える日本は確実に関わることになる。
北朝鮮軍の兵力はどれくらい?
防衛省の令和8年版防衛白書によると、総兵力は約128万人、陸上兵力は約110万人で、その約3分の2がDMZ付近に配置されているとみられる。韓国軍の総兵力は約45万人、在韓米軍は約3万人だ。
主人公のパクはどこの部隊?
韓国海兵隊の二等兵で、兵役で軍にいる若者という設定だ。所属分隊は「シエラ1」と呼ばれている。
参考資料
- 防衛省『令和8年版 防衛白書』第I部第3章第4節(朝鮮半島)
- Activision公式ブログ「Call of Duty: Modern Warfare 4」発表記事(2026年5月)
- GAME Watch「CoD:MW4」発表イベントレポート、早期アクセスベータレポート、開発陣インタビュー(2026年)
- GameWith「CoD: MW4」キャンペーンレビュー(2026年10月)
- UPI「USFK troop drawdown not under discussion between S. Korea, U.S.」(2026年4月30日)







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