FN F2000とは|「未来の銃」は薬莢を前に飛ばした──独特の外観に隠れたブルパップ小銃の設計思想と、その後

FN F2000 ブルパップの独創的な形

FN F2000を初めて見た人は、たいてい「これは銃なのか?」と思う。

角がほとんどなく、全体がつるりとした樹脂の殻に包まれている。引き金の前には大きな穴のあいた握り、上には小さなスコープ、後ろは短く切り落とされたような形。SF映画の小道具と言われても信じてしまいそうな見た目で、実際、ゲームやアニメでは「近未来の銃」の代表として何度も登場してきた。

ところが、この奇抜な外観は、デザインのためのデザインではない。ほとんどの曲線や出っ張りには、ちゃんと理由がある。その中心にあるのが「撃ち終わった薬莢を、前に飛ばす」という、銃の世界ではかなり珍しい仕組みだ。

この記事では、ベルギーのFNハースタルが作ったF2000を、外観の注目点から入って、ブルパップ小銃としての設計思想、そしてその後の歩みまで見ていく。ほかのブルパップ小銃と並べて順位をつける話はしない。F2000という一丁が、なぜこういう形になったのかに絞る。

この記事のポイント
目次

FN F2000とは|基本情報

FN F2000の側面。弾倉は引き金より後ろに配置される。
FN F2000の側面。弾倉は引き金より後ろに配置される。
写真・素材:5er at Slovenian Wikipedia/Wikimedia Commons(Public domain)
項目 F2000
メーカー FNハースタル(ベルギー)
開発 1995〜2001年
発表 2001年3月、アラブ首長国連邦の防衛展示会IDEX
弾薬 5.56×45mm NATO
方式 ブルパップ、ショートストロークピストン、ロータリーボルト
全長 688mm
銃身長 400mm
重量 約3.6kg(標準スコープ付き)
発射速度 毎分850発
弾倉 30発(STANAG規格、M16と共通)
標準照準器 1.6倍スコープ(予備の照準も内蔵)
生産 2001〜2013年

FNハースタルは、FN FALや機関銃のMAG、そして独特の形で知られるP90を生んだ老舗だ。F2000は、そのFNが21世紀の歩兵の銃として送り出した意欲作だった。

外観の注目点|どこを見ればF2000だと分かるか

F2000は、見た目で覚えるのがいちばん早い。ほかのブルパップ小銃と見分けるときに注目したいところを、前から順に挙げておく。

部位 見た目の特徴 理由
銃口まわり 銃身の下に樹脂の覆いがあり、先端だけが少し出ている 下にグレネードランチャーや前方グリップを付け替えるため
上面のスコープ 本体と一体に見える低い小型スコープ 1.6倍の照準器を標準で組み込んだため
右側面の前寄り 小さなフタ(排莢口)がある 薬莢を前方に出す出口
握りと引き金 握りの前に大きな穴、手全体を囲むガード 手袋でも扱え、引き金に指が入りやすい
引き金の下 円盤状のスイッチ P90と同じ方式の安全装置・切り替え
後ろ半分 弾倉が握りの後ろに入る、短く切り落とした形 ブルパップのため

なかでも決定的なのは、右側面の前寄りにある小さな排莢口だ。普通の小銃は、機関部の横、顔の近くや握りの近くから薬莢が飛び出す。F2000は、その出口が銃の前のほうにある。ここを見れば、ほかのブルパップと見間違えることはない。

この「見た目で分かる設計」は、写真の識別図とも相性がいい。銃の写真に、上の表の各部位を矢印で示すだけで、F2000の考え方がほとんど説明できてしまう。

そもそもブルパップとは|短くて長い銃

通常配置とブルパップを、引き金・弾倉・銃身の位置で比較する模式図。
通常配置とブルパップを、引き金・弾倉・銃身の位置で比較する模式図。

F2000を理解するには、まずブルパップという形式を押さえておく必要がある。

要点

こうすると、銃身の長さはそのままで、銃全体を短くできる。F2000の全長は688mmだが、銃身は400mmある。普通の形式でこの銃身長なら、全長はもっと長くなる。狭い車内や建物の中で取り回しやすく、それでいて弾の威力や命中精度は長い銃身のまま保てる。これがブルパップの最大の魅力だ。

ステアーAUG、フランスのFAMAS、イギリスのL85、イスラエルのタボール、中国のQBZ-95など、1970年代以降、多くの国がこの形式の小銃を制式にしてきた。

ブルパップの弱点|薬莢が顔の横から飛んでくる

ただし、ブルパップにはやっかいな弱点があった。薬莢の出口が、射手の顔のすぐ横に来てしまうことだ。

機関部が肩の位置にあるので、普通の銃と同じように横へ薬莢を出すと、右肩で構えた射手の頬のすぐ横から、熱い薬莢と発射ガスが飛び出す。右利きならまだいい。問題は、左肩で構えたときだ。左肩で構えると、右側に出る薬莢が、ちょうど顔の前を横切ることになる。

戦場では、遮蔽物の角に合わせて、右肩と左肩を持ち替えて撃つ場面がある。左利きの兵士もいる。そのたびに顔に薬莢が当たる銃では困る。

各国はこの問題に、それぞれ苦しい答えを出してきた。部品を入れ替えて排莢口を左右に変えられるようにした銃もあるが、戦闘中に持ち替えるたびに分解するわけにはいかない。イギリスのL85は、そもそも右利き専用にしてしまった。

F2000の答え|薬莢を「前」に出す

F2000は、この問題に真正面から答えた。薬莢を横に飛ばすのをやめて、前に送り出したのだ。

仕組みはこうだ。撃ち終わった薬莢は、機関部から取り出されたあと、横に飛ばされるのではなく、回転する受け皿に一度受け止められる。そこから銃身の上を走る筒の中に押し込まれ、次の薬莢が来るたびに少しずつ前へ送られていく。筒がいっぱいになると、前のほうの右側面にある出口から、ころりと前方へ落ちる。アメリカの銃の専門誌の試射では、5〜6発ほど撃ったところで最初の薬莢が出てくると説明されている。

この結果、薬莢は射手の顔から遠い、銃の前のほうから出ていく。右肩で構えても左肩で構えても、顔に当たることはない。発射ガスや細かいゴミが顔に吹きつけることも減る。操作部も、槓桿を除いて左右どちらの手でも使えるように作られた。ブルパップの弱点を、設計の根本から消そうとした仕組みだった。

もちろん、良いことばかりではない。仕組みが複雑になるぶん、部品が増える。撃つのをやめても筒の中に何発か薬莢が残るので、銃口を下に向けて振ったり、出口のフタを開けたりして出す必要がある。訓練場で薬莢を拾い集めるのは楽だが、戦場では「薬莢が出ないまま残っている」状態に慣れる必要があった。

殻の中身|意外と堅実な機関部

外見の奇抜さに比べると、F2000の中身はかなり堅実だ。

要点

銃全体は、銃身と機関部をまとめた上半分と、握りや引き金を含む樹脂の下半分の、大きく2つの部品でできている。引き金の上あたりの1本のピンを抜くだけで分けられるので、手入れは意外と簡単だ。銃身は内側をクロムめっきした鍛造品で、メーカーは通常の射撃で2万発を撃っても精度を保てるとしている。

弾倉を外すボタンは握りの中にあり、化学防護用の厚い手袋をはめていても押せるように大きく作られている。ここにも、細かいところまで「戦場で使う道具」として考えた跡が見える。その一方で、弾を撃ち尽くしたときにボルトが後ろで止まる機能はなく、弾倉も重みだけでは自然に落ちない。素早い弾倉交換を重視する兵士からは、このあたりが物足りない点として挙げられることがある。

なお、FNは同じ時期に、P90と専用の弾を共有する拳銃ファイブセブンも送り出している。既存の常識にとらわれず、銃と弾と使い方をまとめて考え直すのは、この時代のFNの得意技だったと言える。

「銃」ではなく「システム」として売った

FN F2000を携行するペルーの隊員。
FN F2000を携行するペルーの隊員。
写真・素材:Ministerio de Defensa del Perú/Wikimedia Commons(CC BY 2.0)

F2000のもう一つの特徴は、小銃一丁ではなく、まとめて使う「システム」として設計されたことだ。

まず、照準器が最初から付いている。標準型は1.6倍の小型スコープを本体に組み込み、その下には予備の照準も隠してある。2000年代初め、歩兵全員が光学照準器を持つのはまだ当たり前ではなかった。FNは、それを最初から標準にした。

さらに、銃身の下には40mmのグレネードランチャー「GL1」を付けられた。引き金は小銃の引き金のすぐ下にあり、握りから手を離さずにグレネードを撃てる。そして、標準スコープの代わりに付ける射撃統制装置(FCS)が、F2000の目玉だった。フィンランドの会社と共同開発したこの装置は、レーザーで目標までの距離を測り、グレネードを当てるための狙いの角度をコンピューターが計算して、照準器の中に表示する。狙いが合うと、表示が赤から緑に変わる。

グレネードは山なりに飛ぶので、距離を見誤るとまず当たらない。FCSは、その一番難しいところを機械に任せようとした。歩兵一人ひとりに、小さな砲兵の射撃計算機を持たせるような発想だ。

これを見て、私は旧日本陸軍の八九式重擲弾筒を思い出した。小銃兵の分隊が、迫撃砲のように山なりに弾を撃ち込める小さな筒で、アメリカ兵にも恐れられた。日本陸軍は、射手の経験と勘で距離を合わせていた。F2000は、その「勘」をレーザーとコンピューターに置き換えようとしたわけだ。歩兵が自分で曲射の火力を持つ、という考え方そのものは、時代が変わっても生き残っている。

誰が使ったのか

共同訓練でFN F2000を扱う米海兵隊員(2023年)。米軍の制式採用を示す写真ではない。
共同訓練でFN F2000を扱う米海兵隊員(2023年)。米軍の制式採用を示す写真ではない。
写真・素材:Tech. Sgt. Nicholas Monteleone/Wikimedia Commons(Public domain)

F2000は、軍の制式小銃として大量に採用された例は多くない。それでも、使った国と部隊の顔ぶれはなかなか幅広い。

最大の採用国は、旧ユーゴスラビアから独立した中欧のスロベニアだ。2006年の契約で、グレネードランチャーとともに採用し、NATOに加盟するヨーロッパの国として初めて大規模に導入した。スロベニア向けには、上部のレールを持ち上げて運搬用の取っ手を兼ねさせた「F2000 S」という専用の型が作られている。

ほかに、サウジアラビアの国家警備隊がまとまった数を買い、ベルギーの特殊部隊、スペインの特殊作戦部隊、ポーランドの特殊部隊GROM、インドやパキスタン、ペルーの特殊部隊などが使った。変わったところでは、リビアのカダフィ政権が2008年に300丁あまりを買い、2011年の内戦では反体制派がそれを奪って使った。売った側の思惑とは関係なく、銃は戦場から戦場へと流れていく。2022年には、ベルギーがロシアの侵攻を受けたウクライナにF2000を送っている。

アメリカでは、民間向けに半自動だけの「FS2000」が2006年から売られた。銃身を長くして銃口にブレーキを付けた型で、アメリカの専門誌は、引き金の切れはブルパップらしく重めだが、バランスがよく、撃っていて楽しい銃だと評している。

「未来の銃」のその後

F2000の生産は、2013年で終わったとされる。

理由のひとつは、市場の流れだ。2000年代以降、各国の軍が選んだのは、M4やHK416のような操作に慣れたAR系の小銃や、FN自身が作ったモジュール式のSCARだった。ブルパップは短くて便利だが、引き金が重くなりがちで、銃の形によって構え方の自由が制限される。光学照準器が当たり前になり、AR系でも銃床を縮めれば十分短くできるようになると、ブルパップの優位は小さくなった。

F2000の一番の顧客だったスロベニアも、後継にはFN SCARを選んだと伝えられている。F2000は予備役に回される見込みだ。

それでも、F2000が残したものは小さくない。薬莢を前に出すという仕組みは、ブルパップの弱点に対する、いまでも最もすっきりした答えの一つだ。そして、照準器と射撃統制装置とグレネードを一体で設計するという考え方は、その後の歩兵装備の流れを先取りしていた。早すぎた銃、というのが、私がF2000にいちばんしっくりくる言葉だ。

エアガンで「ブルパップ」と「FNの作法」を味わう

F2000のエアガンは、国内では手に入りにくい。代わりに、F2000につながる二つの方向から楽しむ手がある。

ひとつは、同じFNが作ったP90だ。F2000の引き金と安全装置の仕組みは、P90から受け継がれている。引き金の下の円盤状のスイッチを触ってみると、F2000の操作の感覚が少し想像できる。

もうひとつは、ブルパップそのものの感覚を味わうことだ。フランスのFAMASは、F2000と同じく、握りの後ろに弾倉が入る形式の代表例だ。構えたときの短さと、頬のすぐ横に機関部がある感覚は、実際に持つとよく分かる。

よくある質問

FN F2000はどこの国の銃?

ベルギーのFNハースタルが開発した小銃だ。1995年から開発され、2001年に発表された。

F2000の薬莢はどこから出る?

銃身の上の筒に集められ、銃の前のほうの右側面にある出口から、前方に排出される。射手の顔から遠い位置から出るため、右肩でも左肩でも構えられる。

F2000は今も作られている?

生産は2013年までとされる。最大の採用国だったスロベニアも、後継にFN SCARを選んだと伝えられている。

F2000とP90の関係は?

どちらもベルギーのFNハースタルの銃で、F2000の引き金と、円盤状の安全装置・切り替えスイッチの仕組みはP90から受け継がれている。樹脂の殻で全体を包む設計の考え方も共通している。

F2000の欠点は?

薬莢を前に送る仕組みが複雑で、撃ち終えても筒の中に薬莢が残る。また、ブルパップのため引き金が重くなりがちで、重量も同じクラスのAR系小銃より重めだ。

民間向けのモデルはある?

アメリカでは、半自動だけのFS2000が2006年から販売された。銃身が長く、銃口にブレーキが付いている。

まとめ|F2000は、ブルパップの弱点を「形」で消そうとした銃

FN F2000の奇抜な見た目は、ほとんどが理由のある形だった。前に寄った排莢口は顔に薬莢を当てないため、本体と一体のスコープは全員に照準器を持たせるため、銃身下の覆いはグレネードランチャーを付けるため。どれも、21世紀の歩兵の銃はこうあるべきだ、というFNの答えだった。

市場はAR系とモジュール式の小銃を選び、F2000は早めに表舞台を降りた。それでも、薬莢を前に出すという発想と、銃をシステムとして考える姿勢は、いま見ても新鮮だ。ゲームで見て「かっこいい」と思った人は、その形の一つひとつに、こんな理由が詰まっていたことを知っておくと、もう少し好きになれると思う。世界の主力小銃の比べっこは世界最強アサルトライフルランキングに、銃の種類の全体像は銃の種類完全ガイドにまとめている。

最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。

出典・参考資料

表紙の写真素材:
写真・素材:5er at Slovenian Wikipedia/Wikimedia Commons(Public domain)。背景・レイアウト・文字を編集。

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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