「自衛隊は給料が安い」という話を、いまだによく聞く。
数年前までなら、その通りだった。2020年の時点で、高卒で一般曹候補生として入った人の初任給は月17万9,200円。そこから税金と社会保険料を引かれて、手元に残るのは15万円を切るくらい。18歳に国を守れと言うにしては、ずいぶん渋い数字だった。
それが令和8年度(2026年度)の採用要項では、月23万9,500円になっている。6年で6万円以上、率にして3割を超える引き上げだ。古い情報のまま「安い」と思い込んでいると、判断を間違える。
この記事では、防衛省の採用要項と公表資料をもとに、一般曹候補生の給料を、初任給から手取り、ボーナス、昇給、そして任期制(旧・自衛官候補生)との違いまで整理する。
結論|一般曹候補生の給料の早見表
金額は令和8年度の一般曹候補生採用要項に記載されたもので、地域手当などは含まない。学歴や職歴によって変わることがあり、法改正で改定される場合もある。
初任給はここ数年でこれだけ上がった
まず、どれだけ上がったのかを見てほしい。高卒で2士として入った場合の初任給の推移である。
| 時期 | 高卒2士の初任給 |
|---|---|
| 2020年度ごろ | 17万9,200円 |
| 2023年度の改定後 | 19万8,800円 |
| 2024年度の改定後 | 22万4,600円 |
| 2025年度の改定後(現在) | 23万9,500円 |
自衛官の給料は、国家公務員全体の給与を決める人事院勧告に合わせて毎年見直される。ここ数年は民間の賃上げが続いたうえに、自衛官のなり手不足が深刻になり、若い隊員に重点を置いた引き上げが続いた。ボーナスも年4.4か月分から4.65か月分まで増えている。
「入ってしまえば同じ」ではない。入る年によって、スタートラインがこれだけ違う。いまは、ここ数十年でいちばん条件のいい時期だと言っていい。
手取りはいくらになるか

初任給23万9,500円から、実際に口座に振り込まれるのはいくらか。ここからは私の概算になる。
給料から引かれるのは、主に共済組合の掛金(民間でいう健康保険と厚生年金にあたるもの)と所得税だ。合わせて額面の15〜18%ほどになる。
| 高卒(23万9,500円) | 大卒(25万8,500円) | |
|---|---|---|
| 共済掛金など | 約3万5,000円 | 約3万8,000円 |
| 所得税 | 約5,000円 | 約6,000円 |
| 手取りの目安 | 約19万〜20万円 | 約21万円前後 |
これは1年目の話で、2年目の6月からは前年の所得にかかる住民税が引かれはじめる。月に1万円強は減ると思っておいたほうがいい。団体保険に入ればその分も引かれる。
ただし、ここが自衛隊の大きな特徴なのだが、営内で暮らしている間は、この手取りから家賃も食費も水道光熱費も出ていかない。民間で一人暮らしをすれば、家賃と食費だけで月に8万〜10万円は消える。それがほぼゼロになる。手取り19万円は、民間の手取り28万円くらいの生活と同じだけ手元に残る、と考えると実感に近い。
だから自衛官は貯まる。この話は自衛官の貯金の記事で詳しく計算した。営内の暮らしぶりは宿舎・営内の記事を見てほしい。
ボーナスと1年目の年収

ボーナス(期末・勤勉手当)は6月と12月の年2回で、年間4.65か月分。1回あたり約2.3か月分である。
ただし1年目の6月は満額出ない。4月に入隊すると、6月のボーナスの計算期間のうち2か月しか在職していないので、支給されるのは本来の3割ほどになる。12月は満額だ。
私の概算では、高卒で4月に入隊した場合の1年目はこうなる。
- 俸給:23万9,500円×12か月=約287万円
- ボーナス:6月(約3割)+12月(満額)=約70万円
- 1年目の年収の目安:約360万円
2年目からはボーナスが年2回とも満額になり、昇給もあるので、年収は400万円前後に乗ってくる。ここに、営内にいれば年20万円の指定場所生活調整金が加わる。ボーナスの仕組みは自衛官のボーナスの記事でくわしく説明している。
指定場所生活調整金とは
これは最近できた制度で、まだあまり知られていない。
営内、つまり駐屯地や基地の中で暮らすことを義務づけられている若い隊員に対して、その不自由さへの埋め合わせとして支払われるお金だ。採用要項によれば、入隊後に営内で生活している間、6年間に限って毎年20万円。最大で120万円になる。
政府の資料では、1年経過するごとに20万円を支給する形になっており、年の途中で退職したり、営内を出て外に住む許可をもらったりすると、その年の分は出ない。結婚して営外に出れば対象外になる、ということだ。
昇給|3曹になると景色が変わる

一般曹候補生は、2士で入隊して、1士、士長と上がり、入隊から2年9か月がたった後、選考を経て3曹に昇任する。
3曹は、旧軍でいえば伍長にあたる。ここからが下士官、つまり「曹」の世界だ。俸給表の段が変わり、基本給が上がる。部下を持ち、後輩を教える立場になる。定年まで勤められる身分が、ここで名実ともに固まる。
そこから先は、2曹、1曹、曹長と上がっていく。30代半ばの2曹で年収はおおむね500万円台、40代の1曹や曹長になれば600万〜700万円台が見えてくる。艦艇や航空機に乗る人、空挺や潜水艦などの特別な配置に就く人は、そこに手当が乗る。階級ごとの年収は自衛官の年収モデル、年齢と階級の関係は階級と年齢の目安、手当の種類は自衛官の手当一覧にまとめてある。
さらに上を目指す道もある。3曹に昇任して4年たつと、部内の幹部候補生選抜試験を受けられる。合格すれば幹部への道が開ける。高卒で入って1佐まで上がった人も実在する。
気をつけたいのは、3曹への昇任が「選考」だという点だ。2年9か月で全員が自動的に上がるわけではない。勤務成績や試験の結果で、昇任の時期に差がつく。同期より1年遅れれば、その分だけ給料にも差が出る。入ってからが勝負、というのは本当の話である。
任期制(旧・自衛官候補生)との違い
ここがいちばん誤解の多いところなので、丁寧に書く。
まず制度が変わった。長く「自衛官候補生」と呼ばれていた任期制の入口は、令和8年3月の受付分から「2等陸・海・空士(任期制自衛官)」に切り替わった。以前の自衛官候補生は最初の3か月間だけ給料が低かったが、新しい制度では入隊と同時に2士になる。つまり、初任給は一般曹候補生と同じ23万9,500円(高卒)だ。
では何が違うのか。
| 一般曹候補生 | 任期制自衛官 | |
|---|---|---|
| 初任給(高卒) | 23万9,500円 | 23万9,500円 |
| 身分 | 定年まで勤務が前提 | 陸は2年、海・空は3年の任期制 |
| 任期満了金 | なし | あり。陸の2任期目で190万円弱など |
| 3曹への道 | 入隊2年9か月以降に選考で昇任 | 部内の選抜試験に合格すれば昇任 |
| 退職金 | 定年時などに退職手当 | 任期ごとに任期満了金 |
| 指定場所生活調整金 | 対象 | 対象 |
入ってから数年間の「もらえるお金の総額」だけを比べると、実は任期制のほうが多くなることがある。任期が終わるたびにまとまった任期満了金が出るからだ。金額は任期満了金の記事で、任期制の給料全体は自衛官候補生の給料の記事で整理している。
では一般曹候補生は損なのか。そうではない。
一般曹候補生の価値は、目先の金額ではなく、身分にある。任期制は任期が終わるたびに、続けるか、辞めるか、曹を目指すかを選ばなければならず、曹になる試験に受からなければいずれ自衛隊を去ることになる。一般曹候補生は最初から、曹になることを前提に採用されている。3曹に上がり、定年まで勤め、退職金を受け取る。その道筋が最初から引かれている。定年時の退職金は退職金の記事に書いたとおり、2,000万円規模になる。
短く稼いで次へ行くなら任期制。腰を据えて長く勤めるなら一般曹候補生。給料の額ではなく、どう生きたいかで選ぶ話だ。2つの制度の違いは自衛官候補生と一般曹候補生の違いで、さらに詳しく比べている。
高卒と大卒の差は月1万9,000円
一般曹候補生は、高卒でも大卒でも同じ2士から始まる。初任給の差は月1万9,000円だ。
大卒で入る人は意外に多い。幹部候補生で入れば初任給も昇進も上だが、幹部は2〜3年ごとに全国を転勤し、若いうちから重い責任を負う。現場で技術を磨きたい、地元の近くで長く勤めたい、という理由で、あえて一般曹候補生を選ぶ大卒は珍しくない。この選び方は高卒と大卒の違いの記事に書いた。
軍の背骨は、いつの時代も下士官だった
少しだけ昔の話をする。
旧陸軍の二等兵の月給は、数円だった。当時の物価を考えても、小遣い程度である。徴兵で集められた兵隊は、給料をもらいに来ているわけではなかったからだ。それが伍長に任官すると、月給は一気に数倍になり、身分も職業軍人に変わった。軍隊で飯を食っていく、というのは下士官になることを意味した。
そして、軍隊の強さを決めるのは、昔もいまも、この下士官の層だと言われる。将校は数年で異動していくが、下士官はその部隊に何年も腰を据え、兵を鍛え、装備の癖を知り尽くし、新米の将校を陰で支える。日本軍の下士官の優秀さは、戦った相手の側も認めていたところだ。
一般曹候補生というのは、その下士官を最初から育てるための制度である。初任給23万9,500円は、ただの若者の給料ではなく、将来の部隊の背骨への先行投資だと私は思っている。
貯まったお金をどうするか
営内にいる数年間は、人生でいちばんお金が貯まる時期になる。だが、若い隊員が車やギャンブルで溶かしてしまう話も、昔から山ほどある。
月に数万円でも、早いうちから積み立てておくと、3曹になって結婚するころにはまとまった額になる。NISAの仕組みを知っておくだけでも違う。
口座を作るだけなら、お金はかからない。入隊前の時間のあるうちに済ませておくのも手だ。
(免責事項)本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を勧めるものではない。投資には元本割れのリスクがある。判断は自分自身の責任で行ってほしい。
よくある質問
一般曹候補生の初任給はいくら?
令和8年度の採用要項では、高卒で月額23万9,500円、大卒で25万8,500円(地域手当などを除く)。学歴や職歴で変わることがある。
手取りはいくら?
私の概算では、高卒1年目で月19万〜20万円ほど。2年目からは住民税が引かれる。営内にいる間は家賃と食費がかからない。
1年目の年収は?
高卒で4月入隊の場合、俸給とボーナスを合わせて約360万円が目安。1年目の6月のボーナスは在職期間が短いため少ない。
任期制(旧・自衛官候補生)と給料は違う?
新しい任期制では入隊と同時に2士になるため、初任給は同じ。違いは、任期満了金の有無と、定年まで勤める前提かどうかにある。
3曹にはいつなれる?
入隊から2年9か月がたった後、選考によって昇任する。全員が同じ時期に上がるわけではない。
試験は難しい?
任期制よりは難しい。倍率は一般曹候補生の倍率の記事、試験の全体像は自衛官採用試験の解説、身体検査の基準は自衛隊の身体検査の記事にまとめた。
筆記試験は高校卒業程度の国語・数学・英語と作文。問題集を1冊決めて、早めに回しはじめるのがいい。
まとめ
一般曹候補生の初任給は、高卒で月23万9,500円、大卒で25万8,500円。ボーナスは年4.65か月分で、1年目の年収は約360万円が目安になる。手取りは月19万〜20万円ほどだが、営内にいる間は家賃も食費もかからず、さらに年20万円の指定場所生活調整金が最大6年間出る。
任期制と初任給は同じ。違うのは、任期満了金がない代わりに、最初から定年までの道が引かれていることだ。
6年前の17万9,200円を知っている身としては、よくここまで上げたと思う。国がようやく、部隊の背骨になる人たちに金を払う気になった。入る側にとっては、悪くないタイミングである。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 防衛省「令和8年度 一般曹候補生 採用要項」
- 防衛省 自衛官募集サイト「一般曹候補生」
- 自衛隊新潟地方協力本部「令和7年人事院勧告の自衛官等給与等の改正」(2026年1月15日現在)ほか、令和6年改正時の同資料
- 防衛省「防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案の概要」(2019年、2023年、2024年、2025年)
- 内閣官房「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議」参考資料(指定場所生活調整金)
※手取りと年収は、公表されている俸給月額と支給月数をもとにした筆者の概算で、地域手当や各種手当、扶養の有無、加入する保険などによって変わる。正確な金額は最寄りの自衛隊地方協力本部で確認してほしい。







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