VLSとは|イージス艦の「96セル」は96発ではない──垂直発射装置の仕組み、セル数と搭載弾数の違い、性能表の読み方

VLSの仕組み セル数と搭載弾数の違い

イージス艦の記事を読んでいると、必ずと言っていいほど出てくる数字がある。「VLS 96セル」。

まや型護衛艦は96セル、アメリカのアーレイ・バーク級も96セル、中国の055型は112セル。数字が大きいほど強そうに見えるし、ランキング記事でもよく比べられる。ところが、この数字の意味をちゃんと説明できる人は意外と少ない。私も昔は「96セル=ミサイル96発」だと思っていた。

実は、そうとは限らない。96セルの艦が120発以上のミサイルを積むこともあるし、同じアーレイ・バーク級なのに90セルの艦もある。そもそも「セル数が多い=強い」とも言い切れない。

この記事は、艦艇の強さを比べる記事ではない。性能表に書かれた「VLS」「セル」という言葉と数字を、自分で読めるようになるための記事だ。VLSの仕組み、セル数と搭載弾数の違い、主な艦のセル数の読み方、そしてVLSの意外な弱点まで、順番に見ていく。

この記事のポイント
目次

VLSとは|甲板の下に並んだ「ミサイルの縦置き倉庫」

巡洋艦サン・ジャシントのMk41垂直発射装置。
巡洋艦サン・ジャシントのMk41垂直発射装置。
写真・素材:U.S. Navy photo by Photographer's Mate 1st Class Michael W. Pendergrass./Wikimedia Commons(Public domain)

VLSは「Vertical Launching System(垂直発射システム)」の略だ。日本語では「垂直発射装置」と呼ぶ。

軍艦の甲板を上から見ると、四角いハッチが碁盤の目のように並んだ場所がある。あれがVLSだ。ハッチの下には、ミサイルが1発ずつ筒(キャニスター)に収まって、縦向きに並んでいる。撃つときはハッチが開き、ミサイルがそのまま真上に飛び出して、空中で向きを変えて目標へ向かう。

ポイントは、ミサイルを「しまっておく場所」と「撃ち出す場所」が同じことだ。倉庫の中から、出し入れせずにそのまま撃てる。これがVLSのいちばん大事な特徴で、ここから強みも弱みも生まれている。

VLS以前|腕を振ってミサイルを撃っていた時代

VLSのありがたみは、それ以前のやり方と比べるとよく分かる。

1970年代までの軍艦は、甲板の上に「旋回式ランチャー」を載せていた。ミサイルを載せる腕(アーム)がついた発射機で、撃つたびに甲板下の弾薬庫からミサイルを1発ずつ持ち上げて腕に載せ、目標の方向へぐるっと向けて撃つ。海上自衛隊でも、たちかぜ型やはたかぜ型の護衛艦が、この方式の単装ランチャーを積んでいた。

この方式には弱点がいくつもあった。1発撃つごとに装填と旋回の時間がかかるので、たくさんの敵機やミサイルが同時に来ると追いつかない。発射機が1つ壊れたり弾が詰まったりすると、その艦はミサイルを撃てなくなる。甲板の上に大きな機械が出ているので、レーダーにも映りやすい。

VLSは、これを全部ひっくり返した。ミサイルは最初から発射できる状態で並んでいるので、装填も旋回もいらない。1秒に1発ほどのペースで次々に撃てるとされ、どの方向の敵にもすぐ向かえる。セルが1つ壊れても、ほかのセルは撃てる。甲板は平らなままだ。

帝国海軍好きとしては、ここで重雷装艦の北上・大井を思い出してしまう。九三式酸素魚雷を撃つ発射管を片舷20門ずつ、合計40門も並べた巡洋艦だ。「一度にたくさん撃てる数」が強さになる、という発想は、魚雷の時代もミサイルの時代も変わらない。違うのは、VLSなら弾の向きを気にせず、同じ穴から何百キロも先の空や海を狙えることだ。九三式酸素魚雷の時代の水雷屋が見たら、うらやましがるか、あきれるか、どちらだろう。

仕組み|セル・モジュール・キャニスター

Mk41の8セル・モジュールと、1セルに1発・4発を収める場合の違い。
Mk41の8セル・モジュールと、1セルに1発・4発を収める場合の違い。

ここからは、西側で最も広く使われているアメリカ系のVLS「Mk41」を例に、中身を見ていく。

セルとモジュール

要点

キャニスター

ミサイルは、むき出しでセルに入っているわけではない。工場で「キャニスター」という筒に封入され、筒ごとセルに差し込まれる。キャニスターはそのまま輸送容器と発射筒を兼ねていて、撃ったあとは空の筒が残る。

ホット・ローンチ

Mk41は「ホット・ローンチ」と呼ばれる方式を使う。ミサイルがセルの中で自分のロケットモーターに点火し、その勢いで飛び出していく。問題は、そのときの猛烈な排気ガスだ。Mk41では、モジュールの底に共通の排気室があり、ガスはそこを通って2列のセルの間にある排気口から上へ逃げる。温度が上がりすぎたときには、水をかけて冷やす仕組みもついている。

これに対して、ガスや圧縮空気でミサイルをいったん空中に放り出してから点火する「コールド・ローンチ」という方式もある。ロシアの艦艇用防空ミサイルや、潜水艦の弾道ミサイルなどで使われてきた。

3つの長さ

Mk41には、高さの違う3種類のモジュールがある。

種類 高さ 主に入るミサイルの例
セルフディフェンス型 約5.3m 個艦防空用のESSMなど
タクティカル型 約6.8m SM-2、対潜ロケットのVLA・07式など
ストライク型 約7.7m SM-3、SM-6、トマホークなど

ここが、性能表を読むときの落とし穴になる。「VLS 32セル」と書いてあっても、それがどの長さのモジュールかで、積めるミサイルがまったく違う。背の低いモジュールしか持たない艦は、トマホークや弾道ミサイル迎撃用のSM-3を積めない。セル数だけでなく「何が入るセルなのか」を見る必要がある。

「セル数」と「搭載弾数」は違う

いよいよ本題だ。なぜ96セルが96発とは限らないのか。

理由はシンプルで、ミサイルの太さによって1セルに入る数が変わるからだ。Mk41のセルは、SM-2やSM-3、トマホークのような太いミサイルなら1発しか入らない。ところが、個艦防空用のESSM(発展型シースパロー)は細いので、1つのセルに4発をまとめて入れられる。これを「クアッドパック」と呼ぶ。

たとえば、96セルのうち8セルにESSMを4発ずつ入れ、残りの88セルにSM-2やSM-6を1発ずつ入れたとする。すると搭載弾数は、32発+88発で120発になる。セル数より弾数のほうが多いわけだ。

逆に、セル数ぶんのミサイルが入っているとも限らない。平時は全部のセルを埋めていないこともあるし、何をどれだけ積んでいるかは基本的に公表されない。性能表の「96セル」は、あくまで「最大でこれだけの区画がある」という器の大きさを示す数字だと考えたほうがいい。

90セルの艦がある理由

もうひとつの謎が、アーレイ・バーク級の初期型や、海自のこんごう型の「90セル」だ。8の倍数なら96や88になるはずなのに、なぜ90なのか。

答えは、クレーンだ。初期のMk41には、海の上でミサイルを積み込むための折りたたみ式クレーンを収めたモジュールがあった。このモジュールは、8セルのうち3セル分をクレーンに使っていたので、5セルしかない。こんごう型は前に29セル、後ろに61セルを持つが、これは前後それぞれ1つずつクレーン付きモジュールがあるからだ。

ところが、このクレーンは重いトマホークを持ち上げられず、あまり役に立たなかった。そこで湾岸戦争のあとに建造された艦では、クレーンをやめて全部を普通のセルにした。アーレイ・バーク級のフライトIIA以降や、海自のあたご型・まや型が96セルなのはこのためだ。90と96の違いは、性能の差というより、生まれた時代の差なのである。

主な艦のセル数|性能表の読み方

主な艦のセル数を表にしておく。強さの順位ではなく、性能表の数字を読むための目安として見てほしい。

艦(国) VLSの種類 セル数 読み方のポイント
タイコンデロガ級巡洋艦(米) Mk41 122 前後61セルずつ。クレーン付きモジュールがあるため半端な数
アーレイ・バーク級 フライトI/II(米) Mk41 90 クレーン付きの初期型
アーレイ・バーク級 フライトIIA/III(米) Mk41 96 クレーンを廃止して全部セルに
こんごう型(日) Mk41 90 前29・後61。クレーン付き
あたご型・まや型(日) Mk41 96 クレーンなし
イージス・システム搭載艦(日) Mk41 128 弾道ミサイル防衛を主任務にした大型艦
あきづき型・たかなみ型(日) Mk41 32 汎用護衛艦。ESSMや対潜ロケット用
もがみ型(日) Mk41 16 現状は対潜ロケットの07式のみ
新型FFM(日) Mk41 32 もがみ型から倍増。長射程の対艦ミサイルも想定
世宗大王級(韓) Mk41+韓国製K-VLS 80+48 2種類のVLSを併用し合計128
055型駆逐艦(中) 中国の汎用VLS 112 1セルがMk41より大きいとされ、単純比較できない
052D型駆逐艦(中) 中国の汎用VLS 64 同上
ズムウォルト級(米) Mk57 80 船体のふちにセルを分散配置
45型駆逐艦(英) シルバー 48 欧州系VLS。入るミサイルの系統が別

この表から読み取れることを、いくつか挙げておく。

まず、国やVLSの種類が違えば、セルの大きさも入るミサイルも違う。055型の112セルとアーレイ・バーク級の96セルを数字だけで比べても、あまり意味がない。中国のVLSは1セルの太さがMk41より大きいと言われ、ホット・ローンチとコールド・ローンチの両方に対応するともされる。より大きなミサイルを入れられる一方で、セル1つあたりの重さや場所も大きくなる。

次に、同じMk41でも艦の任務でセル数が大きく変わる。イージス艦が96〜128セルなのに対し、汎用護衛艦は32セル、もがみ型は16セルだ。艦隊全体の盾になるイージス艦と、自分の身を守りながら対潜や警戒をこなす艦とでは、必要な「器」が違う。

最後に、ズムウォルト級のMk57のように、セルを中央にまとめず船体のふちに散らした例もある。ミサイルが誘爆しても被害が艦の中心に及びにくい、という発想だ。並べ方ひとつにも、設計思想が出る。

艦ごとの詳しい中身は、まや型、アーレイ・バーク級、055型、ズムウォルト級、45型駆逐艦の各記事で書いている。強さを並べて比べたい人は世界最強イージス艦ランキングへどうぞ。

セルの中に何が入るのか

駆逐艦フィッツジェラルドのVLS甲板で作業する乗員(2005年)。
駆逐艦フィッツジェラルドのVLS甲板で作業する乗員(2005年)。
写真・素材:U.S. Navy photo by Photographer's Mate Airman Adam York/Wikimedia Commons(Public domain)

VLSが便利なのは、同じセルにいろいろな種類のミサイルを入れられることだ。Mk41の場合、主に次のようなものが入る。

任務 主なミサイル
艦隊防空 SM-2
弾道ミサイル防衛 SM-3
防空・弾道ミサイル防衛・対艦の多用途 SM-6
個艦防空 ESSM(1セル4発)
対地攻撃 トマホーク
対潜 VLA(アスロック)、07式垂直発射魚雷投射ロケット
要点

逆に言えば、セル数は「どれだけの選択肢を同時に持てるか」の目安でもある。防空、迎撃、対地、対潜を全部こなそうとすると、セルはすぐに足りなくなる。イージス艦のセル数が増え続けてきたのは、仕事が増え続けてきたからでもある。SM-3とSM-6の役割の違いはSM-3とSM-6の違いで整理している。

VLSの弱点|撃ち尽くしたら港へ帰るしかない

便利なVLSにも、大きな弱点がある。海の上で弾を補給しにくいことだ。

旋回式ランチャーの時代は、甲板下の弾薬庫にミサイルを補充すれば、また撃てた。ところがVLSは、キャニスターを1本ずつ垂直に吊り上げてセルに差し込まなければならない。揺れる海の上で、長さ7m前後の重い筒を、ぴったり真上から入れるのは難しい。初期の補給用クレーンも、先ほど書いたとおり役に立たず外されてしまった。

その結果、ミサイルを撃ち尽くした艦は、港に戻って補給するしかない。港までの往復に数日から1週間以上かかり、そのあいだ艦は戦列を離れることになる。

この問題が一気に表面化したのが、2023年からの紅海だ。イエメンのフーシ派が撃ち込むミサイルやドローンを迎え撃つため、米海軍の駆逐艦は大量の迎撃ミサイルを撃ち、補給のたびに持ち場を離れる必要に迫られた。

そこで米海軍は、海の上でVLSに再装填する仕組み「TRAM」の試験を始めた。2024年10月11日、カリフォルニア沖で、補給艦から巡洋艦チョーシンへ、走りながら標準ミサイルのキャニスターを移し、VLSのセルに差し込むことに成功している。海軍は2028〜2030年ごろまでに、多くの駆逐艦や巡洋艦でこの能力を持たせたいとしている。

セル数が多いほど長く戦えるのは確かだが、撃ち尽くしたあとにどれだけ早く「満タン」に戻せるかも同じくらい大事だ。台湾周辺のような広い海での戦いを考えると、VLSの再装填は、セルの数と同じくらい重い課題になっている。

日本のVLS|こんごう型から新型FFMまで

オーストラリア海軍のホバート。艦橋周囲にイージス用レーダーを配置する。
オーストラリア海軍のホバート。艦橋周囲にイージス用レーダーを配置する。
写真:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Jenna Dobson/Wikimedia Commons(Public domain)

最後に、日本の話をしておく。

海上自衛隊でMk41を最初に本格的に積んだのは、1993年に就役したこんごう型だ。旋回式ランチャーを使っていたはたかぜ型から、一気にVLS90セルの時代に飛んだことになる。その後のあたご型・まや型は96セルになり、汎用護衛艦もVLSが当たり前になった。各艦の役割は日本のイージス艦の解説にまとめている。

これから大きく変わるのが、ふたつの新しい艦だ。

ひとつは、弾道ミサイル防衛を主任務とするイージス・システム搭載艦で、VLSは128セルと、まや型をさらに上回る。SM-3ブロックIIAやSM-6を積む予定で、まさに「器の大きさ」で勝負する艦だ。

もうひとつは、もがみ型の次の新型FFMだ。もがみ型のVLSは16セルで、いまは対潜ロケットしか撃てないが、新型FFMは32セルに倍増し、12式地対艦誘導弾の能力向上型のような長射程の対艦ミサイルや、対空ミサイルも積めるようにすると伝えられている。小型の護衛艦にまで「撃てる器」が広がっていくわけだ。

さらに、海自はトマホークを導入し、イージス艦のMk41から撃てるようにする改修を進めている。VLSの中身に「対地攻撃」という新しい選択肢が加わることになる。セル数の数字を読めるようになると、こうしたニュースの意味もぐっと分かりやすくなるはずだ。

模型で「セルの数」を数えてみる

VLSのセルは、艦船模型で見るといちばん分かりやすい。1/700のイージス艦でも、甲板の上にハッチの升目がちゃんと彫られていて、前と後ろで数を数えると「64セル+32セル」のように実感できる。こんごう型なら、クレーン付きモジュールのせいで升目が半端になっているのも確かめられる。

アメリカのアーレイ・バーク級と並べて、前後のVLSの配置の違いを見比べるのも面白い。

海自の艦艇ごとの装備を一冊で確かめたいなら、この増刊が手元にあると何かと便利だ。

よくある質問

VLSのセルとは何?

ミサイルを1発(小型なら4発)入れる縦長の区画のこと。Mk41では8セルで1つのモジュールになっていて、そのモジュールをいくつ並べるかで艦のセル数が決まる。

96セルなら96発のミサイルを積める?

そうとは限らない。ESSMのような細いミサイルは1セルに4発入るので、セル数より多く積めることがある。逆に、全部のセルにミサイルが入っているとも限らず、実際の搭載数は公表されないのが普通だ。

こんごう型が90セルなのはなぜ?

海の上でミサイルを積み込むためのクレーンを収めたモジュールが前後に1つずつあり、そのぶんセルが少ないからだ。クレーンが役に立たなかったため、あとから造られたあたご型・まや型は96セルになった。

VLSは海の上で補給できる?

従来は難しく、撃ち尽くすと港に戻る必要があった。米海軍は2024年に、走りながらVLSに再装填する「TRAM」の試験に成功し、2030年ごろまでの実用化を目指している。

セル数が多いほど強い?

一概には言えない。セルの大きさ、入るミサイルの種類、レーダーや指揮システムの性能、再装填のしやすさで実力は変わる。セル数は「器の大きさ」の目安で、強さそのものではない。

まとめ|VLSのセル数は「強さ」ではなく「器の大きさ」

VLSは、ミサイルの倉庫と発射機をひとつにした装置だ。甲板の下に縦に並べたミサイルを、そのまま真上に撃ち出せる。旋回式ランチャーの時代に比べて、速く、たくさん、どの方向へも撃てるようになった。

性能表の「96セル」は、ミサイルの数ではなく、ミサイルを入れる区画の数だ。細いミサイルなら1セルに4発入り、背の低いセルには長いミサイルが入らない。90セルと96セルの差は、多くの場合、クレーンがあった時代かどうかの差にすぎない。

そして、どれだけ大きな器を持っていても、撃ち尽くせば港へ帰るしかない。セル数の数字の向こうに、そんな現実まで見えてくると、イージス艦の性能表はぐっと面白くなる。

最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。

出典・参考資料

表紙の写真素材:
写真・素材:U.S. Navy photo by Photographer's Mate 1st Class Michael W. Pendergrass./Wikimedia Commons(Public domain)。背景・レイアウト・文字を編集。

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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