零戦のプラモデルの選び方|21型と52型、1/72・1/48・1/32で何が違う?──同じタミヤの1/48でも金型は35年違う。最初の1機と「いつか作りたい1機」をこう決める

零戦の型と縮尺を選ぶ模型製作のイメージ

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模型店の飛行機の棚で、いちばん多く並んでいる日本機は、たぶん零戦だ。タミヤ、ハセガワ、ファインモールド、海外のエデュアルド。21型、52型、ときには22型や32型。縮尺も1/72、1/48、1/32とそろっている。どの箱にも緑や灰色の零戦が描かれていて、初めての人には違いがほとんどわからない。

けれど、中身はかなり違う。とくに見落としやすいのが、キットが作られた年だ。同じタミヤの1/48でも、21型のキットは1973年、52型のキットは2008年の金型で、35年もの開きがある。箱の大きさも絵の雰囲気も似ているのに、部品の細かさや組みやすさは別物だ。

この記事では、零戦のプラモを「型」「縮尺」「金型の年」の3つで比べて、最初の1機の選び方を書く。結論を先に言うと、迷ったらタミヤ1/48の52型でいい。そのうえで、21型が好きな人、もっと小さく、もっと大きく作りたい人のための選び方を並べていく。

この記事の結論
目次

結論:零戦のプラモはこう選ぶ

いま手に入れやすい主な零戦のキットを、縮尺の小さい順に並べる。

ファインモールドとエデュアルドの完成サイズは、実機の寸法から計算した目安だ。表を見てほしいのは「設計・発売の年」の列で、同じ1/48でも1973年から2026年まで50年以上の幅がある。プラモは金型が新しいほど、部品の合いや細部の表現が良くなっていく。この考え方は戦闘機プラモデル初心者のおすすめで詳しく書いたので、零戦以外も考えている人はあわせて読んでほしい。

まず実機の違い:21型と52型はどこが違うのか

キットを選ぶ前に、よく出てくる2つの型の違いを押さえておく。ここがわかると、箱の絵を見ただけでどちらかがわかるようになる。

21型52型
主翼の端長く、空母での扱いやすさのために先を折りたためる短く切り詰め、丸く整えてある
全幅約12m約11m
エンジン栄12型栄21型
排気管まとめて出す集合排気管1本ずつ後ろへ向けた推力式単排気管
色全体が明るい灰色系上面が暗緑色、下面が明灰白色
活躍した時期真珠湾攻撃など開戦のころの主力大戦の中盤以降の主力

21型は、開戦のころに空母から飛び立った零戦だ。主翼が長いぶん旋回が鋭く、真珠湾攻撃に参加した零戦もこの型になる。真珠湾の作戦そのものは真珠湾攻撃の解説にまとめた。

52型は、速さを上げるために主翼の端を切り詰め、エンジンの排気を後ろへ吹き出して推進力の足しにした型だ。零戦の中でいちばん多く作られた系統で、ラバウルの航空隊や空母の部隊で戦った。21型との違いや、零戦が本当に強かったのかという話は零戦の解説で書いている。

模型で見分けるなら、まず主翼の端を見る。21型は先がすっと長く、52型は丸く短い。次に機首の横を見る。排気管が何本も並んで後ろを向いていれば52型だ。

零戦21型と52型の翼幅、翼端、排気管の違い。21型は約12mの折りたためる翼端と集合排気管、52型は約11mの切り詰めた翼端と単排気管。
翼端と排気管を見分ける模式図です。機体の細部や排気管の本数は省略しています。 図を拡大する

型で選ぶ:真珠湾の零戦か、ラバウルの零戦か

型を選ぶいちばん簡単な方法は、「どの場面の零戦が好きか」で決めることだ。

開戦のころの空母の零戦、真珠湾やミッドウェーの零戦に惹かれるなら21型。明るい灰色の機体に日の丸が映える、いちばん「零戦らしい」姿だと感じる人も多いと思う。タミヤの1/32の21型には、真珠湾攻撃の第二次攻撃隊の機体のマーキングが入っている。

ラバウルの航空隊や、坂井三郎や岩本徹三といった撃墜王たちの時代、大戦中盤以降の零戦が好きなら52型だ。濃い緑の上面に、主翼の前縁の黄色い帯が入る。タミヤの1/48の52型には、空母隼鷹の機体とラバウルの機体、52型甲の赤松貞明少尉の機体の、3つのマーキングが入っている。日本の撃墜王たちの戦いぶりは日本の撃墜王ランキングで比べた。

ほかにも、主翼を角ばった形に切った32型や、その翼を元に戻した22型がある。タミヤの1/72には22型もあるので、型の変化を並べて追いかけたくなったら、そこまで手を広げるのも面白い。

縮尺で選ぶ:1/72、1/48、1/32

型が決まったら、次は縮尺だ。

1/721/481/32
完成サイズの目安手のひらに載るB5のノートくらいA3の紙に収まる
部品の多さ少なめほどほど多い
作り込める細かさ形を楽しむ操縦席まで見せられるエンジンや脚の仕組みまで
向いている人たくさん並べたい人最初の1機を作る人何機か作って手が慣れた人

最初の1機なら、私は1/48をすすめる。零戦は単発の小さな飛行機なので、1/48でも完成するとB5のノートくらいにしかならない。部品も大きすぎず小さすぎず、操縦席の中まで作り込める。

1/72は、小さく作って何機も並べたい人向けだ。タミヤの1/72の零戦は2012年の金型で、エンジンは後ろ側のシリンダーまで再現され、操縦席は20個近い部品でできている。小さいからといって手を抜いたキットではない。

1/32は、零戦好きが「いつか作りたい」と思う縮尺だ。タミヤの1/32の零戦は、エンジンのカウルを外して中を見せられ、主脚は引き込みの仕組みまで動く。21型は折りたたむ翼端を完成後も差し替えられる。ただ、完成すると幅は約34〜38cmになり、部品の数も塗る面積も1/48とは比べものにならない。何機か作って手が慣れてから挑むのがいい。

最初の1機:タミヤ1/48の52型

最初の1機として私が真っ先にすすめるのは、タミヤ1/48の52型だ。2008年に発売された傑作機シリーズのNo.103で、52型と、主翼の機銃の給弾方式を変えた52型甲の両方を作り分けられる。

理由は3つある。1つ目は、2008年の金型で部品の合いが良いこと。2つ目は、増槽が金属製と木製の2種類入っていて、ポリキャップで完成後も付け外しできるような、遊べる工夫が多いこと。3つ目は、塗装がちょうどいい練習になることだ。上面の暗緑色と下面の明灰白色の境目をマスキングテープで区切って塗る、という戦闘機塗装の基本を、この1機で一通り覚えられる。

塗料は、タミヤの指定ではアクリル塗料のXF-70暗緑色2(日本海軍)とXF-12明灰白色が機体の2色になる。小さなびんなので、筆で塗るなら2色を1本ずつ買えば足りる。

21型が欲しい人へ:タミヤの1/48は「52型より35年古い金型」

21型の場合は、少し事情が違う。

タミヤの1/48の21型(61016)は1973年に発売されたキットだ。翼端を折りたためる仕様やパイロットの人形2体、5種類のマーキングが入っていて、値段も手ごろだ。ただ、金型は52型より35年古い。細部の彫刻や部品の合いは、2008年の52型と同じ感覚では作れないと考えておいたほうがいい。昔のキットを手を入れて仕上げる楽しさを知っている人には良い素材だが、最初の1機には私はすすめない。

21型を新しい金型で作りたいなら、選び方はこうなる。

小さくていいなら、タミヤの1/72の21型

いちばん手軽なのは、タミヤの1/72の21型だ。2012年の金型で、主翼の細さや独特のエンジンカウルの形、操縦席の計器板や無線機まで再現されている。同じ年に出た1/72の52型と並べると、翼の長さの違いがよくわかる。

1/48なら、エデュアルドか、ファインモールド

1/48で新しい21型が欲しいなら、チェコのエデュアルドが2021年に出した新しいキットがある。灰色の部品が141点、透明な部品が23点に、色の付いた薄い金属板のエッチングパーツと、キャノピーを塗るための切り抜き済みのマスクまで入っている。海外のレビューでは部品の数は控えめで、手早く組めるキットだと評価されている。ただし、エッチングパーツは瞬間接着剤で付ける細かい部品なので、2機目以降の楽しみにしてもいい。

もう1つ、日本のファインモールドが、1/48の零戦の新しいシリーズを出している。2024年12月に52型が出て、その後に52型甲が続いた。21型も2026年5月の静岡ホビーショーで発表され、三菱製の前期型は7月24日に出荷された。中島製の「ソロモン航空戦」は8月出荷予定として発表されている。

このシリーズの面白いところは、胴体を左右に割って貼り合わせる普通のプラモの作り方をやめ、実機と同じように前後に分けて組む構造にしたことだ。左右を貼り合わせたときに胴体の中心を走る合わせ目が出ない。21型は52型と胴体の一部を共有するだけで、約8割が新しい部品だという。報道では開発の担当者が「簡単ではない」と話しているので、最初の1機というより、零戦が好きな人の「とっておきの1機」として考えたい。

大きく作り込むなら、タミヤの1/32の21型

21型をいちばん大きく、いちばん詳しく作るなら、タミヤの1/32だ。2006年の発売で、中島の「栄」12型エンジンや補機類、集合排気管まで作り込め、カウルを外して中を見せられる。主脚は引き込みの仕組みが動き、翼端は完成後も折りたたみと展開を差し替えられる。真珠湾攻撃の第二次攻撃隊の機体などのマーキングも入っている。

52型の1/32もある。こちらは2007年の発売で、栄21型エンジンを再現し、20mm機銃の銃身は塗装済みの金属部品だ。いつか作る目標の1機として、箱だけ先に手に入れておくのもありだと思う。

作る前に知っておきたいこと

21型の色は、今も議論が続いている

52型の色ははっきりしている。上面が暗緑色、下面が明灰白色だ。

ところが21型の色は、意外にも答えが1つに決まっていない。明るい灰色系だったことは確かだが、灰色にどのくらい緑や茶色がかっていたのか、時期や工場でどう違ったのかについて、今も研究者や模型の愛好家の間で議論が続いている。当時の塗装のまま残る実機は少なく、塗料は年月で色が変わるからだ。

初めて作るなら、キットの説明書の指定どおりに塗ればいい。そのうえで、ほかの人の作例と見比べて「自分の21型の色」を探していくのも、零戦の模型の奥深い楽しみ方だと思う。

道具は最低限でいい

最低限、ニッパーと接着剤があれば組み立ては始められる。零戦は胴体と主翼の合わせ目が目立ちやすいので、流し込みタイプの接着剤が1本あると仕上がりがきれいになる。道具全体はミリタリープラモデルの道具一式にまとめた。

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2機目の楽しみ:並べると見えてくるもの

1機目ができたら、2機目は別の型か、別の飛行機にしてみてほしい。並べたときに初めて見えてくるものがある。

並べ方見どころ
21型と52型1/48だと翼の幅が約2cm違う。切り詰めた翼端と排気管の違い
零戦とF6Fヘルキャット同じ空で戦った相手。大きさも重さもまるで違う
零戦と紫電改・烈風零戦の後を継ごうとした機体たち
零戦と空母1/700の空母と、その上に並んだ零戦を思い浮かべる

とくに面白いのは、零戦とF6Fヘルキャットだ。同じ1/48で並べると、ヘルキャットの大きさに驚くと思う。零戦がどういう相手と戦うことになったのかはF6Fヘルキャットの解説と日本の戦闘機は連合軍機に勝てたかで書いた。

零戦の後を継ぐはずだった烈風がなぜ間に合わなかったのかは烈風の解説に、日本の戦闘機全体は日本の戦闘機一覧にまとめている。

作りながら読みたい本、見たい映画

零戦を作っている時間は、零戦のことを考える時間でもある。手を動かしながら、あるいは乾燥を待つ間に、零戦にまつわる本や映画に触れると、手の中の部品の意味が変わって見える。

設計の物語なら、吉村昭の『零式戦闘機』がいい。設計から量産までの苦労を、記録文学として描いた1冊だ。

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零戦を設計した堀越二郎をモデルにした映画なら、宮崎駿監督の『風立ちぬ』がある。美しい飛行機を追い求める主人公の姿を見てから主翼の部品を手に取ると、少し背筋が伸びる。

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買う前のチェックリスト

  • 型:21型か52型か。どの場面の零戦が好きか
  • 縮尺:1/72、1/48、1/32のどれか。飾る場所の幅は足りるか
  • 金型の年:同じ型・同じ縮尺でも、メーカーによって数十年違う。タミヤの1/48の21型は1973年
  • 作り方:エッチングパーツが入っているか。最初は箱の中身を全部使わなくてもいい
  • 色:52型は2色、21型は明るい灰色系。塗料はキットの指定を確かめる
  • 道具:ニッパー、接着剤、塗るなら筆か缶スプレー

よくある質問

21型と52型、最初に作るならどっち?

52型をすすめる。タミヤの1/48で比べると、52型のほうが35年新しい金型で、作りやすさがまるで違う。21型を作りたいなら、1/72のタミヤか、1/48の新しいキットを選んでほしい。

1/48と1/72、どちらが作りやすい?

部品の大きさと操縦席の作り込みのしやすさで、最初の1機は1/48をすすめる。零戦は小さな飛行機なので、1/48でも場所を取らない。小さく作ってたくさん並べたいなら1/72がいい。

塗装しないで作れる零戦はある?

色分けされた部品で、塗らずに形になる零戦のキットは多くない。童友社が塗装済みの1/72の零戦を出していたことがあるが、販売の状況は時期によって変わる。零戦らしい姿を楽しむなら、上の2色だけでも筆で塗ってみてほしい。思っているより難しくない。

零戦の実物はどこで見られる?

零戦の実機や復元機は、国内のいくつかの博物館で展示されている。展示の内容は時期によって変わるので、行く前に各館の案内を確かめたい。撃墜王たちの記録は岩本徹三の解説などでも書いている。

まとめ

  • 迷ったらタミヤ1/48の52型(61103)。2008年の金型で、上下2色の塗装で基本が覚えられる
  • 21型が欲しいなら、タミヤの1/48は1973年の金型。新しい金型なら1/72のタミヤ、1/48のエデュアルドやファインモールド、1/32のタミヤ
  • 見分け方は主翼の端と排気管。21型は長い翼端、52型は短く丸い翼端と1本ずつの排気管
  • 1/72は手のひら、1/48はB5のノート、1/32はA3の紙に収まる。1/32は「いつか作りたい1機」
  • 21型の色には今も議論がある。まずは説明書の指定どおりに塗ればいい

零戦のプラモは、同じ機体なのに、型と縮尺と金型の年の組み合わせで、まったく違う体験になる。1973年の金型と2026年の金型が同じ棚に並んでいる飛行機は、そう多くない。それだけ長い間、日本の模型好きが零戦を作り続けてきたということだ。最初の1機を作ったら、ぜひ型を変えてもう1機作って並べてみてほしい。主翼の端の数センチに、零戦がたどった戦争の時間が詰まっている。

組み立ての長い時間のお供に。

参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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