アフターバーナーの仕組み|戦闘機の「炎」はどこで燃えているのか──推力1.5倍の代わりに燃料をがぶ飲みする理由と、F-22のスーパークルーズまで図解

アフターバーナーの解説記事

航空祭で、戦闘機が滑走路の端から走り出す瞬間。お腹に響くような轟音とともに、エンジンの後ろからオレンジ色の炎が伸びる。夜なら、炎の中に輪っかがいくつも並んで見えることもある。あの炎がアフターバーナーだ。

ところで、あの炎はエンジンの「どこ」で燃えているのか。答えは、エンジンの本体ではない。エンジンの燃焼室で一度燃えた排気の中に、もう一度燃料を吹き込んで燃やしている。いわば、エンジンの後ろにくっついた「二つ目の燃焼室」だ。

この二度目の燃焼で、推力はおよそ1.5倍に跳ね上がる。その代わり、燃料の減り方は何倍にもなる。戦闘機が普段はアフターバーナーを使わず、離陸や空戦の一瞬だけに使う理由はそこにある。

この記事では、アフターバーナーの仕組みを断面図で見ながら、なぜ推力が増えるのか、なぜ燃料を食うのか、そしてアフターバーナーなしで音速を超える「スーパークルーズ」との違いまでを整理していく。

この記事のポイント
目次

結論|「二つ目の燃焼室」で、力と燃料を交換する

まず、アフターバーナーを使わないときと使うときの違いを表にまとめる。

項目 アフターバーナーなし アフターバーナーあり
燃やす場所 エンジンの燃焼室だけ 燃焼室に加えて、タービンの後ろでもう一度
推力 普段の最大(ミリタリー推力) 1.5倍前後に増える
燃料の消費 少ない 何倍にも増える
排気口の炎 ほとんど見えない オレンジや青の炎が見える
使う場面 巡航、ふだんの飛行 離陸、急上昇、加速、空戦、超音速

たとえば、空自も使うF-35のエンジンF135は、アフターバーナーなしの最大で約125kN、アフターバーナーを使うと約191kNの推力を出す。ざっと1.5倍だ。ただ、そのための燃料の減り方は、推力の増え方とは比べものにならない。アフターバーナーは、燃料を力に換える「割の悪い両替所」なのだ。

図解|炎はエンジンのどこで燃えているのか

圧縮機、燃焼器、タービン、アフターバーナー、ノズルの順序を示す図
アフターバーナーは、タービンを通った排気に燃料を加えて燃やす。 図を拡大する

戦闘機のジェットエンジンは、前から順に、空気を取り込むファン、空気を押し縮める圧縮機、燃料を燃やす燃焼室、燃焼ガスの勢いで回るタービンが並んでいる。タービンが回る力でファンと圧縮機を回し、後ろへ勢いよく噴き出すガスで前に進む。ここまでが、ふつうのジェットエンジンだ。

アフターバーナーは、タービンのさらに後ろにある長い筒の中にある。図の後半、排気が通る筒の部分だ。ここで燃料を霧のように吹き込み、もう一度火をつける。燃えたガスはさらに熱く、膨らみ、速く噴き出す。それが推力の上乗せになる。

ポイントは、炎が燃えているのがエンジンの「心臓部」ではなく、その後ろの「排気の通り道」だということだ。だから、エンジンの外から炎が見える。

アフターバーナーの仕組み

排気には、まだ酸素が残っている

燃料を燃やすには酸素がいる。なら、一度燃やしたあとの排気で、どうしてまた燃やせるのか。

理由は、エンジンの燃焼室では、取り込んだ空気の酸素を使い切っていないからだ。燃焼室の温度を上げすぎると、すぐ後ろにあるタービンが溶けてしまう。だから、燃料の量をおさえて、タービンが耐えられる温度で燃やしている。その結果、排気の中にはまだたっぷり酸素が残っている。

さらに、いまの戦闘機のエンジンの多くはターボファンで、ファンで押し出した空気の一部を、燃焼室を通さずにエンジンの外側の通り道から後ろへ流している。この空気は一度も燃えていないので、酸素がまるまる残っている。アフターバーナーは、この酸素の残りを使って、もう一度燃料を燃やすわけだ。

三つの部品

アフターバーナーは、大きく三つの部品でできている。

一つ目は、燃料を吹き出す噴射の管だ。筒の中に輪のように並び、排気の流れに燃料を霧のように吹き込む。何段階かに分けて、燃やす量を調整できるものが多い。

二つ目は、炎を留める保炎器だ。排気は猛烈な速さで流れているので、ただ火をつけても、炎はすぐに吹き消されてしまう。そこで、流れの中に断面がV字の金具などを置き、その後ろにできる渦の中で炎を安定させる。強風の中でろうそくの火を手で囲って守るのに似ている。

三つ目は、開き具合を変えられるノズルだ。アフターバーナーを使うと、ガスの量と勢いが一気に増える。出口が狭いままだと、ガスが詰まってエンジン全体の流れが乱れてしまう。そこで、使うときにはノズルを大きく開いてやる。戦闘機の排気口が、花びらのような板を何枚も重ねた形をしているのは、この開閉のためだ。

なぜ燃料をがぶ飲みするのか

アフターバーナーが燃料を食うのには、はっきりした理由がある。

エンジンの燃焼室では、圧縮機で十分に押し縮めた空気の中で燃料を燃やす。その燃焼ガスがタービンを回し、ファンと圧縮機を動かす。押し縮めた空気の中で燃やすほど、燃料の力を効率よく推力に変えられる。

ところがアフターバーナーの燃料は、タービンを通ったあとの、圧力が下がった排気の中で燃える。押し縮めの助けを借りられないので、同じ量の燃料から取り出せる力がずっと少ない。だから、推力を1.5倍にするのに、燃料は何倍も必要になる。古いエンジンの例でも、アフターバーナーに送る燃料は、本体の燃焼室に送る量の3倍近くに達していた。

戦闘機の燃料計は、アフターバーナーを入れた瞬間から目に見えて減っていく。数分使うだけで、巡航なら何百kmも飛べる燃料がなくなってしまう。戦闘機が実際に戦える距離が、カタログの航続距離よりずっと短くなる理由の一つがこれだ。その話は航続距離と戦闘行動半径の違いで詳しく書いた。

炎の色と「輪っか」の正体

アフターバーナーの炎は、昼間はオレンジ色、夜や燃焼の状態によっては青っぽく見えることがある。炎の中に、明るい輪がいくつも等間隔に並んで見えることもある。

アフターバーナーを使って離陸するNASAのSR-71
アフターバーナーを使って離陸するNASAのSR-71。
写真出典:Wikimedia Commons(パブリックドメイン)

この輪は、ショックダイヤモンドと呼ばれる。排気口から噴き出すガスの圧力と、周りの空気の圧力がわずかに違うために、排気の中に衝撃波が繰り返しでき、そこだけ圧力と温度が高くなって明るく光る。ダイヤモンドの粒を並べたように見えることから、この名前がついた。航空祭の写真で、炎の中に輪っかが写っていたら、それだ。

アフターバーナーを使う場面

燃料を食う以上、アフターバーナーは「ここぞ」という場面にしか使わない。主な場面は次のとおりだ。

場面 使う理由
離陸 燃料や武器を満載して重いとき、短い距離で浮かび上がるため
緊急発進 一刻も早く高い高度まで上がるため
空母からの発艦 カタパルトで打ち出すときに、少しでも速度を稼ぐため
空戦 急な旋回で落ちた速度を取り戻したり、ミサイルから逃げたりするため
超音速 音速の手前で急に増える空気の抵抗を突き抜けるため
アフターバーナーの推力増加と燃料消費の関係を並べた図
大きな推力と引き換えに燃料を使うため、使用する場面を選ぶ。 図を拡大する

空自の戦闘機が領空侵犯のおそれのある機体に向けて緊急発進するときも、アフターバーナーで一気に上昇していくことが多い。日本の空を守る仕事は、たびたびこの「燃料の両替」から始まるわけだ。

そして、使えば使うほど燃料が足りなくなる。だから空中給油が大事になる。給油の仕組みは空中給油の解説で書いた。

スーパークルーズとの違い|炎を出さずに音速を超える

アフターバーナーの話をすると、必ず出てくるのがスーパークルーズという言葉だ。アフターバーナーを使わずに、超音速で飛び続けることをいう。

多くの戦闘機は、音速を超えるときにアフターバーナーを使う。音速の手前では空気の抵抗が急に大きくなり、それを突き抜けるには大きな推力が必要だからだ。ところが、アフターバーナーを使い続けると、燃料はあっという間になくなる。だから、ふつうの戦闘機が超音速で飛べるのは、ごく短い時間だけだ。

スーパークルーズができる機体は、アフターバーナーなしでも超音速を出せるほど強いエンジンと、抵抗の小さい機体を持っている。代表がアメリカのF-22で、アフターバーナーを使わずにマッハ1.5前後で飛び続けられるとされる。燃料を食わずに速く飛べるので、遠くまで速く駆けつけ、敵より先に有利な位置を取れる。F-22についてはF-22ラプターの解説が詳しい。ヨーロッパのタイフーンなども、条件によってはスーパークルーズができると言われる。

項目 アフターバーナーで超音速 スーパークルーズ
炎 出る 出ない
燃料 激しく減る 比べればずっと少ない
続けられる時間 短い 長い
赤外線での見つかりやすさ 熱い炎で目立つ 比べれば目立ちにくい
嘉手納基地上空を飛ぶF-22A
嘉手納基地上空を飛ぶF-22A。主翼と胴体が滑らかにつながり、兵装を内部に収める。
写真:F-22_Raptor.JPG : Master Sgt. Andy Dunaway/Wikimedia Commons/Public domain

アフターバーナーの炎は、赤外線で誘導するミサイルにとって格好の目印にもなる。ステルス機が炎を出さずに速く飛べることには、燃料だけでなく、見つかりにくさという意味もあるのだ。

アフターバーナーの歴史

アフターバーナーの考え方は、ジェット機の歴史と同じくらい古い。第二次世界大戦中には、ドイツのジェットエンジンJumo 004の改良型で、アフターバーナーを備えたものが作られている。イギリスでも、1944年の終わりに、グロスター・ミーティアでアフターバーナーの飛行試験が行われた。イギリスではこの装置を「リヒート(再加熱)」と呼ぶ。

戦後、アメリカでも1940年代の終わりから、ジェット戦闘機にアフターバーナーが付けられるようになった。初期のジェットエンジンは力が弱く、アフターバーナーで足りない推力を補う必要があったのだ。

一方、日本初のジェット機橘花のネ20エンジンには、アフターバーナーはなかった。とにかく飛ばすことが精一杯で、推力を上乗せする余裕などなかった。終戦の年にようやくジェットで飛んだ国と、すでにアフターバーナーを試していた国。エンジン技術の差は、そのまま国力の差でもあった。

そして意外なところでは、旅客機のコンコルドもアフターバーナーを使っていた。離陸のときと、音速の手前の抵抗が大きい速度域を一気に突き抜けるときだけ使い、そのあとはアフターバーナーなしでマッハ2で巡航した。旅客機で超音速を続けるには、アフターバーナーの燃費ではとても割に合わなかったからだ。

日本のエンジンとアフターバーナー

空自の戦闘機のエンジンは、長く海外製のものを国内で作ってきた。F-15JのエンジンもF-2のエンジンも、IHIがライセンスを受けて生産している。そしてIHIは、国産の戦闘機用エンジンの試作機XF9-1を作り、2018年に防衛装備庁に納めた。アフターバーナーを使ったときの推力は15トン級とされる。

アフターバーナーを持つ戦闘機用エンジンは、高い温度に耐える材料、燃料の制御、ノズルの機構と、難しい技術の塊だ。それを自前で作れるかどうかは、戦闘機を自分で作れる国かどうかの分かれ目でもある。日本の航空エンジンの担い手については日本の軍用航空エンジンメーカーで、F-35のエンジンに関わる日本企業はF-35を作る日本企業一覧で整理している。

投資家目線|「炎の出るエンジン」を作れる会社は少ない

アフターバーナー付きの戦闘機用エンジンを作れる会社は、世界でも限られている。アメリカのGEエアロスペースとプラット・アンド・ホイットニー、イギリスのロールス・ロイス、フランスのサフランなど、ほんの一握りだ。新しく参入するのがとても難しく、一度採用されれば何十年も部品と整備の仕事が続く。

日本では、IHIがその技術を国内で持つ数少ない会社だ。F-2の後継として日英伊で共同開発する次期戦闘機でも、エンジンは大きな焦点になっている。IHIの防衛事業の全体像はIHIの防衛事業の解説に、F-15EXやスーパーホーネットのエンジンを作るGEについてはGEエアロスペースの防衛事業にまとめている。

※この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではない。株価や業績は変動し、元本割れの可能性もある。投資判断は自己責任で。

航空祭で炎を見るなら

アフターバーナーの炎をいちばん間近で見られるのは、航空祭の戦闘機の離陸だ。滑走路の端から走り出す瞬間に、エンジンの後ろが明るく光る。曇りの日や夕方は、炎がいっそうはっきり見える。各地の日程は2026秋冬の航空祭ガイドにまとめている。

アフターバーナーを使った離陸の音は、想像以上に大きい。子ども連れなら、耳栓を一つ持っていくと安心だ。

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模型と本で「炎の出口」を見る

アフターバーナーのノズルの作りを手元で確かめるなら、大きな縮尺の模型がいい。F-15Jの1/32なら、花びらのように重なったノズルの板の一枚一枚まで見える。

スーパークルーズの主役、F-22の模型も並べたい。こちらは四角い2次元ノズルで、F-15Jの丸いノズルとの違いが面白い。

アフターバーナーを空戦でどう使うのかまで知りたいなら、この本が入りやすい。速度とエネルギーをどう使い分けるかという話は、アフターバーナーの使いどころそのものだ。

著:毒島刀也
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よくある質問

アフターバーナーを使うと推力はどれくらい増える?

エンジンによって違うが、おおむね1.5倍前後だ。F-35のエンジンF135は、アフターバーナーなしの最大約125kNに対して、アフターバーナーを使うと約191kNになる。

なぜ旅客機にはアフターバーナーがないの?

燃費が悪すぎるからだ。旅客機は燃料をできるだけ節約して遠くまで飛ぶことが仕事なので、アフターバーナーは割に合わない。例外は超音速旅客機のコンコルドで、離陸と音速を突き抜けるときだけ使っていた。

アフターバーナーとスーパークルーズの違いは?

アフターバーナーは、排気にもう一度燃料を吹き込んで推力を増やす装置。スーパークルーズは、アフターバーナーを使わずに超音速で飛び続けることだ。スーパークルーズができれば、燃料をあまり減らさずに速く飛べる。

アフターバーナーの炎が青いのはなぜ?

燃え方の状態や明るさ、周りの暗さによって、炎の色は青っぽくもオレンジ色にも見える。空気がたっぷりある状態でよく燃えていると青っぽく、燃え残りの粒が光ると黄色やオレンジに見えやすい。

ずっとアフターバーナーを使い続けるとどうなる?

燃料がすぐになくなる。機体によっては、全開のまま飛び続けると10分ほどで機内の燃料を使い果たす計算になる。だから使うのは、離陸や空戦などの短い時間に限られる。

まとめ|炎は「ここぞ」の一瞬のためにある

アフターバーナーは、エンジンの後ろの排気の通り道で、もう一度燃料を燃やして推力を増やす装置だ。排気にまだ酸素が残っているから燃やせる。推力は1.5倍前後に増えるが、圧力の下がった排気の中で燃やすので効率が悪く、燃料は何倍も減る。

だから戦闘機は、離陸、緊急発進、空戦、超音速の突破といった「ここぞ」の場面だけで炎を出す。そして、その炎なしで超音速を続けられるスーパークルーズが、新しい世代の戦闘機の強みになっている。

次に航空祭で戦闘機の離陸を見たら、炎の長さと音の大きさの裏で、燃料計の針がぐっと動いているところを想像してみてほしい。戦闘機の比較をもっと見たいなら世界最強戦闘機ランキングもどうぞ。

最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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