空中給油の仕組み|F-35AとF-35Bで受け方が違うのはなぜ?──ブーム式とプローブ&ドローグ式の違い、対応機、空自KC-46Aまで図解

空中給油の解説記事

2025年の夏、宮崎県の新田原基地に、日の丸をつけたF-35Bが降りてきた。いずも型護衛艦に載せることを見込んだ、空自の新しい戦闘機だ。

同じ「F-35」は、青森の三沢基地などにA型がすでにいる。並べれば見た目はよく似ている。ところが、空の上で燃料をもらうときのやり方は、まるで違う。

A型は、操縦席の後ろにある小さなフタを開けて、給油機から伸びてくる硬い管を待つ。B型は、機首の横から細い棒を突き出して、給油機が垂らしたホースの先のカゴに、自分から差し込みに行く。

前者を「フライングブーム式」、後者を「プローブ&ドローグ式」と呼ぶ。いま使われている空中給油の方式は、大きく分けてこの二つしかない。そして困ったことに、そのままでは互換性がない。ブームの受け口しか持たない機体はホースから燃料をもらえないし、その逆も同じだ。

日本は、この両方の機体を持つ国になった。空自がKC-767に加えてKC-46Aを並べ、15機まで増やそうとしている理由の一つが、ここにある。

この記事では、二つの方式の仕組みを図で比べ、どの機体がどちらで燃料を受けるのかを一覧にする。航続距離そのものの考え方は航続距離と戦闘行動半径の違いで書いたので、ここでは「燃料をどう受け渡すか」に絞って話を進める。

この記事のポイント
目次

結論|「給油機が差す」か「戦闘機が差しに行く」か

まず、違いを表にしておく。

項目 フライングブーム式 プローブ&ドローグ式
給油機の装備 尾部から伸びる硬い管(ブーム) ホースと、その先のカゴ(ドローグ)
受油機の装備 機体の上面などにある受け口(レセプタクル) 機体から突き出す棒(プローブ)
差し込む人 給油機に乗るブームオペレーター 受油機のパイロット
燃料を送る速さ 速い(KC-46Aで最大毎分約4,500L) 遅め(同じくKC-46Aで最大毎分約1,500L)
同時に給油できる機数 1機ずつ ホースの本数だけ(2〜3機)
主な使い手 米空軍と、米空軍系の機体を使う国 米海軍・海兵隊、欧州の多くの国、ロシア、中国、各国のヘリ

ひとことで言えば、ブーム式は「給油機が差してくれる」、プローブ&ドローグ式は「戦闘機が差しに行く」だ。ここさえ押さえておけば、あとの話はすっと入ってくると思う。

図解|2つの方式を横から見る

硬いブームを給油機が動かす方式と、受油機がホース先端のドローグにプローブを差す方式を上下で比較
ブーム式は給油機側、プローブ&ドローグ式は受油機側が接続位置を合わせる。 図を拡大する

上の段がブーム式だ。給油機の尾部から硬い管が斜め下に伸び、その下に受油機が入る。管を動かすのは給油機の乗員で、受油機は決まった位置で編隊を保っているだけでいい。

下の段がプローブ&ドローグ式だ。給油機は主翼の下のポッドからホースを後ろへ流し、あとは待つ。受油機のほうが、機首の横から出した棒をホースの先のカゴに差し込みに行く。

矢印の向きに注目してほしい。ブーム式では「上から下へ」差し込まれ、プローブ&ドローグ式では「後ろから前へ」差しに行く。主役が逆なのだ。

フライングブーム式とは

硬い管を「飛ばして」差し込む

給油機の尾部から、長さ十数mの硬い管が斜め下に伸びている。これがブームだ。ブームの根元近くには小さな翼がついていて、給油機に乗るブームオペレーターがこの翼を動かし、管を上下左右に「飛ばす」。フライングブームという名前はここから来ている。

KC-135から給油を受けるF-111A。後方ではF-4が順番を待つ。
KC-135から給油を受けるF-111A。後方ではF-4が順番を待つ。
写真:Sgt. David G. Rennie/出典(Public domain)

受油機のパイロットは、給油機の下の決まった位置に入り、そこで編隊を保つことに集中する。給油機の腹には位置を指示するランプが並んでいて、もう少し前、もう少し上、と教えてくれる。位置が決まったら、オペレーターがブームの先端を伸ばし、受油機の受け口に差し込む。

強みは「太い管」

最大の強みは、一度に流せる燃料の量だ。ボーイングによると、KC-46Aはブームなら毎分最大1,200ガロン(約4,500L)、ホースでは毎分最大400ガロン(約1,500L)を送れる。ブームのほうがおよそ3倍速い。

戦闘機ならともかく、爆撃機や輸送機のように何十トンも燃料を飲む大型機では、この差がそのまま給油の時間に跳ね返る。給油に時間がかかれば、給油機も受油機も同じ空域に縛られる。米空軍がブーム式を選んだのは、もともと戦略爆撃機を地球の裏側まで飛ばすためだった。筋の通った選択だったと思う。

もう一つの強みは、受油機のパイロットの負担が軽いことだ。差し込む作業は給油機の専門家がやってくれる。夜でも悪天候でも、何時間も飛んだあとの疲れた体でも、パイロットは位置を保つことに集中していればいい。

弱みは「1本しかない」こと

ブームは給油機に1本しかない。だから一度に給油できるのは1機だけだ。4機編隊の戦闘機に配るなら、順番待ちになる。

それに、ブームは大きく重い装置で、操る専門の乗員もいる。小さな機体には積めない。空母に載る艦載機を給油機に仕立てる、といった芸当はできない。

オペレーターの「席」はどう変わったか

古いKC-135では、オペレーターは機体の後ろの床に腹ばいになり、窓からブームを見下ろして操作してきた。それが空自のKC-767や米空軍のKC-46Aでは、操縦席の後ろの操作席で、カメラの映像を見ながら操る方式に変わった。KC-46Aでは、オペレーターが専用のゴーグルをかけ、映像を立体的に見る。

ところが、このカメラの仕組みが長くつまずいた。夜や強い日差しの下で映像が白く飛んだりゆがんだりして、距離感がつかみにくいという問題が出たのだ。作り直した新しいシステムは2026年6月に最初の飛行試験の段階を終え、米空軍は2028年初めの配備開始を目指し、既存機にも順次取り付ける計画だ。窓からの肉眼と同じ感覚を画面で再現するのは、思った以上に難しかったわけだ。

その先には自動化もある。エアバスのA330 MRTTは、ブームの操作を機械に任せる仕組みを開発し、2026年2月にはシンガポール空軍が昼夜とも使える認証を得た。いずれブームオペレーターは、管を操る人から、機械を見守る人に変わっていくのかもしれない。

プローブ&ドローグ式とは

ホースの先の「カゴ」を狙う

給油機は、主翼の下などにつけたポッドから、長いホースを後ろへ流す。ホースの先には、バドミントンのシャトルを大きくしたようなカゴがついている。これがドローグだ。カゴは空気を受けて広がり、ホースをピンと張った状態に保つ。

NASAのF/A-18による自動空中給油試験。機首横のプローブをドローグに接続している。
NASAのF/A-18による自動空中給油試験。機首横のプローブをドローグに接続している。
写真:NASA Armstrong Flight Research Center / NASA/Lori Losey/出典(Public domain)

受油機のパイロットは、自分の機体から突き出した棒、つまりプローブを、このカゴの中心に差し込む。差し込むのはあくまで受油機のパイロットで、給油機はホースを出して待っているだけだ。ポッドについたランプが、給油の準備ができたか、燃料が流れているかを知らせてくれる。

揺れるカゴに差し込む難しさ

文字にすると簡単そうだが、カゴは止まっていない。給油機の後ろの乱れた空気や、受油機の機首が押しのける空気で、ふわふわと揺れる。勢いよく突っ込めばホースが波打ち、プローブを傷めることもある。逆にそっと寄せすぎると、カゴが逃げる。パイロットの腕がそのまま出る方式だ。

強みは「どこでも、何機でも」

それでもこの方式が広く使われているのは、使い勝手のよさに理由がある。

まず、1機の給油機から同時に何機にも配れる。左右の主翼にポッドをつければ2機同時、胴体の下にもホースがあれば3か所から配れる。

次に、装置が小さく軽い。ホースとカゴをひとまとめにしたポッドを吊るせば、戦闘機でも給油機になれる。この「バディ給油」は、大型の給油機を空母に載せられない海軍にとって欠かせない技だ。

そして、ヘリコプターでも使える。ヘリは機首から長いプローブを伸ばし、回転翼の外まで先端を出して、ゆっくり飛ぶ給油機のホースに差し込む。硬いブームでは、まず無理な芸当だ。

弱みは「細い管」

ホースはブームより細く、送れる燃料の量が少ない。大型機に給油すると時間がかかる。それに、差し込みの難しさは、そのまま受油機のパイロットの負担になる。

ブーム式とプローブ&ドローグ式は、どちらが優れているという話ではない。誰が苦労を引き受けるか、何を優先するかの違いなのだ。

空母の「給油係」|バディ給油と無人給油機

米海軍の空母では、F/A-18E/Fスーパーホーネットが胴体の下に給油ポッドを吊るし、仲間の機体に燃料を配っている。発艦した直後の機体や、着艦をやり直して燃料が心細くなった機体に、すぐ燃料を渡せるのは心強い。

F-14に空中給油するA-6E(1989年)。
F-14に空中給油するA-6E(1989年)。
写真・素材:LCDR Dave Baranek, USN/Wikimedia Commons(Public domain)

ただ、本来は戦うための戦闘機が給油係に取られてしまうのは痛い。かつてはA-6イントルーダーを改造したKA-6Dが、空母の給油係を引き受けていた。その役目を継いだのがスーパーホーネットだが、戦闘に回せる機体が減るという悩みは残った。スーパーホーネットそのものについてはF/A-18E/Fの解説にまとめている。

そこで米海軍が開発しているのが、無人の給油機MQ-25スティングレイだ。2026年4月に量産型が初飛行し、5月には低率初期生産に入る承認を得た。ただ、部隊で本格的に使い始める時期は2029年度へずれ込んでいる。給油係を無人機に任せ、戦闘機を戦闘に戻す。その日はもう少し先になりそうだ。

両方の機体に配るための工夫

1機に両方を積む

方式が二つあるなら、給油機に両方を積めばいい。いちばん素直な答えがこれで、KC-46Aは尾部のブームに加えて、胴体の下にもホースとカゴを持つ。主翼の下に給油ポッドを足せば、ホースは3本になる。エアバスのA330 MRTTも、ブームと主翼下のポッドを組み合わせられる。

KC-135の「後付けホース」

古いKC-135には、ブームの先に短いホースとカゴを取り付けて、プローブを持つ機体に給油する方法がある。ただし、この付け替えは地上で済ませておく必要がある。いったんホースをつけて飛び立てば、その飛行ではブームで受ける機体に給油できない。カゴが硬くて扱いにくいことから、受ける側のパイロットには「アイアン・メイデン(鉄の処女)」というありがたくないあだ名で呼ばれてきた。

方式が合わないと何が起きるか

方式の違いを甘く見るとどうなるか。いい例がイギリスだ。

イギリス空軍の給油機ボイジャーは、A330 MRTTをもとにしながら、ホース式だけで発注された。ところがイギリスは、ブームで燃料を受ける哨戒機P-8や偵察機RC-135を導入した。自国の給油機からは、自国の哨戒機に給油できないのだ。こうした機体は同盟国の給油機に頼ることになり、2026年9月になって、イギリス政府はブームでの給油能力を整えていく方針を議会への答弁で示した。

どの機体を買うかは、どの給油機を持つかと切り離せない。日本がKC-46Aを選んだ話も、この延長線上にある。

対応機一覧|どの機体がどちらで受けるのか

主な機体を、燃料の受け方で分けるとこうなる。

機体 受け方 受け口のある場所・特徴
F-35A ブーム 操縦席の後ろの背中。空自も運用
F-35B プローブ 機首右側から出す格納式。空自が新田原で運用
F-35C プローブ B型と同じく格納式。米海軍の艦載型
F-15J/F-15EX ブーム 左の主翼の付け根あたり
F-2 ブーム 操縦席の後ろの背中。F-16ゆずり
F-16 ブーム 操縦席の後ろの背中
F-22 ブーム 操縦席の後ろの背中
F/A-18E/F プローブ 機首右側の格納式。給油係も務める
ラファール/タイフーン プローブ 欧州の戦闘機はプローブが基本
B-52/B-2 ブーム 米空軍の爆撃機
C-2 ブーム 胴体前方の上面。国産輸送機
V-22 プローブ 機首から突き出す。陸自も運用
UH-60J プローブ 機首前方に長いプローブを持つ機体がある
F-35Aなどの受油口と、F-35B/Cなどのプローブを比較する早見図
F-35Aはブーム式、F-35B/Cはプローブ&ドローグ式に対応する。 図を拡大する

一覧を眺めると、ある法則が見えてくる。米空軍の生まれの機体はブーム、米海軍・海兵隊の生まれの機体や欧州の機体はプローブなのだ。F-35は三つの型を空軍・海兵隊・海軍に合わせて作ったので、一つの機種の中で受け方が分かれた。冒頭の「同じF-35なのに」は、ここから来ている。A・B・Cの違いをもっと知りたいならF-35Cの解説が詳しい。

日本の機体で言えば、F-15JもF-2も米空軍の系統なのでブームで受ける。国産のC-2も、胴体前方の上にブーム用の受け口を持つ。空自の固定翼機はブーム式でそろえてきた、と言っていい。そこへ、プローブで受けるF-35Bと陸自のV-22がやってきた。空自の機体全体の顔ぶれは航空自衛隊の機体一覧で確認できる。

空自の空中給油|F-4EJで外した装置から、KC-46A15機計画まで

F-4EJは「受けられない」戦闘機だった

ここで少し時計を戻したい。空自が1970年代に導入したF-4EJファントムは、他国に侵略的な脅威を与えないよう爆撃のための装置を外し、長距離を進出する能力も必要ないとして、空中給油を受ける装置まで外していた。空の上で燃料を足せる能力そのものが、政治的に「攻撃的」だと見られた時代だったのだ。

F-15Jでは装置を残した

流れが変わったのは、次の主力戦闘機F-15Jのときだ。ここでも国会で空中給油の能力が問われたが、政府は、F-15が主力になる1980年代後半には空中で警戒しながら待機する任務が必要になると説明し、装置を外さなかった。1978年の防衛庁の文書にも、F-15の空中給油装置についての整理が残っている。

攻めるための給油ではなく、守るために空に居続けるための給油。理屈の置き方を変えたわけだ。ここが、日本の空中給油の出発点だと私は思っている。F-15Jのその後の改修についてはF-15J改の解説で書いた。

ブーム式のKC-767、ヘリ用のKC-130H

実際に給油機がそろったのは、2000年代も終わりになってからだ。2009年に小牧基地で第404飛行隊が新しく編成され、KC-767の運用が始まった。機数は4機だ。ただ、KC-767はブーム式しか持たない。給油できるのは、ブームで受けるF-15J、F-2、そしてのちに入ってきたF-35Aといった機体だ。

ヘリコプターのほうは、別の機体が受け持つ。C-130H輸送機に給油の能力を足したKC-130Hだ。主翼の下に給油ポッドを2つ持ち、2機に同時に給油できる。相手は救難ヘリのUH-60Jで、2023年10月にも百里救難隊が空中給油の訓練を行った。遠くの海で遭難した人を救うには、ヘリが空の上で燃料を足せるかどうかが大きい。救難ヘリの任務については航空自衛隊の救難隊にまとめている。

KC-46Aで、ようやく両方がそろった

ここに加わったのがKC-46Aだ。2020年12月に美保基地で第405飛行隊が新しく編成され、2021年10月29日に1号機が到着した。2026年6月の時点で6機が美保で動いている。最大で積める燃料はKC-767の約1.5倍あり、ブームとホースの両方で給油できる。

KC-46Aを選んだ理由の一つが、この「両方」だ。新田原のF-35Bはプローブで受ける。将来、F-35Bをいずも型護衛艦から飛ばすなら、海の上でホースから燃料をもらう場面は必ず出てくる。陸自のV-22オスプレイもプローブを持つ機体だ。KC-767だけでは、こうした機体に燃料を渡せない。

空自の計画では、KC-46Aは全部で15機になる。美保には10機をそろえる方向で調整が進み、残る5機は百里基地を配備先として検討している。そのうち2機は2030年度の配備を予定している。

F-4EJのころに「受けられない」ようにした国が、半世紀たって給油機を十数機そろえようとしている。南西の島々まで広がる空を、限られた戦闘機で守り続けるには、空に長くとどまる力が欠かせないからだ。時代が変わったと言えばそれまでだが、私はこの変化に、日本の防空の考え方そのものの変化を見る。

歴史で見る|1923年のホースから、ブラック・バックの11機リレーまで

空中給油の歴史は、意外なほど古い。最初に成功したのは1923年6月27日、アメリカ陸軍航空部の複葉機DH-4B同士だ。上を飛ぶ機体から、下を飛ぶ機体へ、ホースでガソリンを流し込んだ。同じ年の8月には、16回の給油を受けながら37時間15分飛び続ける記録も作られている。

1930年代になると、イギリスで本格的な研究が進む。のちに空中給油の専門会社となるフライト・リフューエリング社が生まれ、ホースをつなぐ金具や手順を磨いていった。1949年には、アメリカのB-50爆撃機「ラッキー・レディII」が4回の空中給油を受けて、94時間1分で世界一周を無着陸で飛び切った。

ブーム式とプローブ&ドローグ式が生まれたのも、この1949年前後だ。ボーイングはB-29を使ってブームの試験を進め、イギリスのフライト・リフューエリング社は1949年4月にプローブ&ドローグ式の最初の試験を行った。爆撃機を遠くへ飛ばしたい米空軍がブームを、小さな艦載機を抱える海軍がホースを選ぶ。今に続く住み分けは、ここで始まっている。

ちなみに旧日本軍は、空中給油を実用化しなかった。そのかわりに、零戦や一式陸攻のように、機体そのものにたっぷり燃料を詰め込み、増槽を吊るして距離と戦った。給油機という「空のガソリンスタンド」を持たずに広い太平洋を飛んだことの重さは、今の空自の給油機計画と並べてみると、また違って見えてくる。

空中給油の凄みを示す例として、私がいちばん好きなのは、1982年のフォークランド紛争でイギリス空軍が行ったブラック・バック作戦だ。大西洋のアセンション島から、アルゼンチンが占領したフォークランド諸島の飛行場まで、バルカン爆撃機を飛ばして爆撃する。その往復は1万km以上に及んだ。

この1機のバルカンを届けるために、イギリス空軍は11機のビクター給油機を飛ばした。ビクター同士も途中で燃料を渡し合い、1機、また1機と引き返していく。いわば空の上のリレーだ。ところが、予想以上に燃料を食ったため、最後までバルカンに付き添ったビクターは、自分の帰りの分まで渡してしまった。結局、このビクターも別の給油機に迎えに来てもらって、ようやく島に帰り着いている。往復はおよそ16時間に及んだ。

バルカンもビクターも、使ったのはプローブ&ドローグ式だ。一つの攻撃のために、これだけの給油機と段取りが必要になる。空中給油が「足し算」ではなく「作戦そのもの」だということが、よく分かる話だと思う。紛争全体の流れはフォークランド紛争の解説で書いている。

投資家目線|給油機の土台は「767」と「A330」

給油機のビジネスは、旅客機をもとに作るのが今の主流だ。そして、その土台は大きく二つしかない。ボーイングの767と、エアバスのA330だ。

空自のKC-767とKC-46Aは、どちらも767がもとになっている。同じ767から生まれた機体には、空自の早期警戒管制機E-767もある。そして767は、機体の約16%を日本の航空機産業が作ってきた旅客機でもある。給油機の需要は、遠回りに日本のものづくりともつながっているわけだ。

ただし、作る側が儲かるとは限らない。ボーイングはKC-46Aを固定価格で引き受け、開発の遅れやカメラの問題でかさんだ費用を自社でかぶってきた。ボーイングの防衛事業の全体像はボーイング株の解説にまとめている。一方のA330 MRTTは、多くの国に採用され、自動給油の認証でも先を行く。同じ「空のガソリンスタンド」でも、契約の形と開発の進み方で、企業の収益は大きく変わる。

※この記事は特定の銘柄の売買を勧めるものではない。株価や業績は変動し、元本割れの可能性もある。投資判断は自己責任で。

模型で「受け方の違い」を見比べる

この記事を書きながら、F-35AとF-35Bを並べて眺めたくなった。A型の受油口がある操縦席の後ろの背中には、B型だと垂直に降りるための大きなリフトファンの扉がある。同じF-35でも、背中の作りがまるで違うのだ。

B型は、いずも型からの運用を想像しながら組むのが楽しい。縮尺はA型の1/48に対して1/72なので、並べるなら大きさの違いは割り切りたい。

空母の給油係としてのスーパーホーネットに惹かれた人には、こちらもいい。

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よくある質問

空中給油はどのくらいの速さと高さで行う?

機体や任務によって違うが、戦闘機なら時速500〜600km前後、高度6,000〜9,000m前後で行うことが多い。ヘリへの給油は、ヘリが追いつけるようにずっと遅い速さで、低い高度で行う。

給油中に事故は起きないの?

起きる。2018年12月には、高知県の室戸岬沖で、空中給油の訓練中だった米海兵隊のKC-130JとF/A-18Dが接触して墜落し、合わせて6人が亡くなった。2016年12月には、沖縄の沖合で、KC-130から給油を受けていたMV-22がホースと接触し、不時着して大破している。夜間や悪天候での給油は、熟練した乗員にとっても危険と隣り合わせだ。

戦闘機が戦闘機に給油することはできる?

できる。ホースとカゴをまとめたポッドを吊るせば、戦闘機も給油機になる。これをバディ給油と呼び、米海軍のスーパーホーネットが空母の上で使っている。

ブーム式の機体にホースで給油することはできる?

そのままではできない。受け口の形がまったく違うからだ。KC-135のようにブームの先にホースを後付けする方法はあるが、その場合はブームで受ける機体に給油できなくなる。

ヘリコプターも空中給油できる?

できる。機首から長いプローブを伸ばし、プローブ&ドローグ式で燃料を受ける。空自の救難ヘリUH-60Jも、KC-130Hから給油を受ける訓練を行っている。

空自の給油機は何機ある?

ブーム式のKC-767が4機、ブームとホースの両方を持つKC-46Aが2026年6月時点で6機、ヘリ向けのKC-130Hがある。KC-46Aは最終的に15機まで増やす計画だ。

まとめ|「誰が差し込むか」で全部が決まる

空中給油には、給油機が硬い管を差し込むブーム式と、受油機のパイロットが棒を差しに行くプローブ&ドローグ式の二つがある。ブーム式は太い管で大型機に速く給油でき、プローブ&ドローグ式は小さく軽い装置で何機にも配れて、戦闘機同士やヘリでも使える。

この違いは、機体の生まれにそのまま表れる。米空軍の機体はブーム、海軍や欧州の機体はプローブ。だから同じF-35でも、A型とB型で受け方が分かれる。そして、その両方を持つことになった日本は、ブームしか持たないKC-767に加えて、両方に対応するKC-46Aをそろえる道を選んだ。

F-4EJで受油装置を外した時代から半世紀。空中給油は、日本にとっても「遠くを攻めるための道具」から「空に居続けて守るための道具」へと意味を変えてきた。ニュースで給油機の配備の話が出たら、その給油機がどちらの方式を持ち、どの機体に燃料を渡せるのか、ちょっと考えてみてほしい。戦闘機の比較をもっと見たいなら、世界最強戦闘機ランキングもどうぞ。

最後まで読んでくれてありがとう。長い記事を書くときのお供は、だいたいこれだ。

出典・参考資料

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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