F-16とF/A-18は、実は同じコンペから生まれた兄弟のような戦闘機だ。
1970年代前半、米空軍は「軽くて安い戦闘機」を試す計画を立てた。そこで最後まで競ったのが、ジェネラル・ダイナミクスのYF-16と、ノースロップのYF-17。1975年1月、空軍はYF-16を選んだ。これがのちのF-16ファイティング・ファルコンである。
負けたYF-17は、そこで終わらなかった。同じ年、米海軍は自分たちの新しい戦闘機として、このYF-17を大きく作り直した機体を選ぶ。マクドネル・ダグラスがノースロップと組んで空母用に仕立て直し、F/A-18ホーネットが生まれた。
空軍のコンペで勝った機体と負けた機体が、それぞれ空軍と海軍の主力になった。しかもF-16は4,600機以上が作られ、半世紀たったいまも新しい機体が売れ続けている。F/A-18は大型化したスーパーホーネットへと進化し、2026年のイラン攻撃でも空母から飛んだ。
この記事では、この2機がどこで分かれ、どう違うのかを、設計・任務・使い手・日本との関係から比べていく。
- F-16とF/A-18は、1970年代の米空軍の軽量戦闘機計画で競ったYF-16とYF-17がそれぞれの原型
- 一番の違いは「陸の滑走路から飛ぶ空軍機」か「空母から飛ぶ艦上機」か。エンジンの数、脚、翼、着艦フックまで、その違いから決まっている
- F-16は単発で軽く、9Gまで耐えられる。F/A-18は双発で頑丈、最初から戦闘機と攻撃機の二役を前提にしている
- 日本の空自F-2はF-16が原型。F/A-18は岩国の米海軍・空母航空団の主力として日本の空を飛んでいる
F-16とF/A-18の違いを一枚で

写真:SMSGT JOHN P. ROHRER, USAF/Wikimedia Commons(Public domain)
まずは全体像から。いまの主力型であるF-16C/Dと、F/A-18の初代(C/D型)・スーパーホーネット(E/F型)を並べた。
| 項目 | F-16C/D | F/A-18C/D | F/A-18E/F |
|---|---|---|---|
| 原型 | YF-16(コンペの勝者) | YF-17(コンペの敗者) | F/A-18C/Dを大型化 |
| 主な使い手 | 空軍 | 海軍・海兵隊 | 海軍 |
| 離着陸 | 陸上の滑走路 | 空母(カタパルト・ワイヤー) | 空母(カタパルト・ワイヤー) |
| エンジン | 1基 | 2基 | 2基 |
| 垂直尾翼 | 1枚 | 2枚 | 2枚 |
| 折りたたみ翼・着艦フック | なし | あり | あり |
| 最大荷重 | 9G | 7.5G | 7.5G |
| 生産数の目安 | 4,600機以上(生産継続中) | 約1,500機(初代ホーネット全体) | 800機前後(電子戦型を含む・2027年に生産終了予定) |
| 後継 | F-35A | F-35C | F/A-XX(ボーイング) |
表で見ると、差のほとんどが「空母で使うかどうか」から来ているのが分かる。一つずつ見ていく。
違い1:エンジンの数|海の上では「片肺でも帰れる」が正義

写真:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class James R. Evans/Wikimedia Commons(Public domain)
F-16はエンジン1基、F/A-18は2基。この違いは、使う場所の違いそのものだ。
陸の上なら、エンジンが1基止まっても、近くの飛行場に降りるか、最悪でも脱出して地上に降りられる。ところが海の上では、空母から何百kmも離れたところでエンジンが止まれば、待っているのは冷たい海だ。2基あれば、1基が止まっても残りの1基で母艦まで帰れる可能性がぐっと上がる。海軍がYF-16ではなく双発のYF-17を選んだ大きな理由がここにある。
その代わり、エンジン2基は重いし、燃料も食う。F-16が単発にこだわったのは、とにかく軽く、安く、小さく作るためだった。軽い機体に強力なエンジン1基。この組み合わせが、F-16の鋭い加速と旋回性能を生んだ。
違い2:脚・翼・フック|艦上機は「頑丈で重い」

写真:Official U.S. Navy Page from United States of America PO3 Chad D. Anderson/U.S. Navy/Wikimedia Commons(Public domain)
F/A-18は、空母のカタパルトで射出され、着艦のときはフックで甲板のワイヤーを引っかけて止まる。そのために、前脚にはカタパルトと連結する部品がつき、主脚はドスンと落ちるような着艦に毎回耐えられる頑丈なものになっている。機体の後ろには着艦フックがあり、翼は艦内に収めるために折りたためる。
F-16にはどれも必要ない。陸上の滑走路で、普通に離陸して普通に着陸すればいい。脚も細くて軽いし、翼も折れない。
この補強のぶん、F/A-18は同じクラスの戦闘機より重くなる。F-16が9Gまで耐えられるのに対し、F/A-18が7.5Gに抑えられているのも、機体の重さとのバランスを取った結果と考えていい。空母に降りるための「頑丈さ」と、空中戦での「身軽さ」は、どうしてもトレードオフになる。
この関係は、同じF-35でも空軍型のA型と空母型のC型で違いが出ているのとまったく同じだ。詳しくはF-35Cの解説で書いた。
零戦と隼の関係に少し似ている
旧軍好きとしては、ここで零戦と隼を思い出す。どちらも中島製の「栄」系のエンジンを積んだ同じ時代の戦闘機だが、海軍の零戦と陸軍の隼は、求められた役割の違いから、まったく別の飛行機になった。海軍は洋上での長い航続距離と、空母で使うための装備を求め、陸軍は軽さと格闘戦の強さを求めた。
海の上で戦う軍と陸の上で戦う軍では、同じ「戦闘機」でも欲しいものが違う。F-16とF/A-18の違いは、その80年後の答え合わせのようなものだ。隼については隼(Ki-43)の解説で、零戦との違いも含めて書いている。
違い3:任務|F/A-18は最初から「二刀流」
F/A-18の「F/A」は、Fighter(戦闘機)とAttack(攻撃機)の頭文字だ。最初から、空中戦も地上や艦船への攻撃も1機でこなす前提で作られた。当時の海軍は、戦闘機のF-4と攻撃機のA-7を別々に空母に載せていたが、これを1機種でまとめて、限られた甲板を有効に使いたかった。
その二刀流ぶりを世界に見せたのが、1991年1月17日の湾岸戦争初日だ。空母サラトガを飛び立ったVFA-81のF/A-18Cが、爆弾を抱えてイラクの飛行場へ向かう途中でイラク軍のMiG-21と遭遇した。ホーネットはその場で空対空ミサイルを撃ってMiG-21を2機撃墜し、そのまま爆撃目標に向かって任務を続けた。「戦闘機として戦い、攻撃機として任務も果たす」という設計の狙いを、1回の出撃で証明したわけだ。
F-16は、もともと空中戦に特化した軽量戦闘機として生まれた。それが改良を重ねるうちに対地攻撃もこなす多用途戦闘機になり、いまではF-16も立派な二刀流である。1981年には、イスラエル空軍のF-16がイラクの原子炉を爆撃した「バビロン作戦」で、長距離の対地攻撃を成功させている。出発点は違っても、最後はどちらも「何でもできる戦闘機」にたどり着いた。
違い4:操縦席と飛び方
F-16は、操縦の仕組みでも時代を先取りしていた。量産戦闘機として初めて、操縦桿の動きを電気信号で伝える「フライ・バイ・ワイヤ」を本格的に採用し、わざと少し不安定に作った機体をコンピューターで安定させることで、鋭い運動性を手に入れた。操縦桿は足の間ではなく右手側の横にあり、座席は後ろに大きく倒れている。強いGに耐えやすくするためだ。泡のような一枚ものの風防で、全周の視界も抜群にいい。
F/A-18は、操縦席の画面で先を行った。計器の多くを多機能ディスプレイにまとめた、いわゆるグラスコックピットを早い時期に取り入れ、1人のパイロットが戦闘機と攻撃機の両方の仕事をこなせるようにした。主翼の付け根から前に伸びる細長い張り出しは、大きな迎え角でも機体を安定させ、低速での機動性を高めている。
違い5:空中給油のやり方と「仲間に給油する」能力
意外と知られていないのが、空中給油の方式の違いだ。
F-16は、背中に給油口があり、空軍の空中給油機が後ろに伸ばす硬い管(フライング・ブーム)を、給油機側の操作員が差し込んでくれる。米空軍式のやり方である。
F/A-18は逆で、機首の横から給油用のプローブ(突き出し式の管)を出し、給油機が垂らした傘のようなホース先端(ドローグ)に、パイロットが自分で差し込む。米海軍や海兵隊はこの方式だ。空母から飛ぶ機体は、空軍の給油機がいない場所でも、仲間同士で給油できたほうが都合がいい。
実際、スーパーホーネットは胴体の中央下に給油ポッドを吊るして、自分が給油機の役をすることもできる。空母航空団の中で、スーパーホーネットの何機かは攻撃に出ず、ほかの機体に燃料を配る「空飛ぶガソリンスタンド」として飛んでいる。陸の大きな基地から専用の給油機に頼れる空軍と、全部を自前でまかなう空母航空団。ここにも空軍機と艦上機の違いがよく出ている。
違い6:実戦での使われ方
どちらも、実戦経験の豊富さでは世界でも指折りの機体だ。
F-16は、イスラエルや米空軍のほか、多くの国で実戦を重ねてきた。湾岸戦争やバルカン半島の紛争、イラクやシリアでの作戦、そしてウクライナ。陸上の基地から何度も出撃し、防空網を叩く任務を主にこなす型まで作られた。
F/A-18は、空母から飛べる強みを生かして、地上の基地が使えない場所で戦ってきた。2017年にはシリア上空で米海軍のスーパーホーネットがシリア軍の攻撃機を撃墜し、米軍の有人機として久しぶりの空中戦での撃墜を記録している。2024年から2025年にかけては紅海でフーシ派と戦い、2026年のイラン攻撃でも空母リンカーンなどから出撃した。ある1個飛行隊だけで、作戦期間中に400発を超える爆弾やミサイルを使ったとも報じられている。
使い手と現在の状況

写真:U.S. Navy photo by Damon J. Moritz/Wikimedia Commons(Public domain)
F-16|いまも売れ続ける「世界のベストセラー」
F-16は世界で25か国以上が使い、4,600機以上が作られた。驚くのは、半世紀前に初飛行した機体なのに、いまも最新型のブロック70/72が作られていることだ。工場は南カロライナ州グリーンビルに移り、ブルガリアやスロバキア、台湾などに新しい機体が送られている。ウクライナにも2024年から欧州各国の中古機が渡り、ロシアのミサイルや無人機の迎撃に使われている。
米空軍の中でも、三沢基地のF-16をF-35Aに置き換える計画が進むなど、主力の座はF-35に譲りつつある。それでも、安くて使い慣れた第4世代機を求める国は多く、F-16の生産はしばらく続きそうだ。性能の細かいところはF-16戦闘機の解説、台湾での使われ方は台湾の戦闘機一覧にまとめている。
F/A-18|スーパーホーネットの時代も終わりが見えてきた
初代のホーネットは、米海軍・海兵隊のほか、カナダ、オーストラリア、スペイン、フィンランド、スイス、クウェート、マレーシアなどが使った。その多くは、いまF-35などへの置き換えが進んでいる。
米海軍では、初代を2割ほど大きくしたスーパーホーネット(E/F型)が空母航空団の主力だ。電子戦型のEA-18Gグラウラーも同じ機体から生まれている。ただ、新しい機体の生産は2027年の最終納入で終わる予定で、2026年9月29日には後継となる次世代艦上戦闘機F/A-XXの開発がボーイングに発注された。F/A-18は、これから少しずつ表舞台を降りていくことになる。
スーパーホーネットの詳しい話はF/A-18E/Fスーパーホーネットの解説、電子戦型はEA-18Gグラウラーの解説に書いた。空母の上でF/A-18がどんな役回りをしているかは空母打撃群とはで解説している。
日本とF-16・F/A-18
F-2はF-16の「日本版」
日本とF-16の関係で外せないのが、航空自衛隊のF-2だ。F-2は、F-16をもとに三菱重工業とロッキード・マーチンが共同開発した戦闘機で、1995年に初飛行した。見た目はF-16にそっくりだが、主翼を大きくして炭素繊維の複合材で作り、対艦ミサイルを4発積んで洋上の敵艦隊を攻撃できるようにした。戦闘機として世界で初めて、実用のアクティブ・フェーズドアレイ・レーダーを積んだ機体でもある。
F-16を原型にしながら、日本の「海から来る敵を海の上で叩く」という需要に合わせて作り変えた。陸の戦闘機を、海を意識した機体に仕立て直したという意味では、ちょうどF-16とF/A-18の中間にいるような飛行機だ。F-2についてはF-2戦闘機の解説で詳しく書いた。
日本の空を飛ぶF/A-18
F/A-18は、日本の空でもおなじみだ。山口県の岩国基地には、横須賀の空母ジョージ・ワシントンに載る第5空母航空団のスーパーホーネット部隊がいる。かつては海兵隊の初代ホーネットも岩国にいたが、こちらはF-35Bへの置き換えが進んだ。
ちなみに、航空自衛隊が2011年に次期戦闘機(F-X)を選んだとき、候補の一つがスーパーホーネットだった。結果はF-35Aに決まったが、もし選ばれていたら、空自が空母も持たないのに艦上機を使うという、ちょっと不思議なことになっていた。日本の戦闘機全体の状況は日本の戦闘機一覧にまとめている。
模型で並べると違いがよく分かる
単発で細身のF-16と、双発でがっしりしたF/A-18。この2機は、同じスケールで並べると性格の違いが一目で分かる。タミヤの1/48 F-16と、レベルの1/48スーパーホーネットなら同じスケールで比べられる。
F-16の「日本版」であるF-2を並べるのも面白い。翼の大きさの違いがはっきり分かる。
スーパーホーネットが空を飛び回る姿を見たいなら、やはりこの映画だ。主役の機体として、空母からの発艦や峡谷の低空飛行まで存分に見せてくれる。
投資家目線|F-16は稼ぎ続け、F/A-18は次の世代へ
F-16を作るロッキード・マーチンにとって、F-16はいまも新しい注文が入り続ける稼ぎ頭の一つだ。一方、F/A-18を作るボーイングは、スーパーホーネットの生産終了を控えつつ、次世代艦上戦闘機F/A-XXと空軍のF-47という2つの第6世代戦闘機を抱えることになった。同じコンペから生まれた2機の行く末は、それぞれのメーカーの次の10年にもつながっている。
詳しくはロッキード・マーチン(LMT)株の解説とボーイング(BA)株の解説で書いた。
米国の防衛株を自分で見てみたい人は、米国株を扱える証券口座を一つ持っておくと便利だ。
よくある質問
F-16とF/A-18はどっちが強い?
一概には言えない。身軽さや加速、旋回で有利なのは単発で軽いF-16。航続距離や搭載量、双発の安心感、空母からどこへでも出ていける点ではF/A-18が有利だ。そもそも使う場所が違う機体なので、「陸で強いのがF-16、海で強いのがF/A-18」と考えるのが一番すっきりする。
F-16は空母で使える?
使えない。カタパルトと連結する前脚の部品、頑丈な主脚、着艦フック、折りたたみ翼がないからだ。単発エンジンも、洋上での運用には向かない。
F/A-18の「F/A」とは?
Fighter(戦闘機)とAttack(攻撃機)の頭文字。1機で空中戦と対地・対艦攻撃の両方をこなすという意味の名前だ。
F-2はF-16と何が違う?
F-2はF-16をもとに日米で共同開発した機体で、主翼が大きく、対艦ミサイルを4発積めるなど、洋上の艦船を攻撃する能力を強めている。
F/A-18とスーパーホーネットは別の機体?
スーパーホーネット(E/F型)は、初代ホーネット(A〜D型)を2割ほど大型化した発展型だ。名前と見た目は似ているが、中身はほとんど新しい機体と言っていいほど作り直されている。
まとめ|分かれ道は「陸か、海か」
F-16とF/A-18は、同じコンペで競った兄弟だ。空軍は軽くて安い単発のYF-16を選び、海軍は負けたYF-17を双発の頑丈な艦上機に作り直した。エンジンの数、脚の太さ、翼の折りたたみ、着艦フック、Gの上限。違いのほとんどは「陸から飛ぶか、海から飛ぶか」という一点から出ている。
そして半世紀たったいま、F-16はまだ新しい機体が売れ続け、F/A-18は次の世代のF/A-XXにバトンを渡そうとしている。日本では、F-16の血を引くF-2が空自で、F/A-18が岩国で、それぞれ日本の空を守っている。
ほかの戦闘機との比較は世界最強戦闘機ランキングでやっているので、あわせてどうぞ。
最後まで読んでくれてありがとう。比較記事を書くときは、スペック表とにらめっこしながらこれを飲んでいる。
出典・参考資料
表紙の写真素材:
写真:SMSGT JOHN P. ROHRER, USAF/Wikimedia Commons(Public domain)
写真:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class James R. Evans/Wikimedia Commons(Public domain)。背景・レイアウト・文字を編集。







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