2026年7月29日に出た日本航空電子工業の第1四半期決算短信を、私は最初、コネクタの話として読み飛ばしそうになった。売上582億に対して営業利益が3億。前年の2割しか残っていない。金と銅が高い、円安で部材が高い、中東がきな臭くてエネルギー代が上がった、と説明が並ぶ。ここまではよくある電子部品屋の苦しい決算だ。
ところがセグメントの表を見て手が止まった。売上の8割以上を占めるコネクタ事業のセグメント利益が8億弱。そして売上の8%しかない航機事業が7億強。本社費を引く前の利益のほぼ半分を、防衛と宇宙をやっている小さな事業部が稼いでいた。
この会社は東証プライムでは「コネクタ大手」として分類され、四季報にもそう書いてある。だが社名には今もAviationが残っている。1953年、戦後の航空空白期のど真ん中で「日本航空電子」と名乗った会社が、70年たってもう一度、社名どおりの事業で会社を支え始めている。この記事ではその航機事業の中身と、防衛株としてこの銘柄をどう見るべきかを、旧軍ファンで技術好きで、ついでに株もやる人間の目線で書いていく。
日本航空電子工業とはどんな会社か
まず会社の輪郭から。日本航空電子工業(JAE、証券コード6807)は本社が東京・渋谷、主力工場が昭島にある電子部品メーカーで、2026年3月期の連結売上高は2,278億円。このうちコネクタ事業が約9割、航機事業が9%、車載タッチパネルなどのインターフェース・ソリューション事業が3%という構成だった。2026年度からインターフェース・ソリューションはコネクタに統合され、報告セグメントはコネクタと航機の2本立てになっている。
生い立ちが少し変わっている。1953年1月、NECの出資で「日本航空エレクトロニクス」として設立され、同年8月に今の社名になった。最初の仕事は川崎のNEC玉川工場の一角で、米極東空軍の航空機電子機器を修理・オーバーホールすることだった。トランス1個の修理が5ドル。それを積み上げながら、修理を通じてアメリカの最新機器の中身を学んだ。当時の日本は7年間の航空禁止令が解けたばかりで、航空機を作る産業も、それに載せる電子機器を作る産業も、ほぼ更地だった。
その更地に「航空電子」と看板を掲げた判断を、私は結構好きだ。帝国海軍の攻撃隊が洋上で母艦に帰投するのに使ったのは、航法員の推測航法と偏流測定と、あとは腕と勘だった。機械が自分の位置を覚え続ける慣性航法という考え方は、大戦末期のドイツのロケットで芽が出て、戦後にアメリカの潜水艦や大陸間弾道弾で育った技術で、日本は戦争で丸ごと出遅れた。JAEの創業者・沼本實はそこを見ていて、1961年に米ハネウェルと技術援助契約を結び、F-104に載せるジャイロや自動操縦装置の製造を始める。1971年には慣性航法装置そのものの製造に到達した。これが今の航機事業の背骨だ。
航機事業は何を作っているのか

航機事業の売上は2025年度で約205億円。中身は大きく2つに分かれる。防衛と宇宙を合わせた「航空・宇宙」向けが111億円、油田掘削用センサや半導体製造装置向けの機器といった「産機・インフラ」向けが93億円だ。防衛が全部ではなく、防衛で鍛えたセンサ技術を民需に横展開した部分が、ほぼ同じ規模でくっついている。
防衛・宇宙向けの製品
会社が公開しているラインナップを並べると、こうなる。
| 製品 | 用途のイメージ |
|---|---|
| 慣性基準装置(IRS) | 航空機が自機の姿勢・位置・速度を自律的に把握する装置 |
| 飛行制御装置(FLCC) | フライ・バイ・ワイヤ機の操縦系を司るコンピュータ。F-2の写真が掲げられている |
| 慣性航法装置(GPSハイブリッド型を含む) | 防衛省向け航空機の航法装置 |
| リングレーザジャイロ | 慣性装置の心臓部となる角速度センサ |
| 加速度計 | 同じく慣性装置の心臓部 |
| 飛翔体用慣性装置 | いわゆるミサイルの誘導部。どの飛翔体かは公表されていない |
| ロケット用慣性センサユニット | H-IIAの写真が添えられている |
| 科学衛星用姿勢基準装置(IRU) | 太陽観測衛星「ひので」の名が挙がっている |
| 電波高度計 | 対地高度を測る装置 |
一言でいえば「機体や飛翔体の内耳」を作っている会社だ。三菱重工や川崎重工のように機体そのものを組む会社でも、三菱電機のようにレーダーやミサイルの本体を組む会社でもない。その一段下、装備品の中で自分がどこを向いてどこに居るかを教える部品のレイヤーにいる。
F-2の飛行制御装置を挙げているところは、航空自衛隊ファンとしては見逃せない。F-2はF-16をベースにしつつ、フライ・バイ・ワイヤの制御則と制御コンピュータを日本側で開発した機体で、この計算機が止まれば機体は飛べない。機体の主契約は三菱重工だが、こういう「止まったら落ちる」部品を担う国内企業は限られている。F-2という機体については別記事で詳しく書いたので、そちらも読んでほしい。→ F-2戦闘機とは|性能・対艦ミサイル・改修・退役時期を徹底解説
慣性センサーの話を少しだけ
技術ファン向けに、慣性センサーが何をしているかを平たく書いておく。
ジャイロは「どれだけ回ったか」を、加速度計は「どれだけ加速したか」を測る。この2種類を3軸ずつ組み合わせ、加速度を時間で2回積分すれば移動距離が出る。出発点さえ分かっていれば、外から何の信号ももらわずに自分の位置を計算し続けられる。これが慣性航法で、GPSと違って妨害電波を撃たれても、衛星が落とされても、機能が止まらない。
弱点は誤差が時間とともに積み上がることで、だからジャイロの精度が命になる。昔は機械式のコマを回していたが、今はレーザ光を環状に走らせて位相差から回転を読むリングレーザジャイロや、光ファイバを巻いた光ファイバジャイロが主流だ。JAEはリングレーザジャイロを自社で持っていて、新中計では「次世代の超高精度慣性センサの研究開発」を掲げている。
なぜ今それが重要なのかは、ウクライナの戦場を見れば分かる。あの戦場ではGPS誘導弾が妨害で狂う事例が日常的に報告され、慣性誘導の比重が見直された。日本が配備を進める長射程のスタンド・オフミサイルも、発射から着弾まで1,000km近くを飛ぶあいだ、GPSが使えない区間を慣性で繋がなければならない。日本のスタンド・オフミサイルの整理はこちらの記事、12式地対艦誘導弾の能力向上型についてはこちらにまとめてある。JAEの「飛翔体用慣性装置」が具体的にどの弾に載っているかは開示されていないので、ここは推測を混ぜずに読んでほしい。
民需への横展開
もう一つ面白いのは、この慣性センサ技術がそのまま油田の掘削に使われていることだ。地中深くの掘削ヘッドがどちらを向いているかを知るには、地上と同じくGPSが使えない。だから防衛用の加速度計やジャイロの技術が、そのまま「油田掘削用センサパッケージ」になる。JAEは米国の油田向けセンサ企業Tooltronixを取得して製品を広げており、北米シェア拡大を中計に書いている。半導体製造装置向けのリニアモータや制振機器も同じ事業部が担う。
ドローン向けには「Flight Brain」と名付けたフライトコントローラも出している。設計段階から航空機装備品の考え方で故障率を算出するという触れ込みで、防衛省向け航空機で鍛えた信頼性設計を小型無人機に降ろしてきた製品だ。日本の防衛ドローン企業の全体像はこちらの一覧記事で整理している。
数字で見る航機事業

ここからは投資家の目で見る。細かい数字を並べすぎると読みにくいので、押さえるべき点だけ絞る。
| 項目 | 2021年度 | 2025年度(2026年3月期) | 2026年度予想 | 2028年度計画 |
|---|---|---|---|---|
| 航機事業 売上高 | — | 205億円 | 245億円 | 270億円 |
| うち航空・宇宙(全社ベース) | 50億円 | 111億円 | 130億円 | — |
| 航機事業 セグメント利益 | — | 21.9億円(利益率10.7%) | — | — |
| 全社 営業利益 | 181億円 | 89億円 | 95億円 | 180億円 |
前中計の5年間で、航空・宇宙向けの売上は50億円から111億円へ倍以上に伸びた。会社自身が「防衛での堅調な事業環境と生産体制拡充により大きく拡大」と振り返っている。同じ5年で全社の営業利益は181億円から89億円へ半減し、ROEは9.6%から5.1%に落ちた。伸びたのは航機、沈んだのはコネクタ。この対比がこの会社の現在地だ。
2026年4月に発表された新しい中期経営計画(2026〜2028年度)では、航機事業について「防衛の生産能力倍増」「新規装備品への参入で事業規模拡大を継続」「QCD重視で防衛の利益率10%以上を確保」と書いてある。防衛予算が増えた分だけ受注は伸びるが、儲からない仕事を取りに行かない、というのが方針だと読める。2028年度に全社営業利益180億円、ROE8%への回帰を目標に置いていて、その土台の一角に航機を据えている。
そして冒頭の第1四半期だ。2026年4〜6月の航機事業は売上48億円、セグメント利益7.2億円で利益率15%。航空・宇宙向けだけ見ると前年同期の17億円から22.5億円へ3割伸びている。同じ期間のコネクタ事業は売上533億円で利益8億円、利益率1.5%。人数でいうと、コネクタに1万1千人がいて航機は400人ちょっとだ。400人の部門が、1万人の部門と同じくらいの利益を出した四半期だった。
もっとも、これを「航機事業が化けた」と読むのは早い。コネクタの利益が原材料高と値下げ圧力で一時的に潰れているだけで、コネクタが正常なら航機の利益はその2割程度に収まる。大事なのは、航機が景気に左右されにくい下支えとして機能し始めていること、そしてその下支えが年200億円台に育ったことで、以前より会社全体の「床」が高くなったことだ。
日本の防衛企業を受注残ベースで比較した記事はこちらにある。JAEは三菱重工や三菱電機のような主契約企業ではなく、それらの下に部品を納める立場なので、防衛省との直接契約額だけを見ると存在感は小さく見える。産業全体の中でどこに位置するかは日本の防衛産業・軍需企業一覧で確認できる。
防衛省との因縁

防衛企業の記事を書くとき、私はその会社が過去に防衛省とどう揉めたかを必ず見る。JAEはこの点で、正直に言うと前科持ちだ。しかも3回ある。
1回目は1991年7月。ミサイル部品をイランに不正輸出したとして、元社長ら幹部4人が外為法違反などの容疑で警視庁に逮捕された。対象になったのは慣性航法装置とジャイロ、つまり1961年のハネウェル提携から30年かけて育てた航機事業の中核技術そのものだった。当時の会長も社長もNEC出身で、株主代表訴訟にまで発展している。
2回目は1998年から99年にかけて。防衛庁調達実施本部の背任事件で、NECから来ていた社長が共犯として起訴され、防衛庁納入品の過大請求の延滞金を含む約77億4,470万円を1999年9月に国へ返還して、会社は最終赤字に沈んだ。
3回目は2013年。防衛省の制度調査で航機事業部の原価集計に疑義が出て、社内調査の結果、作業時間の過大計上が見つかった。会社は同年10月に防衛省へ報告して指名停止処分を受け、翌2014年7月に再発防止策を含む報告書を出して解除された。会社のウェブサイトに今も社内調査結果と再発防止策のページが残っている。
3回やって、それでも防衛省は取引を止めなかった。ここは冷めた目で見るべきところで、理由は簡単だ。慣性航法装置やフライ・バイ・ワイヤの制御装置を国内で作れる会社が他にほとんどない。東京計器、多摩川精機、三菱プレシジョンといった慣性センサの同業は存在するが、航空機搭載の一式を担える先は限られる。代替が利かない部品を握っている企業は、不祥事があっても切られない。それは事業の強さの証明であると同時に、統治の緩みを生みやすい構造でもある。投資家として見るなら、この会社の防衛事業には「儲かる」と「また何か起きるかもしれない」が同居していることを頭に置いておいたほうがいい。
防衛産業のサプライチェーンがなぜ撤退や不祥事に弱いのか、構造の話はこちらの記事にまとめた。
資本の変遷:NECから京セラへ
この会社の株を語るうえで避けて通れないのが親会社の話だ。
JAEはNECの出資で生まれ、2017年1月にはNECがTOBで議決権比率51%まで引き上げて連結子会社になった。ところが2024年3月、JAE自身が自己株式の公開買付けを実施してNECの持分を買い取り、NECの比率は33%台へ下がって持分法適用に切り替わる。買付価格は1株2,605円だった。NECはITサービスと社会インフラに集中する方針で、コネクタ会社を抱える理由が薄れていた。NEC自身の防衛事業についてはNECの防衛事業を完全解説で書いている。
そして2025年10月30日、京セラがNECの保有株33.0%(2,223万株)を市場外の相対取引で取得し、JAEと資本業務提携を結んだ。取得額は後日の大量保有報告書で807億円、1株あたり3,630円と判明している。発表日の終値は2,807円だったので、3割近いプレミアムをNECに払ったことになる。
面白いのは市場の反応だ。提携発表の翌日、JAE株はストップ安売り気配で始まった。プレミアム付きで大株主が付いたのに株価が崩れた理由は、同じ日に2026年3月期の業績予想を大きく下方修正したからで、純利益予想を130億円から60億円へ引き下げた。京セラの話は好材料、決算は悪材料、市場は決算のほうを見た。
京セラが欲しかったのはコネクタだ。谷本社長は会見でコネクタ市場の成長と車載での強みを挙げていて、航機事業には触れていない。新中計を読んでも、京セラとの協業で書かれているのはチェコ工場での車載コネクタ製造委託、欧州の顧客基盤、米国子会社KAVXの販売網を使った衛星ビジネスへの参入といった話で、防衛向け慣性センサは京セラのシナジーの外にある。つまり航機事業は、京セラ傘下になった後もJAE単独で育てる事業だと見ておいてよさそうだ。京セラは取締役1名を派遣する権利を持っている。
収益の見方:防衛株として買うと必ず失望する構造

ここが本題だ。防衛関連銘柄として日本航空電子を見るとき、私はまず「この株は防衛では動かない」と自分に言い聞かせるようにしている。
理由は売上構成に尽きる。売上の9割がコネクタで、コネクタはスマートフォンと自動車と産業機器の需要に振り回される。さらに接点に使う金や銅の相場、それに為替。2026年3月期の純利益が39%減った理由も、第1四半期の営業利益が8割減った理由も、全部コネクタ側の話だった。航空・宇宙が3割伸びようが、コネクタが1%崩れれば消し飛ぶ。
株価の指標を確認しておく。2026年8月下旬時点で株価は2,400円台前半、予想PERは27倍前後、予想配当利回りは2%程度、PBRは1.1倍あたり。年初来高値は2月27日の2,703円。配当は前期の60円から今期は50円に減る予定で、配当性向30%以上という方針は維持しつつ、利益が減った分だけ配当も減らす、という素直な設計だ。
PER27倍は電子部品株としてはかなり高い。ただしこれは利益が潰れているせいで分母が小さくなっているだけで、中計どおり2028年度に営業利益180億円へ戻れば、今の株価はPER1桁台後半に化ける。逆に言えば、今の株価は「利益の回復」をある程度織り込んで買われている。防衛の伸びを買う株ではなく、コネクタの利益回復に賭ける株で、防衛はその賭けの下限を高めてくれる保険、というのが私の整理だ。
もう一つ、上に重い水準がある。京セラの取得単価3,630円だ。京セラは市場で買い増す義務はないし、この価格を株価が意識する理屈もないのだが、大株主がその値段で3割プレミアムを払ったという事実は、企業価値の見立てとして頭の片隅に置いておく価値がある。NECが2024年に手放した2,605円、京セラが2025年に買った3,630円、今の2,400円台。3つの数字を並べると、この株がどこで誰にどう評価されてきたかが見える。
見るべき指標を絞るなら次の5つだ。
- 航機事業のセグメント利益率が10%を割らないか(会社の掲げた下限)
- 航空・宇宙向け売上が今期予想の130億円に届くか
- 全社の売上総利益率が16%から戻ってくるか(コネクタの値付けと原材料の勝負)
- 金・銅の価格と、1ドル160円台の為替がどう動くか
- 防衛省向けで「新規装備品」への参入が具体的に開示されるか
4番目の為替については、防衛株全般との関係を為替と防衛株の関係で整理した。
投資家としてもう少し広く見るなら、この会社は三菱重工・川崎重工・IHIの御三家とは明らかに性格が違う。御三家は防衛が本業の柱の一つで、防衛費の増額がそのまま業績に効く。JAEはそうではなく、防衛は業績の床を高くする役割だ。防衛関連銘柄の全体像は防衛関連銘柄 完全投資ガイドで、時価総額の小さい銘柄群は防衛関連の中小型株10社でそれぞれ書いている。個別株を選ぶ手間をかけたくないなら、防衛ETFの構成銘柄を確認するという手もある。ただしJAEが各ETFに入っているかは組入銘柄を自分で確かめてほしい。→ 防衛ETF・投資信託比較
技術ファンの視点:慣性センサーの次

最後に、投資とは別の話をひとつ。
日本の防衛装備がこれから向かう先は、長射程化と無人化と宇宙だ。長射程のミサイルは飛行時間が長くなるほど慣性装置の精度が効く。無人機は人が乗らない分、機体が自分で姿勢と位置を把握する装置に全部を委ねる。宇宙では衛星が自分の向きを知るための姿勢基準装置がなければ何も始まらない。日本が保有するミサイルの全体像はこちら、航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」へ向かう話はこちらで書いた。
その3つ全部の共通部品が慣性センサで、JAEはそこに70年前から座っている。新中計で米国の衛星ビジネスへの参入を書いているのも、コネクタの話ではあるが、方向としては同じだ。防衛予算9兆円時代の恩恵が大きく出るのは機体やミサイルを組む主契約企業だが、その中の「内耳」を担える会社が国内で限られることは、部品の値段よりずっと大きな価値を持っている。三菱電機や島津製作所のように、より上のレイヤーで防衛をやっている会社との違いは、三菱電機の防衛事業と島津製作所の防衛事業の記事と読み比べると見えてくると思う。
コネクタ屋が本業に戻る日は来ないだろう。ただ、社名に残った「航空」の二文字が、いま一番利益率の高い事業を指している。それだけで私はこの会社を眺めるのがちょっと楽しい。
よくある質問
日本航空電子の防衛事業は売上の何割か
2026年3月期の連結売上高2,278億円のうち航機事業は約205億円で9%。そのうち防衛と宇宙を合わせた航空・宇宙向けが約111億円なので、防衛関連は全社の5%程度と見ておけばよい。残りの航機事業は油田掘削や半導体製造装置向けの民需だ。
日本航空電子はどの装備品に関わっているのか
会社が公開しているのはF-2の飛行制御装置、防衛省向け航空機の慣性航法装置、飛翔体用の慣性装置、H-IIAロケットの慣性センサユニット、太陽観測衛星「ひので」の姿勢基準装置などだ。個々のミサイルや機体の名前は、F-2以外は公表されていない。
京セラの出資で防衛事業はどうなるのか
京セラが取得した33%の株はコネクタ事業のシナジーが目的で、中計に書かれた協業も車載コネクタや欧米の販路の話だ。防衛向け慣性センサは協業の対象に入っていないので、航機事業はJAEが単独で育て続ける形になると見ている。
防衛株として買う価値はあるか
売上の9割がコネクタなので、株価は防衛ではなくスマホ・車載・原材料相場・為替で動く。防衛はその変動の下限を高くする役割で、防衛費の増額を素直に取りに行きたいなら主契約企業のほうが向いている。ここは断定できないし、各自で判断してほしい。
過去の不祥事は今も影響しているか
2013年の過大請求で受けた指名停止は2014年7月に解除されており、その後は防衛向け売上が5年で倍以上に伸びている。取引上の影響は解消されているが、3度の前歴がある会社だという事実は、投資家の側が覚えておくべきことだ。
まとめ
日本航空電子工業は東証の分類ではコネクタ大手だが、創業時の看板である航機事業が、防衛予算の追い風で年200億円規模に育ち、コネクタが不調な局面では利益の半分近くを支えるところまで来た。作っているのは慣性航法装置や飛行制御装置、ジャイロと加速度計、つまり装備品の「内耳」で、国内で代替の利きにくい部品を握っている。一方で株価は9割を占めるコネクタで動くので、防衛株として買うと肩透かしを食う。防衛を「床」、コネクタの回復を「天井」と分けて見るのが、この銘柄との付き合い方だと私は思っている。
出典
- 日本航空電子工業「2027年3月期 第1四半期決算短信」2026年7月29日
- 日本航空電子工業「2026年3月期 決算短信」2026年4月24日
- 日本航空電子工業「中期経営計画(2026〜2028年度)」2026年4月24日
- 日本航空電子工業「防衛省に対する過大請求事案の社内調査結果と再発防止の施策について」
- 日本航空電子工業 採用サイト「プロダクツ」(航機事業の製品一覧)
- 京セラ「日本航空電子工業と資本業務提携契約を締結」2025年10月30日
- NEC「持分法適用関連会社(日本航空電子工業)株式の譲渡について」2025年10月30日
- 日本経済新聞「京セラ、807億円で日本航空電子工業株33%取得」2025年11月6日
- 日本経済新聞「航空電子の26年3月期、純利益39%減」2026年4月24日
- The社史「日本航空電子工業の歴史」(沿革・1991年不正輸出事件・1998年背任事件の整理)
- ドローンジャーナル「日本航空電子工業、航空機技術を応用したドローン用フライトコントローラーを披露」2024年6月







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