
日本の防衛ドローン企業を調べるとき、空撮用マルチコプターのメーカーだけを並べても全体像は見えない。防衛省が整備を急ぐ「無人アセット」には、空を飛ぶUAVだけでなく、海面を航走するUSV、海中を進むUUVが含まれる。さらに、機体を自律化するAI、複数機を束ねる管制ソフト、海中目標を探すソナー、量産と維持整備の基盤までが一つの供給網を構成するからだ。
防衛省は2026年度予算案で無人アセット導入に1,001億円を計上し、2027年度中に多層的沿岸防衛体制「SHIELD」を構築する方針を示した。対象は情報収集、ターゲティング、攻撃、戦闘支援まで広い。[1] 日本の無人機開発は、実証中心から早期取得と継続改良の段階へ移りつつある。
- 空のUAV・海上のUSV・水中のUUVを分けて整理
- 重工・航空機企業・産業ドローン企業・新興企業が分業
- 展示や実証だけでなく契約・納入・継続運用を確認する
- 妨害耐性・自律性・量産性・更新速度が重要
本稿では、2026年7月31日時点の公開資料を基に、日本企業をUAV・USV・UUV別に整理する。契約・納入実績のある企業とデュアルユース候補を分け、防衛スタートアップ全般ではなく、機体、管制、自律化、水中センシングに検索意図を限定した。
関連する広いテーマは、別記事「日本の防衛スタートアップ一覧【2026】」へ譲る。
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UAV・USV・UUVの違い
- UAV:空を飛ぶ無人航空機
- USV:海面を航行する無人水上艇
- UUV・AUV:水中を航行する無人機
- ROV:ケーブルで遠隔操作する水中機
UAVはUnmanned Aerial Vehicleの略で、無人航空機を指す。小型空撮機、固定翼機、垂直離着陸機、無人ヘリコプター、長時間滞空型機、攻撃型機などを含む。日本で一般に「ドローン」と呼ばれる機体の多くはUAVである。
USVはUnmanned Surface Vehicleの略で、無人水上艇を指す。海面上を航走し、警戒監視、通信中継、対潜捜索、機雷戦、輸送、攻撃支援などを担う。艇体だけでなく、波浪下での自律航行、遠隔管制、衛星通信、衝突回避、長期間の電源管理が重要になる。
UUVはUnmanned Underwater Vehicleの略で、無人水中航走体の総称である。自律航行するAUVはUUVの一種だ。一方、ケーブルでつながれ、人が遠隔操縦するROVも「水中ドローン」と呼ばれるが、厳密にはAUVとは別物である。防衛用途では、機雷捜索、海底監視、港湾警戒、海底地形調査、潜水作業の確認などで使われる。
私は、企業数を数えるよりも、その企業が「機体」「自律制御」「センサー」「量産」「維持整備」のどこを握っているかを見るべきだと考える。無人機は機体単独で戦力になるのではなく、通信と情報処理の網へ組み込まれて初めて価値を持つからだ。
日本の防衛ドローン企業一覧
- 完成機・管制・センサー・自律AIを区別
- 契約・納入・実証・構想を分ける
- 防衛専業とデュアルユース企業を含む
- 公開情報で接点を確認できる企業を掲載
本稿独自の公開情報区分は次の通りである。
- A:防衛省・自衛隊との契約、納入、正式採用を公開資料で確認できる
- B:防衛研究、共同訓練、装備化検討、明確な防衛向け開発を確認できる
- C:技術的な防衛転用可能性は高いが、防衛契約や採用は公開資料で確認できない
| 企業 | 主な領域 | 公開情報区分 | 公開資料で確認できる位置付け |
|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | UAV・USV・UUV | A | 無人航空機研究、群管制、多目的USV、機雷探知AUVを展開 |
| SUBARU | UAV | A | 遠隔操作型支援機の実験機を防衛装備庁へ納入 |
| ACSL | UAV | A | SOTENが自衛隊装備品として採用、防衛省向け受注を継続 |
| 日立製作所 | UUV | A | 機雷捜索用水中無人機OZZ-6・OZZ-7の契約実績 |
| IHI | UUV | A | 防衛省へのAUV納入実績、浅水域UUV研究契約 |
| Oceanic Constellations | USV | A | 防衛装備庁のマルチスタティックソーナー実証を受注 |
| JMUディフェンスシステムズ | USV | B | 多目的水上自律無人艇を開発、機雷戦・警戒監視を想定 |
| 川崎重工業 | UAV・UUV | B | Eurodroneの対潜用途を検討、AUV技術を保有 |
| Prodrone | UAV・水空一体 | B | 自衛隊訓練、対処型ドローン、水空一体機の開発を公表 |
| ヤマハ発動機 | UAV | B | 長距離無人ヘリで自衛隊指揮下の災害輸送を実施 |
| FullDepth | ROV | B | 陸上自衛隊の水中確認役務でDiveUnit KAIが指定 |
| AirKamuy | UAV | C | 低コスト段ボール製UAVを防衛展示会へ出展 |
| イームズロボティクス | UAV | C | 複数ドローンの自律分散協調技術を開発 |
| スペースエンターテインメントラボラトリー | UAV・水上航行 | C | 飛行艇型ドローンHAMADORIを開発 |
| BlueArch | UUV・AUV | C | 国産小型ホバリングAUVを開発する東大発スタートアップ |
この一覧は各社を一律に「兵器メーカー」と認定するものではない。防災・物流・海洋調査企業も含み、防衛との接点を公開資料の強さで分けた。非公表契約もあり得るため、公開情報だけで全供給網は確定できない。

UAV関連企業
- 偵察・監視・目標情報
- 物資輸送と通信中継
- 対ドローンと損耗型機
- 有人機との協働
三菱重工業|機体から自律AI、群管制までを押さえる
三菱重工業は、日本の防衛無人機分野で最も広い公開実績を持つ企業である。防衛装備庁の2024年度契約一覧には、「無人航空機のアトリタブル機体システム実証研究」約36.36億円、「無人航空機群の統合管制・制御の実証に関する研究」約24.59億円の契約相手として同社が記載されている。[2]
2026年3月には、米Shield AIの開発環境を活用し、20kg級の実験無人機ARMDへミッション・オートノミーを実装する飛行実証を公表した。AI開発から実機飛行までを8週間で進めた点が重要である。[3] 無人機の価値が、機体の最高速度や航続距離だけでなく、任務ソフトを短期間で書き換えられるかどうかへ移っていることが分かる。
民生・防災側では、最大積載量200kgを目標とする中型機と、航続距離1,000kmを掲げるVTOL型機を自衛隊の災害訓練で実証している。[4] これらがそのまま防衛装備になると断定はできないが、補給、離島輸送、滑走路非依存運用に必要な技術基盤は共通する。
SUBARU|有人機と無人機を組み合わせる支援機研究
SUBARUは2025年7月、防衛装備庁へ「遠隔操作型支援機技術の研究」に用いる実験機を納入した。研究目的は、有人航空機と連携する無人航空機の飛行経路生成と、有人機パイロットによる遠隔管制の実現である。[5]
同年の飛行試験では、複数の無人実験機と有人ヘリコプターによる編隊飛行が行われた。有人機のセンサー範囲や任務能力を無人機で拡張する研究である。
SUBARUの航空宇宙部門には長い無人機開発の蓄積があり、小型マルチコプターだけを見ていると同社の位置付けを見落とす。
ACSL|国産小型UAVで量産と継続納入に踏み込む
ACSLは、国産小型UAVの量産企業として防衛調達との距離が近い。2026年6月の公表資料では、SOTENが自衛隊の装備品として採用され、過去3年間に継続納入していると説明した。[6]
さらに2026年4月、防衛省向け小型空撮機体について約3.5億円と約0.7億円の大型案件を受注したと開示した。[7] 防衛ドローン市場で重要なのは、展示会で試作機を見せることより、量産、納期、保守、改修を繰り返せることである。ACSLは小型機に限れば、研究段階から調達段階へ進んだことを数字で確認できる数少ない企業だ。
一方で、上場ドローン専業に近い企業であるため、開発費、補助事業、量産立ち上げの負担が業績へ表れやすい。防衛需要の拡大だけを見て、短期利益まで直線的に伸びると考えるのは危険である。
川崎重工業|EurodroneとP-1の協働を検討
川崎重工業は2026年6月、Airbus Defence and Spaceと滞空型無人機分野の協業検討に関する覚書を締結した。対象はEurodroneの対潜用途への適用可能性と、同社が手掛けるP-1哨戒機とのハイブリッド運用である。[8]
現時点では採用や受注を示す契約ではない。しかし、海上監視と対潜戦では、有人哨戒機だけで広大な海域を常時覆うのは難しい。長時間滞空UAVを前方のセンサーとし、P-1を指揮・分析・攻撃判断の中核に置く構想は、日本の地理条件と相性がよい。
Prodrone|大型産業機と対処型、水空一体へ展開
Prodroneは名古屋を拠点とする産業用ドローン企業である。2026年5月の防衛大臣視察では、最大離陸重量45kg級のPD6B-CAT3、AIを用いる地上管制システム、長距離型GT-M、水空一体ドローン、対処型ドローンの試作機などを公開した。[9]
同社は航空自衛隊や陸上自衛隊の訓練にも参加している。調達契約の証明ではないが、強風下の輸送、通信環境が乏しい地域での運用、複数機管制は防衛用途と重なる。
防衛向けの評価では、機体ラインアップの多さより、対電子戦環境、セキュア通信、量産能力、部品の国内調達率が次の確認点になる。
ヤマハ発動機|無人ヘリの長距離・重量物輸送
ヤマハ発動機は農業用無人ヘリで培ったエンジン機の運用経験を持つ。FAZER R G2は最大搭載量50kg、長時間飛行、衛星通信を用いた遠隔運用を特徴とする。[10]
能登半島地震では、航空自衛隊の指示の下、のと里山空港と七尾港の往復約78kmで緊急物資を輸送した。[11] これは戦闘装備の採用例ではない。しかし、災害派遣で確認された長距離輸送、遠隔運航、現場外のオペレーションルームからの管制は、後方補給の無人化に直結し得る。
AirKamuy|低コスト量産を狙う段ボール製UAV
AirKamuyは、段ボールを構造材へ使う固定翼UAV「AirKamuy 150」をDSEI Japan 2025へ出展した。会社側は、訓練標的、偵察、輸送に加え、低RCS性を生かす用途やスウォームへの応用可能性を示している。[12]
ただし、展示と装備採用は別であり、2026年7月末までに自衛隊採用や量産契約は確認できない。評価点は、低価格で多数を作り、現場補修と短い改修周期を回せるかである。
イームズロボティクス|一人で複数機を扱う自律分散協調
イームズロボティクスは、東京大学や産業技術総合研究所などと、複数ドローンを一人のオペレーターが協調運用する技術を開発した。高解像度映像とLiDARを用いた情報収集、機体間の衝突回避、リアルタイム3D化を組み合わせている。[13]
公表用途は警備、消防、防災が中心で、防衛契約を示すものではない。ただし、少人数で多数機を扱う能力は自衛隊の省人化課題と合致する。群運用ソフトウェア企業として見る方が実像に近い。
スペースエンターテインメントラボラトリー|海から発進できる飛行艇型
スペースエンターテインメントラボラトリーのHAMADORI 3000は、水上滑走で離着水し、水面航行もできる飛行艇型UAVである。公表仕様は航続時間120分、国内運用範囲20km、EO・IRセンサー、自動目標追尾機能である。[14]
防衛省の採用は確認できないが、滑走路を必要とせず、船舶から展開できる点は海洋監視向けデュアルユース候補として注目できる。

USV関連企業
- 沿岸・港湾監視
- 機雷戦と対潜支援
- 群運用による広域捜索
- 補給・通信中継
三菱重工業|戦闘支援型多目的USVの中心企業
防衛装備庁の契約一覧では、三菱重工業が2025年3月に「戦闘支援型多目的USVの研究試作」を約247.94億円で契約している。[2] 防衛省の政策評価資料では、警戒監視、対艦ミサイル運用、任務モジュールの換装、複数USVの協調などが研究要素として示されてきた。
さらに同社は、無人機雷排除システム用水上無人機の契約実績も持つ。日本のUSV分野では、船体、推進、艦載兵器、指揮通信を統合できる総合力が強みになる。
Oceanic Constellations|小型USV群とソナーを結ぶ新興企業
Oceanic Constellationsは2026年3月、防衛装備庁の「マルチスタティックソーナー技術概念実証(USV)」を4億9,888万635円で受注した。複数の小型USVを連携させ、ある艇が送信した捜索ビームを別の艇で受信し、水中目標の捜索範囲を広げる技術を実証する。[15]
この契約にはスタートアップ技術提案評価方式が適用され、新興企業へ早期実証の入口が開いた。
私がUSV分野で最も注目するのは、艇の速力ではなく、群制御、通信、電源、ソナーを一つの運用サービスへまとめる能力だ。外洋で小型艇を長期間働かせるには、転覆、塩害、通信断、回収不能を前提にした設計が必要になる。
JMUディフェンスシステムズ|多目的水上自律無人艇
JMUディフェンスシステムズは、FFMの無人機雷排除システムに必要な技術検証を念頭に、多目的水上自律無人艇を開発した。公表された試作艇は、全長11m、最大速力23ノットで、自動航走、定点保持、遠隔管制、LiDARと可視・赤外線カメラによる周辺認識、ペイロード換装を備える。[16]
同社はUSVを艦艇搭載システムとして設計できる。装備数や最新契約の公表が限られるため、区分はBとした。

UUV・AUV・水中ドローン関連企業
- 機雷探知と海底捜索
- 水路・港湾調査
- ソナーによる広域監視
- 潜水艦技術との連携
三菱重工業|機雷探知AUVの実装企業
三菱重工業は、自律型水中航走式機雷探知機OZZ-5を製品として公表している。無人で航走し、海底や水中の機雷候補をソナーで探知する機体である。[17]
同社は日仏共同研究でも次世代機雷探知技術を担当した。海中ではGPSが使えず通信帯域も狭いため、搭載AI、自己位置推定、任務後のデータ統合が重要になる。
日立製作所|OZZ-6・OZZ-7の契約実績
防衛装備庁の2025年3月31日付契約一覧には、日立製作所を相手方として、機雷捜索用水中無人機の小型OZZ-7を14式、約86.08億円、中型OZZ-6を1式、約4.99億円で契約した記録がある。[2]
日立自身もディフェンスシステム事業部で自律型水中ドローンの開発を進めていると公表している。[18] 総合IT企業としての画像認識、データ処理、システム統合と、水中機の製造を結び付けられる点が特徴だ。
IHI|浅水域研究と海洋調査AUV
IHIは1990年代からAUV開発を続け、防衛省と海上保安庁への納入実績を公表している。[19] 防衛装備庁の契約一覧には、2025年3月の「浅水域における無人水中航走体の研究」約1.60億円も記載されている。[2]
海上保安庁向けAUV「ごんどう」は全長約4.8m、重量約900kg、12時間以上稼働する。[20] 航法、耐圧構造、音響センサー、自動浮上は海洋安全保障にも共通する基盤技術である。
川崎重工業|潜水艦技術を応用したAUV
川崎重工業は、潜水艦技術を応用し、海中設備を保守・点検するAUVを開発している。水中ステーションへの自動ドッキング、高速光通信、非接触充電により、母船へ毎回揚収せず長時間運用する構想だ。[21]
主用途は海洋産業で、防衛UUVの採用例ではない。ただし、自動ドッキングと充電は持続的な海底監視に重要な技術である。
FullDepth|ROVだが自衛隊の水中確認で使用
FullDepthのDiveUnit KAIは、テザーケーブルで操縦する国産産業用ROVである。最大潜航深度300m、最大航行速度2ノット、イメージングソナーや映像鮮明化装置などを搭載できる。[22]
陸上自衛隊水陸機動教育隊の2025年仕様書では、水中訓練の確認役務に使用する機種としてDiveUnit KAIが指定された。[23] これはAUVの装備化ではなく民間ROVを使う役務契約だが、訓練確認や港湾内の状況把握に使えることを示す。
BlueArch|国産小型ホバリングAUVを狙う新興企業
BlueArchは2026年設立の東京大学発スタートアップで、全長約1.5mの小型ホバリングAUV「HATTORI Neo」を開発する。エッジAI、DVL、ホバリング機構を組み合わせ、海中検査、海洋エネルギー、海中・海底監視を用途として掲げる。[24]
2026年7月末時点で防衛契約や採用は公表されていないため区分Cとした。小型AUVと複数機管制を事業化し、将来の異種無人機連携へ入れるかが成長の分岐点になる。

防衛ドローン企業を評価する5つの軸
- 契約と納入実績
- 損耗を含む総費用
- GPS・通信妨害耐性
- 一人あたりの管制機数
- 国内供給網と更新速度
1.実証ではなく契約と納入を確認する
展示会出展、共同研究、訓練参加、情報提供依頼への応募、装備品契約は意味が異なる。企業の防衛事業を評価するときは、防衛装備庁の契約一覧、企業の適時開示、自衛隊の仕様書まで確認したい。
防衛省は2026年、迎撃ドローンの早期取得プログラムを進め、短期間の実機評価後に調達へ移る仕組みを示した。[25] 開発力だけでなく、数十機単位を短納期で供給する製造力が選別条件になる。
2.機体価格より損耗を含む総費用を見る
安価な機体でも、地上局、通信、訓練、予備部品、整備が高価なら大量運用は難しい。共通部品とソフト更新を含む総費用で見る必要がある。
防衛省の情報・提案要求では、国内の量産・維持整備基盤やライフサイクルコストを重視している。調達価格だけを比較するランキングでは、企業の本当の競争力を測れない。
3.GPSと通信が使えない環境で動けるか
実戦環境では、GPS妨害、通信妨害、電波探知が前提になる。UAVには画像航法や地形照合、USVには慣性航法と衝突回避、UUVにはDVLと音響航法が必要だ。通信が途切れても任務を継続・中止・帰還できる自律性が問われる。
私が機体スペックより重視するのは、こうした劣化環境での挙動が試験データで示されているかである。平穏な試験場で長く飛べることと、妨害下で任務を完了できることは同じではない。
4.一人で何機を扱えるか
一機に一人の操縦者が必要なら、機体を増やすほど人員も増える。防衛省が人口減少を無人化の理由に挙げる以上、群管制、自律任務計画、異常機だけを人へ通知する仕組みが欠かせない。
三菱重工業、Oceanic Constellations、イームズロボティクス、BlueArchなどを比較すると、空・海上・海中で対象は違っても、複数機を統合管制する方向は共通している。
5.国内サプライチェーンと更新速度を見る
全構成品の即時国産化は難しい。重要なのは部品の出所と代替手段を把握し、ソフトウェア権限と設計情報を国内で管理できることだ。
かつての兵器産業が一機・一艦の完成度を競ったとすれば、無人機時代の主役は、安い機体、電波、音響、AI、補給を束ねる「見えない造兵廠」である。名機を一つ作るより、失われても補充し、翌週にはソフトを更新できる産業基盤の方が強い。
防衛ドローン関連の上場企業と投資上の見方
- 防衛売上比率を確認
- 研究案件と量産受注を区別
- 開発費・設備投資を利益と分ける
- 未上場の有力企業も多い
上場企業として追いやすいのは、三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)、SUBARU(7270)、日立製作所(6501)、ヤマハ発動機(7272)、ACSL(6232)である。Oceanic Constellations、Prodrone、FullDepth、AirKamuy、イームズロボティクス、スペースエンターテインメントラボラトリー、BlueArchは非上場企業である。
ただし、大手重工や日立にとって、個別ドローン案件が連結業績へ与える影響は限定的な場合がある。逆にACSLは無人機事業への純度が高い一方、研究開発費、増産投資、資金調達による変動も大きい。私は投資判断では、「防衛関連」という看板より、受注残、契約期間、量産移行、営業キャッシュフロー、増資の可能性を先に見る。
非上場企業は、大手との共同研究、早期装備化実証、出資先、量産委託先から供給網を追える。予算増と、各社が高収益のソフトや継続整備を取れるかは別問題である。
よくある質問
日本製ドローンはすでに自衛隊で採用されている?
採用・納入が確認できる。小型UAVではACSLのSOTENが自衛隊装備品として採用され、防衛省向けの継続納入が公表されている。大型・研究用途ではSUBARUの遠隔操作型支援機実験機、海中では三菱重工業、日立製作所、IHIの関連契約や納入実績を確認できる。 自衛隊は海外製UAVも導入しており、国産企業一覧と保有機一覧は同じではない。
UAV・USV・UUVのすべてを手掛ける日本企業は?
公開資料で三領域すべてへの直接的な関与を最も確認しやすいのは三菱重工業である。UAVの機体・自律AI・群管制、戦闘支援型多目的USV、機雷探知AUVを手掛ける。 一社が全構成品を内製するわけではなく、ソナー、通信、電源、半導体、ソフトウェアでは協業が必要になる。
日本の防衛ドローンスタートアップで契約実績が明確なのは?
Oceanic Constellationsは、防衛装備庁の小型USVによるマルチスタティックソーナー実証を約4.99億円で受注しており、契約相手と金額が公表されている。ACSLも上場企業ではあるが、規模と事業性格ではドローン専業スタートアップの流れを引き継ぎ、防衛省向け受注を開示している。 AirKamuyやBlueArchは技術的に注目されるものの、2026年7月末時点では防衛契約を公開資料で確認できない。期待と実績を分けて見る必要がある。
水中ドローンはすべてUUVなの?
一般語ではまとめて水中ドローンと呼ばれるが、技術的には異なる。AUVは自律航行するUUVで、ROVはケーブルを介して人が遠隔操縦する。FullDepthのDiveUnit KAIはROVであり、三菱重工業のOZZ-5やIHIのAUVとは運用方式が違う。
今後どの分野が伸びやすい?
短期では、小型UAVの偵察、迎撃、拠点防護、艦艇攻撃、物資輸送が調達へつながりやすい。中期では、USVの対潜捜索と多目的化、UUVの港湾・沿岸監視、複数無人機の統合管制が焦点になる。 私は、単独機の高性能化より、安価な機体を多数運用し、有人装備とデータを共有する企業が伸びやすいと見る。ただし、装備化の時期と企業名は公表前に断定できないため、情報提供要求、実証契約、量産契約の順に確認するのが堅実だ。
まとめ
- 小型機の大量調達
- 群制御と自律協調
- 海洋無人機の実装
- ソフトウェア更新と現場改良
日本の防衛ドローン企業は、UAVでは三菱重工業、SUBARU、ACSL、USVでは三菱重工業、Oceanic Constellations、JMUディフェンスシステムズ、UUVでは三菱重工業、日立製作所、IHI、川崎重工業が中心となる。FullDepthとBlueArchはROVと小型AUVから周辺市場を広げている。
2026年の転換点は、無人機が「将来技術」ではなく、2027年度を意識した早期取得と量産の対象になったことである。企業を見る基準も、飛べるか、潜れるかという段階から、妨害下で自律運用できるか、多数を安く補充できるか、短期間でソフトを更新できるかへ変わった。
日本の勝負どころは、世界一高価な無人機を一機作ることではない。UAV・USV・UUVを同じ情報網へつなぎ、民生で鍛えた技術を防衛へ速く移し、損耗後も供給を止めない産業基盤を作れるかにある。
参考資料
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- <a href="https://www.mod.go.jp/atla/souhon/supply/jisseki/rakusatu/kohyo_r06/06_zuikei_kijunijo-03.xlsx">防衛装備庁「令和6年度 随意契約に係る情報の公表(基準額以上)」</a>
- <a href="https://www.mhi.com/jp/news/26031702.html">mhi.com</a>
- <a href="https://www.mhi.com/jp/news/250731.html">三菱重工業「開発中の無人機による災害発生時の救援物資輸送を実証」2025年7月31日</a>
- <a href="https://www.subaru.co.jp/news/2025_07_09_152748/">subaru.co.jp</a>
- <a href="https://www.acsl.co.jp/admin/wp-content/uploads/2026/06/20260610_Japan-Drone-2026%E3%81%AB%E3%81%A6%E6%94%BF%E5%BA%9C%E3%83%BB%E9%98%B2%E8%A1%9B%E9%96%A2%E4%BF%82%E8%80%85%E3%81%8C%EF%BC%A1%EF%BC%A3%EF%BC%B3%EF%BC%AC%E5%B1%95%E7%A4%BA%E3%82%92%E8%A6%96%E5%AF%9F_final.pdf">acsl.co.jp</a>
- <a href="https://www.acsl.co.jp/admin/wp-content/uploads/2026/04/20260407_%E5%A4%A7%E5%9E%8B%E6%A1%88%E4%BB%B6%E3%81%AE%E5%8F%97%E6%B3%A8%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B_final.pdf">ACSL「大型案件の受注に関するお知らせ」2026年4月7日</a>
- <a href="https://www.khi.co.jp/news/detail/20260626_1.html">khi.co.jp</a>
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- <a href="https://digital-highlights.hitachi.co.jp/_ct/17747074">日立製作所「自律型水中ドローンを大きなビジネスの柱に」2025年2月18日</a>
- <a href="https://www.ihi.co.jp/technology/techinfo/contents_no/__icsFiles/afieldfile/2024/06/20/09.pdf">IHI「次世代の海洋産業をリードするIHIのAUV技術」</a>
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- <a href="https://www.khi.co.jp/mobility/marine/ships/auv.html">川崎重工業「自律型無人潜水機(AUV)」</a>
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- <a href="https://bluearch.co.jp/">BlueArch「国産自律型無人潜水機(AUV)の開発・製造」</a>
- <a href="https://www.mod.go.jp/j/press/news/2026/06/05f.pdf">防衛装備庁「迎撃ドローン早期取得プログラムの実施について」2026年6月5日</a>
参考資料・主な出典
防衛省「防衛力の変革の方向性②/同志国との連携」2026年3月|資料を確認
防衛装備庁「令和6年度 随意契約に係る情報の公表(基準額以上)」|資料を確認
mhi.com|資料を確認
三菱重工業「開発中の無人機による災害発生時の救援物資輸送を実証」2025年7月31日|資料を確認
subaru.co.jp|資料を確認
acsl.co.jp|資料を確認
ACSL「大型案件の受注に関するお知らせ」2026年4月7日|資料を確認
khi.co.jp|資料を確認
prodrone.com|資料を確認
ヤマハ発動機「マルチソリューション-無人システム」|資料を確認
ヤマハ発動機「航空自衛隊 航空開発実験集団司令部から感謝状」2025年2月14日|資料を確認
airkamuy.com|資料を確認
イームズロボティクス「革新的なドローン運用技術を開発」|資料を確認
スペースエンターテインメントラボラトリー「HAMADORI 3000」|資料を確認
防衛装備庁「スタートアップ技術提案評価方式を適用した案件の契約結果(USV)」|資料を確認
JMUディフェンスシステムズ「多目的水上自律無人艇」|資料を確認
三菱重工業「自律型水中航走式機雷探知機 OZZ-5」|資料を確認
日立製作所「自律型水中ドローンを大きなビジネスの柱に」2025年2月18日|資料を確認
IHI「次世代の海洋産業をリードするIHIのAUV技術」|資料を確認
IHI「深海で無人海底調査ができる深海用自律型潜水調査装置」|資料を確認
川崎重工業「自律型無人潜水機(AUV)」|資料を確認
FullDepth「DiveUnit KAI」|資料を確認
陸上自衛隊水陸機動教育隊「水中ドローンによる水中確認に関する役務 仕様書」|資料を確認
BlueArch「国産自律型無人潜水機(AUV)の開発・製造」|資料を確認
防衛装備庁「迎撃ドローン早期取得プログラムの実施について」2026年6月5日|資料を確認
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