防衛産業の年収ランキング|重工・電機・IT企業の給与と仕事を比較

防衛産業の年収ランキング|重工・電機・IT企業の給与と仕事を比較

戦闘機や潜水艦を作っている会社の人は、いくらもらっているのか。

軍事好きなら一度は気になったことがあると思う。私も気になって、各社の有価証券報告書をひっくり返してみた。結論から言うと、2026年3月期は記録的な年だった。三菱重工に続いてIHIと富士通が平均1,000万円の大台に乗り、川崎重工は4年前から200万円以上も上がっている。

ただし、この手のランキングには大きな落とし穴がある。それも含めて、数字と仕事の中身の両方を整理していく。

目次

先に注意|これは「防衛部門の給料」ではない

ランキングの前に、どうしても断っておきたいことがある。

この記事で使うのは、各社が有価証券報告書に載せている「平均年間給与」だ。これは会社本体(単体)で働く全従業員の平均で、賞与と残業代などを含む。防衛部門だけの数字ではない。

三菱重工なら発電プラントやロケットの人も、富士通なら銀行や自治体のシステムを作っている人も、みんな含めた平均である。防衛部門だけの給与を公表している会社は、私が調べた限り1社もない。

とはいえ、日本の大企業は事業部ごとに賃金表を変えることは普通しない。同じ会社なら、防衛でも民需でも給与の仕組みは同じだ。だから「その会社の防衛部門に入ったらどのくらいの水準か」の目安としては、十分に使える。目安以上のものではない、というだけである。

防衛産業の平均年収ランキング【2026年3月期】

いずれも2026年3月期の有価証券報告書にもとづく単体の数字。三菱電機は同社の公表データで正社員の平均年間賃金が約913万円となっている。 なお、NECは2026年3月期から平均年間給与の算定方法を変更しており、前期比6.1%は変更後の方法で前期を再計算した値である。

載せていない会社についても触れておく。東芝とJMU(ジャパン マリンユナイテッド)は上場しておらず、同じ基準の数字がない。NTTデータもNTTの完全子会社になった。SUBARUや中堅の電子機器メーカー、弾薬メーカーなどは、2026年3月期の数字を一次資料で確認しきれなかったので、今回は入れていない。中堅どころは600万〜700万円台が多い、というのが私のざっくりした感触だが、これは確認でき次第、追記する。

各社をひとことずつ

表だけでは味気ないので、1社ずつ短く補足しておく。

1位 三菱重工業|約1,072万円

平均年齢42.3歳、平均勤続18.5年。本体だけで約2万3,000人を抱えながらこの水準、というのが凄みである。人数の少ない持株会社が平均を押し上げているのとは訳が違う。新卒の初任給は公式の募集要項で大卒28万5,000円、修士卒30万5,000円。戦闘機から潜水艦、ミサイルまで、日本の防衛装備の本丸をほぼ全部持っている。

2位 富士通|約1,012万円

本体に約3万2,000人。防衛では指揮統制や情報系のシステムを長く手がけてきた。ジョブ型の人事制度に切り替えてから給与水準が上がっており、ITの人材獲得競争の中にいる会社らしい数字だ。

3位 IHI|約1,001万円

平均年齢42.4歳、本体は約8,200人。前の期は航空エンジンの不具合にからむ負担金で大きな赤字を出した直後で、平均年収も813万円まで下がっていた。そこからの急回復である。戦闘機のエンジンはこの会社なしには成り立たない。次期戦闘機のエンジンも担当している。

4位 日立製作所|約995万円

防衛の比重は会社全体から見れば小さいが、指揮統制や電子装備で長い実績がある。中身は日立製作所の防衛事業で整理した。

5位 NEC|約994万円

全国の空を見張る防空システム、レーダー、通信、海底のセンサー。地味だが、止まったら国が困るものばかり作っている。売上の8割が国内という、8社の中でもとりわけ「国内のインフラ屋」の色が濃い会社だ。

6位 三菱電機|約913万円

レーダーとミサイルの誘導装置の雄。次期戦闘機では電子機器を担う。早期退職の募集もあった1年で、正社員の平均年間賃金は前の年から約44万円上がった。

7位 川崎重工業|約910万円

各社をひとことずつ

8位 日本製鋼所|約714万円

平均年齢39歳、本体は約2,000人。戦車砲や艦載砲を手がける、国内でほぼ唯一の火砲メーカーで、フィンランド製装甲車のライセンス生産も担う。2026年4月には素形材の子会社を吸収合併して、室蘭の製作所が本体に戻った。

数字から見える3つのこと

平均年収を見る際は、集計対象と会計年度を揃える。
平均年収を見る際は、集計対象と会計年度を揃える。

重工の伸び方が普通ではない

いちばん目を引くのは、重工3社の上がり方だ。

IHIは前の期の813万円から1,001万円へ、1年で約190万円上がった。川崎重工は2022年3月期に684万円まで落ち込んでいたのが、4年で910万円になった。三菱重工は2026年の春闘で、ベースアップも一時金も2年連続の満額回答。報道によれば、平均年収は2022年度と比べて約35%増える計算になるという。

背景は3つある。航空エンジンや航空機の民需がコロナ禍から戻ったこと。ガスタービンなどエネルギー関連が好調なこと。そして防衛の受注が積み上がっていること。防衛予算の増額がどの会社にどれだけ効いているかは受益企業ランキングと防衛企業の受注残ランキングで整理している。

ほんの5年前まで、防衛は「儲からない事業」の代表だった。コマツが装甲車から手を引き、ダイキンが砲弾の一部から撤退した。その空気を知っている身としては、隔世の感がある。撤退組の事情はコマツの防衛事業撤退の記事に書いた。

IT・電機は「重工より上」とは限らなくなった

少し前まで、給料は電機・ITのほうが重工より上、というのが相場だった。いまは入り乱れている。富士通、日立、NECが1,000万円前後で並び、そこに三菱重工とIHIが割って入った形だ。

ただ、富士通やNECの数字には、コンサルやITサービス部門の高給の人たちが含まれている。防衛向けのシステムを作る部門がその平均と同じかどうかは、外からは分からない。

会社の規模と年収は別の話

日本製鋼所は8社の中では低く見えるが、平均年齢が39歳と若く、工場が広島や室蘭など地方にある。都心に本社機能が集まる会社とは、物価も住宅費も違う。しかも同社の防衛関連の受注は、2025年3月期に705億円から1,158億円へと大きく伸びた。数字の高い低いだけで会社を選ぶと、見誤る。同社については日本製鋼所の防衛事業で詳しく書いた。

業種別|どんな仕事をするのか

重工業の設計・製造現場を支える技術者。
重工業の設計・製造現場を支える技術者。
業種別

重工(三菱重工・川崎重工・IHI・日本製鋼所)

戦闘機、艦艇、潜水艦、エンジン、火砲といった「モノ」を作る。職種は機械・電気の設計、生産技術、品質保証、調達、そして防衛省や海外企業との調整をする事業管理など。

特徴は、1つの製品に関わる時間が長いことだ。潜水艦1隻は起工から引き渡しまで数年かかり、戦闘機の開発は10年単位になる。入社して最初に関わった機体が、自分が管理職になるころにようやく部隊に配備される、という世界である。

勤務地は工場のある場所になる。名古屋、神戸、明石、岐阜、長崎、下関、瑞穂、相馬、広島。東京で働きたい人には向かない。各社の中身は三菱重工、川崎重工、IHIの各記事で、技術職の仕事は防衛産業の技術職の記事で解説している。

電機(三菱電機・NEC・日立など)

レーダー、ミサイルの誘導装置、通信機、ソナー、衛星。兵器の目と耳と神経を作る。ハードウェアの設計に加えて、ソフトウェアの比重が年々大きくなっている。

重工が船や機体という器を作り、電機がその中身を作る、という分担だと思えばいい。レーダーの三菱電機、通信と防空システムのNEC、といった各社の色分けは電機4社の防衛事業比較にまとめた。

IT(富士通・NECのシステム部門・NTTデータなど)

指揮統制システム、情報システム、クラウド、サイバー防衛。令和9年度の概算要求では、AIと無人機が重視項目の先頭に置かれた。これからいちばん人が足りなくなるのは、間違いなくこの分野だ。

民間のITと違うのは、閉じたネットワークで動く、止まることが許されない、機密の扱いが厳しい、の3点。最新のクラウドサービスを自由に使える環境ではないので、そこに物足りなさを感じる人もいる。このあたりはITエンジニアと防衛産業の記事と防衛サイバー企業一覧で書いた。

お金以外に知っておくべきこと

防衛の仕事には、給与明細に出てこない特徴がいくつかある。

1つ目は、仕事の話を外でできないこと。家族にも詳しくは言えない。SNSに職場のことを書くのはもってのほかだ。2025年には経済安全保障分野のセキュリティ・クリアランス制度も始まり、機密を扱う人は身辺の調査を受ける場面が増えていく。

2つ目は、景気に左右されにくいこと。お客は国で、契約は複数年度にわたる。リーマン・ショックのときも、コロナ禍のときも、防衛部門の仕事は止まらなかった。

3つ目は、英語だ。意外に思われるかもしれないが、F-35は米国、次期戦闘機は英国・イタリア、護衛艦はオーストラリアと、いまの防衛産業は海外との仕事だらけである。図面も会議も契約書も英語、という部署は珍しくない。入ってから苦労するより、先にやっておいたほうがいい。

兵器を作ってきたのは、ずっと会社員だった

造船や整備の現場も、多くの会社員の仕事で支えられている。
造船や整備の現場も、多くの会社員の仕事で支えられている。

歴史好きの余談を1つ。

零戦を設計した堀越二郎は、軍人ではなく三菱の社員だった。隼や疾風を作ったのは中島飛行機の技師たちで、戦艦武蔵を建造したのは三菱の長崎造船所である。海軍工廠のような国営工場もあったが、日本の兵器の多くは、昔から民間企業の会社員が作ってきた。

戦後、中島飛行機は解体されてSUBARUなどになり、三菱重工も3つに分割された。それでも技術者たちは鍋や自転車やスクーターを作りながら食いつなぎ、1950年代に防衛生産が再開されると、また戻ってきた。いまの防衛産業の年収が上がったというニュースを見ると、私はつい、あの時代に散り散りになった技術者たちのことを考えてしまう。

技術は人に宿る。人は、食えなければ去っていく。国が防衛産業の利益率を見直し、各社が給料を上げているのは、きれいごとではなく、そういう当たり前の話なのだと思う。産業全体の構造は日本の防衛ビジネス超入門を読んでほしい。

自衛官との比較、そして再就職先として

自衛官の給料と比べてどうか、という質問もよくもらう。

自衛官は階級と勤続年数で俸給が決まり、手当が厚い。住居と食事が付く期間もある。単純な額面の比較は難しいが、自衛官の年収モデルと見比べると、大手防衛企業の平均のほうが上になる年代が多い。

一方で、自衛官の多くは50代半ばから後半で定年を迎える。その再就職先として、防衛産業は昔から有力な選択肢だ。装備を実際に使ってきた経験は、メーカーにとって得がたい。退職後の道は元自衛官の転職の記事にまとめてある。

投資家目線のメモ

投資家目線のメモ

人に金を払える会社は、人が集まり、技術が残り、次の受注につながる。逆もまた然りだ。私は防衛関連株を見るとき、受注残と並べて平均年収の推移も眺めることにしている。社員に報いる余裕があるかどうかは、決算書のどの数字よりも正直だと思うからだ。

個別の銘柄については防衛関連銘柄の投資ガイドと川崎重工 vs 三菱重工の比較で書いている。働く側ではなく株主の側から防衛産業に関わる、という道もある。

(免責事項)本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や金融商品の売買、特定の企業への就職・転職を勧めるものではない。記載した数値は各社の開示資料にもとづくが、将来の給与水準や業績、株価を保証するものではない。判断は自分自身の責任で行ってほしい。

よくある質問

防衛産業でいちばん年収が高い会社は?

2026年3月期の有価証券報告書ベースでは、三菱重工業の約1,072万円がもっとも高い。ただし全社平均であり、防衛部門だけの数字ではない。

防衛部門だと給料は高くなる? 低くなる?

公表データはない。日本の大企業では事業部によって賃金表を変えないのが一般的で、同じ会社なら防衛でも民需でも仕組みは同じと考えていい。賞与が事業部の業績に連動する会社では、多少の差が出ることはある。

平均年収1,000万円の会社なら、自分も1,000万円もらえる?

そうとは限らない。平均年齢は40歳を超えており、管理職も含んだ平均だ。20代の給料はこれよりずっと低く、採用時の提示額は職種と経験で決まる。

文系でも防衛産業で働ける?

働ける。調達、契約、事業管理、経理、人事、海外営業など、文系の職種は多い。特に防衛省や海外企業との契約実務は、文系出身者が中心になって回している。

中堅・中小の防衛企業の年収は?

会社による差が大きい。上場している中堅メーカーは600万〜700万円台が多い印象だが、本記事では一次資料で確認できた会社だけを表に載せた。企業の全体像は日本の防衛産業・軍需企業一覧を参照してほしい。

まとめ

まとめ

ただし、これは全社の平均であって、防衛部門の給料ではない。そこだけは忘れないでほしい。

仕事の中身は、重工がモノ、電機が目と耳、ITが神経。どこも息が長く、口が堅く、意外なほど英語を使う。給料は上がったが、それ以上に「技術を持った人を国内に残す」という意味が大きい、と私は見ている。

80年前、この国は技術者を食わせられなくなって、彼らを散り散りにした。今度はそうならないでほしい。

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出典・参考資料

※平均年間給与は提出会社単体の就業人員が対象で、賞与および基準外賃金を含む。連結グループ全体の平均や、採用時の提示額を示すものではない。

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この記事を書いた人

軍研ノート編集部のアバター 軍研ノート編集部 自衛隊・兵器 / 戦史 / サバゲー

自衛隊で6年間勤務した編集長を中心に、自衛隊時代の仲間やサバゲーを通じた知人と記事を制作。経験と公開資料をもとに、装備の仕組みや歴史、その背景にある人々の工夫を掘り下げています。「かっこいい」から、その先の理解へ。編集長のプロフィール → 運営・編集方針

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