
日本のレーダー・電子戦企業を調べると、三菱電機や東芝のような大手に加え、東京計器、日本アビオニクス、川崎重工業など、役割の異なる企業が一つの装備を支えていることが分かる。2026年7月時点の公開情報では、電波を探すセンサー、発信を集める受信機、妨害装置、信号処理、指揮統制、航空機への搭載を複数社が分担している。
レーダーが戦場の目なら、電子戦は相手の目を曇らせ、自分の目だけを開けておく技術だ。日本企業の本当の価値は、目立つアンテナの外観より、その奥で電波を選別して情報へ変える神経系に宿る。
- センサー・信号処理・通信・搭載プラットフォームの分業で成立
- 三菱電機・東芝・NECが中核、専門企業と重工が補完
- 契約額はレーダー・電子戦部門だけの売上ではない
- 装置単体ではなく統合・保守・部品供給まで見て評価する
日本のレーダー・電子戦企業は三つの層で見る
- センサー・電子戦装置の中核企業
- 通信・情報処理・表示の統合企業
- 航空機・艦艇と専門部品の周辺企業
最初に整理したい。
「レーダーメーカー一覧」として社名を横一列に並べると、各社の差が見えにくい。防衛用の電波システムは三つの層で捉えると分かりやすい。
第一層は、アンテナ、送受信機、高周波デバイス、信号処理、指揮統制までを束ねるシステム主契約企業である。三菱電機と東芝が代表格だ。両社は地上・艦艇・航空機用レーダーに加え、電波探知や電子戦関連装置を事業領域として掲げる。[^1][^2]
第二層は、通信、表示、制御、情報処理、電波警戒、評価試験を担う企業である。NEC、富士通、東京計器、日本アビオニクス、日立製作所がここに入る。現代のレーダーは反射波を受けて終わる装置では済まない。大量の信号から目標を見分け、他のセンサーと結び、部隊へ配る処理系が戦闘力を左右する。
第三層は、航空機や衛星通信などの基盤へ装置を組み込む企業だ。川崎重工業はRC-2電波情報収集機や電子作戦機の機体統合を担い、日本無線は抗たん衛星通信の実証に関わる。装置の製造企業と、航空機全体を完成させる企業は分けて考える必要がある。[^3][^4]
電子戦には、相手のレーダーや通信を受信・識別する電子支援、妨害や欺まんを加える電子攻撃、自軍のセンサーや通信を守る電子防護がある。防衛白書も、ウクライナや中東で無人機通信、衛星測位、レーダーをめぐる電磁波の攻防が広く行われていると整理する。企業を見る際は妨害装置だけでなく、収集、分析、ネットワーク、防護まで含めたい。[^5]
日本のレーダー・電子戦企業一覧
- 同じ企業でも得意な周波数・用途が違う
- 契約額と技術順位は一致しない
- 完成装置と構成部品を区別
- 公開情報で確認できる範囲に限定
公開資料で役割を確認しやすい主要企業は次の通りだ。
| 企業 | 主な立ち位置 | レーダー分野の得意領域 | 電子戦・電磁波分野の得意領域 | 見るべきポイント |
|---|---|---|---|---|
| 三菱電機 | 大規模システム主契約企業 | 警戒管制、防空、艦載・航空機搭載レーダー、高周波デバイス | 電波収集・分析・妨害、艦艇用電波探知、次期戦闘機アビオニクス | レーダー、電子戦、情報処理を垂直統合しやすい |
| 東芝 | レーダー・防空・電波探知の主契約企業 | 捜索レーダー、航空機用レーダー、短距離防空、対ドローン | 地上電波測定、電波探知・分析、マイクロ波モジュール | レーダー技術を核に防空と電波探知を横断する |
| NEC | 通信・C4ISR・航法の中核 | 無線航法、識別、センサー情報の連接 | 防衛専用通信、暗号、ネットワーク、情報共有 | 情報を止めずに流す役割が強い |
| 富士通 | 情報処理・評価・光波系 | 情報処理、センサー関連の試験・評価 | 電子戦評価技術、通信電子機器、信号処理 | 完成品より評価・処理系の公開実績が目立つ |
| 東京計器 | 電波警戒・航法の専門企業 | 地上捜索レーダー、レーダー指示器 | レーダー警戒装置、逆探装置、擬似電波発生装置 | 電子支援と警戒受信の専門性が明確 |
| 日本アビオニクス | 搭載電子機器・サブシステム企業 | レーダー用信号処理、表示、管制装置 | 電子戦関連の表示・制御・通信、車両搭載レーダー関連 | 大手主契約企業へ装置を供給する「中身」の企業 |
| 川崎重工業 | 航空機プラットフォーム主契約企業 | センサー搭載航空機の機体・システム統合 | RC-2、電子作戦機の航空機化・搭載統合 | 飛行する収集・妨害基盤を完成させる |
| 日立製作所 | 統合運用・情報・艦艇装備 | 艦艇装備、海洋情報、センサー情報統合 | 統合通信、インテリジェンス、サイバー、電磁波領域 | 情報優越を支える統合側に強い |
| 日本無線 | 無線通信・衛星通信の専門企業 | 無線・アンテナ技術(レーダーは周辺領域) | マルチオービット衛星通信、抗たん通信、端末・アンテナ | 電子防護側の通信基盤を支える |
役割の差が重要だ。
RC-2は川崎重工業が製造するC-2派生機だが、同社の公式説明は「電波情報収集装置を搭載」と記すにとどまる。公開資料から機内の全受信機、分析装置、データリンクの製造企業まで断定してはいけない。防衛装備は複数社の装置で構成され、契約名と実際の分担が一致しない場合もある。[^3]
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三菱電機|レーダーと電子戦を縦に貫く中核企業
- 警戒管制・艦載・航空機レーダー
- 電子戦支援と妨害装置
- アンテナから信号処理まで
- 長期保守を含む統合力
最有力はここだ。
三菱電機は、警戒管制レーダー、迎撃ミサイル、指揮統制、電子戦、通信衛星、次期戦闘機アビオニクスを一つの防衛事業として示す。2025年の説明会では、レーダーと情報処理を装備品の中核に置き、高周波デバイスから大規模システムまでの垂直統合を強みとして挙げた。[^1]
レーダー分野では、固定式警戒管制レーダーで長い実績を持つ。防空センサーには探知距離だけでなく、高速・高機動目標の追尾、進路予測、迎撃側への情報伝達が求められる。防衛装備庁の令和7年度主要調達品目にも「高速高機動目標対応レーダの試作」が同社向け契約として載る。[^6]
電子戦では、公式資料が「電磁波収集・分析管理」と「電波妨害」を明記する。陸上用ネットワーク電子戦システムは収集、妨害、情報処理、指揮統制を扱い、艦艇向けには電波探知、発信源識別、妨害、チャフやデコイとの連接を掲げる。[^7]
私は「日本のレーダー・電子戦の総合首位」を一社選ぶなら三菱電機と見る。契約額より、高周波デバイス、レーダー、電子戦、ミサイル、指揮統制、衛星通信を社内で結びやすい構造が理由だ。次期戦闘機では各センサーが一体の戦闘システムへ近づき、この流れは同社の得意領域と重なる。
令和7年度中央調達で三菱電機は5,284億円、2位だった。金額にはミサイルと衛星通信なども含まれるため、レーダー・電子戦の市場占有率としては使えない。[^6]
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東芝|捜索レーダー、電波測定、対ドローンをつなぐ
- 捜索・監視レーダー
- 電波測定と対ドローン
- 高周波デバイスと信号処理
- 地上・艦艇システムへの展開
東芝はレーダー、防空、指揮統制、情報処理、電波探知、対ドローンを防衛システムの柱に置く。高性能化と小型・軽量化を支えるマイクロ波半導体モジュールも自社開発すると説明している。[^2]
令和7年度契約実績では、主な調達品として11式短距離地対空誘導弾、地上電波測定装置J/FLR-6、P-1用捜索レーダーHPS-106Bが並ぶ。短距離防空、電波測定、航空機搭載捜索レーダーを同じ企業が扱う構成だ。[^6]
ここが面白い。
レーダーと電子戦は、送受信、高周波増幅、デジタル信号処理、発信源識別などの技術を共有する。東芝はレーダーを核に、電波探知と対ドローンへ領域を広げている。小型無人機を見つけ、鳥や地上反射と区別し、通信・航法への対処へつなぐには、レーダー単体を超えた統合が要る。
私が東芝を過小評価すべきでないと考える理由は、航空機用レーダーと地上電波測定装置が同じ契約一覧に現れる点にある。大型装備の知名度では三菱電機が先行するが、東芝は防空の近距離側、航空機の捜索、電波環境測定を支える厚い技術層を持つ。中央調達額は855億円で7位だったが、これも東芝の防衛契約全体の数字である。[^6]

NEC|電子戦を支える通信・C4ISRの太い幹
- 防衛通信とネットワーク
- C4ISRの情報処理
- 複数センサーの連接
- サイバー・暗号・抗たん性
NECを見るとき、まず通信を押さえたい。同社は防衛専用通信の構築・換装を長年担い、秘匿性の高い暗号方式や、停止させずにシステムを切り替える運用ノウハウを強みとして説明する。[^8]
通信が主役だ。
自軍の通信が途切れれば、センサーが見つけた目標を共有できない。周波数や経路を切り替え、暗号化し、被害箇所を迂回して指揮命令を届ける仕組みは電子防護の中心にある。令和7年度中央調達でも、NECの主な品目に広帯域多目的無線機と野外通信システムが挙がり、契約額は2,902億円で4位だった。[^6]
艦艇分野では通信、航法、味方識別、ソーナー、艦内ネットワークを組み合わせる。2026年4月には豪州フリゲート3隻向けに、複合通信空中線UNICORN、艦艇搭載情報通信基盤、味方識別機、無線航法システムなど9種類の装備品を供給する契約を発表した。[^9]
NECは大型レーダーの主役というより、センサー情報を流し、識別し、指揮統制へ載せるC4ISR企業と見る方が実態に近い。私は電子戦を妨害電波の強さだけで評価する見方は古いと思う。通信が生き残り、複数センサーの情報を一枚の状況図へ統合できて初めて、収集や妨害の効果が部隊全体へ広がる。
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富士通・日立|情報処理と統合運用を担う
富士通は防衛情報通信基盤や艦艇向け情報処理で存在感を持つ。令和7年度中央調達では1,362億円で6位となり、情報処理サブシステムOYX-1-06や防衛情報通信基盤の通信電子機器が主な品目に挙がった。[^6]
公式契約には、2024年3月の「電子戦評価技術の性能確認試験のための試験準備作業」約20.3億円もある。富士通が情報処理と評価試験の側で電子戦開発を支える証拠だ。公開契約一件から主要ジャマー企業と断定するのは早計であり、脅威信号の模擬、受信性能測定、妨害効果の確認など、試験基盤を担う企業と捉えたい。[^10]
統合が鍵だ。
日立製作所は衛星画像、統合運用、インテリジェンス、サイバー、統合通信、艦艇装備を掲げる。公式ページでは陸・海・空に宇宙、サイバー、電磁波を加え、情報共有と可視化を支える指揮統制基盤を提供すると説明する。[^11]
日立の強みもセンサー単品より統合側にある。令和7年度中央調達ではサイバー防護分析装置や対機雷戦用ソーナーシステムが主な品目に入った。水中音響、衛星画像、サイバー、通信を一つの情報環境へつなぐ立場である。[^6]
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東京計器|レーダー警戒装置と逆探装置の専門企業
専門性が際立つ。
東京計器は航空機用のレーダー警戒装置、逆探装置、レーダー指示器を掲げる。地上向けには捜索用レーダー装置と擬似電波発生装置、艦艇向けにはレーダー指示器や戦術状況表示装置を供給する。[^12]
レーダー警戒装置は敵レーダーの照射や周波数特性を検知し、脅威の方向や種類を乗員へ知らせる。逆探装置は自ら強い電波を出さず、相手の発信を捉える。航空機や艦艇が攻撃を受ける前に「見られている」と知るための耳だ。
擬似電波発生装置は、脅威レーダーに似た信号を再現して受信機や警報装置を試験する。さらに同社は慣性航法装置にも強い。衛星測位が妨害された状況で外部電波に頼らず航法を続ける能力まで含め、電子支援と電子防護を支える専門企業と整理できる。
日本アビオニクス|信号処理・表示・制御を担う
日本アビオニクスは、指揮統制、信号処理、表示、通信の各装置を供給するサブシステム企業である。1960年にNECと米ヒューズ・エアクラフトの合弁で設立され、防空指揮管制システムを起点に情報システム事業を育てた。2020年にはNECグループから独立した。[^13]
中身を支える。
2026年6月の説明資料は、共通コア技術として通信、表示、制御、信号処理、画像処理、音響、指揮統制を挙げる。陸・海・空すべての自衛隊へ装備を提供し、大手防衛主契約企業から継続受注する立場も明記した。[^13]
今後の対象にはJADGE、各種レーダー、電子戦、車両搭載型レーダーが含まれる。統合防空ミサイル防衛では管制・制御・試験装置と信号処理・表示装置、無人アセット防衛では管制・信号処理・表示装置を供給する方針だ。[^14]
私は、この層を外すと日本の防衛電子産業を半分しか見ていないことになると思う。アンテナが受けたデータを処理し、操作者が判断できる表示へ変え、指揮統制へ渡す部分は装備性能を決める設計層である。

川崎重工業|RC-2と電子作戦機を飛ばす
川崎重工業は航空機プラットフォームの主契約企業だ。C-2公式ページは、電波情報収集装置を搭載したRC-2が2020年10月から部隊配備されたと説明する。令和7年度中央調達ではRC-2が433億円、電子作戦機が413億円で、同社が契約相手方となった。[^3][^6]
空へ載せる。
大型機には複数アンテナ、信号処理装置、運用員席、電源、冷却を搭載できる。川崎重工業の得意分野は、各社の電子装置を「飛べる一つの装備」へまとめることだ。アンテナ配置は空力や構造へ影響し、高出力機器は発熱と電磁干渉を生む。機体電源、冷却、配線、整備性、飛行安全まで成立させる必要がある。
公開情報では電子作戦機の全構成品メーカーを確認できない。川崎重工業はプラットフォーム主契約企業として、複数社の装置を航空機へ統合する立場と見るべきだ。
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日本無線と民生レーダー企業|電子防護を支える周辺層
日本無線の主戦場は無線通信、衛星通信、アンテナ、端末である。2026年4月には、防衛省のマルチオービット通信の抗たん化実証に選定され、GEO・MEO・LEO衛星を切り替える通信システムを2028年3月まで開発・実証すると発表した。[^4]
通信を守る。
一つの衛星回線や地上局が妨害・攻撃されても、別軌道の衛星や別経路へ移れれば通信は残りやすい。これは電子攻撃装置ではないが、妨害下で自軍機能を維持する電子防護の基盤となる。
古野電気など民生レーダー企業も、船舶用レーダー、パルス圧縮、目標追尾、アンテナ、信号処理の技術を持つ。[^15]ただし、民生実績だけで防衛用レーダーや電子戦装置の供給企業と断定はできない。安全保障向けには耐環境性、妨害耐性、秘匿性、長期保守が加わる。将来の採用は個別案件の公表を待つべきだが、半導体や量産設備を持つデュアルユース企業の裾野は供給網の強みになり得る。
用途別に見る企業の違い
- 探知距離だけで比較しない
- 周波数・更新速度・妨害耐性
- 搭載重量と電力・冷却
- 通信・指揮統制との接続
企業名より任務から逆引きすると分かりやすい。
| 欲しい能力 | 中核候補 | 補完する企業 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 固定式警戒管制レーダー | 三菱電機 | 日本アビオニクス、通信・部品各社 | 大規模レーダー、情報処理、指揮統制をまとめやすい |
| 航空機・艦艇用捜索レーダー | 東芝、三菱電機 | 日本アビオニクス、東京計器 | 小型軽量化、信号処理、表示、搭載環境への適合が要る |
| 電波の収集・識別 | 三菱電機、東芝、東京計器 | 富士通、日本アビオニクス | 受信機、脅威データ、信号処理、表示を組み合わせる |
| 電波妨害・電子攻撃 | 三菱電機を中心に公開実績を確認 | 評価・試験企業、搭載企業 | 装置詳細は非公表が多く、試験と統合が重要 |
| 防衛通信・データリンク | NEC | 三菱電機、日本無線、富士通、日立 | 暗号、抗たん性、経路切替、ネットワーク統合が中心 |
| 電子戦機・情報収集機 | 川崎重工業 | 電子装置・通信・信号処理各社 | 航空機へアンテナ、電源、冷却、運用席を統合する |
| レーダー警戒受信・逆探 | 東京計器 | 大手システム企業 | 受動探知と乗員警報に専門性を持つ |
| 信号処理・表示・管制 | 日本アビオニクス | NEC、富士通、日立 | センサー出力を操作者と指揮系統へつなぐ |
| 妨害下で維持する通信 | NEC、日本無線 | 三菱電機、富士通 | 複数経路、暗号、衛星軌道切替、運用継続が焦点 |
任務で分かる。
この表は固定的な序列ではない。実装備は共同開発や下請け契約で構成され、同じ企業が案件ごとに主契約とサブシステム供給を行き来する。装備名が公表されても構成品メーカーは伏せられることが多い。

日本の供給網の強みと弱み
- 国内に設計・製造・統合能力
- 専門部品の少数供給者依存
- 長期維持で部品枯渇が課題
- 輸出と共同開発が量産性を左右
強みの一つは、高周波デバイスからシステム統合まで国内でつなげられることだ。三菱電機は高周波デバイスの内製、東芝はマイクロ波半導体モジュールの自社開発を掲げる。脅威信号へ合わせた更新や、秘匿データを使う改修では国内基盤が効く。[^1][^2]
裾野は広い。
陸・海・空をまたぐ企業が多く、航空機、艦艇、通信、電子部品の産業も国内に残る。総合電機がセンサーを担い、専門企業が警戒受信や表示装置を供給し、川崎重工業が航空機へ統合する。私は単体レーダーの探知距離より、十年後も脅威データを更新し、部品を再生産できる供給網の方が国家にとって重い場合があると考える。
課題は少量多品種と長期保守だ。専用部品の廃番、試験設備の維持、技術者不足が重く、防衛予算が増えても生産能力は急には増えない。輸出実績も発展途上だが、三菱電機のフィリピン向け警戒管制レーダーやNECの豪州フリゲート向け装備は、数量、保守拠点、相互運用性を広げる動きとなる。[^1][^9]
ソフトウェア更新も勝負を分ける。新しいレーダー波形や通信方式が現れれば、識別ロジックや脅威ライブラリを短い周期で更新する必要がある。サイバーと電磁波の境界も薄くなり、レーダー、通信、サイバー企業を横断する開発体制が求められる。
投資家が見るべき数字
- 中央調達額は全防衛契約の一部
- 事業セグメントの防衛比率を確認
- 受注から売上計上まで時間差
- 研究契約と量産契約を分ける
数字に注意したい。
令和7年度中央調達では、三菱電機5,284億円、川崎重工業3,308億円、NEC2,902億円、富士通1,362億円、東芝855億円、日立594億円だった。[^6]
この金額には、三菱電機のミサイルと衛星通信、川崎重工業の航空機、NECと富士通のクラウド・情報基盤、日立のソーナーやサイバー案件も含まれる。レーダー・電子戦の市場シェアへ置き換える数字ではない。地方調達、維持整備、グループ会社取引、民間売上も別に存在する。
私なら四点を確認する。防衛受注残高が売上へ変わる時期、生産設備と人員への投資、主契約品と構成品の比率、海外移転や共同開発の実績だ。受注増でも設備不足や先行費用で利益率が下がることがある。小規模な専門企業は契約総額が小さくても、代替しにくい装置を握れば収益性が高まる場合がある。
上場企業と事業主体の関係にも注意が要る。親会社、非上場子会社、製造子会社を確認し、有価証券報告書や決算説明資料で防衛部門の売上、受注残、設備投資、リスク説明を読む方が確実だ。
よくある質問
日本最大のレーダー・電子戦企業はどこか
公開資料で確認できる事業範囲、中央調達額、レーダー・電子戦・情報処理の垂直統合を合わせると、三菱電機が最も総合力のある中核企業と評価しやすい。 答えは明快だ。
三菱電機と東芝の違いは何か
三菱電機は大型警戒管制、ミサイル、電子戦、指揮統制、衛星通信まで広く、東芝は捜索レーダー、短距離防空、航空機用レーダー、電波測定、対ドローンを横断する構成が目立つ。
NECは電子戦企業なのか
NECは防衛専用通信、暗号、無線機、航法、識別、艦内ネットワークを支えるC4ISR企業であり、電子防護と情報共有の側で重要だ。
東京計器と日本アビオニクスの役割は何か
東京計器は警戒受信・逆探・航法、日本アビオニクスは信号処理・表示・制御・管制に強く、大手システム企業を専門装置で支える。
契約書から電子戦装置の全メーカーを特定できるか
主契約企業と構成品企業が異なり、分担が非公表の案件も多いため、公開資料に記載のない企業名を推測で補ってはいけない。
防衛省の契約額が大きいほどレーダー技術も上なのか
契約額には航空機、ミサイル、クラウド、通信、整備などが混在し、レーダー技術の順位や部門売上を直接示さない。
まとめ|日本のレーダー・電子戦産業は分業する神経系だ
日本のレーダー・電子戦企業は、三菱電機と東芝を中核に、NEC、富士通、日立が通信・情報処理・統合運用を支え、東京計器と日本アビオニクスが警戒受信、信号処理、表示、制御を担う。川崎重工業はRC-2や電子作戦機へ装置を統合し、日本無線は妨害に強い通信基盤を広げる。
全体で見る。
レーダーが目標を見つけ、電子支援が相手の発信を聞き、電子攻撃が利用を妨げ、通信網が情報を運び、指揮統制が行動へ変える。日本の競争力は、この連鎖を国内で維持し、素早く更新できるかで決まる。
今後の焦点は、極超音速兵器や低被探知目標への対応、無人機対処、次期戦闘機の統合センシング、電子戦機、抗たん衛星通信である。アンテナの大きさだけを競う時代は終わりつつある。集めた電波を誰が最速で理解し、味方へ配り、相手には使わせないか。そこに次の勝負がある。
参考資料
[^1]: 三菱電機「防衛事業説明会」(2025年3月12日)および防衛事業紹介。<https://www.mitsubishielectric.co.jp/ja/pr/2025/pdf/0312-1.pdf> / <https://www.mitsubishielectric.co.jp/recruitment-ecsystems/business/defense/> [^2]: 東芝「防衛システム」。<https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/defense/defense-system.html> [^3]: 川崎重工業「C-2輸送機」。<https://www.khi.co.jp/mobility/aero/aircraft/xc_2.html> [^4]: 日本無線「マルチオービットに対応した通信システムの抗たん化技術開発・実証」。<https://www.jrc.co.jp/news/2026/0402-1> [^5]: 防衛省「令和7年版防衛白書 第4節 電磁波領域をめぐる動向」。<https://www.mod.go.jp/j/press/wp/wp2025/html/n140402000.html> [^6]: 防衛装備庁「令和7年度中央調達における調達実績」。契約額は企業別の中央調達総額であり、レーダー・電子戦部門だけの売上ではない。<https://www.mod.go.jp/atla/souhon/supply/jisseki/pdf/r07_chotatsu_jisseki.pdf> [^7]: 三菱電機「防衛事業」電子戦システム、警戒管制レーダー、艦艇搭載装置の紹介。<https://www.mitsubishielectric.co.jp/recruitment-ecsystems/business/defense/> [^8]: NEC Stories「『防衛の通信はNEC』の信頼を胸に」。<https://jpn.nec.com/corporateblog/202502/02.html> [^9]: NEC「豪州政府が調達するフリゲート艦3隻向けに9種類の防衛装備品を供給する大型契約を締結」(2026年4月18日)。<https://jpn.nec.com/press/202604/20260418_01.html> [^10]: 防衛装備庁次世代装備研究所「令和6年3月契約分」。<https://www.mod.go.jp/atla/data/info/ny_kenkyu_shinsedai/pdf_ichiran/06-ekimu-zuikei-ji-03.pdf> [^11]: 日立製作所「防衛・社会インフラ安全保障」。<https://www.hitachi.co.jp/products/defense/> [^12]: 東京計器「防衛」。<https://www.tokyokeiki.jp/products/defense/index.html> [^13]: 日本アビオニクス「2026年3月期決算説明会」会社沿革・情報システム事業概要。<https://www.avio.co.jp/company/ir/upload_file/m003-m003_01/IR_Presentation_20260604.pdf> [^14]: 日本アビオニクス「2026年3月期決算説明会」中期経営計画、情報システム事業の対象分野。<https://www.avio.co.jp/company/ir/upload_file/m003-m003_01/IR_Presentation_20260604.pdf> [^15]: 古野電気「固体化レーダーセンサーDRS-NXTシリーズが第4種レーダー認証取得」。<https://www.furuno.co.jp/news/general/general_category.html?dispmid=1017&itemid=1695>
参考資料・主な出典
三菱電機|防衛事業|資料を確認
東芝|防衛システム|資料を確認
NEC|防衛通信|資料を確認
日立製作所|防衛・社会インフラ安全保障|資料を確認
東京計器|防衛|資料を確認
防衛白書|電磁波領域|資料を確認
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